かの悪党はヒーローへ   作:bbbb.

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十話

「実技総合成績出ました」

 

 時は遡ること、一週間。場所はモニター室。ここでは全会場の実技試験の様子を映し出すことができ、雄英の教師陣はそこから受験生を観察していた。教師陣がモニター室で試験の様子を見る目的として、どのような生徒がいるのか見極める為というのもあるが、それに加え救助Pの審査をしなければならないという理由もある。この救助Pの存在は受験生達には知らされていない。もし知らせてしまえば、当然皆他人を助けることを意識して試験に臨むだろう。しかしそれではあまり意味が無い。何も知らされていない状況で、何が起きるか分からない状況で、目の前に脅威が存在する状況で、いかにその精神を発揮できるか。雄英が見たいのはそういう「資質」。実技試験の進行を見ながら雄英の教師陣は主にその点に着目して採点していた。そして実技試験が終了し、教師陣の採点も全て完了した結果がモニターに今、映し出されている。

 

 「今年は結構レベル高くないか?」

 「えぇ、そうね。特に敵Pに関しては1位と2位の子達が図抜けているわね。2位の子なんて救助P0よ。それで2位って凄いわね」

 「仮想敵は標的を捕捉し近寄ってくる。後半他が鈍っていく中、派手な個性で寄せ付け迎撃し続けた。タフネスの賜物だ」

 「対照的に敵P0で7位」

 「大型敵に立ち向かった受験生は過去にもいたけど、あんな爽快にぶっ飛ばしちゃったヤツは久しく見てないねえ~」

 「分かるわ~。私も見ててスカッとしちゃった」

 「しかし自身の衝撃で甚大な負傷、まるで個性を発現させたばかりの幼児だ」

 「……」

 「まぁでもやっぱり、ダントツだったのはやっぱり一位の子だな」

 「ああ。まず本人の判断力や分析力が素晴らしい。加えてかなりの強個性。機動力よし、防御力よし、攻撃力よし。文句のつけどころが無かった」

 「私、巨大敵が串刺しになってる姿なんて初めて見たわ。巨大敵を完全に壊しちゃったし。プロでも中々出来ることじゃない。あれでまだ中学生でしょ?信じられないわ」

 「総合成績も抜きん出ているし、とんでもない逸材が入ってきたな」

 

モニター室で教師陣の間で交わされる会話。彼らはこの見事試験に合格した40名の生徒達に教鞭を執ることになる。果たして彼らにはどのような学園生活が待っているのか――――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――四月。

 

 雄英高校新学期初日。垣根は朝の支度を済ませ、家を出る。受験の時と同じ道筋をたどり雄英に向かう。20分程歩くと雄英の校門までたどり着いた。中に入ろうと、

 

 「おーい、そこの金髪の君!」

 

後方から女の声がする。

 

 「…」

 「君だよ、白い翼の人!」

 「あ?」

 

垣根は振り向く。金髪だけならまだしも、白い翼という言葉に合致する人間など自分しかいない。垣根が振り返った先には見覚えのある、オレンジ色の髪の毛でサイドテールの女が立っていた。彼女も自分と同じ制服を着ているので、恐らく同じ雄英生なのだろうと垣根は推測する。

 

 (どっかで見たような…?)

 

記憶を辿る垣根だったが、イマイチ思い出せない。そこで、

 

 「誰だ?」

 

垣根が尋ねると、

 

 「ってありゃ!?覚えてないかー…ほら、実技の時あなたに助けてもらった者です」

 「…あー、なるほど」

 

垣根はようやく目の前の女子生徒が誰なのか理解する。

 

 「あの時のお礼言えてなかったから『どうしようかな~』なんて思ってたら、ちょうど目の前にあなたがいてさ~、そこで声をかけたってわけ」

 

そして

 

 「あの時助けてくれてありがと!」

 

彼女は垣根に感謝の言葉を述べた。

 

 「…ハイハイ」

 

適当な返事を残して垣根は再び足を動かす。女子生徒は、

 

 「えっ!?ちょ、ちょっとぉ!!」

 

慌てて垣根に追いつく。

 

 「私、拳藤一佳。1年B組、よろしくね!あなたの名前は?」

 「…垣根。垣根帝督」

 「へぇ~、垣根っていうんだ~。クラスは?」

 「A」

 「あー、A組かー。残念。違うクラスだね。あ、そうそう、垣根の個性ってどういうものなの?あの白い翼みたいなのが個性?あんな個性初めて見たよアタシ」

 「…」

 

と垣根と拳藤が会話(?)しながら歩いていると「1ーA」と大きく書かれてあるドアの教室に着いた。

 

