かの悪党はヒーローへ   作:bbbb.

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五十八話

 

 垣根はガチャリと寮の扉を開け外に出る。今日もミルコのインターンに呼ばれた垣根。前回の実施から少し経ったので、久しぶりのインターンとなった。しかし垣根が扉を開けると、すぐ外には緑谷・切島・麗日・蛙吹の四人が集まっているのが目に入る。すると切島達も垣根に気付き、垣根に声をかけた。

 

 「もしかして垣根もインターンか?」

 「あぁ。そうだが・・・その口ぶりから察するにお前らもか?」

 「おう!偶然出くわせてな。お前も途中まで一緒に行かねぇか」

 「・・・あぁ、そうだな」

 「よし!じゃあ出発~!」

 

麗日の軽やかなかけ声と共に学校を発つ垣根達。途中でプロヒーローに駅まで送ってもらったので早めに駅に着くことが出来た。改札の中に入り、ここらで誰か別れることになるかと思いきや、皆同じ電車だという。

 

 「あれ?皆こっち?切島君関西じゃ・・・」

 「なんか、集合場所がいつもと違くてさ」

 「私たちもそうなの」

 「垣根君も?」

 「俺もっつぅか、俺は毎回場所違うからな」

 「あぁそうか。ミルコだもんね」

 

皆が同じ方面であることに些か疑問を持つ五人だったが、そのまま電車に乗りこんだ。さらに、電車の中で五人の降りる駅を確認したがなんと皆同じ駅で降りる予定だという。こんな偶然もあるもんなのかと不思議に思いながら電車に揺られ、目的の駅で下車する緑谷達。だが奇妙なのはそれだけではなく、なんと駅から出て向かう方向も五人全く同じだったのだ。垣根は一番後ろを歩きながらこの状況から導かれる答えを推察していた。

 

 (まさか五人全員向かう先が一緒でしたってオチか?こりゃ)

 

そんなことを考えながら歩いている内に目的の建物へ到着する五人。すると、その建物の前には雄英ビッグ3の三人が揃っているのが確認でき、彼らも緑谷達が到着したのを見ると意外そうな顔でこちらを見つめてきた。どうやら、彼らもこの状況をよく分かっていないようだ。何が何だか分からなかったが、とりあえず中に入ろうということで彼らは建物の中に足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 建物中には大勢のプロヒーローがいた。緑谷達のインターン先のヒーロー達は勿論、他の有名どころのヒーローやご当地ヒーローなどまさに勢揃いという感じだ。垣根はその中にグラントリノの姿を視認すると急いで駆け寄っていった。

 

 「おいジジイ!」

 「ん?おぉ帝督!お前も来たか」

 「来たかって・・・どういうこったよこりゃ」

 「あぁ、それはな・・・」

 「おう垣根!やっと来たか!」

 「ミルコ・・・」

 

垣根がグラントリノと話している途中にミルコが割り込んできた。垣根はミルコに視線を移す。

 

 「どういうことか説明あるよな?」

 「おう!アイツからな!」

 「アイツ?」

 

ミルコが指さす方向を見るとそこにはサー・ナイトアイの姿があった。皆が彼を見つめる中、ナイトアイは話し始めた。

 

 「あなた方に提供して頂いた情報のおかげで調査が大幅に進みました。死穢八斎會という小さな組織が何を企んでいるのか。知り得た情報の共有と共に協議を行なわせてもらいます」

 

 (死穢八斎會?)

 

聞き慣れない言葉に疑問を持つ垣根だったが、ナイトアイが全員に会議室の席に着くよう促したので取り敢えず席に着く。ナイトアイが議長席に座り、他の者達がそれをコの字形で囲むようにして座る形となった。全員が席に着くとナイトアイのサイドキックであるバブルガールが話を進める。

 

 「えー・・・それでは始めて参ります。我々ナイトアイ事務所は約二週間前から死穢八斎會という指定敵団体について独自調査を進めています」

 「きっかけは?」

 「レザボアドッグスと名乗る強盗団の事故からです」

 「ありましたね」

 「警察は事故として片付けてしまいましたが、腑に落ちない点が多く追跡を始めました」

 「私、センチビーダーがナイトアイの指示の下、追跡調査を進めていました。調べたところ、死穢八斎會はここ一年の間に全国の組織外の人間や、同じく裏稼業団体との接触が急増しており、組織の拡大・金集めを目的に動いているものと見ています。そして調査開始からすぐに敵連合の一人、分倍河原仁、敵名『トゥワイス』と接触。尾行を警戒され追跡は叶いませんでしたが、警察に協力して頂き組織間で何らかの争いがあったことを確認」

