かの悪党はヒーローへ   作:bbbb.

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二十二話

 「……」

 「……」

 

 しばらく無言で見つめ合う両チーム。するとここで常闇が口を開く。

 

 「もう少々終盤で相対するのではと踏んでいたが、随分買われたな、垣根」

 「つっても残り半分切ったしな。そりゃ来るだろ」

 

常闇の言葉に返事を返す垣根。すると、

 

 「飯田!前進!」

 「ああ!」

 

轟が先頭の飯田に指示を出す。先に仕掛けたのは轟チームだ。

 

 「八百万、ガードと伝導を準備」

 「ええ!」

 「上鳴は…」

 「いいよ分かってる!」

 

前に進みながら八百万と上鳴にも指示を飛ばす轟。何か企んでいる様子だ。

 

 「垣根君!周囲に気をつけて!仕掛けてくるのは一組だけじゃない!」

 「ああ、分かってる」

 

轟がこちらに仕掛けに行くのを見るや、葉隠や蛙吹、それにB組のチームまでもが一斉に垣根達の下へ迫ってくる。しかし、

 

 「しっかり防げよ~、無差別放電130万ボルト!」

 「「「あああああああああ!!!」」」

 

フィールドに電撃が走り、他チームの悲鳴が響き渡る。轟は八百万が作った絶縁シートで自身と騎馬を覆うことで自分のチームがダメージを負うこと防ぎ、垣根達もまた咄嗟にダークシャドウが防御してくれたおかげで難を逃れた。

 

 「残り6分弱…後には引かねぇ!」

 

そう呟くと八百万が作った棒を通して地面に氷をつたらせ、他のチームの騎馬の足を凍らせる。

 

 《な、何だ!?何した!?群がる騎馬を轟一蹴!!》

 《上鳴の放電で確実に動きを止めてから凍らせた。流石というか、障害物競走で結構な数に避けられたのを顧みてるな》

 《ナイス解説!》

 

相澤が珍しく解説している間に轟は動けなくなったチームのハチマキを奪い、垣根達に迫る。

 

 「牽制する!」

 

そう言って常闇がダークシャドウで攻撃を仕掛ける。

 

 「八百万!」

 「くっ…!!」

 

轟の呼びかけに反応し、素早く盾を作る八百万。攻撃を防がれ唸る常闇。常闇はダークシャドウを引き戻し、体勢を整える。

 

 「八百万の創造で防御。上鳴の放電でダークシャドウを弱体化。面倒だな」

 「ああ…!上鳴さえいなければ…!!」

 

常闇が忌々しそうに呟く。常闇の個性『ダークシャドウ』は闇が深いほど攻撃力を増すが逆に日光下や明るい場所では攻撃力が下がってしまうのだ。つまり上鳴の雷光とダークシャドウは相性最悪。

 

 「攻撃力低下、それ向こうのチームには知られてないよね?」

 「恐らくな。この欠点はUSJで口田に話したのみ。そしてヤツは無口だ」

 「知られてないなら牽制にはなる。大丈夫、何としても1000万は守ろう!」

 

緑谷が常闇に声をかける。

 

 「それに上鳴の放電も無限に出来るわけじゃねえ。勝機は十分にある」

 

垣根もチームに声をかける。そして向かってくる轟チームを見ながら騎馬4人に指示を出す。

 

 「いいか?ヤツらとの距離を保ちながら常に右側に位置を取れ。そうすりゃ轟は飯田が邪魔で氷を出せねえ」

 「「「了解!」」」

 

三人が即座に反応し、相手の右側にずれながら距離を取るように動く。近づこうとする飯田達だがその度に緑谷達が位置取りを変え、中々近づけない。上鳴の放電もダークシャドウの頑張りで何とか防いでいた。

 

 「チッ…!」

 

思わず舌打ちをする轟。

 

 (見抜かれてるな…どうする…?)

 

垣根達との距離を縮められないまま時間はどんどん過ぎていき、時間は残り2分を切った。すると、

 

 「みんな、残り2分。この後俺は使えなくなる。頼んだぞ!」

 「飯田?」

 

突然飯田がよく分からないことを言い出し、思わず聞き返す轟。だが飯田はそれには答えず、左足を前に出し、前傾姿勢を取りながら他の三人に声をかける。

 

 「しっかり掴まっていろ!奪れよ、轟君!」

 

 ウィィィィィィィィィィィン!!

 

エンジンが音を立てながら出力をどんどん上げていく。そして

 

 ブォッッッッッ!!

