「ギリギリチンチン見えないように努めたけどすみませんね女性陣!・・・とまぁこんな感じなんだよね」
「垣根君以外訳分からず全員が腹パンされただけなんですが・・・」
ミリオとの戦闘を終えたA組。ほとんどがミリオの腹パンを喰らってしまい、腹部に手を当てながら呻いていた。
「俺の個性、強かった?」
「強すぎッス!」
「ズルイや!私のことも考えて!」
「すり抜けるしワープだし、轟みたいなハイブリッドですか~!?」
「いや、一つ!」
「えっ・・・一つ!?」
「は~い!私知ってるよ個性!ねぇねえ言っていい?言っていい?」
予想外の答えに思わず聞き返してしまう緑谷。するとミリオの隣にいた波動が朗らかに手を挙げ会話に割って入る。
「透過!」
「波動さん・・・今はミリオの時間だ」
「そう!俺の個性は透過なんだよね!君たちがワープと言うあの移動は推察されたとおりその応用さ!・・・あぁゴメンて」
「」プク-
ミリオに言葉を奪われ、ふくれっ面でミリオの体操着を引っ張る波動。ミリオから種明かしされた緑谷達だったが、それでもまだピンときていない様子だった。
「どういう原理でワープを?」
「全身個性発動すると俺はあらゆるモノをすり抜ける。あらゆる、即ち地面もさ!」
「はっ・・・!じゃああれ、地面に落っこちてたってこと!?」
「そう!地中に落ちる!そして落下中に個性を解除すると不思議なことが起こる。質量のあるモノが重なり合うことは出来ないらしく、弾かれてしまうんだよね!つまり俺は瞬時に地上へ弾き出されているのさ!これがワープの原理。体の向きやポーズで角度を調整して、弾かれた先を狙うことが出来る!」
ミリオが自身の個性についてネタ明かしをしている様を黙って聞くA組生徒達。緑谷の仮説通り、あのワープはすり抜けの応用だったのだ。ミリオの話を黙って聞いていた垣根だったが、ここで初めて口を挟む。
「だから浮上する瞬間は実体化する必要があったってことか」
「そう!」
「ゲームのバグみたい」
「イイエテミョー!」ブフォ
「攻撃は全て透かせて自由に瞬時に動けるのね。やっぱりとても強い個性・・・」
蛙吹がミリオの個性について感嘆していると、ミリオは静かに答える。
「・・・いいや。強い個性にしたんだよね」
「?」
「個性発動中は肺が酸素を取り込めない。吸っても透過しているからね。同様に鼓膜は振動を、網膜は光を透過する。あらゆるものがすり抜ける。それは何も感じることが出来ず、ただただ質量を持ったまま落下の感覚があるということなんだ。分かるかな?そんな感じだから壁一つ抜けるにしても、片足以外発動、もう片方の足を解除して設置、そして残った足を発動させすり抜け。簡単な動きにもいくつか工程がいるんだよね」
「急いでるときほどミスるなぁ俺だったら」
「おまけに何も感じなくなってるんじゃ動けねぇ・・・」
「そう。案の定俺は遅れた。ビリッけつまであっという間に落っこちた。服も落ちた。この個性で上に行くためには遅れだけはとっちゃダメだった。予測!周囲よりも早く!時に欺く!何より予測が必要だった。そしてその予測を可能にするのは経験。経験則から予測を立てる。長くなったけどコレが手合わせの理由。言葉よりも経験で伝えたかった!インターンにおいて、我々はお客ではなく一人のサイドキック、プロとして扱われるんだよね。それはとても恐ろしいよ?プロの現場では時に人の死にも立ち会う。けれども、怖い思いもつらい思いも全て学校じゃ手に入らない一線級の経験!俺はインターンで得た経験を力に変えてトップを掴んだ!ので!怖くてもやるべきだと思うよ一年生!」
(経験を、力に・・・!)