 「連合に関わる話なら、ということで俺や塚内にも声が掛かったんだ」

 (ふむ。要は死穢なんちゃらとかいう敵団体を調査してる内に連合と関わりがある可能性が出てきたからジジイも呼ばれたってわけか。流れ何となくは理解したが、じゃあ俺らが呼ばれた理由は何だ?つか肝心の死穢なんちゃらってのはまず何なんだよ)

 

いくつかの疑問を残るものの、垣根は今までの話の流れを頭の中で整理する。するとグラントリノが垣根に対し話を振ってきた。

 

 「・・・帝督、小僧。まさかこうなるとは思わなんだ。面倒なことに引き入れちまったな」

 「・・・・・・」

 「面倒だなんて思ってないです」

 (…そして前から思ってたが、緑谷とジジイはどういう関係なんだ?)

 

以前ヒーロー殺しと遭遇した際、緑谷の職場体験先がグラントリノであることを知って以来、二人の関係については気になっていた。バタバタしていて中々聞く機会が無かったので、今度落ち着いたら聞き出してやるかと考えていると、隣に座るミルコが垣根の脇腹をちょんちょんと小突いてきた。

 

 「何だよ?」

 「お前、あのじいさんと知り合いなのか?」

 「・・・あぁ。育ての親みたいなもんだ」

 「へぇ!お前の親なのか!ただもんじゃねぇとは思ってたが、どうりで!やっぱつえーのか?あのじいさん」

 「どうだかな。ただの面倒くせぇジジイだよ」

 「・・・続けて」

 

少し脱線しかけていた所をナイトアイが話を戻す。話を聞いていくとどうやら死穢八斎會は許可されていない薬物の捌きをシノギの一つにしている可能性があり、そこでその道に詳しいヒーロー達を招集したと言う事らしい。だがここまで聞いても垣根の頭の疑問は消えない。なぜ自分達が呼ばれたのか。垣根が呼ばれたのは恐らくミルコが呼ばれたからだと推測できるが、ミルコが薬物取引に精通しているヒーローだとは思えないしそんな話は聞いたこともない。ならなぜ自分達は呼ばれたのだろうかと考えていると、切島のインターン先のヒーローであるファットガムが話し始めた。

 

 「昔はゴリゴリにそういうんぶっ潰しとりました!そんで先日のレッドライオットのデビュー戦。今までに見たことない種類のモンが環に撃ち込まれた。個性を壊すクスリ」

 「個性を壊す!?」

 

ヒーロー達がファットの話に驚愕する中、垣根は頭を働かせる。

 

 (今までに見たことのないもの・・・撃ち込まれる・・・クスリ・・・・・まさか・・・!)

 

何かを思いついた様子の垣根はミルコの方へ顔を向け尋ねる。

 

 「あの弾か」

 「そうだ。あれがファットの言う個性を壊すクスリらしい」

 「なるほどな。だから俺達も呼ばれた訳か」

 

垣根はようやく自分達がここに招集された意味を理解した。一つの疑問が解けたところで垣根は再び会議に意識を戻す。クスリを撃ち込まれた天喰だったが、一日寝たら無事個性を発動することが出来たらしい。このことから回復性があるクスリだということが判明。だが、同系統の個性持ちである相澤の話によると、相澤の『抹消』とは少しメカニズムが違うらしい。相澤は個性発現の元となる個性因子を一次停止させることで能力を消しているらしいが、例のクスリは個性因子そのものを傷つけるものだということが分かったという。そこまで聞くとナイトアイがファットに尋ねた。

 

 「その撃ち込まれた物の解析は?」

 「それが環の体は他に異常なし。ただただ個性のみが攻撃された。打った連中もダンマリ。銃はバラバラ。弾も撃ったっきしか所持してなかった。ただ切島君と垣根君が身を挺して弾を弾いたおかげで中身の入った弾が入手できちゅうわけや。せやな?ミルコ」

