かの悪党はヒーローへ   作:bbbb.

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二十一話

 「予選通過は42名!残念ながら落ちちゃった人も安心なさい、まだ見せ場は用意されてるわ!そして次からいよいよ本戦よ!」

 

 ミッドナイトが話し始めた。どうやら第一種目の通過者は42名らしい。そして次は第二種目。その競技が今、発表されようとしていた。

 

 「さあて、第二種目は…これよ!」

 

ミッドナイトがそう言いながら前のモニターを指さす。そこには『騎馬戦』という文字がデカデカと表示されていた。皆がモニターを見つめる中、ミッドナイトが説明を始める。

 

 「参加者は2人~4人のチームを自由に組んで騎馬を作ってもらうわ。基本は普通の騎馬戦と同じルールだけど一つ違うのが、先ほどの結果に従い各自にポイントが振り当てられること!与えられるポイントは下から5ずつ!42位が5ポイント、41位が10ポイントといった具合よ!そして一位に与えられるポイントは…」

 

そこまで説明するとミッドナイトは一呼吸置き、そして、

 

 「1000万ポイント!!」

 

一層声を張り上げる。一瞬の沈黙の後、全ての生徒の視線がある一点に集中する。第一種目を一位で終えた男、垣根帝督の下に。

 

 (1000万、ね)

 (つまり一位の騎馬を落とせば…)

 (((どんな順位からでもトップに立てる!!!!)))

 

今この瞬間、この場にいる全員が第二種目の種目の概要を理解する。それは上位の人間ほど狙われる下克上のサバイバルゲームだということ。そして実質、1000万ポイントの奪い合い合戦だということも。

 

 「上を行く者には更なる受難を。雄英に在籍する以上何度でも聞かされるよ。これぞ"Plus Ultra"!予選通過一位の垣根帝督君、持ちポイント1000万!!」

 

ミッドナイトがこちらに鞭を向けながら宣言する。全生徒から狩られる対象となった垣根。全生徒の視線が集まる中、垣根は笑みを浮かべ、

 

 「一位潰しか。さすがは雄英。洒落たことしてくれるじゃねえか。いいぜ、受けてやるよ。やれるもんならやってみろ」

 

不遜な態度で言い放つ。その言葉は他の生徒は打倒垣根の心に更に火を付けた。

 

 (ぜってぇ潰す!)

 (調子乗りやがって…!!B組の恐ろしさ思い知らせてやる!!)

 (ちょっとイケメンだからって調子づいてんじゃねえぞ!!)

 

皆が垣根に対し、闘志を燃やしている中、ミッドナイトが再び競技の説明を続ける。

 

 「制限時間は15分。ポイントの合計が騎馬のポイントとなり騎手はそのポイントの数が表示されたハチマキを装着。終了までハチマキを奪い合い、保持ポイントを競うのよ。取ったハチマキは首から上に巻くこと。取りまくれば取りまくる程、管理が大変になるわよ。そして重要なのはハチマキを取られても、また、騎馬が崩れてもアウトにはならないってところ!競技中は個性発動アリの残虐ファイト!でもあくまで騎馬戦、悪質な崩し目的での攻撃は一発退場とします!それじゃこれより15分!チーム決めの交渉スタートよ!」

 

ミッドナイトはルール説明を終えるとチーム決めの合図をした。早速動き出す生徒達。この種目は個人戦では無く団体戦。なので他のメンバーとの連携も大事になってくる。そうすると皆自然とよく知っている者同士、つまり同じクラスメイト同士組むようになる。そして最も狙われるであろう一位の生徒とは皆組みたがらない。この二つの傾向がこの種目にはあるのだが、

 

 「垣根!俺と組め!」

 「私と組も!垣根!」

 「ウチと組もうよ垣根ぇ~」

 

なぜだか一位である垣根の周りにA組の生徒が集まった。

 

 「…お前ら分かってんのか?俺が一番狙われるんだぞ?」

 「おう!でもお前の個性なら負けねえだろ!」

 「空飛べるしね!」

 「逃げ切ればウチらの勝ちじゃん」

 「……」

 

どうやら垣根と組んで逃げ切る方が本戦に行ける確率が高いと考えた生徒が思いのほか多いようだ。当初、メンバー探しに苦労するだろうと予想していた垣根は、

 

 (これはこれで面倒くせえな…)

 

と予想外の事態に辟易する。そんな中、

 

 「垣根君…!」

 

垣根が声のした方をみるとそこには緑谷と麗日が立っていた。

 

 「僕たちと組もう!」

 「…」

 

緑谷と麗日までもが垣根にメンバー申請してきた。垣根は黙って自分の周囲にいる人達を見渡し、しばらく考えていたが答えが出たのか、ゆっくりと口を開く。

 

 「俺が組むのは…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「それじゃいよいよ始めるわよ!!」

 

 交渉時間の15分が過ぎ、ミッドナイトが開始の笛を鳴らす準備をしながら生徒達に言う。

 