ミリオの力強い演説に感激し、思わず拍手を送るA組生徒達。
「話し方もプロっぽい!」
「一分で終わる話をここまでかけてくださるなんて!」
「・・・お前それ何気にdisってるだろ」
「お客か・・・確かに職場体験はそんな感じだった」
「危ないことはさせないようにしてたよね」
「インターンはそうじゃないってことか・・・」
「仮免を取得した以上、現場に出ればプロと同格に扱われる」
「・・・うん!」
「覚悟しとかなきゃな・・・」
「上等だっての!」
「そうだよ!私たちプロになるために雄英入ったんだがら!」
「そうだな」
「上昇あるのみ」
「プルスウルトラ」
ミリオの話に感化され、生徒達はインターンへの参加意欲が高まっていた。そんな中、相澤が生徒達に声をかける。
「そろそろ戻るぞ。挨拶」
「「「ありがとうございました!!!」」」
A組生徒達との模擬戦闘が終わり、制服に着替え教室へ戻るビッグ3の三人。廊下を歩きながら三人は先の戦闘について話していた。
「ねぇねえ!無駄に怪我させるかと思ってたの知らなかったでしょ?でも全員怪我なしでエラいなぁと思ったの今」
「いやしかし危なかったんだよねチンチン――――」
「誰かおもしろい子いた?気になるの。不思議ィ~!私はやっぱり垣根君かなぁ~。まさかミリオを倒しちゃうなんてね~驚きだよね~!」
「あぁ。完敗だった。実戦だったら俺死んでたかも。判断力、分析力、そしてあの個性、どれを取っても申し分なかったね。流石はスーパールーキー君だよ!あとは・・・あっ!件の問題児君!最後列の人間から倒していく俺の対敵基本戦法だ。あの子、俺の初手を分析し予測を立てた行動だった。両方ともサーが好きそうだ!」
ミリオは晴れやかな顔でそう言った。
◆
翌日、ホームルームで相澤が再びインターンについて触れる。
「プロヒーローの職場に出向き、その活動に協力する職場体験の本格版『ヒーローインターン』ですが、昨日職員会議で協議した結果、校長始め多くの先生が・・・”やめとけ”という意見でした」
シーン・・・
「「「ええええええええええ!!??」」」
いきなりの発言に驚きを隠せない生徒達。昨日の今日でこの発言だ、生徒達が困惑するのも無理はない。
「あんな説明会までして!?」
「でも、全寮制になった経緯から考えたらそうなるか・・・」
「ザマァ!!!!」
「参加できないからって・・・」
「・・・が、今の保護下方針では強いヒーローは育たないという意見もあり、方針としてインターン受け入れ実績が多い事務所に限り一年生の実施を許可する、という結論に至りました」
「・・・っ!クソがァァァァ!!!」
(・・・インターン受け入れ実績の多い事務所=上位のプロヒーロー事務所みたいなもんだろ。そんなレベル高いとこに一年が入れてもらえんのかは疑問だがな)
という訳で一年生は限定付きではあるが、一応インターンに行くことが出来るようになった。職場体験で得たコネを使えるかどうか不安を胸中に抱く生徒が多かったが、インターンの話はそこで終わり授業に移った。
◆
新学期が始まり、初めての週末。垣根は午前中から演習場を借り、未元体への『未元物質』実装に取り組んでいた。といっても、『自分だけの現実』を実装するのはまだ難しいので、能力の噴出点を設けることで擬似的な『未元物質』の発現を可能にさせようと垣根は考えていた。まだ完成には至っていないが、明確な目標がある分、以前よりはやり易い。この調子でいけば完成する日もそう遠くはないだろう。確かな手応えを掴みながら演習場を後にし、寮へと戻る垣根。そして緑谷達がいるテーブルまで行き、蛙吹の横の空いているソファに腰掛けた。すると同じくソファに座っていた麗日が垣根に声をかける。
「あ!ていとくん!ねぇねぇ聞いてデク君凄いんだよ!」
「あ?」
「なんとデク君、インターン先決まったんだって〜」
「へぇ」
目を丸くして緑谷の方を見ると、緑谷は恥ずかしそうに下を向く。
「やったじゃねぇか。一番乗りってか」
「ほんと!凄いじゃん!」
「おめでとう緑谷君!」
「ありがとう」
「俺もうかうかしてられないな!」
すると上鳴達も垣根達のいるテーブルに近づいてきて、緑谷を祝福しにくる。
「けどホントすげぇよ緑谷」
「ああ!なんたってあのサー・ナイトアイの事務所だもんな」
「通形先輩の推薦だって!?」
「よくやったな!」
「あはは・・・」
頬をかきながらどこか気まずそうな様子の緑谷。一方の麗日や蛙吹、切島はどこか浮かない顔つきでいた。
「学校側からガンヘッドさんインターンの実績が少ないからダメやって言われた・・・」
「私も。セルキーさんのとこに行きたかったわ」
「フォースカインドさん、インターン募集してねぇんだもんな・・・」
どうやら職場体験で得たコネは使えなかったらしい三人組。やはりインターン実績の多い事務所に限り、という条件付きでは中々希望通りにとはいかないのだろう。
「つーか元から敷居が高いんだよ」
「インターンの受け入れ実績があるプロにしか頼めないからなぁ・・・」
「仕方ないよ。職場体験と違ってインターンは実戦。もし何かあった場合・・・」
「プロ側の責任問題に発展する」
「相澤先生・・・!」
尾白の言葉を継ぐかのように会話に入ってきた相澤に全員視線を向ける。相澤は構わず気怠げな様子で言葉を続けた。
