かの悪党はヒーローへ   作:bbbb.

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五十五話

 「雄英生のトップ・・・!」

 「ビッグ3・・・!」

 「ビッグ3!!!」

 「栄えある雄英生の中の頂点・・・!」

 「学校の中で一番プロヒーローに近い存在・・・」

 「あの人達が・・・的な人がいるとは聞いてたけど・・・」

 「めっちゃ綺麗な人いるし、そんな感じには見えねーな」

 (目標、捕捉!)

 (あの人・・・あの時の!顔だけしか見えなかったから分かんなかったけど、思い出した!去年テレビで見た体育祭で成績こそ振るってないものの、妙なインパクトを残してた人だ。隣の二人も確か上位にはいなかったと思うけど・・・雄英ビッグ3か。どんなヒーローなんだろう)

 (コイツらがこの学校のトップって訳か)

 

 雄英ビッグ3を前に様々な感想を持つA組生徒達。

 

 「じゃ、手短に自己紹介よろしいか?まず天喰から」

 「・・・・・・!」クワッッッッッ!!!

 「「「ヒィ・・・!?」」」

 (なんて目つきだ!!!)

 (一瞥だけでこの迫力・・・!!おおおおおおおお!!!)

 

天喰の醸し出す威圧感に緊張が走るA組。しかし、

 

 「・・・ダメだ。ミリオ、波動さん・・・ジャガイモだと思って臨んでも頭部以外が人間のまま、依然人間にしか見えない・・・どうしたらいい?言葉が出てこない・・・!頭が真っ白だ、つらい・・・帰りたい・・・!」

 「「「ええええ!?」」」

 「あの・・・雄英、ヒーロー科のトップ・・・ですよね?」

 

天喰の予想外の豹変に面食らう垣根達。すると横にいた青いロングヘアーの女子生徒が楽しそうな様子で喋り始めた。

 

 「あ!聞いて天喰君!そういうのをね、ノミの心臓って言うんだって!ね!人間なのにね~!不っ思議~!」

 「彼はノミの天喰環。それで私が波動ねじれ。今日はインターンについてみんなにお話しして欲しいと頼まれてきました!けどしかし・・・ねぇねぇ、ところで君は何でマスクを?風邪?オシャレ?」

 「これは・・・昔・・・」

 「あら!あとアナタ轟君だよね?ねぇ?なんでそんなところ火傷したの?」

 「それは・・・」

 「あ!芦戸さんはその角折れちゃったら生えてくる?動くのねぇ?」

 「あぅ・・・」

 「峰田君のボールみたいのは髪の毛?散髪はどうやるの?」

 「ボ、ボール・・・」

 「蛙吹さんはアマガエル?ヒキガエルじゃないよね?どの子もみんな気になることばっかり~!不っ思議~!」

 

マシンガントークさながら、いきなり色々な生徒に話しかけてくる波動の姿に最初は呆気にとられるも、その柔和な雰囲気期にどこか和んでしまう。そして今度は尾白の尻尾に興味を持ったらしく、質問の標的を尾白に移す。

 

 「ねぇねぇ!尾白君は尻尾で体を支えられる?」

 「えっ・・・あ、あの・・・」

 「ねぇねぇ答えて!気になるの!」

 「それは・・・」

 「それで――――――――――」

 

尾白の答えを聞く前に急に一息ついた波動はテクテクと歩き、垣根の席の前に立つと垣根にも質問を投げかけた。

 

 「君が噂の歴代最強ルーキー、垣根君?」

 「・・・そんな呼ばれ方してんのは知らなかったが、まぁそうだな」

 「へぇ~そう、君が~・・・ねぇねぇねぇ!体育祭の映像で見たよあの翼!綺麗だよね~。あれはどういう個性なの?動物系の個性?それとも何か別の・・・」

 

今度は垣根を質問攻めにする波動。流石に見かねたのか、相澤がミリオに圧をかける。

 

 「・・・合理性に欠くね」ゴゴゴゴゴ

 「あっ!?イレイザーヘッド!安心して下さい!大トリは俺なんだよね!・・・・・・・・・・・・前途ォ~?」

 「「「・・・・・・」」」シーン・・・

 「前途・・・?」

 「多難~!!っつってね!よォし!ツカミは大失敗だ~!」アハハハハ

 「・・・三人とも変だよな?ビッグ3という割には・・・何かさ」

 「風格が感じられん」

 (何なんだコイツら・・・ふざけてんのか?)

