かの悪党はヒーローへ   作:bbbb.

45 / 87
四十五話

 「もう一度言うが、ヒーロー志望の垣根帝督君。俺の仲間にならないか?」

 「……」

 

 そこはとあるバーの室内。先日雄英高校ヒーロー科一年の林間合宿を襲った敵連合の面々と、彼らにさらわれた生徒である垣根帝督が対面していた。垣根は拘束具を身につけられながら椅子に固定されている。だが、まだ手は加えられていない。なぜなら彼らが垣根をさらった目的はただ一つ、垣根を懐柔することだったからだ。敵連合のリーダーである死柄木の問いかけに対し、無言のままでいる垣根。すると死柄木はふとテレビの電源をつける。そこには雄英の教師陣による記者会見が映し出されていた。今回の事件について記者人から鋭い質問攻めを受ける相澤達。それを見ながら死柄木はおちょくったように垣根に話しかける。

 

 「不思議なもんだよなぁ。なぜヒーローが責められてる?奴らは少し対応がずれてただけだ。守るのが仕事だから?誰にだってミスの一つや二つはある。『お前らは完璧でいろ』って?現代ヒーローは堅っ苦しいなぁ垣根君よ!」

 「守るという行為に対価が発生した時点でヒーローはヒーローでなくなった。これがステインのご教示」

 「人の命を金や自己顕示に変換する異様。それをルールでギチギチと守る社会。敗北者を励ますどころか責め立てる国民。俺達の戦いは"問い"。ヒーローとは、正義とは何か。この社会が本当に正しいのか一人一人に考えてもらう」

 「問い、か…」

 

死柄木の言葉を意味ありげに呟く垣根。一瞬の沈黙の後、今度は垣根がMr.コンプレス達に話しかける。

 

 「お前の質問に答える前に俺も一つ、その"問い"ってのをしていいか?」

 「…まぁ、答えられる範囲なら。何かな?」

 「お前らに力を貸したのは誰だ?」

 「「!?」」

 

垣根の問いに室内に緊張が走る。その空気を察した垣根は更に言葉を続ける。

 

 「あの現象…テメェらがあんなこと出来るはずがねぇ。あれは俺の能力、いや能力開発に精通した野郎にしか出来ねぇ芸当だ。つまり、お前達の仲間に俺側(・・)の人間がいる。そうだろ?」

 「……」

 「誰だ。答えろよ死柄木」

 「私ですよ」

 

突如室内に響き渡る無機質な女性の声がカウンターの奥にある黒い画面から発せられた。画面には「SOUND ONLY」の文字。皆が画面の方を見る中、垣根は怒気を宿した眼光で画面の方を睨み付ける。一言だけだったが、確かに垣根には聞き覚えのある声。その声を聞いた垣根は吐き捨てるように言い放った。

 

 「その声…やっぱりテメェか…!木原、病理!!」

 「お久しぶりです垣根帝督。いやー覚えててくれたみたいで何よりですー。忘れられてるんじゃないかってヒヤヒヤしてましたよ」

 「テメェみたいなイカレ女、忘れろって方が無理あんだよ」

 「イカレ女とは酷いですねー」

 

機械越しにて行われる垣根と木原のやりとり。どうやら二人は旧知の仲らしいということはコンプレス達にも分かった。だが。再会を喜び合う中では決してないのだということも同時に悟る。そして垣根が再び口を開く。

 

 「木原、テメェには色々聞きたいことがあるがまず一つ、なんでテメェがこの世界にいやがる?」

 「おや?いきなりですね。もっとこう、過去の思い出話に花を咲かせたりしても…」

 「うるせぇよクソ女。俺はテメェと楽しく雑談しゃれ込む気はねぇんだよ。さっさと質問に答えろ」

 「…はぁ、せっかちな人ですねぇ。死柄木、いいですか?」

 「ま、大切なゲストだしな。答えてやれ」

 「そうですか。ええっと、この世界に私が存在する理由でしたっけ?残念ながら分かりません、というのが回答ですね」

 「あ?分からないだと?」

 「ええ、むしろ私が教えて欲しいくらいですよー。私も気付いたらこの世界に飛ばされていましてね。原因についてあれこれ考えましたがどれもピンと来ないんですよねーこれが」

