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最終種目一回戦第三試合は上鳴VS塩崎の試合となった。開始直後、上鳴が放電攻撃を仕掛けるが、塩崎の個性・ツルによって防がれる。そして逆にそのツルによって上鳴が拘束され、塩崎の勝ちとなった。有り体に言う瞬殺である。
「あれあれ~?一瞬で決めるんじゃ無かったっけ~?おかしいな?一瞬でやられたよね?A組はB組より優秀なはずなのにおっかしいな~ハハハハ!!……ウッ」
上鳴が負けたと見るや否やA組に対して煽ってきた物間だったが、突然気絶してしまう。
「ごめんな」
そして物間の首根っこを掴みながら、オレンジ髪の生徒の拳藤がA組に対して謝罪する。
(((今の何…?)))
A組の生徒達が引き気味にその光景を見ていると、拳藤がふと何かに気付いた様子でA組のある一点を見つめ、笑いながらその方向に手を振った。皆が拳藤の視線の先を追うとその先には垣根がいることに気付く。
「えっ、垣根あの子と知り合いなの!?」
「いつの間に知り合ったの!?」
「どういうことだよ垣根!!!」
皆が驚いた様子で垣根に尋ねると、
「…ちょっと話したことあるだけだ。」
垣根は面倒くさそうに答える。
「ちっくしょぉぉぉ~~~!!なんで垣根ばっかり!!!」
峰田は心底悔しそうな様子で叫ぶ。そんなことをしている内に第四試合が始まった。第四試合は飯田VS発目。この試合は先ほどまでの試合とは異なり、発目のサポートアイテム披露会となった。サポート科である彼女は元より試合の勝敗などはどうでも良く、ただ自分の発明品をサポート会社にアピールすることが目的だったのだ。10分間自分の発明品を余すところなく紹介し終えた彼女は満足そうに自ら場外に出た。第四試合、飯田の勝利。そして第五試合。
《さてさて気を取り直して第五試合!あのツノから何か出んの?ねぇ出んの?ヒーロー科芦戸三奈!VS予選順位ダブル一位とかマジかよそれ!入試一位は伊達じゃないってか!ヒーロー科垣根帝督!》
第五試合芦戸VS垣根。両者がフィールドに入場し、準備を整える。観客席にいる緑谷が自筆のノートを片手にこの試合の展開を予想する。
「垣根君と芦戸さんの対戦…二人の個性から考えると垣根君は長距離からの翼による攻撃を主体にしてくるはず。芦戸さんが垣根君の攻撃を掻い潜っていかに接近戦に持ち込めるかが勝負の分かれ目か。いや、垣根君の翼は防御にも使えるから接近戦に持ち込んだだけでは不十分。やっぱりあの翼を攻略しないと芦戸さんに勝ちは転がってこない…」
ノートを見ながら一人ブツブツと呟く緑谷。
「垣根やっちまえーー!!格闘ゲームみたいに服が破ける感じで倒せー!!」
「クソかよ!」
峰田のゲスい叫びにツッコミをいれる耳郎。そして
《さあ行ってみようか!第五試合スタート!》
マイクの合図と共に試合が始まる。
「いっくよ~!先手必勝!」
開始早々、芦戸がいきなり仕掛ける。足から酸の液を出し、滑るようにフィールドを移動していく。
《お~っとォ!!先に仕掛けたのは芦戸の方だァ!!素早くフィールド上を滑り、垣根を翻弄する気かァ!?》
マイクの言うとおり、芦戸は垣根の周りを滑り回ることで翻弄し、隙を作り出そうとする。さらに、
「そぉれ!!」
芦戸は元気なかけ声と共に、垣根に対し酸を放つ。すかさず壁を生成し、酸を防ぐ垣根。酸を防がれた芦戸はまたもフィールドを滑り始めた。
(ちょこまかと面倒くせぇな)
自身の周りを素早く滑り回る芦戸に鬱陶しさを感じる垣根。恐らく、芦戸はまず移動スピードで垣根を攪乱し、さらに酸を飛ばすことで垣根に酸を防ぐための壁を作らせる。その動きを繰り返すことで、垣根の動きに隙を生み出し、一気に勝負を決める魂胆なのであろう。
(シンプルだが、悪くねぇ戦術だ。なら…)
垣根は唐突にその場に膝をつき、地面に手を当てる。すると数秒後、
ガシャァァァァァァァァン!!!
