五十四話
「「「えぇぇぇ~!?」」」
「喧嘩して・・・」
「謹慎!?」
仮免試験翌日、一回の共同スペースにてA組クラスメイト達による驚きの声が響き渡る。彼らの視線の先には、顔に湿布を貼り、腕に包帯を巻きながら掃除機をかけている緑谷と爆豪の姿があった。何でも、この二人は昨夜遅くに演習場に無断で入り、個性を使い派手に喧嘩したのだという。その罰として緑谷は3日、爆豪は4日の謹慎処分が下されたらしい。しかも謹慎中は掃除やゴミ捨てなど寮での雑務をこなさなけらばならないらしい。
「馬鹿じゃん」
「馬鹿かよ・・・」
「骨頂・・・」
「「・・・・・・」」
切島達は呆れたように言い放つ。爆豪はイライラしながら、緑谷はいたたまれなさそうにしながら黙って掃除機を動かしていた。
「それで、仲直りしたの?」
「仲直り・・・っていうものでも・・・うーん、言語化が難しい・・・」
「よく謹慎で済んだものだ!では、これからの始業式は君ら欠席だな」ヒュンヒュン
「爆豪、仮免の補習どうすんだ?」
「うるせェ!!テメェには関係ねェだろ!?」
「お前、本物の馬鹿だったんだな」
「うるせェェェェ!!!とっとと行きやがれクソ野郎共!!!」
「じゃ、掃除よろしくな~」
そういう訳で緑谷と爆豪を寮に残したまま垣根達は始業式へ向かった。
◆
「皆いいか!列は乱さずそれでいて迅速に!グランドへ向かうんだ!」ピシッピシッ
「や、お前が乱れてるよ」
「はッ・・・!?委員長のジレンマ・・・!!」ブルブル
飯田のかけ声の下、A組生徒達は教室から始業式へと向かっていた。すると、
「聞いたよA組ィ」
「!?」
廊下の柱にもたれかかり、まるでA組生徒達がくるのを待っていたかのように佇んでいるB組の物間が声をかけてきた。上鳴達を始めとするA組生徒達が思わず立ち止まると、心底こちらを馬鹿にしたような顔で勢いよく煽り始める物間。
「二名!?そちら仮免落ち二名も出たんだってぇぇぇ!!??」
「B組物間!?」
「相変わらずイカれてやがる・・・」
「さてはまたオメェだけ落ちたな?期末試験の時みたいに」
「フフフフフ・・・」バッ
「いやどっちだよ!?」
問いをスルーし、突然後ろを向いた物間にツッコミ気味に尋ねる切島だったが返ってきた答えは意外なものだった。
「ヘッ・・・こちとら、全員合格!水が空いたねA組」
「なっ・・・!?マジか!?」
「・・・悪ィ、みんな・・・」ズーン
「向こうが一方的に競ってるだけだから気に病むなよ」
「まったくだ。あんなポンコツでさえ受かってるってのにお前らときたら・・・」ハア
「」ズーン
「おい垣根テメェ!追い打ちかけてどうすんだよ!!鬼かお前は!」
「・・・っていうか君、今僕のことポンコツって言ったよね?言ったよね!?」ピキピキ
物間とA組生徒達が話しているとB組生徒だと思われる、頭に角を生やした金髪の女子生徒がこちらに歩み寄ってきて話しかけてくる。
「ブラドティーチャーによるぅと、後期ィはクラストゥゲザージュギョーあるデスミタイ。楽シミしテマス!」
「へぇー!そりゃ腕が鳴るぜ!」
「つぅか留学生さんなのねぇ」
「・・・・・・」ゴニョゴニョゴニョ
「?・・・ボコボコォに打ちのめしてヤンヨ!」
「「あッ・・・!?」」ガビーン
「プハハハハハハハッッ!」
「変な言葉教えんな!」ビシッ!