 

生徒達は想像とは違うビッグ3の姿に困惑していた。するとミリオが再び話しはじめる。

 

 「まぁ何が何やらって顔してるよね。必修ってわけでも無いインターンの説明に突如現れた三年生だ。そりゃ訳もないよね。うーん・・・一年から仮免取得、だよね・・・今年の一年ってすごく元気があるよね。そうだね、何やらスベり倒してしまったようだし・・・」

 「?」

 「ミリオ・・・?」

 「君たちまとめて俺と戦ってみようよ!!!」

 「「「え

    ええええええええええ!!??」」」

 

唐突なミリオの提案に驚きの声を上げる生徒達。

 

 「戦って・・・」

 「っいきなりかよ!!」

 「俺達の経験をその身で経験した方が合理的でしょ?どうでしょうねイレイザーヘッド?」

 「・・・好きにしな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あの・・・マジすか?」

 「マジだよね!」

 

 A組生徒とビッグ3の三人全員体操着に着替え、演習場に集まっていた。先ほどミリオが提案したとおり、ミリオとA組生徒達が戦うためだ。演習場では未だに戦う実感がわかず戸惑い気味のA組生徒達と準備運動をし、戦う気満々のミリオが相対していた。波動は芦戸にちょっかいをだし、天喰は何故だか壁に頭をこすりつける姿勢で端っこの方に立っている。するとその天喰がボソッと言葉を呟く。

 

 「ミリオ・・・やめておいた方がいい」

 「遠っ!」

 「・・・インターンについては形式的に、『こういう具合でとても有意義です』と語るだけで充分だ。みんながみんな、上昇志向に満ち満ちているわけじゃない。立ち直れなくなる子が出てはいけない」

 「え?」

 「立ち直れなくなるって・・・」

 「あ!聞いて知ってる!昔挫折しちゃってヒーロー諦めちゃって問題起こした子がいたんだよ。大変だよねぇ通形。ちゃんと考えないとつらいよ。これはつらいよ~」

 「おやめ下さい・・・」

 

芦戸の角を弄りながらA組生徒達に優しく警告のようなものを伝える波動。すると、

 

 「待って下さい。我々はハンデありとはいえ、プロとも戦っている」

 「そして敵との戦いも経験しています!そんな心配されるほど俺ら雑魚に見えますか?」

 

舐められている、と感じた常闇と切島が言葉を返すと、それを聞いたミリオは力強く頷きながら言葉を返した。

 

 「うん。いつどっから来てもいいよね。一番手は誰だ?」

 「俺がァ・・・」

 「僕、行きます!」

 「意外な緑谷!」

 (・・・デク君!)

 

意外にも緑谷が一番手を名乗り上げた。垣根は無言でジロリとミリオを睨めつける。

 

 「お前ら!いい機会だ、しっかり揉んでもらえ!」

 「問題児!いいねぇ君!やっぱり元気があるなぁ!」

 (雄英トップの人・・・手合わせ願えるなんて願ってもない話だ。雄英トップと今の僕、距離はどの程度か!)

 

ドンッ!と前に足を大きく踏み込み、ワンフォーオールを発動させる緑谷。他の生徒も臨戦態勢に入った。

 

 「近接隊は一斉に囲んだろうぜ!」

 「よっしゃあ!そいじゃあ先輩!せっかくのご厚意ですんでご指導、よろしくお願いしまぁぁぁぁす!!!」

 

切島のかけ声と同時に緑谷が飛び出す。ミリオとの距離を一瞬で詰めた緑谷はそのまま蹴りを繰り出そうと右足を振り上げた。しかし、

 

 「あ!」

 「うおおおおおああああああ!!??」

 「今服が落ちたぞ!?」

 「・・・・・・」

 「あああ失礼!調整が難しくてね」

 

いきなりミリオの体から体操着がずり落ち、生身の姿が露わになる。急いで体操着を着ようとするミリオ。その隙を緑谷は見逃さない。

 

 (隙、だらけ!)

 

 ブオッ!!

