かの悪党はヒーローへ   作:bbbb.

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お久しぶりです。


四十三話

 

 空に浮上した垣根はぐるりと地上を見渡す。前方には毒ガスの竜巻と思われるものが森の中から立ち上っており、そこから四方八方に向けて毒ガスがばらまかれていた。そして森を青々と燃やし尽くす青い炎。いずれも敵の個性による仕業だろう。とりあえず辺りの状況を把握しようと思った垣根は、能力で偵察用のトンボ型兵器をいくつか作りそれらを森の中へ飛ばす。トンボたちの視界を共有し、森の中を見ていく垣根。この状況に戸惑っている生徒や毒ガスにより気絶している生徒、八百万を始め他の生徒達を救出している生徒など、森の中の生徒達は様々な行動をとっていた。しばらくトンボたちを通して森の中を見ていた垣根だったが、突如後方から

 

 ドゴォォォォォォォォン!!!

 

大きな轟音が鳴り響いた。垣根は振り返って後方を見ると、少し離れた崖のある場所で土煙が舞っているのに気付く。

 

 (始まったか…) 

 

それは紛れもなく敵と雄英生徒との交戦が始まった合図。垣根は数秒の間考えていたが、

 

 「ま、とりあえず毒ガス野郎をぶっ殺すのが先だな。今のところコイツが一番迷惑だ」

 

そう決めると毒ガスを振りまいている敵の下へ向かおうとする。しかし、偶然にもトンボの視界を通して二人の生徒が毒ガスの発信元に向かっている姿を確認する垣根。

 

 「あれは、B組の拳籐と…誰だっけアイツ」

 

地上を走りながら移動している男女二人組は恐らく八百万からもらったであろうガスマスクを装着していた。黙って見つめていた垣根だがやがて二人の下へ向かっていった。

 

 「おい」

 

拳籐達の近くまで空から接近した垣根は不意に声をかける。二人は足を止め、垣根の方へ振り返った。

 

 「誰!?って垣根!?」

 「お前は、A組の!?」

 

垣根の急な出現に驚いた様子を見せる二人。しかし構わず垣根は二人に尋ねる。

 

 「そんなに急いでどこ行くんだよお前ら」

 「えっ!?いやまあこれは、その…」

 「……」

 「こっちは施設とは反対の方角。どうみても逃げてる感じじゃねぇよな。んで、この先にいんのは毒ガスばらまいてる奴な訳だが…」

 「「……」」

 

気まずそうに目をそらす二人。資格未取得者が保護管理者の監視外で個性を使うことは認められていない。雄英生徒一年は全員まだ仮免を取っていないので、個性を勝手に使うことは勿論禁止だし、敵を倒しに行こうとするなんてことは言語道断である。ましてや先ほどマンダレイのテレパスで戦闘は避けるようと念を押されたにも関わらず、拳籐と鉄哲はその決まりを破ろうとしているのだ。そのことを垣根に言及されると思い、二人は黙り込んでしまった。だがそれでも、鉄哲は意を決したように顔を上げ、口を開いた。

 

 「おうそうだ!俺達はこんなふざけた真似してやがる敵をぶっ倒しに行くところだ!何か文句あるか?」

 「ちょっ!鉄哲!?」

 「ほぉ、吠えたな。やれんのか?お前に」

 

垣根は鉄哲の方をじろりと見ながら問いただす。だが鉄哲も今度は目をそらすことはせず、垣根の目を見つめ返しながら堂々と答えた。

 

 「ああ!人に仇為す敵を退けてこそのヒーロー!必ず敵をぶっ叩いて、俺達がこの危機(ピンチ)を救ってみせるぜ!!」

 「鉄哲…」

 「フン」

 

鼻を鳴らすと垣根はくるりと背を向けてこの場を去ろうとし、それを見た拳籐は慌てて垣根に尋ねた。

 

 「えっ!?ちょ、ちょっとどこ行くの垣根?」

 「あ?どこって別の敵見つけに行くんだよ」

 「はぁ!?お前、俺達のこと止めに来たんじゃねぇのかよ!?」

 「は?何だそりゃ?俺は単にお前らが何するつもりなのか確認するために寄っただけだ。俺も毒ガス野郎を殺りに行くつもりだったが、お前らが向かうなら俺はいらねぇだろ。敵は他にもいることだし、効率よくいかねぇとな」

 「効率よくって…」

 「んなことより、俺が譲ってやったんだ。しくじんじゃねぇぞテメェら」

 「誰がしくじるかよ!お前の方こそやらかすんじゃねぇぞ!」

 

鉄哲の怒鳴り声を背に再び空に舞い上がる垣根。

 