「リスクを承知の上でインターンを受け入れるプロこそ本物。常闇、その本物からインターンへの誘いが来ている。九州で活動するホークスだ」
「ホークス!?」
「ヒーローランキング3位の!?」
「すげぇ!!」
「流石だな!」
「どうする?常闇」
「謹んで受諾を」
「分かった。後でインターン手続き用の書類を渡す。九州に行く日が決まったら教えろ。公欠扱いにしておく」
常闇に対し、プロヒーロー界きっての実力者から指名がきたことに驚く生徒達だったが、相澤の話はそれだけで終わらず今度は切島に声をかける。
「それから切島、ビッグ3の天喰がお前に会いたいそうだ」
「俺ッスか!?」
「麗日と蛙吹にも波動から話があるらしい。明日にでも会って話を聞いてこい」
「天喰先輩、何の用だろ?」
「やはりインターン絡みの話じゃないかしら?」
「うそ!?もしそうなら期待してまう!」
三人がビッグ3からの指名に期待を膨らませる中、相澤は最後に垣根に声をかける。
「そして垣根、お前にもインターンの誘いが来てるが・・・少々数が多い。後で俺の部屋に来い」
「あ?」
「えぇ!?複数指名が来ることなんてあるんすか!?」
「・・・ま、インターンや職場体験なんてのは生徒側にとってもプロ側にとってもコネ作りの場でもある。お前らは卒業後、どこの事務所に入りたいか人それぞれ願望を持ってるだろうが、それはプロ側も同じ。将来サイドキックとして雇いたい有望な若手がいれば学生のうちから手を付けておく。三年なんかでは指名が被るのはよくあることだ」
「えぇ・・・ってことはこの時期からもう目付けられてんのかよお前・・・」
「体育祭優勝者だしな・・・」
(・・まぁ、一年のこの時期にこんだけ上位陣から指名が来てる奴は俺も見たことないがな)
「へいへい。分かりましたよ。後で行きますわ」
「そうか。以上だ」
そう言うと相澤はロビーから去って行った。
◆
「これがお前を指名してきたヒーロー事務所一覧だ」
「・・・・・・」
相澤の部屋を訪れた垣根は相澤から一枚の紙を手渡される。そこには垣根をインターンに指名したヒーロー事務所の名前がズラッと並んでおり、職場体験の時に世話になったホークスの名前や先ほど緑谷の話に中で挙がっていたナイトアイの名前もあった。
「お前は確か、職場体験の時にホークスのとこ行ったんだったな。ホークスからも指名来てるし、順当に考えればホークスのとこか」
「ホークスねぇ・・・」
「?何だ、気が乗らないのか?」
「個人的にいけ好かねぇ」
「・・・・・・他の上位陣となればエッジショットやミルコあたりだが・・・」
「ミルコ?」
「?どうした?」
「確かソイツ、サイドキックも雇わず事務所も構えねぇイカれた野郎じゃなかったか?」
垣根が相澤の口にしたヒーロー名に反応し尋ねると相澤が返答した。以前時間のある時に上位のプロヒーローについては大方調べた垣根だったので、ミルコという名前がここで出ることに違和感を覚えたのだ。
「そうだな。プロヒーローの中でもかなり特殊な活動体系だ」
「おかしいじゃねぇか先生よ、今回のインターンはインターンの受け入れ実績の多い事務所のみに限定されてるはず。コイツがその条件に当てはまるとは思えねぇが。つか事務所ないとか論外だろ」
「あぁ、まぁそうだ。実際過去にもミルコがインターン指名してきたことはない。そういう意味じゃ今回の選考から外れるのが合理的だ。だがどういう訳か、今回は急にお前だけ指名してきてな。色々事情を話したが、聞き入れてくれなかったらしい」
「何だよそれ」
「学校側としても協議したんだが、ミルコは確かにインターン受け入れ経験は無いが、その実力はヒーローランキングで毎回必ずトップ10入りする程。女性プロの中じゃNo.1の実力者ってのもあり、信頼できるだろうというのが学校側としての結論だ。それに・・・」
「・・・?」
「ミルコの指名がお前だったからな。他の奴ならともかく、お前の実力ならどこでもやれそうだと」
「・・・ちとガバガバすぎねぇか?」
「分かってるよ。別に行けと言ってるわけじゃない。あくまで一応選択肢の一つとして認められたって事だ。俺個人としてもオススメはしない。もっとインターン実績があって信頼できる事務所の方が合理的だ」
「ふむ。最終的には俺次第だしってことか」
「そうだな」
相澤が目をつむりながら言う。しかし垣根はまだ疑問が尽きないでいた。
「しかし妙だよな。サイドキックを雇わねぇって奴がなぜ俺を指名する?一人で活動したいってタイプなんだろ?」
「確かにそうだが、『
「チームアップミッション?何だそれ?」
「いや、何でもない。こっちの話だ。ま、あの人のことだ、どうせ『面白そう』とかそんな単純な理由だろうよ」
「何だそりゃ」
まだ完全には腑に落ちていない様子の垣根だったが、相澤が話を締める。
「とにかくだ、もしインターン行くんだったらその中から選べ。決まったら俺に教えろ」
「あいよ」
相澤の話が終わると、垣根は部屋を後にした。
インターン先、どうするか迷ってます。
サーのとこでもいいけど、うーん・・・どうしよう
ミルコ出したのは個人的に好きだからですw
あと、「あれ?常闇って職場体験ホークスのとこ行ってないから指名来ないんじゃね?」的疑問は、そういうもんだと思ってスルーしてくれると嬉し・・・