 「ここがA組か。じゃあここでお別れだね」

 

またね~と手を振りながら拳藤はB組の教室の方へ歩いて行った。

 

 (朝からやかましい奴だな)

 

初めて話すと言うのに想像以上にグイグイ来る拳藤に若干戸惑いを覚えつつも、垣根は目の前の教室に意識を向ける。垣根が教室に入ろうとすると、

 

 「あ、あの!!君も1年A組の人ですか!?」

 「あ?」

 

またもや後ろから声をかけられる。振り返るとそこには背が低く、モジャモジャ頭の少年が緊張した様子で垣根の後ろに立っていた。

 

 「ああ、そうだが?」

 「そ、そうですか…あ、あの!僕も1年A組の生徒で、緑谷出久って言います!!よろしくお願いします!!!」

 

そう言うと緑谷と名乗る少年は勢いよく頭を下げた。

 

 「…ああ、垣根だ、よろしく」

 

垣根も一応自分の名前を名乗ると、緑谷は嬉しそうな様子で、

 

 「…っ!はい!!よろしくお願いします!!垣根君!!」

 

再度勢いよく頭を下げた。

 

 (…この学校には変人しかいねえのか?)

 

垣根は心の中でそのような疑問を持ちつつ、教室のドアを開ける。するとまず垣根の視界に入ってきたのは二人の男子生徒が言い争っている場面だった。

 

 「机に足をかけるな!!」

 「あぁん?」

 「雄英の先輩方に、机の制作者方に申し訳ないと思わないか!?」

 「思わねーよ、てめーどこ中だよ端役が!!」

 「…っ、ぼ…俺は私立聡明中学出身、飯田天哉だ」

 「聡明?クソエリートじゃねーか、ブッ殺しがいがありそうだな!!」

 「なっ!?ぶっ殺しがい…!?君ひどいな、本当にヒーロー志望か!?」 

 「ケッ…あ?」

 

新たなクラスメイトの存在に気づいたのか、言い争いをしていたふたりがこちらの方に目を向ける。

 

 「ん?君は…」

 「「???」」

 

二人につられてクラス中の視線が二人に集まる。

 

 「あっ…えっと…」

 

そばにいる緑谷が動揺しキョドっていると、先ほど言い争っていた内の一人、飯田がこちらまで歩いてきて、

 

 「おはよう!!俺は私立聡明中学の…」

 「聞いてたよ!!」

 「おっ…」

 「…あ、えっと、僕、緑谷出久。よろしく飯田君」

 「…緑谷君、君はあの実技試験の構造に気づいていたのか」

 「えっ?」

 「俺は気づけなかった…君を見誤っていたよ。悔しいが君の方が上手だったようだ…」

 「…ごめん、気づいてなかったよ…」

 

飯田が緑谷に話しかけ終わると、

 

 「そしておはよう!!俺はし―――――――――」

 「聞いてたぜ。垣根だ」

 「お、そうだったか。よろしく!!垣根君!!」

 (よりによってコイツと一緒のクラスかよ)

 

垣根は説明会での記憶を思い出し、ため息を吐く。

 

 「ん?ところで垣根君、第一ボタンが外れているぞ。しっかり閉めなければ。」

 「…」

 

早速来たか、と垣根が思っていると、またもや後ろから声がする。

 

 「あっ!そのモサモサ頭は地味目の!!!」

 「あっ!!!」

 

緑谷はその女子の姿を確認するといきなりテンパり始めた。女子も女子でなんだか嬉しそうに話している。どうやら知り合いらしい。そしてそばにいる垣根にも話しかけようと

 

 「あなたは――――――――――――」

 「お友達ごっこがしたいならよそへ行け」

 

突然女子生徒のうしろに黄色い寝袋が現れ、そこから不機嫌そうな声が聞こえる。よく見ると寝袋から顔だけが出ていた。

 

 「ここはヒーロー科だぞ」

 

そして、

 

 「はい、静かになるまで8秒かかりました。時間は有限、君たちは合理性に欠くねえ」

 

と言って寝袋を脱ぐ。全身黒のコスチュームで髪はボサボサ、いかにも低血圧って感じの顔をした男が立っていた。そして一言、

 

 「担任の相澤消太だ。よろしくね」

 「「担任!?」」

 (……)

 「早速だがこれ着てグラウンドに出ろ」

 

相澤は体操着のようなモノを取り出しながら言った。

 

 「「えっ?」」

 

 

 (やっぱり変人しかいねえじゃねか)

 

 

 

 

 

 

 

 




会話文大変すぎて草。
拳藤ちゃんのキャラ分かんないっす・・・。すんません・・・。
何となく絡ませてみました。

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