かの悪党はヒーローへ   作:bbbb.

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合宿~!


雄英高校 林間合宿~
四十一話


 「雄英校は一学期を終え、現在夏休み期間中に入っている。だが、ヒーローを目指す諸君らに安息の日々は訪れない。この林間合宿でさらなる高みへ、Plus Ultraを目指してもらう!」

 「「「はい!!」」」

 

 八月中盤、A組生徒達はバスロータリーで相澤の話を聞いていた。いよいよ林間合宿が始まるのだ。そこには垣根の姿もある。垣根はちょうど前日に帰国してきたばかりで、それまでずっとデビットに紹介された研究機関にいた。完成はしなかったが、大方の理論は構築できたため、あとはこの合宿中に完成させられることが出来るかどうかといった所だろう。相澤の話が終わると合宿が楽しみすぎて楽しそうに踊り出す芦戸達。すると、

 

 「え?なになに?A組補習いるの!?つまり期末で赤点取った人がいるってこと?えぇ!?おかしくないおかしくない?A組はB組よりずっと優秀なはずなのに!?あれれれれ…」

 

毎度の事ながらB組の物間がA組を馬鹿にしてくるも、今回もまたその言葉が最後まで紡がれることはなかった。

 

 「ゴメンな~」

 

物間にチョップをかまし、気絶した彼を引きずりながらA組に謝る拳藤。

 

 「物間怖…」

 「あ!B組の!?」

 「体育祭じゃなんやかんやあったけど、ま、よろしくねA組!」

 「うん…」

 「バス乗るよ~」

 

拳藤の指示によりバスに乗り込んでいくB組の生徒達。するとA組の委員長である飯田もA組生徒達をバスに乗るよう指示を出す。全員がバスに乗り込むとバスは発車した。そして1時間ほど走ったところで一度バスは停止し、全員外に出る。

 

 「ようやく休憩か~」

 「おしっこおしっこ!!」

 「つか何ここ?パーキングじゃなくね?」

 「あれ?B組は?」

 

バスから降りたは良いものの、今自分達がいる場所について違和感を感じる生徒達。B組のバスも見当たらないしどうしたのだろうと思っていると相澤が口を開く。

 

 「何の目的も無くでは意味が薄いからな」

 「え?」

 「トイレは…?」

 

生徒達が怪訝そうな様子で相澤を見ていると、突然バスのすぐ側に止まっていた車の扉が開き、中から女の人の声が聞こえる。

 

 「ようイレイザー」

 「ご無沙汰してます」

 「煌めく眼で~ロックオン!」

 「キュートにキャットにスティンガー!」

 「「ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ!!」」

 

 「「「……」」」

 

皆が唖然として車の中から出てきた女二人組を見ていると相澤が紹介する。

 

 「今回お世話になるプロヒーロ-、プッシーキャッツの皆さんだ」

 「連盟事務所を構える4名1チームのヒーロー集団!山岳救助などを得意とするベテランチームだよ!キャリアは今年で12年にもなるゴフ…」

 「心は18!!!…心は?」

 「18!」

 ((必死かよ…))

 「お前ら!あいさつしろ」

 「「「よろしくお願いします!!」」」

 

A組一同がプッシーキャッツに挨拶すると赤い服の女の人が説明を始める。

 

 「ここら一帯は私らの所有地なんだけどね。あんたらの宿泊施設はあの山の麓ね」

 「「「遠っ!?」」」

 

女の人が指さした方角を見て思わずそう口にしてしまった生徒達。すると麗日がある疑問を口にする。

 

 「え?じゃあなんでこんな半端な所に?」

 「これってもしかして……」

 「いやいや~…」

 「アハハハ…バス戻ろうか。な?早く…」

 「そ、そうだな…そうすっか!」

 

一部の生徒達は何やら不穏な気配を察知しバスへと引き返そうとするも、赤い女の人が構わず言葉を続ける。

 

 「今は午前9時30分。早ければ…12時前後かしら」

 「ダメだ…!おい!」

 「戻ろっ!!」

 「バスに戻れ!!早く!!」

 「12時半までかかったキティはお昼抜きね~」

 

今から何をさせられるのか何となく察した生徒達は急いでバスへとダッシュするが、プッシーキャッツの片割れである青い女の人が生徒達の前に立ちはだかった。

 

 「悪いね諸君。合宿は既に始まっている」

 

相澤が一言そう言うと突如生徒達の足下の土が盛り上がる。そして盛り上がった大量の土はそのまま生徒達を崖下まで運んでいった。悲鳴を上げながら落ちていく生徒達。皆が地面に落下すると上から赤い服の女が声をかける。

 

 「おーい。私有地につき個性の使用は自由だよ!今から三時間、自分の足で施設までおいでませ!この魔獣の森を抜けて!」

 「魔獣の森!?」

 「何だそのドラクエめいた名称は!?」

 「雄英こういうの多過ぎだろ!」

 「こういうパターンかよ。面倒くせぇ…」

 「文句言ってもしゃーねぇよ。行くっきゃねぇ!」

 