地震のような揺れと共に、フィールド全体の地面が一斉に砕け散る。
「おわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!??」
突然の出来事に、身体のバランスを大きく崩す芦戸。その隙を垣根は見逃さない。
ダンッッッッッ!!!
力一杯地を蹴り上げ、瞬く間に芦戸との距離を詰める。そして、腕を大きく振りかぶった。
(ヤバっ!?)
体勢がまだ整っていない芦戸は咄嗟に垣根の攻撃をガードしようと顔の前で腕を組む。すると、
ポンッ
腹部の辺りを押される感触を感じる芦戸。不安定な体勢にさらに垣根の押し出す力が加わったことで、芦戸の身体は後方へと傾いていき、
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!?」
可愛らしい悲鳴を上げながら、芦戸は尻もちをついた。
「いててて…って、あっ!」
腰の辺りをさすりながら芦戸は自身の周りに目を向けると、自分が座り込んでいる位置がフィールドの外であることに気がつき、思わず声を上げる。そして、
「芦戸さん場外!よって二回戦進出は垣根君!」
ミッドナイトの宣告が響き渡る。こうして垣根は二回戦進出を決めた。
そして第六試合。常闇VS八百万の試合は常闇のダークシャドウが序盤から八百万に攻めまくり、八百万に考える時間を与える事無く場外に押し出した。結果、常闇の勝利。第七試合は切島VS鉄哲の個性ダダかぶり対決。どちらも真正面からの殴り合い。お互い一歩も引くこと無く攻撃を続けたが、両者ともにダウン。回復後に腕相撲で勝敗を決めることになる。その回復の間、一回戦最後の試合、爆豪VS麗日戦が行われることとなった。
《第一回戦最後の第八試合!中学からちょっとした有名人!堅気の顔じゃねえ!ヒーロー科爆豪勝己!VS俺こっち応援してえ。ヒーロー科麗日お茶子!》
爆豪と麗日がマイクの紹介の中フィールドに入場する。
《それでは第八試合スタート!!!》
開始の合図が響く。それと同時に麗日が爆豪に向かって走り出す。恐らく爆豪に触れて身体を浮かし、主導権を握るつもり間のだろう。だが、
ボンッッ!!
爆豪が右手を振るうと同時に麗日目掛けて爆破を浴びせる。黒煙の中、麗日が爆豪に再度迫るもそれを爆破で迎撃する爆豪。麗日はジャージを囮にして爆豪の裏をとったが、それにも爆豪は反応し、爆破をもろに喰らう麗日。その後も麗日は果敢に突撃を続けるがその度に爆豪の攻撃を食らい続ける。あまりの一方的な展開に客席からはブーイングが巻き起こる。すると、
《今遊んでるっつったのプロか?何年目だ?素面で言ってんならもう見る意味ねぇから帰れ!帰って転職サイトでも見てろ!爆豪はここまで上がってきた相手の力を認めてるから警戒してんだろ。本気で勝とうしてるからこそ、手加減も油断も出来ねえんだろうが!》
解説席から相澤が怒気を含んだ声でそう言った。
(ま、アイツはそんなもん気にしてねえだろうがな。それに…)
垣根は空中の一点を見つめながら笑みを浮かべる。
(まだ終わってねえぞ、この勝負)
空中にはいくつもの瓦礫が浮かんでいた。麗日は低姿勢での突進で爆豪の打点を下に集めさせ、爆破によって壊れたフィールドの欠片を空中に蓄え続けた。絶え間ない突進と爆煙で爆豪の視野を狭め、それを悟らせなかった。
「勝あああああああつ!!」
叫びながら麗日は能力を解除する。すると空中に浮かんでいた瓦礫の山が一斉に地面に向かって落下していく。それと同時に麗日は爆豪に最後の突進を仕掛ける。だが、
バオォォォォォォォォン!!!
爆豪が空に向かって掲げた手のひらから超火力の爆破が打ち出された。放たれた爆発は物凄い音を立てながら空中の瓦礫を一掃する。その衝撃波に麗日本人も巻き込まれ、吹き飛ばされてしまった。それでも諦めなかった麗日だが、最後には身体が限界を迎え、倒れ込んだ。麗日の気絶を確認すると、
「麗日さん行動不能!二回戦進出爆豪くん!」
ミッドナイトが高らかにそう告げる。爆豪勝己の二回戦進出が決まった。こうして一回戦の全ての試合が終わった。