かの悪党はヒーローへ   作:bbbb.

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二話

「…誰だ、テメェ」

 

 垣根は今し方ドアから入ってきた老人に向かって敵意を向けながら言い放つ。老人の正体として考えられる可能性は二つ。一つは垣根を誰かと勘違いしているただの一般人。これだったらまだ良い。人違いだと言うことを伝えればそれで解決する。ただもう一つの可能性の場合、垣根は直ちに戦闘態勢に入るつもりでいた。もう一つの可能性とはこの老人がアレイスターの手の者だという可能性だ。垣根はこっちの可能性の方が高いと思っていた。昨日のクーデター未遂事件が発覚しアレイスターが俺を始末しようと考えた、あるいは一方通行との戦いで敗北を喫した俺をもう用済みだと処分しに来たか、いや、処分ではなく何かの実験に利用しようと考えたのか、などなど思い当たる節が多すぎる。これらの理由から垣根はいつでも目の前の老人を殺せるように身構える。すると、

 

 「何寝ぼけたこと言っとるんだ。さっさと支度せんか。こちとら朝から老骨にむち打ってお前を迎えに来てやったんだぞ。感謝せんかい。」

 

老人は不機嫌そうな顔で言葉を放つ。

 

 「あァ?さっきからテメェ何言って――――――――」

 「あぁ!!よかった~!!垣根さん目覚めたんですね!!」

 

突然、聞き覚えのない女の声が二人の会話に割り込んできた。今度は何だ?と、垣根は心底面倒くさそうに声のした方向を見ると、そこには一人の看護婦が目を潤ませながら立っていた。

 

 「昨日の夜突然病院に運ばれて来てからずーと意識不明だったんで心配してたんです~!」

 「すいませんなぁ、看護婦さん。ウチの馬鹿息子が迷惑かけて。」

 「いえいえ~。こういうのは病院ではしょっちゅうですから慣れてます!」

 「いやぁ~色々大変そうですな~」

 

今度は老人と看護婦が笑いながら話し始めた。

 

 (なんだこれは?一体何がどうなってやがる・・・?)

 

目の前の情報量を処理できずにいた垣根はぉ困惑しながらも、少しでも情報を整理しようと、まずは看護婦に話しかけた。

 

 「おいあんた」

 「はい?私ですか?」

 「あぁそうだ。俺が昨日の夜にこの病院に運び込まれたっつったな」

 「はい、そうですけど・・・」

 「どういうことだ、詳しく説明しろ」

 「具体的にって言われましても・・・」

 

突然の垣根の質問に口ごもる看護婦。すると、

 

 「帝督!!お前看護婦さんになんて口の利き方をしとるんだ!!」

 

老人が垣根の口の利き方を厳しくたしなめる。

 

 「うるせえ。てめえは黙ってろ。」

 「なんだと!?」

 「まあまあ。私は気にしてませんので、大丈夫ですよ。喧嘩はよしましょ?ね?グラントリノさん」

 

憤慨する老人を上手くなだめつつ、看護婦は昨夜の出来事について話し始める。

 

 「うーん、説明って言ってもねぇ~、昨日の夜に『道端に人が倒れています』っていう連絡が病院に入って救急車でその場所に行ったら君が倒れてたっていうところかしら。」

 

看護婦は顎に手を当て、大体の説明をし終える。

 

 (道端に倒れてた?それはつまり、一方通行との戦いの後、倒れていた俺を誰かが見つけて病院に連絡したってことか?いや待て、それはおかしい。あの戦いの後くたばった俺を学園都市の奴らが放っておくわけがねえ。すぐ回収に動くはずだ。それに100歩譲って俺がこの病院に運ばれたとしてもあの重症の状態から一日でここまで回復するわけがない)

 

看護婦の話を聞いた垣根は、さらによく分からなくなり、もう少し掘り下げて聞くことにした。

 

 「…昨日運ばれてきた俺の身体はどんな状態だった?」

 「どんな状態って別に普通でしたよ?ただ先生が何をしても意識が戻らなかったから結構皆心配してたんですよ~」

 「おい待て、今俺の身体の状態は普通だったって言ったか!?」

 「ええ、そうですけど・・・」

 

 (おかしい・・・何もかもが)

 

こうなったら考えられる可能性は一つ。

 

 「おいてめえ、まさか嘘言ってんじゃねえだろうな」

 「いい加減にせんか!!帝督!!」

 

垣根の失礼な物言いにとうとう老人の怒りに火が付いた。

 

 「この人は一晩中お前の看護をしてくれていたんだぞ!それにお前が病院に運ばれたことを電話でわしに伝えてくれたんだ。だからこうしてお前を迎えに来られておる。もっと感謝せんか!感謝を!」

 「…なんでてめえに連絡がいくんだよ」

 

まずは自分の状況把握を優先していた垣根はこの老人に再び注意を向ける。こいつは結局誰だ?俺の名前を知ってるってことはどうやら人違いでは無さそうだ。となるとやはりアレイスターの手先ということになるがどうやらそんな素振りも見せない。ふと先ほどからこの老人が口にしている言葉を思い出す。「馬鹿息子」。確かにそう言った。普通に考えたらあり得ないことだ。なぜなら垣根の親はこの老人ではないのだから。どれだけクソッタレな暗部に落ちようと自分の親をこんな老人と間違えるほど脳みそは腐っちゃいない。だが、既に意味不明ででたらめなこの状況下ならばまだ何かおかしなことが起こってもおかしくはない。垣根はそのようなことを考えながら老人の返答を待っていると、

 

 「子供が病院に運ばれたら親である俺に連絡が行くのは当たり前だろうが。」

 

 

 

 

 

 「……は?」

 

衝撃的な答えが返ってきた。

 

 




グラントリノの口調を調べようとアニメのシーンを見てたんですけど、語尾に「じゃ」付けないんですね。てっきり付けてると思っていました・・・

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