かの悪党はヒーローへ   作:bbbb.

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二十六話

 《準決勝第一試合、お互いヒーロー家出身のエリート対決だ!ヒーロー科飯田天哉VS同じくヒーロー科轟焦凍!!スタート!!》

 

 マイクの合図と共に轟が氷結攻撃を繰り出すも、飯田は走りながらそれを躱す。それを見た轟は再度氷結攻撃を繰り出し、牽制すると同時に飯田の走るコースを狭めた。そして一気にトドメを刺そうと飯田に氷結をぶつけに行った轟だったが、足のエンジンを利用した跳躍で轟の攻撃を躱すと同時に轟との距離を一瞬で縮める。そして切り札のレシプロを発動し、レシプロの勢いを乗せた蹴りを轟にお見舞いした。もろに直撃し地面に倒れた轟の襟を掴み、一気に場外へ走り出す飯田。あともう少しで轟を場外に引っ張り出せるという所まで来て突然、飯田の足が止まる。飯田が何事かと自分の足を見ると、エンジンが氷によって詰まらされている光景が目に入った。そして轟が飯田の腕を掴むとそこから飯田の身体が凍っていき、飯田は行動不能となった。

 

 「飯田君行動不能!轟君の勝利!」

 《轟、炎を見せず決勝戦進出決定だ!!!》

 

ミッドナイトとマイクのアナウンスと共に轟は決勝へ駒を進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《さあ続いて準決勝第二試合!さっきがエリート対決なら今度はチンピラ対決だ!ヒーロー科爆豪勝己!VSヒーロー科垣根帝督!》

 

 マイクの実況と共に両選手が入場し、にらみ合うかのように向かい合う。

 

 「緑谷、お前この戦いどう見る?」

 

爆豪との戦いで負った傷を治療してもらい、スタンド席に戻ってきた切島が緑谷に尋ねる。

 

 「正直どうなるか分からない。かっちゃんが勝つためには恐らく垣根君のあの翼の攻略は必須。かっちゃんが何か弱点を見抜いていれば勝機はあるんだろうけど…」

 「弱点か。アイツそういうとこ突くの得意だよな」

 

切島が爆豪に負わされた傷をさすりながら呟く。皆が真剣な眼差しで見つめる中、

 

 《準決勝第二試合スタート!!》

 

マイクによる開始の合図が轟く。すると、

 

 ボン!ボン!ボン!

 

開始と同時に爆豪が手のひらで爆破を連発させ、一気に垣根に迫る。そして垣根と激突する直前、

 

 ボォン!!

 

大きめの爆破によって軌道を変え、垣根の頭上を通過するように飛ぶと、そのまま垣根の背後に着地した。垣根が振り返って爆豪の方へ向くより早く、爆豪は攻撃を仕掛ける。

 

 「閃光弾(スタングレネード)!!」

 

爆豪の手のひらからピカッ!っと眩い光が放たれ、同時にすさまじい爆発が起こる。文字通り相手の視界を奪う技であり、さらに高威力の爆破攻撃も喰らわせることが出来る一石二鳥な技だ。巻き上がる黒煙の中、爆豪は垣根との距離を一気に詰めると、

 

 「死ねェ!!」

 

 ボォォォォォォォォン!!

 

爆豪が爆破の威力も乗せながら自身の右手を垣根に叩きつけた。

 

 (手応えアリ!!!)

 

爆豪は立ちこめる黒煙の中で自身の攻撃が確かに命中したことを感じ、顔に笑みを浮かべる。しかし、

 

 「痛ってえな」

 「!?」

 

予想だにしない声に思わず驚く爆豪。黒煙が徐々に晴れていくと、そこには開始前となにも変わらず立っている垣根の姿。いつもの翼を展開させている様子も無ければ、こちらを振り向くことすらもしていない。爆豪は垣根が個性を使う前に攻撃をしたはずだった。防ぐ手段など無かったはずだ。なのに爆豪の目の前に立っている垣根は傷一つ付いていない。

 

 (ありえねェ…!!こいつが個性を使った形跡は無かった。なのに、無傷だと!?)

 

爆豪が狼狽している中、垣根はゆっくりと振り向き、

 

 「つくづくムカつく野郎だなテメエは」

 

静かに呟くと、自身の右手を爆豪にかざそうとする垣根。だがその動作が終わる前に我に返った爆豪が垣根に再度攻撃を仕掛ける。

 

 「オォォォォラァァァァ!!!」

 

今度は左手の爆破攻撃を勢いよく振り下ろす。

 

 ドゴォォォォォン!!