「アッ」
物間が調子に乗っていると、お目付役である拳藤が物間に手刀を食らわせ黙らせる。新学期早々B組の生徒達と絡むことになった垣根達。すると、
「おい、後ろ詰まってんだけど」
後方から垣根達に対して文句を言う声が聞こえる。声の主を見ると、それは体育祭で緑谷が戦った普通科の心操だった。
「スミマセン!さぁさぁ皆!私語は慎むんだ!迷惑掛かっているぞ!」
飯田が申し訳なさそうに心操に謝るとA組生徒達をグラウンドへ向かうよう促し、皆もそれに従い歩を進めた。
◆
校長による新学期に向けての激励、生活指導ハウンドドッグ先生による昨晩の事件についての報告と注意喚起で始業式は終わった。ヒーローインターンやら何やら気になるワードもチラホラ聞こえてきたが、それはそうと教室への帰途につく生徒達。垣根達も教室へ戻り自身の席へと着席する。皆が着席したことを確認すると相澤が教壇で話し始めた。
「じゃあまぁ、今日からまた通常通り授業を続けていく。かつてない程に色々あったが、上手く切り替えて学生の本分を全うするように。今日は座学のみだが、後期はより厳しい訓練になっていくからな」
「話ないねぇ・・・」コソコソ
「何だ芦戸・・・」
「ヒィ!?久々の感覚!」ビクッ
不意に相澤に指摘され。思わず身を固くする芦戸。すると、
「ごめんなさい。いいかしら先生」スッ
「!」
蛙吹が手を挙げて相澤に質問する。
「さっき始業式でお話に出た、ヒーローインターンってどういうものか聞かせてもらえないかしら?」
「そういや校長が何か言ってたな・・・」
「俺も気になっていた」
「先輩方の多くが取り組んでらっしゃるとか」
生徒達からインターンについての疑問が出ると、相澤は首の裏を軽くかき数秒考えた後、再び口を開いた。
「それについては後日やるつもりだったが・・・そうだな。先に言っておく方が合理的か。平たく言うと校外でのヒーロー活動。以前行なったプロヒーローの下での職場体験、本格版だ」
(はぁ・・・そんな制度あるのか・・・ん?・・・・・・・・・・・・ハッ!)
「体育祭での頑張りは何だったんですかぁぁぁ!?」クワッ!
麗日が突然立ち上がりながらそう叫ぶ。
「確かに・・・インターンがあるなら体育祭でスカウトを頂かなくとも道が開けるか」
「まぁ落ち着けよ・・・麗らかじゃねぇぞ」
「しかしィ~!!」
「・・・ヒーローインターンは体育祭で得たスカウトをコネクションとして使うんだ。これは授業の一環ではなく生徒の任意で行なう活動だ。むしろ体育祭で指名を頂けなかった者は活動自体難しいんだよ。元々は各事務所が募集する形だったが、雄英生徒引き入れのためにいざこざが多発し、このような形になったそうだ。分かったら座れ」
「早とちりしてすみませんでした・・・」
申し訳なさそうに謝りながら席に座る麗日。相澤は更に話を続ける。
「仮免を取得したことでより本格的・長期的に活動に加担できる。ただ一年生での仮免取得はあまり例がないこと。敵の活性化も相まってお前らの参加は慎重に考えてるのが現状だ。まぁ体験談なども含め、後日ちゃんとした説明と今後の方針を話す。こっちも都合があるんでな。じゃ、待たせて悪かったマイク」
ガラッ!と教室のドアが開くとプレゼントマイクは教室に入ってきて、いつものように大きな声で喋り始めた。こうして二学期の授業が始まった。垣根はというと、マイクの授業を話半分で聞きながら相澤の話を思い返していた。
(インターンねぇ・・・)
◆
「ご迷惑お掛けしましたぁぁぁぁ!!!」フンス-!
「デク君!お勤めご苦労様!」
「お勤めって・・・つか何息巻いてんの?」
三日間の謹慎が解け、緑谷が授業に復帰した。爆豪は4日の謹慎なので明日復帰予定である。三日間でついた皆との差を埋めようと朝から息巻いている様子である。
「飯田君ゴメンね!失望させてしまって!!」フンス-!
「お、おぉ・・・反省してくれればいいが・・・しかしどぉした?」
「この三日間でついた差を取り戻すんだぁぁぁぁぁ!!」
「あぁいいなそういうの!好き俺!」
「全員席に着け」
「」ビクッ!
気合いが充分すぎるほど入っていた緑谷だったが相澤の一言を聞くと静かに席に着いた。全員が席に着いたことを確認すると、相澤は話し始めた。
「おはよう。じゃあ緑谷も戻ったところで本格的にインターンの話をしていこう。入っておいで」
「?」
相澤の合図と共に教室のドアが開かれる。そして三人の雄英生生徒が教室の中にゆっくりと入ってきた。
「職場体験とどういう違いがあるのか。直に体験している人間から話してもらおう。心して聞くように」
「!!」
「現雄英生の中でもトップに君臨する3年生3名。通称”ビッグ3”のみんなだ」
「ビッグ・・・3・・・!」
「ほぉ・・・」
相澤に紹介されたビッグ3と呼ばれる三名が相澤の横に並ぶ。『トップ』という言葉に惹かれ、珍しく興味を向ける垣根であった。