 (さて、毒ガス野郎をとられちまったからには別の奴を狙うしかない。今んとこ存在が確定してんのは森を燃やしてる敵と崖で暴れてる敵だけだが…まぁあっちは誰かが対処してるみてぇだし、放火魔野郎の方にしとくか)

 

垣根は新たな標的を定めると、トンボたちを使って敵の居場所を探し始めた。しばらく空中で静止していた垣根だが突然ニヤリと笑い、

 

 「見つけたよん」

 

と楽しげに言いながら森へ降下していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あ~ダメだ荼毘!お前やられた!弱ッ!ザコかよ!」

 「もうか…弱ぇな俺」

 「バカ言え!結論を急ぐな。お前は強いさ!この場合はプロが流石に強かったと考えるべきだ」

 

 敵連合開闢行動隊の二人、トゥワイスと荼毘が森の中にいた。荼毘は青白い炎で森を燃やすことで生徒達を閉じ込め、トゥワイスは荼毘の分身を作り、プロ達を足止めしていた。

 

 「もう一回俺を増やせ。プロの足止めは必要だ」

 「ザコが何度やっても同じだっての!任せろ!」

 

トゥワイスが再び荼毘の分身を作り、プロの下へ向かわせようとしたその時、荼毘目掛けてナニカが飛来する。

 

 「……ッ!?」

 

荼毘は咄嗟に後方に飛び回避する。すると、標的を見失ったナニカは直前まで荼毘が立っていた場所に直撃し、

 

 ズガァァン!!

 

派手な音と共に地面に穴を開ける。荼毘に攻撃を仕掛けた垣根はゆっくりと白い翼を自分の下へ引き戻し、地上に着地しながら二人に尋ねる。

 

 「一応聞いておくが、お前らは敵で間違いねぇんだよな?」

 「あぁ?知らねえなそんなこと!ああそうだ!!」

 「……」

 

荼毘は無言で目の前の少年を見つめているとトゥワイスが荼毘に耳打ちする。

 

 「おい荼毘!こいつアレだろ!?死柄木が連れてこいっつってた奴!言ってなかったがな!」

 「ああ。垣根帝督…まさか向こうから来てくれるとはな。おかげで探す手間が省けた」

 

死柄木が開闢行動隊に命じた任務は雄英生徒の垣根の誘拐。荼毘達やマスタードはどちらかというと生徒やプロ達を邪魔する役目だったので、この思わぬ僥倖にほくそ笑む荼毘。すると垣根が再び口を開く。

 

 「ったく探したぜ。こんなとこにいやがったとはな」

 「それはご苦労さん。せっかく来てくれたとこ悪いがこっちもあんまり時間がなくてな。さっさと済まさせてもらう」

 「あ?」

 「よっしゃ!ここは俺に任せろ!さあやるんだ荼毘!」

 「多少は手荒になるが…くれぐれも死んでくれるなよ」

 

そう呟くと荼毘は右手を前にかざし、青白い炎を勢いよく噴射した。

 

 ブォォォォォォォォォォン!!!

 

と派手な燃焼音を立てながら炎の塊は垣根に直撃し、垣根の体は青白い炎に包まれる。が、突然炎の中から六枚の翼が勢いよく開かれる。

 

 (翼で守ったか…)

 「オイオイ、いきなり仕掛けてくるなんて些か大人げねぇんじゃねぇか?」

 

白い翼を身に纏い、荼毘の攻撃を凌いだ垣根はニヤリと笑いながら言う。荼毘はかなり気を張って垣根の方を見ていたが、突然何かに気がついたように上を見る。すると、空から巨大な白い物体二つが荼毘とトゥワイス目掛けて急接近してくるのを視認した。

 

 「トゥワイス!上だ!避けろ!」

 「あ?ってうぉ!?」

 

荼毘とトゥワイスが慌ててその場から飛び退くと、白い物体は周りの木々をなぎ倒しながらそれぞれ地面に激突する。土煙の中が晴れるとその姿が明らかになる。それは巨大なカブトムシだった。全長十メートルほどでその体は真っ白。角と思われるべきモノの先端はなぜだかくりぬかれていて、不気味な緑色の眼光を放っている。

 

 「…何だこれは」

 「おいおいおい、空からでっけぇカブトムシが降ってきたぞ!どうなってんだよ一体!?」

 「そりゃ試作品だ」

 

垣根はポケットに手を突っ込みゆっくりと歩きながら口を開く。

 

 「今回の合宿は強化合宿ってやつでな。この三日間能r…じゃねぇや、個性を強化する為に色々試してたんだが、その時に何となく作ったモンがこれだ」

 「……」

 「試運転はまだ先だと思ってたが、ちょうどいい機会だ。お前らで試させてもらうとするか」

 

垣根の言葉と共に、二機のカブトムシ型兵器はゆっくりと前進し始める。すると荼毘が両手を前にかざし、両掌から青白い炎を勢いよく噴射した。二機のカブトムシが青白い炎に見込まれる。しばらく蒼炎に飲み込まれていたカブトムシだったが、突然、

 

 ドォォォォォン!!!!