すると側の木陰からグルルッ!と何かのうめき声のようなモノが聞こえ、そちらに視線を向ける生徒達。木々の隙間からこちらを見ているのは、漫画などに出てくるような魔獣型のモンスター達だった。

 

 「魔獣だあああああああ!!」

 「あっ…」

 「静まりなさい獣よ!下がるのです!」

 「グォォォォォ!!!」

 

口田の声を無視して目の前にいる峰田にその腕を振り下ろす魔獣だったが、とっさに緑谷が峰田を抱えて回避する。

 

 (動物を従える口田君の個性が通じてない!?…ハッ!土塊…そうか!ピクシーボブの個性で…!)

 (何だよ。ただの泥人形じゃねぇか。くだらねぇ)

 

垣根がため息をついていると、魔獣に対して爆豪・飯田・轟・緑谷が動く。轟が氷結で凍らせ、爆豪と飯田で部位破壊、そして緑谷がトドメを刺すという完璧な連携で魔獣を仕留めて見せた。

 

 「あの魔獣を瞬殺かよ!?」

 「やったな!」

 「やった・・・オイラやっちまった…」

 「流石だぜ爆豪!!」

 「まだだ!!」

 「お?」

 

爆豪の視線の先には今の魔獣とは違うタイプの魔獣がいた。どうやらまだまだ魔獣はたくさんいるらしい。

 

 「おいおい…一体何匹いるんだよ…」

 「どうする?逃げる?」

 「冗談!12時までに施設に行かなきゃ昼飯抜きだぜ!」

 「なら、ここを突破して最短ルートで施設を目指すしかありませんわ!」

 「ケロ!」

 「よし!行くぞA組!!」

 「「「おーーー!!!」」」

 

気合いを入れて魔獣達に立ち向かっていくA組の生徒達。それぞれの個性を活かしながら仲間と連携していくことでどんどん魔獣を倒していく。それを後ろから見ていた垣根は小さく息を吐き出すと、背中から翼を出してそのまま宙に浮き上がる。

 

 「コイツらに合わせてたら確実に昼までに間に合わねぇ。悪いなお前ら」

 

そう呟くと垣根は空を移動する。しかし、

 

 「!」

 「残念~。イレイザーから聞いてたんだ。空を飛べる子がいるって。だから対空用の魔獣もわんさか作っちゃったよ~」

 

ピクシーボブが丘から垣根の方を見つめニヤけながらそう呟く。すると、ピクシーボブの言うとおり、垣根の前にドラゴン型の魔獣が何体も立ちはだかった。

 

 「…ざっと50ってとこか。まだまだ潜んでそうだが…まぁいい」

 

敵の位置・数を把握すると垣根は六枚の翼を盛大に広げる。そして翼に生えている羽根の多くを槍の形に変えると、

 

 ドッッッ!!!

 

爆裂音と共に一斉に放った。翼から放たれた無数の槍は勢いよく伸び、次々と魔獣共の身体を貫いていく。そして、垣根の前に立ちはだかっていた魔獣の群れは一瞬で崩壊し、跡形も無く消え去ってしまった。

 

 「嘘でしょ!?あの数を一瞬で!?…マジ?」

 

ピクシーボブが唖然とする中、垣根は先に進んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あれ?ねーねーイレイザー、あれって…」

 「…垣根か」

 

 先に施設に着いていた相澤とマンダレイが車の外で話し合っていると、マンダレイが空から何かが近づいてくるのを見つけ相澤に声をかける。相澤もそれが垣根だということにすぐ気付く。そして垣根も相澤達に気付くと、相澤達の下へゆっくりと空から降りてくる。

 

 「ここか?」

 「ああ、そうだ」

 「え!?いやちょっと…まだ11時過ぎよ!?いくら何でも早すぎない!?」

 「11時か。意外とかかったな。いい暇つぶしになったぜ」

 「暇つぶしって…」

 「…ま、お前にはヌルかったか」

 

マンダレイが絶句しながら垣根を見ている隣で相澤が呟く。そしてしばらくするとピクシーボブも三人の下へ合流し、昼食をとった。昼食の間、ピクシーボブは興味津々と言った様子で垣根に話しかける。

 

 「いや~凄いね君!私の土魔獣をあんなにあっさり倒しちゃうなんて!お姉さんビックリだよ!他にも良さそうな子は何人かいたけど君は別格だねぇ。3年後が超楽しみ!!ツバつけとこ~!ペッペッペッペッ!」

 「オイやめろ汚ぇ殺すぞ」

 「…マンダレイ、あの人あんなでしたっけ?」

 「彼女焦ってるの。適齢期的なアレで」

 