 

青い炎が飯田の足の噴射口から勢いよく吹き出す。

 

 「トルクオーバー!レシプロバースト!!」

 「!?」

 

飯田がそう叫んだ次の瞬間、一瞬で垣根達との距離をゼロにし、そして抜き去る。その抜き去る瞬間に轟は垣根の頭に手を伸ばし、そして――――――――――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 飯田は噴射口から黒い煙をまき散らしながら、垣根達から離れたところで停止した、

 

 《なあ~~~~~!!??何が起きた!?はや~~~~~!!!飯田!そんな超加速があんなら予選で見せろよ!!》

 

実況のマイクが興奮した様子で声を上げる。そして何が起こったのか分からないのは轟達も同じ。三人が戸惑ったように飯田を見ていると、

 

 「トルクと回転数を無理矢理上げ、爆発力を生んだのだ。反動でしばらくするとエンストするがな。クラスメイトにはまだ見せていない裏技さ」

 

驚きの表情を浮かべてこちらを見る緑谷達。そして飯田もその三人の方を向きながら、

 

 「言っただろう?緑谷君。君に挑戦すると」

 「「「うおおおおおおおおおお!!」」」

 

一気に沸く会場。残り2分弱。ここに来て順位が一気に逆転された。会場の誰もがそう思った。

 

 《これで轟チームが逆て…って、ん?こ、これはどういうことだ!?順位が変わってねえぞ!!》

 「何!?」

 

実況の声を聞いた飯田がスクリーンを見る。そこには以前と変わらぬ順位表が映し出されていた。機械のミスか?と思ったがそんなはずは無い。となれば考えられることは一つ。それに思い当たった瞬間、飯田は慌てて轟の方を振り返る。

 

 「轟君!まさか!?」

 「……」

 

轟がその問いには答えず自分の手のひらを見つめた後、垣根の方をゆっくりと見る。そこにはハチマキをしたまま垣根の姿があった。

 

 《な、なんと!?轟まさかの取り損ね!?あまりのスピードにタイミングを外してしまったか!?》

 《……》

 

マイクの声が会場に響く。

 

 「いや違ぇ。確かにとんでもねえスピードだったが、タイミングはバッチリだった」

 

轟はマイクの言葉を静かに否定する。。

 

 「で、ではなぜハチマキが取れなかったのですか?」

 

八百万が困惑気味に聞く。

 

 「弾かれた…」

 「「「!?」」」

 

轟の答えに驚く三人。

 

 「は、弾かれたってどういう事だよ轟!」

 「垣根君は個性を発動していなかったハズだぞ!」

 「そうですわ!あの白い翼も出していませんでしたし…」

 

信じられないと言わんばかりに轟に聞き返す三人だが、轟本人が一番困惑してる様子だった。

 

 「分からねぇ。ただアイツのハチマキに触れようとした瞬間、何か見えない壁に阻まれたかのような感触を受けた」

 「見えない壁…はっ!垣根君の個性は作製!まさか見えない壁をあらかじめ作っていたのか!?」

 「いえ、それはないかと思われますわ飯田さん。垣根さんの個性は確かに作製ですが、垣根さんの作るモノは白い色をしているはずです。私との戦闘訓練の時に生み出した剣のように。本人にも確認済みですし間違いないはずです。それに飯田さんの超加速を見てからそのようなモノを作り上げるのはまず不可能。前もって知っていたならまだしも、私たちにさえ知らされていなかったのですから尚更あり得ませんわ」

 「じゃあ、一体何なんだ?」

 

困惑する轟チーム。対して垣根チームでは、

 

 「垣根君…あれ避けたの!?」

 「すっごーい!!私なんて目で追うことも出来なかったよ!」

 「ああ、俺もだ。気付いたら抜かれていた」

 

垣根が轟の手を咄嗟に避けたと思っている様子。そして垣根は騎馬を動かし、ゆっくり轟達と向かい合う。

 

 「ったく危ねぇな。エゲつねえ技出しやがって。究極の初見殺しじゃねえか」

 「…どうやって防いだ?」

 「さあな。咄嗟に首振ったら避けれたって感じか」

 (…嘘つきが)

 

轟は内心で毒づいているとまたもやマイクの声が響く。

 

 《残り時間1分!依然として1000万ポイントは垣根チームの手の中だ!!このまま垣根チームの逃げ切りか!?》

 (チッ…!時間がねぇ!!)

 

残り時間がもう僅かしか残っていないと知った轟はとりあえず騎馬を前進させることを選ぶ。

 

 「飯田!前進してくれ!まだ諦めねぇ!」

 「分かった!!」

 

飯田はエンストしかかっている足を動かし、垣根達に接近を試みる。しかし、

 

 「距離を取れ。騎馬を右側に寄せろ。焦らなくていい。さっきと一緒だ」

 「「「了解」」」

 

常闇達は素早く対応し、轟達を近づけさせない。

 

 「くっ…!仕方ねぇ、死ぬほど嫌だが…」

 

垣根達との距離が縮まらないのを見ると轟は顔を歪ませながら

 

 (()を使う!!)

 

そう決心すると自身の左腕に炎を纏わせながら個性発動の準備をする。そして垣根達に放とうとしたその時、

 

 バォォォォォォォォォォン!!