 《さあ起きろイレイザー!15分のチーム決め兼作戦タイムを経て、フィールドに12組の騎馬が並び立ったぁぁ!!》

 《…中々面白い組が揃ったな。》

 《おーーーっと、これは!?なんと予選通過一位の垣根と二位の緑谷が一緒のチームにいるぜぇぇ!!??》

 「「「!?」」」

 

観客がどよめき、一斉に垣根チームを見る。垣根を騎手とし、騎馬の内の一人に緑谷がいる。普通は上位の奴等ほど同じチームになることを拒む傾向にある。なぜなら合計ポイントが高くなるため、他のチームに狙われるからだ。しかもそれが一位と二位なら尚更だ。しかし彼らは現に同じチームとして準備している。一体何を考えているのだろうか。

 

 《まぁそれはさておき……さあ上げてけ鬨の声!血で血を洗う雄英の合戦が今の狼煙を上げる!!》

 

会場にマイクの声が響き渡ると、垣根は騎馬の4人に声をかける。

 

 「緑谷は索敵、麗日は俺の身体を軽く、常闇はダークシャドウで敵を牽制。いいな?」

 「「「はい!」」」

 

垣根は騎馬三人の役割を確認し終えると、ちょうどマイクの声が再度響く。

 

 《よ~し組み終わったな!準備はいいかなんて聞かねえぞ!!さあ行くぜ!残虐バトルロワイヤルカウントダウン!》

 

 《スリー!》

 「狙いはァ…」

 

 《ツー!》

 「一つ…!!」

 

 《ワン!》

 「へっ…」

 

 

 

 「スタート!!!」

 

ミッドナイトが合図がした途端、一斉に全ての騎馬が走り出す。狙いは勿論、

 

 「実質1000万の争奪戦だ!!」

 「ハッハッハッ~!垣根君いっただくよ~!」

 

垣根が持っている1000万ポイント。例外なくすべての騎馬がこちらに向かって押し寄せる。

 

 「いきなり襲来とはな…追われし者の運命」

 (サダメ…)

 「選択しろ垣根!」

 (センタク…)

 「んなモン決まってんだろ。逃げ切りだ」

 「させねぇ!!!」

 

B組の生徒と思われる騎手が叫ぶと突然、地面が柔らかくなり、騎馬3人の足が地中に沈み込んでいく。

 

 「何これ!?」

 「沈んでる…!?あの人の個性か!?」

 

そう言いながら緑谷はその騎馬の先頭にいる男を見た。騎手は雄叫びを上げながら、騎馬ごとこちらに迫ってきている。

 

 「あかん…!!抜けへん…!!」

 「…麗日、緑谷と常闇の身体も軽くしろ。」

 「えっ!?…う、うん!」

 

麗日が地中から足を引き抜こうと躍起になっていると垣根が指示を出す。麗日は言われた通り二人の身体を軽くし、そのことを垣根に伝える、

 

 「よし。お前ら全員俺の足に掴まれ。こっから出るぞ」

 

瞬時に垣根のしようとしていることを理解し足に掴まる三人。すると垣根は背中から六枚の翼を出し、思いっきりはためかせると地面に埋まりかけていた三人ごと空高く舞い上がった。

 

 「飛んだ!?一位の個性か!追え!!」

 「耳朗ちゃん!!」

 「わぁってる!!」

 

耳朗のイヤホンジャックが空中の垣根達に向かって伸びてくる。だがそれを察知した常闇がダークシャドウで迎え撃つ。

 

 「…っ!?常闇!?」

 「いいぞダークシャドウ。常に俺達の死角を見張れ!」

 『あいよ!』

 「ナイスだ常闇。お前を選んで良かったぜ」

 「そいつはどうも」

 「麗日、体調は?」

 「うん!まだ大丈夫!」

 「そうか。一旦降りるぞ」

 

そう言って垣根達は地面に着地し、騎馬を整える。翼も一旦しまった。

 

 「緑谷、後ろの状況は?」

 「うん、三方向から敵が来てる。でもまだ距離がある」

 

緑谷から後方の確認をとり前を向く垣根。前からは爆豪チームや先ほどのB組のチームなどがこちらに迫ってきていた。

 

 《さあ、まだ開始から2分と経ってねえが早くも混戦混戦!1000万を狙わず3位と4位狙いってのも悪くねえ!》

 

マイクの実況が会場に響き渡る中、

 

 「奪い合い?違うぜ!これは一方的な略奪よ!」

 

垣根達の後ろの方から不気味な声が聞こえてくる。

 

 「垣根君!右斜め後ろから騎馬が接近!…ってあれ!?障子君一人!?騎馬戦だよ!?」

 

緑谷が垣根に敵の接近を知らせるも、予想外の敵に驚いていた。とにかく距離を取るため、騎馬が動こうとするも、

 

 「う…とれへん!」

 

麗日の左足に何かがくっつき、動きを封じられる。

 

 「それは峰田君の!!一体どこから!?」

 「ここだよぉ緑谷」

 「それありィ!!??」

 

障子の広げた腕の隙間から顔を覗かせる峰田。驚きの声を上げる緑谷だったがミッドナイトはアリだと判断した。さらに、

 

 ヒュンッッ!!