昼食を食べ終わった後、垣根はバスから自分の荷物を降ろし、部屋に向かう。他の生徒達が到着するまで自由行動をして良いと相澤から言われたため、垣根は部屋の中で資料を見返す。資料とは垣根が研究機関から持ち帰ってきたモノであり、これらのデータや情報を下に垣根は人体複製に挑戦するのだ。しばらく読みふけっていた垣根だが突然、相澤が部屋に訪れ垣根に下に来るよう言い渡す。時刻はジャスト17時。外に出ると日が沈みかけていてること、そしてようやく緑谷達が到着したことに気付く垣根。皆満身創痍な様子で宿舎の前にへたり込んだ。

 

 「何が三時間ですか~!?」

 「それ私たちならって意味。悪いね!」

 「実力差自慢のためか…やらしいな…」

 「腹減ったァ!死ぬぅー!!」

 「そうは言うけど垣根君は一時間半くらいでゴールしてたわよ?」

 「ああそうだ!おい垣根テメェ!?お前いつの間にゴールしてたんだよ!?」

 「俺らが必死こいて魔獣共倒してる時に、お前は優雅に空中闊歩か!ちっとは手伝おうとか思わねぇのかお前はよ!」

 「…お前らに合わせてたら昼飯食えねぇだろ。大体、俺が空飛ぶ系の魔獣はあらかた倒しといてやったんだ。むしろ感謝して欲しいもんだな」

 「ああ、そういや途中からドラゴンみたいな魔獣は全然出てこなかったな」

 「ネコネコネコネコ!でも正直もっとかかると思ってた。私の土魔獣が思ったより簡単に攻略されちゃった。いいよ君ら。特にそこ四人!躊躇のなさは経験値によるモノかしら~?3年後が楽しみ!ツバつけとこ~!!ペッペッペッペッ!」

 

ピクシーボブが緑谷・飯田・轟・爆豪にツバをかけていく。

 

 「あ!適齢期と言えばあの…ゴフッ!」

 「『と言えば』って?」

 「ず…ずっと気になってたんですが、その子はどの方のお子さんですか?」

 

ピクシーボブに顔面を掴まれながら緑谷は、マンダレイの横に立っている少年を指さして質問した。

 

 「ああ、違う。この子はアタシの従兄弟の子供だよ。洸汰、ほら挨拶しな。一週間一緒に過ごすんだから」

 「……」

 「あ、えっと僕雄英高校ヒーロー科の緑谷。よろしくね」

 「ふん!」

 

洸汰と呼ばれる少年は緑谷の握手には応じず、緑谷の睾丸に拳をたたき込む。悶絶しながら倒れ込む緑谷に飯田が慌てて駆け寄る。

 

 「緑谷君!?おのれ従甥!なぜ緑谷君の陰嚢を!?」

 「ヒーローになりたいなんて連中とつるむ気はねぇよ!」

 「つるむ!?いくつだ君は!?」

 「マセガキ」

 「…お前に似てねぇか?」

 「ああ、そっくりだな」

 「あァん!?似てねぇよ!ぶっ殺すぞテメェら!!」

 「茶番はいい。バスから荷物を降ろせ。部屋に荷物を運んだら食堂にて夕食。その後就寝だ。本格的なスタートは明日からだ。さ、早くしろ」

 

相澤の指示の下、生徒達は宿舎に入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 合宿二日目。時刻は午前五時半。A組生徒達は朝早くから体操着姿で外に集合していた。

 

 「おはよう諸君。本日から本格的に強化合宿を始める。今合宿の目的は全員の強化及びそれによる仮免の取得。具体的になりつつある敵意に立ち向かう為の準備だ。心して臨むように。というわけで、そうだな…爆豪!そいつを投げてみろ」

 「これ、体力テストの…」

 「前回の、入学直後の記録は705.2m。どんだけ伸びてるかな?」

 「おぉ~!成長具合かぁ~!」

 「この三ヶ月色々と濃かったからなぁ!1㎞とか行くんじゃねぇの!?」

 「いったれ爆豪!!」

 「んじゃァ、よっこら…くたばれェ!!!」

 (くたばれ…)

 

爆風に乗ったボールは体力テストの時と同様、遙か彼方まで飛んでいく。これは好記録が期待できるのでは?と皆が思っている中、相澤の口から出た記録は意外なモノだった。

 

 「709.6m」

 「な…っ!?」

 「あれ?思ったより…」

 「入学からおよそ三ヶ月、様々な経験を経て確かに君らは成長している。だがそれはあくまでも精神面や技術面。あとは多少の体力的な成長がメインで個性そのものは見たとおり、そこまで成長していない。だから今日から君らの個性を伸ばす。フッ…死ぬほどキツいがくれぐれも死なないように」

 

地獄の林間合宿が幕を開けた。

 

 

 

 




・・・人体の作り方レシピ教えてください鎌池先生。

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