 

垣根は木原のどこか呑気そうな返答に苛立ちながらも思考し始める。木原一族。それは学園都市の闇の底に巣くうマッドサイエンティスト達の名だ。学園都市の『闇』には大抵何かしら彼らが絡んでいると見ていい。常人には想像も出来ないような実験や研究を日々行っている彼らなら何か知っているのではないか、あるいは直接関与している可能性があると垣根は考えたが病理曰く違うという。勿論病理が嘘を言っている可能性もあるが、もし嘘を言っていないとするとあの木原ですら説明できない現象が起こっていることになる。無言になった垣根を見ながらトゥワイスは荼毘にひっそり話しかける。

 

 「おい荼毘、あいつら何話してんだ?こっちの世界ってどういうことだよ?」

 「さぁな。俺に聞かれても分かんねーよ。お前があの女に聞いてこいよ」

 「ヤだよ!あの女なんかこえーし!」

 

トゥワイスが荼毘と話していると垣根が再び口を開いた。

 

 「じゃあ次の質問だ。何でテメェが敵連合にいんだよ」

 「ふーむ、何でと言われると難しいんですが、簡単にお答えしますと貴方の存在を体育祭で知ったのがきっかけですね」

 「あ?体育祭?」

 「ええ、テレビで大々的に放送していたアレですよー。いやー貴方の存在を知ったときは流石の私も驚きましたよ色んな意味で」

 「……」

 「それから貴方の周辺情報、主に雄英高校について調べていったのですがその時にここの方達の存在を知りましてね、何とか活動に加えさせてもらいました。貴方に会うために」

 「…あの不快な音もテメェの仕業か」

 「ええ。最近学園都市で能力者の能力を阻害する装置が密かに出回ってましてね、興味深かったのでちょっと調べてたんですよー。この世界に飛ばされる直前に。あれはこの前私が作り上げた装置によるものです。もっとも、私が"貴方用"にちょこちょこっと手を加えましたので従来のモノとは少し異なりますがね」

 「なるほどな。確かに俺の能力開発を担当したことのあるテメェなら不可能じゃねぇかもな」 

 「そういうことです」

 

垣根はようやく合点がいったと様子を見せると今度は木原が垣根に話しかける。

 

 「さぁ垣根帝督、次は貴方の番ですよ」

 「あ?」

 「あ?ではありませんよー全く。貴方が私たちの仲間になるかどうかということです」

 「あーそれね」

 「私としても貴方には敵連合に入っていただけると都合がいいのですがどうでしょう」

 「そうか。だが生憎俺はテメェがいるってだけで死んでも入りたくなくなったけどな」

 「そうつれないこと言わないでくださいよー。私はあなたの能力『未元物質』についてもっと研究したいんです。ね?いいでしょう?」

 「結局テメェの目的はそれかよクソ女」

 

木原病理の目的を知った垣根は呆れたようにため息をつきながら言い放つ。すると木原は今度は不思議そうに垣根に問いかけた。

 

 「というか、ずっと疑問だったのですがなぜ貴方が雄英高校などと言う場所にいるのですか?」

 「!」

 「だってそうでしょう?学園都市の闇の象徴である暗部組織、その一つである『スクール』のリーダーだった貴方がなぜ雄英高校という"表"の世界で活動しているのですか?」

 

垣根は口をつぐむ。木原の言うとおり垣根帝督は学園都市では暗部組織の人間だ。『スクール』のリーダーであり、学園都市の闇に長年触れ続けて来た男である。人には公言できないような事も過去には何度も経験し、表の世界からは一線を画していた垣根がなぜ今更雄英高校に居場所を見いだしているのかと木原は暗に問うているのだ。黙ったままでいる垣根に対し、木原は更に言葉を続ける。

 

 「あなたは明らかにこっち側の人間です。そんなことは自分でも分かっていますよね?ならばなぜ、あんな学生ごっこ(・・・・・)に興じているのですか?まさか…」

 「――――――今更戻れる、とでも考えているのですか?」

 「……」

 「考えてみればおかしな話です。今回の襲撃に関して、学園都市第二位の垣根帝督とあろう者がこうも簡単に捕まってしまうとは思ってもみませんでしたよ私は。私が敵連合に手を貸したことを差し引いてもです。ですが、なるほど。どうやらあなたはぬるま湯に浸っている間に牙が抜け落ちてしまったようだ。鈍りましたねぇ随分と。彼らに、雄英のお仲間さん達に感化でもされましたか。ならば私が教えてあげます。あなたの居場所は雄英()ではなく敵連合()です。"諦め"なさい垣根帝督」