 

轟音と共に大きな爆発が起きる。この爆発も爆豪によるもの。誰もがそう思っていた。しかし、

 

 「ぐは……っ!?」

 

黒煙の中から吹き飛ばされる様に出てきたのはなんとその爆豪。観客や生徒達が驚愕の表情を浮かべる中、ラインギリギリの所まで飛ばされた爆豪はそのまま仰向けに倒れこむ。

 

 《おーーーっとこれは!?爆豪が突然吹っ飛んできたぞ!?何が起きたんだ!?》

 「ありゃ?場外までいかなかったか。ちと弱かったかな?」

 

呑気に呟きながら、垣根が爆煙の中からゆっくりと姿を現す。

 

 「テメェ…!何しやがった!?」

 「さぁな。自分(てめえ)の起こした爆風に呑まれでもしたんじゃねえのか?」

 「ざけんな!なわけねえだろカス!!」

 

爆豪は何とか立ち上がりながら垣根の方を睨み付ける。

 

(俺が攻撃する直前、別の爆発が起きやがった…!何だコイツの個性は!?んなことも出来んのかよ!?)

 

爆豪は歯がみしながらも更に考える。

 

 (あの爆発がある以上、迂闊には近づけねぇ。ある程度距離を保ちながらも高威力の攻撃をぶつける必要がある。スタングレネード程度の攻撃じゃダメだ。なら…アレしかねぇ!)

 

爆豪が次の手について思案していると、

 

 「何だよ。来ねえのか?ならこっちから行くぞ」

 

垣根が攻撃宣告をした直後、垣根の足下から白いナニカが4つほど射出され、それら全てが爆豪目掛けて一斉に襲いかかった。

 

 「!?」

 

咄嗟に爆破によって空中へ逃れる爆豪。標的を見失った白いナニカはそのまま直進し、ズガァン!と派手な音を立てながら観客席の壁に深々と刺さる。

 

 (あれは…槍かァ?)

 

爆豪が白い射出物に注意を向けていると、

 

 「よそ見してる暇はねぇぞ。次だ」

 「!?」

 

垣根の声が聞こえ、すぐに視線を移す爆豪。すると垣根の足下から新たに4本の槍が射出され、再び空中にいる爆豪目掛けて進んでいく。

 

 「クソが!」

 

悪態を吐きながら爆破によって回避する爆豪だったが、避けたはずの槍は軌道を変え再度爆豪に襲いかかる。

 

 「追尾機能(ホーミング)!?面倒くせぇ!」

 

 ボォン!ボォン!

 

連続的な爆破によって空中を移動し、追尾してくる槍から逃れようとする爆豪。だが4本の槍は執拗に標的を追いかけ、止まる様子は無い。

 

 (俺をブッ刺すまで止まらねぇってか。ハッ、なら本体のクソ野郎を先にぶっ殺す!)

 

爆豪は一瞬空中で静止し進行方向を変えると、今度は逆に迫り来る槍に自ら飛び込んでいく。このまま槍と爆豪がぶつかると思われた刹那、

 

 ボォォン!!

 

大きめな爆破によって爆豪は自身の身体の軌道をそらすと、間一髪の所で槍を回避した。

 

 《おぉっと爆豪!垣根の攻撃をギリギリで回避!痺れるぜェェ!!》

 「おおおおおお!!」

 「スゲェぞあいつ!なんつー戦闘センスだ!」

 

息つく暇も無い二人の攻防に実況や観客のボルテージが上がっていく中、爆破によって一気にスピードを上げ地上の垣根に迫る爆豪。さらに、

 

 ボン!ボン!ボン!ボン!ボン!ボン!

 

更なる連続的な爆破によって、巨大な爆風を身に纏いながら自身の身体にも回転を加えていく。

 

 「死ねェェェェェェェ!!メルヘン野郎!!」

 

重力による自由落下の速度+爆風による加速によって、爆豪は凄まじいスピードで垣根に接近し、垣根との距離が十分に縮まると両手を突き出し、

 

 「榴弾砲・着弾(ハウザーインパクト)!!」

 

 ドガァァァァァァァァァァァァァァン!!!

 

凄まじい爆音を立てながら特大火力の爆風が垣根に襲いかかった。爆発による風圧が観客席にまで及び、その技の威力を体感するスタジアムの観客達。

 

 《麗日戦で見せた特大火力に勢いと回転を加えたまさに人間榴弾!あんなの喰らったらひとたまりもないぜ!!勝敗の行方は果たして~!?》

 

マイクの実況が響き渡り、スタジアムにいる全員がフィールドを注視する。フィールドに存在している影は二人分。一人は先の大技を放った爆豪。そしてもう一人は、白い繭の様なモノを身に纏い姿が隠れている。すると、

 

 ファサッ!!

