二十八話
体育祭の後の振替休日が終わり、今日から普通の学校生活が戻る。垣根が教室に入ると
「やっぱテレビで中継されると違うね~。超声かけられたよ来る途中!」
「あぁ俺も!」
「私もジロジロ見られて何か恥ずかしかった///」
「葉隠さんはいつもなんじゃ…」
「俺なんか小学生にドンマイコールされたぜ」
「たった一日ですげぇ人気になっちまったな!」
「やっぱ雄英すげぇな!」
A組の生徒達が盛り上がりながら喋っていた。一昨日の体育祭を機に多くの生徒が一般人に声をかけられるようになった。雄英の体育祭は全国で放送されるため、その影響力は大きい。改めて雄英のスゴさを実感する生徒達。かくいう垣根も多くの視線が自身に注がれているのを感じながら登校してきた。注目されるのが好きな人ならば喜ばしい事なのかも知れないが、生憎垣根はそういったタイプではなく、鬱陶しさすら感じていた。盛り上がっているクラスを尻目に見ながら垣根は自分の席に着く。するとその直後に担任の相澤がクラスに入ってきた。
「おはよう」
「「「おはようございます!」」」
相澤の挨拶に元気よく挨拶を返すA組の生徒達。
「早速だが今日のヒーロー情報学、ちょっと特別だぞ」
(((きた!!)))
クラスに緊張が走る。
(特別!?小テストか!?やめてくれよ~)
(ヒーロー関連の法律やらただでさえ苦手なのに…)
どんなことを言われるか不安でいっぱいな生徒達。静けさの中、相澤が口を開いた
「コードネーム。ヒーロー名の考案だ」
「「「胸膨らむヤツきたァ!!!」」」
歓喜に沸くA組だが相澤の圧により一瞬で静かになる生徒達。相澤が説明を続ける。
「というのも先日話したプロヒーローからのドラフト指名に関係してくる。指名が本格化するのは経験を積み、即戦力として判断される2~3年から。つまり今回一年のお前らに来た指名は将来性に対する興味が高い。卒業までにその興味がそがれたら一方的にキャンセルなんてことはよくある」
「頂いた指名がそのまま自身へのハードルになるんですね!」
「そう。で、その集計結果がこれだ」
相澤が手に持っているリモコンのスイッチを押すと、黒板に「A組指名件数」という文字が浮かび上がり、その下に各生徒への指名結果が横棒グラフで映し出された。上から、
垣根:8032
轟 :2742
爆豪:2023
飯田:360
常闇:301
上鳴:272
八百万:108
切島:68
麗日:20
瀬呂:14
「例年はもっとバラけるんだが、三人に注目が偏った。いや、一人と二人だな」
相澤が出した集計結果を見た生徒達は
「だぁ~、白黒ついた…」
「垣根8000って、お前マジかよ…」
「二位の轟にほぼトリプルスコアじゃねーか…」
「つかヒーロー事務所ってこんなにあんのな」
「…流石ですわ轟さん」
「ほとんど親の話題ありきだろ」
「わぁ~指名来てる~!わぁ~!」
「緑谷!無いな!あんな無茶な戦い方すっから怖がられたんだ」
「うん…」
などなど各自様々な反応を示していると、再び相澤が口を開く。
「この結果を踏まえ、指名の有無に関係なくいわゆる職場体験に行ってもらう」
「職場体験?」
「ああ。お前らはUSJん時一足先に
「それでヒーロー名か!」
「俄然楽しみになってきた!」
「まあそのヒーロー名はまだ仮ではあるが、適当なモンは…」
「付けたら地獄を見ちゃうよ!」
突然教室の扉を開き、中に入ってきたミッドナイトが相澤の言葉を横取りする。
「学生時代に付けたヒーロー名が世に認知されそのままプロ名になってる人多いからね!」
「…まあそういうことだ。その辺のセンスをミッドナイトさんに査定してもらう。俺はそういうの出来ん。将来自分がどうなるのか。名を付けることでイメージが固まりそこに近づいていく。それが『名は体を表す』ってことだ。オールマイトとかな」
相澤の説明が終わると生徒達は自分のヒーロー名を考え始めた。一部の生徒を除き、大体はスムーズに決まっていき、一時間目が終わる頃には全員のヒーロー名が決まった。
