かの悪党はヒーローへ   作:bbbb.

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一話

 「……っ」

 

 垣根帝督はゆっくりと目を覚ました。目を開けてからまず視界に入ってきたのは覚えのない天井だった。ゆっくりと身体を起こしあたりを見渡す。まず見えたモノは自分が横たわっているベッドだ。そして同じようなベッドがいくつかと右奥の方にスライド式の扉が一つあることを確認する。まるでどこかの病院の一室のようだ。

 

 (ここはどこだ………?)

 

ふと自分の格好に目を向けた。すると自分が今着ているモノは、病院で入院している患者が着ている患者衣であることに気がついた。また、枕元に時計が置いてあることに気付き、見てみると10月10日午前九時を示していた。

 

 (……どうやらどっかの病院で朝まで寝てたみてえだな…………。だがなぜだ?なんで俺がこんな所にいる?)

 

垣根は今自分がなぜ病院と思わしき場所にいるのか、その理由を探るため昨日の記憶を呼び起こす。

 

 (昨日、俺は……確か………)

 

断片的に浮かんでくる記憶のかけらをつなぎ合わせ、頭の中を整理していく。そして

 

 (そうだ…思い出した……!!)

 

10月9日、暗部組織『スクール』のリーダー・垣根帝督はアレイスターの情報網の正体を掴むために〈ピンセット〉を強奪した。その際、レベル5の第4位・麦野沈理を中心とする暗部組織の『アイテム』と交戦するも撃退に成功。その後ピンセットの解析を進めるも、これだけではかねてから垣根の目的であったアレイスターとの直接交渉権は得られないと考え、直接交渉権をより確実なモノにするために自分より序列が上であり、アレイスターの計画の「第一候補(メインプラン)」である一方通行を殺害することを決意した。そして彼は学園都市最強と謳われる一方通行と相対することとなった――――――――――。

 

(……っ!?)

 

突如、頭に強烈な痛みが走る。一方通行との戦いを思い出そうとすると頭が割れるように痛み、吐き気にまで襲われた。

 

(…………)

 

垣根は思わず思い起こした記憶をシャットする。

 

(俺は、あいつに……一方通行に負けた)

 

チッと舌打ちをしイライラを募らせる垣根。自分が一方通行によって打ち負かされたという事実。いや、「打ち負かされた」という言葉では済まされないほどの圧倒的な「敗北」。「死」というものをあんなにも間近で実感できたのは人生初だっただろう。垣根は一方通行による文字通りの「虐殺」を味わったのだ。すると、ここまで思い出した垣根の頭にふと、一つの疑問が浮かぶ。

 

(どうして俺は五体満足でいる?)

 

昨日の一方通行との戦い、暴走した一方通行にただただ蹂躙され肉塊同然になるまでその「暴力」は続いた。垣根自身も薄れゆく意識の中で自分が既に人の形をしていないほど壊されている自覚くらいはあったのだろう。なのに今自分は五体満足で存在している。見たところ身体に傷が残っているわけでもない。いくら学園都市の科学力が優れているからと言っても肉塊状態にまで壊された状態から一晩でここまで完璧に治すことは不可能だ。垣根は以前、学園都市の医者の中には死人以外なら誰でも治してしまうというカエル顔の医者が存在するという噂を聞いたことがあるが、そいつにだって一晩でこんなことは出来ないだろう。

 

(どうなってやがる………?ん?ていうか俺以外誰もいねーのかこの部屋)

 

改めて辺りを見回すと先ほど確認したいくつかのベッドが並んでいるだけで誰も患者らしき人はいない。どうやらこの病室には自分しかいないのだと再認識し、これからどうするか考えようとした時、

 

 「まったく、年寄りに朝から病院まで迎えに来させるとはとんだ馬鹿息子だな。」

 

なじるような言葉と共に、部屋の右奥にあった扉から小さな老人が部屋に入ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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