 

白い翼が開かれ、もう一人の生徒である垣根の姿が露わとなった。

 

 《両者未だ健在!!なんと垣根!あの超火力攻撃を翼によって防いでいた~!!なんだコイツら!?強すぎだろ!!》

 「マジかよ。あれ耐えきったのか…」

 「コイツらほんとに一年か?」

 「爆豪の火力パネェな…」

 「ハイレベル過ぎだろ今年の一年…」

 

超ハイレベルな戦いにどよめく観客達。確かにどちらもレベルが高く、それはもう一年同士の戦いのレベルではない。その両者睨み合う中、唐突に爆豪がニヤリと笑う。

 

 「何笑ってんだテメェ。気持ち悪ぃ」

 「うるせぇ黙れ…へっ、やっと出しやがったな」

 「あ?」

 「その翼だ!舐めプのテメェに勝っても意味ねぇ。俺が獲るのは完膚なきまでのまでの一位だからな!」

 「…ケッ、くだらねぇ」

 

心底くだらないといった様子で吐き捨てる垣根。

 

 「でもお前、さっきの技が全力なんだろ?それが通じなかった今、テメェが俺に勝てる確率なんざ万に一つもねぇってのは誰が見ても分かることだと思うんだが?」

 「関係ねぇ!ようやく身体が温まってきたとこだ!テメェをぶっ潰して俺は上に行く!」

 

両手のひらからバチバチッ!っと火花を散らしながら爆豪は垣根に吠える。その顔には微塵も諦めている様子は無かった。そして、ボォン!!と爆発音を鳴らし垣根に迫る爆豪。

 

 「第二ラウンド、開始だァ!!」

 

吠えながら距離を詰めてくる爆豪に対し、垣根は二枚の翼を繰り出すことでそれを迎撃する。しかし、

 

 「遠距離持ちはやることがワンパターンなんだよォ!!!」

 

爆豪は最小限の動きで翼を躱すと、一気に垣根の目の前まで接近する。垣根が別の二枚の翼で目の前に迫る爆豪を穿とうとするが、その前に両手で左右一枚ずつの翼の根本をガッチリ掴み、翼だけで無く垣根の動きも止める爆豪。そして、

 

 「っらぁぁ!!」

 

身動きを封じた垣根に思いっきり蹴りを放つ。

 

 (分解(パージ)!)

 

垣根はすかさず爆豪に掴まれている翼を分解(パージ)することで自身の拘束を解き、後ろに飛ぶことで爆豪の攻撃を回避した。

 

 「チッ!んなことも出来んのかよ」

 

忌々しそうに舌打ちする爆豪。すると、

 

 「第二ラウンド、ね」

 「あァ?」

 

垣根のつぶやきに訝しげに反応する爆豪だったが、突然垣根が爆豪に話を振った。

 

 「お前戦闘訓練の時言ってたよな?お前の個性は手のひらの汗腺からニトロのようなものを分泌し、それを着火することで爆破を起こしてるって」

 「…だったら何だ?」

 「いや、別に。ただ…」

 「?」

 「お前が勝手に始めた第二ラウンドだが、早くもこれにて終了だ。まぁよく頑張ったぜお前は」

 「!」

 

爆豪に言い放つと、再び六枚の翼を展開し翼に力をためていく。

 

 「あァ!?舐めたことぬかしてんじゃねぇぞメルヘン野郎がァ!!」

 

垣根に罵声を浴びせながらも爆豪は、垣根の背の翼に神経を集中させた。

 

 (あれは、烈風攻撃か!喰らうかよんなモン!!)

 

垣根の攻撃を予測し、腰を沈める爆豪。タイミングを見誤らなければ爆破で十分避けられる。烈風が放たれるタイミングを計るため、爆豪は神経を研ぎ澄ます。そして

 

 「じゃあな」

 

垣根のつぶやきと共に六枚の翼が一斉に羽ばたかれ、烈風が放たれた。

 

 轟ッッッ!!

 

轟音と共に迫り来る風の塊。爆豪はすかさず反応し、爆破によって烈風を回避しようとする。だが、

 

 「!?個性が発動しねぇ!?」

 

思わず自分の手のひらを見つめる爆豪。いつものように個性を発動させているのだが一向に爆破が出ない。

 

 (なんでだ…!?)

 

原因を考えようとする爆豪だったが、前方からどんどん大きくなって聞こえてくる音の存在に気がつき、慌てて前に向き直る。

 

 「しまっ―――――――――――――――!?」

 

最後まで言い終わらないうちに爆豪の身体が宙を舞う。垣根の烈風によって身体ごと吹き飛ばされた爆豪は、そのまま場外まで飛ばされ観客席の壁に激突した。

 

 「爆豪君場外!垣根君決勝戦進出!」

 

ミッドナイトの宣告が響き渡り、会場もそれにつられて湧き上がった。

 

準決勝第二試合、垣根の勝利。そして決勝戦の対戦カードは

 

   轟 VS 垣根

 

 

 

 




新約6巻読んだんですが、「えっ、未元物質って何でもありじゃね!?」って思ってしまい、中々バトル内容が決まりませんでした。翼なんか出さなくても大体のヤツに勝てるじゃん!?

でもあの翼すきなんですよね・・・

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