「さて、全員のヒーロー名が決まったところで話を職場体験に戻す。期間は一週間。肝心の職場だが、指名のあった者は個別でリストを渡すからその中から自分で選択しろ。指名の無かった者はあらかじめこちらからオファーした全国の受け入れ可の事務所40件、この中から選んでもらう。それぞれ活動地域や得意なジャンルが異なる」
「例えば13号なら対敵より災害・事故などの人命救助中心、とかね」
「よく考えて選べよ」
「「「はい!」」」
生徒達が元気よく返事をすると、相澤は生徒一人一人にリストを配り、一時間目を終える。提出期限は今週末まで。つまりあと二日で決めなければならないらしい。その後の二時間目からはいつも通りの授業が再開した。そして昼休み。教室では職場体験の話でもちきりだった。
「ねーねー。みんなどのプロ事務所に行くか決めた?」
「オイラはMt.レディ!」
「峰田ちゃん、やらしいこと考えてるわね?」
「おい垣根!お前はどこに行くのか決めたのか?」
切島が垣根の席に近づきながら尋ねる。瀬呂や上鳴、耳郎もそれにつられて垣根の席に来る。
「んなもん決めてねぇよ」
「いいよなーお前は。選り取り見取りじゃねえか。どれどれ…って多過ぎだろ!!」
切島が垣根のリストを見るや否や、大きく声を上げる。瀬呂達も垣根のリスト表を覗き込む。
「うひょ~。すげぇなこれ!有名なプロ事務所ほとんどあるじゃねーか」
「エンデヴァー以外は大体あるね。こんなにあると逆に選ぶの大変そう」
「ギャングオルカやベストジーニスト、それにホークスまで…!とんでもねぇな」
何やら楽しそうに騒いでいる中、切島が垣根に尋ねる。
「垣根お前、どっか行きたい所ないのか?」
「ない。つーか全く興味ねえ。これって絶対行かなきゃいけないモンなのか?」
「そりゃそうでしょ」
「ありすぎて選べないとか贅沢すぎるぞお前。」
「いやそういうわけじゃ無くてだな…第一、ここに書かれてる奴ら誰も知らねえし」
「えっ!?じゃあベストジーニストやホークスのことも知らないのかお前!?」
「あ?誰だそいつら」
垣根の言葉に衝撃を受ける切島達。
「ベストジーニストやホークスっつったらヒーローランキングNo.4とNo.3の超有名ヒーローだろ!特にホークスなんか史上最年少でトップ10入りを果たしたヒーローなんだぞ」
「ちなみにさっき瀬呂が言ってたギャングオルカはヒーローランキングNo.10のヒーローね」
「ほーん」
「お前そんなことも知らなかったのかよ…」
切島や耳郎から説明を受ける垣根。上鳴ですら垣根の無知さにはため息を吐くほどだった。
「でも垣根の個性ってなんかホークスに似てるかも」
「?」
「ほら、垣根って白い翼使うでしょ?ホークスも翼を使う個性なんだよ」
「あー!確かにそうだな。垣根のとはちょっと形状は違うけど翼であることには変わりないしな」
「垣根ホークスんとこ行けば?」
「…だから俺の個性は翼じゃねぇって」
垣根はそう呟きつつ、改めてリストを眺める。
(どこにすっかねぇ…ん?待てよ。これってプロだったらどこでもいいんだよな。だったら…)
そこまで考えた時、授業前の予鈴が鳴る。立っていた生徒達は席に着き、しばらくすると先生が教室に入ってきて午後の授業が始まった。そして放課後。垣根はいつもの面子で帰ろうとするが、飯田がいないことに気付く。下駄箱に行き、緑谷が飯田の靴を確認した所、既に帰宅していることが分かった。
「先に帰ったのか。珍しいな」
「う、うん…」
垣根が何気なく呟くと浮かない表情を浮かべながら相づちを打つ緑谷。麗日もどこか元気が無い様子だった。
「どうかしたのか?」
「い、いや別に!何もないけど…その、垣根君テレビ見てない?」
「テレビ?見てねえけど。」
「そ、そっか。じゃあ知らないか…」
「何だよ。何かあったのか?」
「実は…」
そう言って緑谷は歩きながら話し始めた。飯田の兄・インゲ二ウムが東京の保須市で敵に襲われ、再起不能になってしまったそうだ。敵の正体は神出鬼没、過去17名ものヒーローを殺害し23名ものヒーローを再起不能に陥れたヒーロー殺し。