 

超パワーを乗せた蹴りが風圧と共にミリオの顔目掛けて繰り出される。このタイミングで回避も防御も不可能。誰もがミリオの顔面が吹き飛ばされる未来を想像した。だが、

 

 「!?」

 

緑谷の蹴りはミリオの顔に当たることはなく、すり抜けた(・・・・・)。攻撃が当たらず、そのままミリオの後方に着地した緑谷は急いで体勢を立て直す。

 

 (すり抜け…念動能力(サイコキネシス)の応用か?いや、あれはマジで実体が消えてやがる。となれば原理は全く別物か…)

 

垣根が目を細め、ミリオの個性を分析している間に、瀬呂・芦戸がテープと酸を射出し攻撃を仕掛けるもまたもや攻撃がすり抜ける。そしてすり抜けた攻撃は緑谷の近くのコンクリート壁に激突した。

 

 「待て!・・・いないぞ!?」

 

黒煙が晴れると先ほどまでそこに目の前にいたはずのミリオが姿を消していた。皆がミリオの姿を探していると、

 

 「まずは遠距離持ちからだよね!!」

 

突然後方からミリオの声が聞こえる。皆が一斉に後方へ振り返ると、

 

 「いやあああああああああ!!!」

 

近くにいた耳郎が思わず悲鳴を上げる。どういう訳か、A組集団の一番後方から突然全裸姿のミリオが姿を現したのだ。切島達は訳が分からないといった表情を浮かべていた。

 

 「ワープした!?」

 「すり抜けるだけじゃねぇのか!?」

 「どんな強個性だよォ!!??」

 「・・・違う。ミリオの個性は決して羨まれるモノじゃない。僻むべきはその技術だよ一年坊」

 

天喰はミリオの戦いを見ながら一人そう呟く。ミリオは宣言通り、次々と遠距離系個性持ちの生徒達に拳をたたき込み戦闘不能にしていく。その光景は正に圧巻。個性を使わず、ただ拳をたたき込んでいるだけなのに生徒達は誰もミリオを捉えることは出来なかった。

 

 「POWERRRRRRRRRRRR!!!」

 「通形ミリオ・・・」

 「!」

 

呆気にとられている轟を他所に相澤がボソリと呟く。

 

 「あの男は俺に知る限り、最もNo.1に近い男だ。プロも含めてな」

 「一瞬で半数以上が・・・!?あれがNo.1に最も近い男・・・!」

 

轟が目を見開く横で、相澤もフィールドの方をじっと見つめていた。

 

 (…だと今まではそう思っていたが…)

 

そこまで心の中で呟くと、相澤はフィールドのある人物の方へ視線を向け、

 

 (どうする?垣根)

 

垣根に問いかける。すると、ふと何かを思いだしたかのように、相澤は隣の轟に質問を投げた。

 

 「お前行かないのか?No.1に興味が無いわけじゃないだろう?」

 「・・・俺は仮免取ってないんで」

 (丸くなりやがって・・・)

 

 

 

 一方のミリオ達はと言うと、遠距離個性持ちをほとんどノックアウトしたミリオは近接隊と向き合っていた。

 

 「遠距離はあらかた片付いた。あとは近接主体ばかりだよね!」

 「何したのかさっぱり分かんねぇ!」

 「すり抜けるだけでも強いのに、ワープとか・・・」

 「それってもう、無敵じゃないですか!」

 「よせやい!」

 

ミリオの反則めいた力に戦くA組生徒達。その様子を見ていた天喰は、

 

 (・・・無敵か。その一言だけで君らのレベルが推し量れる。例えば素人がプロの技術を見ても何が凄いのかすら分からないように、ミリオがしてきた努力を感じ取れないのなら一矢報いることすら出来ない)

 

諦観したように心の中で呟いた。すると、

 

 「な訳ねぇだろ。ちっとは頭使って考えろ」

 「!」

 

突然垣根の声が聞こえ、天喰は思わず目線を向ける。切島達や天喰達の視線が集まる中、垣根は言葉を続けた。

 

 「この世に無敵のやつなんざいねぇ。どんだけ強い個性だろうと、必ずそこには理論が存在する」

 「理論・・・?」

 「垣根君の言うとおりだ。何かからくりがあると思うよ。すり抜けの応用でワープしてるのか、ワープの応用ですり抜けてるのか、どっちにしろ直接攻撃されるわけだからカウンター狙いで行けばこっちも触れられるときがあるはず!何してるか分かんないなら分かってる範囲で仮説を立ててとにかく勝ち筋を探っていこう!」

 「おォ!サンキュー!謹慎明けの緑谷スゲェいい!!」

 「だったら探ってみなよ!」

 

言うと同時にミリオが走り出す。そして走っている最中にまたしてもミリオの体が沈み、目の前から姿を消した。

 

 「沈んだ!」

 (現れるとすれば・・・)

 (・・・・・・)

 

一瞬の静寂の後、緑谷の背後の地面から全裸のミリオが勢いよく浮上する。ミリオの動きに反応出来たのはたった二人。

 

 (ここ!!!)