 

空を裂き、その隙間から何かがすごい速さで打ち出される。

 

 「おっと…」

 

咄嗟に避ける垣根。出所の方へ目を向けるとそこには蛙吹の姿。障子の腕の中には峰田と蛙吹が隠れていたのだ。

 

 「流石ね垣根ちゃん」

 「蛙吹と峰田を匿いながら障子が突撃…よく考えついたもんだな」

 「梅雨ちゃんと呼んで」

 

そう言いながら蛙吹と峰田は次々と攻撃を仕掛けてくる。蛙吹の舌攻撃と峰田のボールを躱しながら、

 

 「麗日、ここから離れる。二人を軽くしとけ」

 「で、でも!このボールが…」

 

垣根が麗日に指示を出すも、左足にくっついたボールが邪魔で身動きが取れない麗日はそう言って垣根の方を見るが、

 

 「大丈夫だ。いいからやれ。それと左足上げたままでいろ」

 「…はい!」

 

力強く返事をし麗日は言われた通り二人を軽くし、ボールがくっついた左足を上げた状態で待機する。そして再度六枚の翼を出現させた垣根は、その内の一枚を麗日の左足に付いているボール目掛けて突き立てる。

 

 ズガァァァン!!

 

放たれた翼の先端はボールを貫き、そのまま地面に突き刺さる。ボールごと地面を貫いたのだ。これで麗日の左足からボールがちぎり取れて自由になった。

 

 「飛ぶぞ!掴まれ。」

 

そう言うや否や垣根は再び騎馬ごと空に舞う。

 

 「これで離れられた…!」

 

緑谷が下を見ながらそう呟くと、

 

 バァァァァン!!

 

何かが爆発するような、聞き慣れた音がした。緑谷が嫌な予感を抱えながら爆発音の方向を見る。そこには爆豪が爆破によって空を飛び、こちらに向かってくる姿。

 

 「か、かっちゃん!?」

 「調子乗ってんじゃねえぞ!メルヘン野郎!!」

 

そう叫びながらあっという間に垣根に追いついた爆豪は垣根のハチマキに手を伸ばす。

 

 「常闇君!」

 『のわっ!?』

 

緑谷が咄嗟に叫び、それを聞いた常闇は素早くダークシャドウを出現させ爆豪から垣根を守る。爆豪の爆破攻撃を喰らい、怯んだダークシャドーだったがそれでも垣根を守り通した。

 

 「惜しかったなぁ?爆豪君」

 「チッ…!」

 

悔しそうに舌打ちする爆豪はそのまま落下していき、瀬呂のテープで回収され騎馬に戻った。

 

 《騎馬から離れたぞ!?いいのかアレ!?》

 「テクニカルなのでオッケーよ!地面に付いてたらダメだったけど。って言うか垣根君がオッケーなら爆豪君のもオッケーじゃないと、ね?」

 

マイクがミッドナイトに尋ねるもミッドナイトはオッケーサインを出す。そして垣根は再び地面に着地し翼もしまう。

 

 「麗日、体調は?」

 「うん!まだまだいける!」

 「そうか。ナイス判断だったぞ緑谷。そしてよくガードしたな常闇」

 

垣根は緑谷や常闇を労うと再び前を向く。と、ここでマイクの声が再び聞こえる。

 

 《さあ各チームのポイントはどうなっているのか?7分経過した現在のランクをスクリーンに表示するぜえ!ってあら?ちょっと待てよコレ。A組垣根以外パッとしてねぇってか…爆豪…あれ!?》

 

会場にどよめきが走る。垣根がスクリーンに目を向けると、垣根と轟以外のA組チームのポイントが0であることが確認できる。その代わりに高ランクにいるのはB組の面々。

 

 「B組は予選を捨てた長期スパンの策って訳か。でもそれは発想から察するに僕たちを狙うことに必ずしも固執していない…」

 

緑谷がいつものようにブツブツ一人で呟く。

 

 (クラスぐるみで俺らを潰そうってか。ハッ、雑魚の考えそうなことだ)

 

そう思いながら、垣根は騎馬の3人に指示を出そうとする。するとその時、

 

 ギィィィィィィィン!!!

 

急ブレーキをきかせながら一つのチームが垣根達の前に立ち塞がった。

 

 《さあ残り時間半分を切ったぞ!いよいよ騎馬戦は後半戦に突入!予想だにしないB組優勢の中、果たして1000万ポイントは誰に頭を垂れるのか!?》

 

マイクの実況の中、二つのチームが相対する。一方は垣根達のチーム。そしてもう一方は予選三位通過の男、轟のチームだ。両者がにらみ合う中、

 

 「そろそろ奪るぞ」

 

轟が先に口を開き、宣戦布告する。

 

「やってみろよ」

 

不敵に笑いながら言葉を返す垣根であった。

 




騎馬は発目の位置に緑谷が入った感じです。

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