「ヒーロー殺し、ねぇ」
緑谷からの説明を聞いた垣根がひとりでに呟く。
「飯田君大丈夫かな…」
「僕、朝飯田君に話しかけたんだけど何だか無理してるような気がして…」
垣根の横を歩いている緑谷と麗日の二人は心配そうな表情で言う。
(そういやアイツ、確か兄貴に憧れてるみたいな事言ってたからな。まぁまず大丈夫じゃねえだろうな)
そう思いながら、いつだったか昼食時に飯田がヒーローを志す理由を聞いたときのことを思い出す。そして、
「ほんとにヤバくなったら言ってくんだろ。そんな思い詰めんなよ」
垣根は緑谷達へフォローを入れる。
「…うん、そうだね。」
「きっとそうだよ!私たち友達だもんね!」
顔を上げ少し笑いながら答える緑谷と麗日。こうして体育祭後初の学校は若干の不安要素を残しながらも終わりを迎えた。
◆
その日の夜、垣根は夕飯を食べている最中、突然グラントリノに対して切り出す。
「なぁジジイ」
「ん?」
「職場体験って知ってるか?」
「おお、知っとる知っとる。プロヒーローの事務所に行くアレだろ?」
「ああそうだ。話が早ぇな。っつーことでジジイ、俺を指名しろ」
「はぁ?」
「いや何キョトンとした顔してんだよ。指名だ指名。プロだったら誰でもいいんだろ?だったらジジイが俺を指名すればいいじゃねぇか。そうすりゃ俺は遠くまで行かなくて済むし一週間家でグータラ出来るしで万々歳だ。プロ事務所なんてどこも興味ねえしな」
昼休みに思いついた、垣根にとって最も楽できる選択肢。それが親であるグラントリノの指名を受けることだ。一言グラントリノにお願いすればすぐ了承してくれるだろう、そう思っていた。だが、
「悪いが無理だそれ」
「…は?」
予想だにしていなかったグラントリノの返答に固まる垣根。そしてグラントリノは続ける。
「俺は既に一人指名しちゃったからお前は別のとこ行け」
「は?…オイオイオイ待て待て。どういうことだジジイ?」
「だからもう指名しちゃったって…」
「そういうことじゃねぇ!なんでテメェが指名なんかしてんだってことだ!とっくに表舞台からは降りてんだろアンタ」
「表舞台から降りたつもりなんぞないわ。生涯現役だよ俺は」
グラントリノが胸を張って答えるのに対し、垣根はしばらく口を閉ざしながら目の前の老人を睨みつける。そして
「誰だ?」
「ん?」
「誰を指名したんだっつってんだよ」
「それは教えられん。企業秘密ってやつだ」
「テメェ…!!」
垣根が恨めしそうにグラントリノを見るも、グラントリノは素知らぬ顔で続ける。
「大体、グータラするために指名しろなんて言う奴を指名するわけないだろ。観念して職場体験に行ってくるんだな。たっぷりとシゴいてもらえ。どうせ指名いっぱい来たんだろ?」
「…このクソジジイが。」
垣根はグラントリノに悪態を吐くも、これ以上言っても無駄だと悟り、夕飯の残りを食べきって自分の部屋に向かった。もしここで垣根がプロヒーローは2名まで生徒を指名できるということを知っていれば、まだ食らいついていたのだろうが、生憎と垣根はそのことを知らない。部屋に入った垣根は改めて職場体験先について考える。リストに目を通していると、ふとあるヒーローに目がとまる。いや、そのヒーロー事務所の所在地に目がとまったと言った方が正確だろう。
(東京の保須市…確かヒーロー殺しとかいう奴が出たトコか。マニュアル?聞いたことねぇヒーローだが…)
緑谷の話を思い出しながら垣根はしばらく考えると、やがてリストを閉じる。そして明日の準備を整え、就寝し、その日を終える。
そして時は流れ、いよいよ職場体験当日。
うーん・・・
垣根の職場体験先どうしようかな・・・。最初はホークスのとこ行かせようかなとも思ったんですが、あの人九州にいるらしいし・・・
ミルコとか結構好きなんですけど、まだあんま出てきてないし・・・
あと垣根のヒーロー名なんですが、いいの思いつかなかったんでボかしました。まぁ爆豪のヒーロー名も明らかになってないし、多少はね?