 

背後へ振り向くと同時にミリオに向けて蹴りを放つ緑谷。

 

 (反応じゃない!俺がここに現れるのを予測した!?)

 

緑谷の動きに一瞬驚きを見せるもすぐさま次の手を打つミリオ。

 

 「だが・・・必殺!ブラインドタッチ目潰し!」

 「!?」

 

すり抜けを利用した目潰し攻撃。すり抜けると分かっていても思わず目をつぶってしまった緑谷。ミリオはその隙を逃さず、自身の右拳を緑谷の腹部に勢いよくたたき込んだ。

 

 「ウッ・・・!?」

 「ほとんどがそうやってカウンターを画策するよね!ならば当然、そいつを狩る訓練!するさ!」

 「緑谷君!?」

 

緑谷に拳をたたき込んだ直後、再び地中へ潜るミリオ。そして今度は飯田の背後に出現し、飯田の不意をついて攻撃した。

 

 「うあっ・・・!?」

 「クッソォ・・・!!」

 

ミリオの動きを捉えようとしてもすぐに地中へ消えてしまい、全く捉えられない。そして一瞬で地上に現れては生徒達の腹部に的確に、力強く攻撃を入れていく。気付けば垣根以外の生徒達は全員地面に伸されていた。そしてミリオは最後のターゲット、垣根に向かって攻撃を仕掛ける。

 

 「さぁラストだスーパールーキー!最後まで残しておいたんだ、楽しませてくれるよね!」

 

言うが早いか、ミリオの体が地中に沈む。数秒後、垣根の背後から勢いよく浮上するミリオ。だがミリオの体がジャンプの頂点に達する前に垣根も振り返り、ミリオの顔を見据える。

 

 「何度も何度も馬鹿の一つ覚えみてぇに背後から現れやがって。猿でも読めるぞ」

 「お!君も予測してきたか!なら!」

 

垣根がミリオの方へ右手を伸ばす。対してミリオは先ほど緑谷に喰らわせたのと同じ要領でブラインドタッチ目潰しを喰らわせようとした。

 

 「ブラインドタッチ目潰し!」

 

ミリオの左腕が垣根の伸ばしてきた右腕をすり抜けて、あっという間に垣根の眼前まで到達し、垣根の顔をすり抜ける。そしてミリオは体をひねらせ、ノーガード状態の腹部に勢いよくパンチをたたき込んだ。

 

 ゴシュッ!

 

 (手応えアリ!)

 

ミリオは腹部に確かな手応えを感じるとゆっくりとその右腕を引き抜こうとした。だがその時、

 

 ガシッ!

 

突然自身の腕が何かに掴まれる感触を覚えるミリオ。そして、

 

 「痛ってぇな」

 「!?」

 

垣根の声が聞こえ、慌てて自身の右腕を見ると垣根の左腕にガッチリ掴まれていた。

 

 (馬鹿な!?俺のパンチを耐えた?いやそんなはずはない。当たり所が浅かったなら分かるけど、あの感触は確かに腹を穿つ感触だった。俺の拳をまともに食らって平気でいられるわけがない。だとしたらなぜ・・・?)

 「フッ・・・」

 「!」

 

考えるより先に個性を発動したミリオ。それとほぼ同時にミリオの体を純白の翼が貫いた。ミリオの察知の方がほんの僅かに早く、そのおかげで何とか垣根の攻撃をすり抜けさせることに成功した。

 

 「チッ」

 

垣根は仕留め損なったことに思わず舌打ちをする。するとミリオは掴まれている右腕も透過させ、すり抜けることで垣根の拘束から逃れ、再び地中へと潜った。そして垣根から距離を取った場所へ浮上すると、背から白い翼を顕現させている垣根と向き合った。

 

 「馬鹿な!?ミリオが仕留め損なった・・・」

 「えぇ~!ビックリ~!!」

 

天喰と波動は信じられないという表情で垣根を見つめる。そしてミリオもこれには少し驚いた様子だった。

 