 

聞き慣れた爆発音が聞こえ、思わず動きを止める両騎馬。音がした方角からは、手のひらの爆発によって轟の作った氷のバリケードを飛び越え、垣根達の方へ向かってくる爆豪の姿が見える。

 

 「メルヘン野郎!!!!!!」

 

そう叫ぶながら飛んでくる爆豪を見ると

 

 (チッ!ここに来て面倒くせえのが来やがった…!仕方ねぇ…)

 

垣根は内心で舌打ちしながら、すぐに麗日に本日三度目の指示を出す。

 

 「麗日、二人を軽くしろ」

 「はい!」

 

即座に返事をして二人を軽くする麗日。

 

 「しっかり掴まってろよお前ら。こっから40秒弱、あの爆破野郎と鬼ごっこだ」

 

そう言うや否や、垣根は背中から翼を出すと勢いよく空に舞い上がった。それを見た爆豪も爆破で軌道を変え、垣根達に追いすがる。

 

 「まてゴラァァ!!」

 

白い翼で空を空を駆ける垣根と黒煙をまき散らしながらそれを追う爆豪。他の生徒達も動きを止め、二人の動きを目で追っていた。

 

 《おーーーーーーっとぉぉ!!ここに来て垣根と爆豪の空中チキンレースが始まったぞ!!!こんな展開誰が予想した!?もはや騎馬戦じゃねえ!!!》

 「うおおおおおおお!!すげえぞアイツら!!騎馬戦なのに空飛んでやがる!!!」

 「すげえな今年の一年!?」

 「どっちも頑張れーーー!!」

 

最高潮の盛り上がりを見せる会場。最早観客を含め、この会場にいる全員が空中を飛んでいる二人に注目していた。

 

 「「「うわあああああああああ!!!」」」

 

そんな会場の盛り上がりを他所に、緑谷達は絶叫しながら必死に垣根の足に掴まる。さっきまでの飛翔とは全然違い、垣根はもの凄いスピードを出しながら空中を移動しているので振り落とされないようにするのが精一杯な三人。垣根の背後には必死に追いすがろうとしている爆豪の姿があったが、一向にその差は縮まらない。

 

 (クッソ!!!このままじゃ…)

 

爆豪が内心で焦りを感じていると、突然前を飛んでいる垣根が身体を振り向かせ、ヒュォンッ!と翼をはためかせる。

 

 (あァ…?)

 

一瞬垣根が何をしたのか分からなかった爆豪だが、すぐに垣根の下から多数の白い礫のようなものがスピードを上げて飛来してくるのを視認する。

 

 「くそがァァァァ!!!!!」

 

悪態をつきながら掌を爆破させ、次々と飛来する礫を避ける爆豪。しかし、

 

 「ガッ…!?」

 

礫の一つを避けきれず、直撃してしまった爆豪はそのまま空中から落下していく。そして地面に激突する寸前、瀬呂のテープによって回収されるとその瞬間、

 

 《タイムアップ!!!第二種目・騎馬戦終了!!!》

 

マイクの声が会場に鳴り響いた。その声を聞いた生徒達はその場で騎馬を崩す。そして垣根達もゆっくり地上に着地した。

 

 《んじゃ早速上位4チーム見てみようか!》

 《一位、垣根チーム!》

 

マイクが垣根チームを呼び上げると緑谷達は大きく喜んだ。

 

 「やったね皆!!一位死守だよ!!」

 「うん!ほんとに凄いよ皆!」

 「ああ。ここにいる全員で勝ち取った勝利だ!」

 「ま、当然だな。俺が組んだチームが負けるはずねえ」

 

 《二位、轟チーム!》

 「はあ。まぁ二位なら上々と言ったところでしょうか」

 「すまない。俺のせいで迷惑をかけた」

 「いや、俺がハチマキ取れなかったせいだ。スマン」

 「そんなこと…お二人がいてこそのこの順位ですわ」

 「うぇ~い…」

 

 《三位、爆豪チーム!》

 「あ~んもう少しだったのに!」

 「まあ三位なら良いだろ。結果オーライ」

 「そんなこと思うかよ…アイツが」

 「だァァァァァァァ!!」

 

 《四位、鉄て…オォイ!心操チーム!?いつの間に逆転してたんだよ!?》

 「フッ…ご苦労様。」

 

 《以上の四組が最終種目へ進出だァ!!それじゃあ一時間ほど昼休憩挟んで午後の部だぜ!じゃあな!おいイレイザーヘッド、飯行こうぜ》

 《寝る》

 

マイクが午後の部の開始時刻を告げると会場にいる人全員昼休憩の時間となった。

 

 

これにて第二種目及び午前の部終了。

 

 

 




まあ垣根君が空にいれば終わりだったんですが、それじゃつまんないので・・・
あと未元物質の自動防御も使ってみたかったので・・・
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