 

機械越しの木原の声が室内に響く。垣根は黙ったまま、木原もこれ以上話すつもりはないらしく再び室内に静寂が訪れる。ずっと二人のやりとりを静観していた死柄木だがおもむろに口を開いた。

 

 「荼毘、拘束外せ」

 「は?暴れるだろコイツ」

 「いいんだよ。対等に扱わなきゃな。スカウトだもの。それにいざとなりゃ木原が作った装置がある。この状況で暴れて勝てるかどうか分からない男じゃないだろう?雄英生」

 「…トゥワイス、外せ」

 「はぁ?俺!?嫌だし!」

 「外せ」

 「もうヤだ~」

 「強引な手段だったのは謝るよ。けどな、悪事と言われる行為にいそしむただの暴徒じゃねぇってのを分かってくれ。君をさらったのはたまたまじゃねぇ。」

 「ここにいる者、事情は違えど人に、ルールに、ヒーローに縛られ苦しんだ。君ならそれを――――――」

 

ゴフッ!っと鈍い音が鳴り死柄木は話を中断する。それは拘束を解いたトゥワイスが垣根に蹴り飛ばされた音だった。垣根は首に手を当てながらコキコキと鳴らし、退屈そうに死柄木を見る。

 

 「あーもうそういうのいいよ。お前らの言い分は大体分かったから。その上で回答するが返事はノーだ。残念だったな」

 「ほう、それはなぜですか垣根帝督。まさか本当に淡い希望でも抱いているのですか?」

 「…別にそんなんじゃねぇよ。テメェに言われなくても自分が最低のクソ野郎だっつー自覚はあるし、今更戻れるとも思ってねぇ。雄英にいるのもヒーロー側の人間に拾われたからってだけだ。けどな、デカい貸し作ったまま裏切るなんて真似するほど墜ちてもいねーよ俺は」

 「……」

 「だが確かにテメェの言うとおり、俺はぬるま湯につかりすぎちまったのかもしれねぇな。お前に言われて目が覚めたよ。そこだけは感謝するぜ木原」

  「…」

 

こちらを静かに睨み付ける死柄木に対し、垣根は言葉を続ける

 

 「俺は俺の邪魔する奴は何があろうと容赦しない主義でね。こんな舐めた真似したお前らはここで潰す」

 「…そうか。君とはわかり合えると思っていたが…仕方ない。ヒーロー達も調査を進めると言っていた。悠長に説得してられない。はぁ、出来れば使いたくなかったのに残念だよ垣根帝督君」

 「……」

 

死柄木が起動スイッチを押そうとしたその時、突然室内にトントントンとドアをノックする音が聞こえ、死柄木の手が止まる。

 

 「ど~も~ピザーラ神野店です」

 

室内にいる全員の意識がドアに向く。一瞬の硬直。その直後、

 

 「SMASH!!!!!」

 

オールマイトの叫び声と共にバーの壁が吹き飛ばされた。

 

 「なんだァ!?」

 「黒霧!ゲート!」

 「先制必縛!ウルシ鎖牢!」

 

黒霧が個性を発動する前にシンリンカムイが個性によって敵連合全員の身柄を拘束する。

 

 「木ィ?んなもん――――――――――」

 「逸んなよ。大人しくしといた方が身のためだぜ」

 

荼毘がカムイの木を燃やそうとする前にグラントリノが速攻を仕掛け、荼毘を気絶させる。

 

 「流石は若手実力派だシンリンカムイ!そして目にもとまらぬ古豪グラントリノ!もう逃げられんぞ敵連合…なぜって?我々が来た!!!」

 

オールマイトは鋭い眼光で睨み付けながら敵連合に力強く言い放った。

 

 

 

 




木原病理のキャラよく分かんないので何か違ったらごめんなさい。垣根の能力開発やってたってのも違ったらオリ設定ってことで勘弁してください。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。