 「驚いたよね。確かに入ったと思ったんだけど、どうやって防いだんだい?」

 「さぁな」

 「えー教えてくれたっていいじゃんか~ケチ!」

 「ガキかアンタは」

 「ハハハ!それに君、俺の攻撃を凌ぐばかりか仕留めようとしてきたよね?マジでギリギリだったよ、危ない危ない」

 「ああ。結構本気で()りにいったんだが、やるじゃねぇか。ハッ、ビッグ3の名は伊達じゃねぇってか?」

 「・・・全く、おっかない後輩がいたもんだ」

 

会話を交わしながら両者は再び臨戦態勢に入り、考えを巡らせる。

 

 (どうやって俺の攻撃を防いだのか分からないけど、とりあえずその防御手段がある以上、迂闊に近づけないよね。やっぱり隙を作るしかない。透過移動で攪乱し、隙が出来たら今度こそそこを叩く!)

 

頭の中で指針を立てたミリオは再び地中へ潜る。対する垣根は純白の翼を羽ばたかせ、宙へ浮上していき、ミリオが地中に潜った地点を見下ろしながら思考を巡らせる。

 

 (能力は『透過』。どんな攻撃もすり抜ける。ただし攻撃する際は実体化をしなければならないってとこか。普通の攻撃が効かない以上、実体化したときのカウンター狙いってのがセオリー。実際緑谷がやってたのがそれだ。だが……)

 (その”セオリー”が通じねぇのが『未元物質』。そのインチキじみたすり抜け、正面から突破してやるよ)

 

垣根は演算を開始する。翼に力を込め、ミリオの出現を待つ。すると突然地中からミリオが勢いよく飛び出した。だが肝心の垣根の姿が見当たらなく、地面に着地しながら困惑気味に周囲を見渡すミリオ。

 

 「あれぇ~?どこいった…って上か!」

 

垣根が上空からこちらを見下ろしている姿を視認すると力強く地面を蹴り、一気に跳躍する。対する垣根も巨大な翼をしならせ、ミリオに烈風攻撃を放った。

 

 「効かないよ!」

 

垣根が放った烈風をすり抜け、垣根との距離を詰めるミリオ。だが垣根は表情を崩さず、向かってくるミリオをじっと観察する。

 

 (一方通行の時と要領は同じだ。どんな攻撃もすり抜けるとは言ってもそれは”普通”の攻撃ならの話。俺の未元物質はこの世界に存在しない物質。既存の常識は通用しない。つまり、奴の透明化に未元物質が干渉できる可能性はあるはずだ)

 

垣根は高速で演算を行ないながら、

 

 「この烈風の意味がお前には分かるか?」

 

ボソッと呟くも、透過しているミリオには届かない。そしてミリオが垣根と接近する直前、ミリオの髪の毛が不自然に揺れる。まるで風に吹かれたように。それを視認した垣根はニヤリと笑みを浮かべた。

 

 「――――逆算、終わるぞ」

 

垣根の言葉をよそに、ミリオが拳を振り抜く。全身を透過している今のミリオには垣根の姿は見えていないのでほとんど勘だったが、その拳は確かに垣根を捉えるものだった。拳が垣根の下へ届くまでの一瞬で垣根は逆算から得た情報を元に自身の翼を再構築し、白い翼を叩きつけた。

 

 「ごっ、はぁ……………………ッッッ!?」

 

三枚の翼がミリオの腹部に直撃し、思わずうめき声を上げるミリオ。白い鈍器に射貫かれたミリオの体は強い衝撃と共にそのまま地面に叩きつけられた。

 

 「どうして……?個性は解除してないはず…………何で攻撃が当たった?」

 

戸惑いを隠せない様子のミリオ。取り敢えず起き上がろうとするも自身の体が動かないことに気がつく。視線をずらすと三枚の白い翼がミリオの体を抑えつけ、身動きできないようにしていたのだ。何とか抜けだそうと体をよじっていると、上から更に一枚の翼が伸びてきてミリオの喉元に突きつけられ、思わず動きを止めるミリオ。

 

 「どうするよ。まだやるか?」

 

垣根はミリオを見つめながら問いを投げる。するとミリオもゆっくり息を吐き出しながら観念したように答えた。

 

 「参った。降参だ」

 

その言葉と共にミリオによる模擬戦は終了した。

 

 

 

 




ちょっと内容変えました。
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