 

凄まじい砲撃音が鳴り響き、激しい衝撃と共に荼毘とトゥワイスは後ろに吹き飛ばされた。

 

 「か、は……っ!?」

 「な、何だ!?何が起こったってんだ!?」

 「チッ、ちと逸れたか…」

 

二人の体は木々に激突する。荼毘とトゥワイスがなんとか体を起こしながら前方を見ると、さっきまで自分達が立っていた場所辺りが粉々に吹き飛ばされていた。まるで何かが炸裂したかのように。荼毘はじっとカブトムシの角の先端を見つめていたが、やがて得心のいった様子で呟く。

 

 「なるほど。砲撃か」

 「あ?砲撃?どういうことだよ荼毘!俺は全然分からねぇぞ!なるほど、そういうことか」

 「あのカブトムシの角の先端を見てみろ。穴が空いてんだろ。あそこから砲撃が出来る仕組みになってんだよあれは。」

 「マジかよ!?なんだそりゃ!?」

 (それに俺の炎が全く効いてねぇ…アレの攻撃力よりもむしろそっちの方が問題だ。どうする…)

 

荼毘が何か対策案を考えている間に垣根は敵に追い打ちをかけようとしたが、その前に再び垣根の頭にテレパスが繋がれる。

 

 〈A組B組総員!プロヒーロー・イレイザーヘッドの名において戦闘を許可する!繰り返す!A組B組総員!戦闘を許可する!〉

 

垣根の頭の中にマンダレイの声が響く。

 

 「ああ、そういや勝手に個性使ったらマズかったんだっけか。まぁ今更気にしても遅いが」

 

呑気に呟く垣根。そしてまだマンダレイの言葉は続く。

 

 〈敵の狙いの一つが判明!狙いは生徒の垣根君!垣根君はなるべく戦闘を避けて!単独では動かないこと!わかった!?垣根君!〉

 

そう言ってマンダレイのテレパスは切れた。

 

 「へぇ…何だお前ら、俺を殺しに来たのか」

 「は?」

 「たった今情報が入ってよ、お前ら敵連合の狙いは俺だって言ってたぜ。どうなんだよ?」

 「…もうそこまでバレてんのかよ。ならもう隠す必要もないか。ああそうだ、俺達の狙いはお前だよ垣根帝督。だが俺達はお前を殺しに来たんじゃない。お前をスカウトしに来たんだ」

 「あ?スカウト?」

 「ああ。俺達のリーダーがお前と話がしたいらしい。だから俺達と一緒に来い。そうすれば俺達はこの場から手を引く」

 「…そういうことか」

 

荼毘の話を聞いた垣根は一瞬間を置いてから返事を返した。

 

 「せっかくのお誘いだが答えはノーだ。くだらねぇ茶番に手を貸してやるほど俺はお人好しじゃねぇ。そもそも、死柄木とか言ったか。あんな無能な奴をリーダーにしてる時点で論外だ。お前らに未来はねぇよ」

 「…ま、そうくるよな。こちらとしてもそう簡単に引き抜けるとは端から思ってねぇよ。悪いが力ずくで連れて行く」

 「出来るといいな、それ」

 

垣根は不敵に笑いながら敵達を見据え、

 

 「潰せ」

 

そう一言ぼそりと呟くと、二機のカブトムシが荼毘達に迫っていった。

 

 「おい荼毘!あのとんでもカブトムシ達がどんどん近づいてくるぞ!どうすんだよ!?」

 「俺の炎が効かないって事は今この場であれに対する有効打は無い。チッ、あの女(・・・)の力を借りるのは癪だが仕方ねぇ。プランBだ」

 「おお!あれか、プランBか!なんだそれ?」

 「行くぞ。奴を誘い込む」

 

そう言うと荼毘とトゥワイスは逃げるようにして走って行った。

 

 「あ?何だ?」

 

垣根は走り去っていく荼毘達を見ながら思考する。

 

 (流石にただ逃げてるだけってのはねぇだろ。何か策があるはずだ。恐らく俺をどこかに誘導するための行動…いいぜ、乗ってやるよ)

 「追え」

 

垣根はカブトムシたちに指示を下すと自身も敵達を追っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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