 「あぁ!コイツが1発弾いた!」ガシッ

 「・・・・・・」

 

ミルコが垣根の頭をがしっと掴みながら答えると垣根は鬱陶しそうにその手を払う。更にファットが話を続ける。

 

 「そしてしてその中身を調べた結果、むっちゃ気色悪いもんが出てきた。人の血や細胞が入っとった」

 (人の・・・血液・・・)ドクン

 「えぇ・・・」

 「ほぉ・・・」

 「つまりその効果は人由来。個性ってこと?個性による個性破壊・・・」

 「うーん・・・さっきから話が見えてこないんだが、それがどうやって八斎會と繋がる?」

 

その質問にファットが答える。何でも、違法薬物を末端へ売りさばいていた中間組織の一つと死穢八斎會は交流があり、また、リューキュウ達が先日退治した敵グループの内、片方のグループの元締めがその交流のあった中間売買組織だったらしい。これらの事実から、最近多発している違法薬物による組織的犯罪が死穢八斎會に繋がるとナイトアイ達は主張するが、未だに納得しかねているヒーローもいた。そこでナイトアイはモニターに治崎の写真を写しだし、新たな情報を話し始めた。

 

 「若頭・治崎の個性は『オーバーホール』。対象の分解・修復が可能という力です。分解、一度壊し直す個性。そして個性を破壊する弾・・・」

 「「!?」」

 「治崎には壊理という名の娘がいる。出生届もなく詳細は不明ですが、ミリオと緑谷が遭遇したときは手足に夥しい包帯が巻かれていた」

 「まさかそんな悍ましいこと・・・」

 「超人社会だ。やろうと思えば誰もが何だって出来ちまう」

 「なるほどな」

 「・・・何?何の話ッスか?」

 

プロヒーロー達が話の本質を理解し始めた一方で、話しについて行けてない切島がせわしなく周りを見る。その疑問に答えたのは同じ雄英生徒である垣根だった。

 

 「分かんねぇか?切島」

 「えっ?あ、あぁ。どういうことだか全然分からん。何が、どうなってんだよ?」

 「つまりだ、この治崎って奴は娘の体を銃弾に変えて売り飛ばしてるかもしれねぇってことだ」

 「「「そ、そんな・・・!?」」」

 

垣根の口から出た言葉に切島は勿論、麗日や蛙吹も驚愕の表情を浮かべる。ようやく三人にも事の重大さが理解できたようだ。

 

 (人体を銃弾に変える、か。中々に頭のネジが飛んでやがるな。学園都市のイカレ科学者どもが好きそうな発想だ)

 

垣根が心の中で呟く。すると再びナイトアイが話を続ける。

 

 「実際に銃弾を売買しているのかは分かりません。現段階では性能としてあまりに半端です。ただ仮にそれが試作段階にあるとして、プレゼンのためのサンプルを仲間集めに使っていたとしたら・・・確たる証はありません。しかし、全国に渡る仲間集め、資金集め。もしも弾の完成形が完全に個性を破壊するものだとしたら?悪事のアイデアがいくつでも沸いてくる」

 「想像しただけで腸煮えくりかえる!今すぐガサ入れじゃ!」

 「ケッ・・・コイツらが子供保護してりゃ一発解決だったんじゃねぇの?」

 

ロックロックと呼ばれるヒーローが緑谷とミリオの方を見ながら小言を呟く。返す言葉もなく、二人とも歯を食いしばりながら俯いている。するとそこへナイトアイが助けに入った。

 

 「全て私の責任だ。二人を責めないでいただきたい。知らなかったこととはいえ、二人ともその子を助けようと行動したのです。緑谷はリスクを背負いその場で保護しようとし、ミリオは先を考え、より確実に保護できるよう動いた。今この場で一番悔しいのはこの二人です」

 

そこまでナイトアイが言うと、ガタッ!と椅子の倒れる音がし、ミリオと緑谷が同時に立ち上がる。そしてナイトアイを力強く見据えながら宣言した。

 

 「今度こそ必ずエリちゃんを!」

 「「保護する!」」

 「そう。それが私たちの目的となります」

 

ナイトアイがここで初めて今作戦における目的を明らかにする。するとここでまたしてもロックロックが口を挟んだ。

 

 「ケッ・・・ガキがイキがるのもいいけどよ、推測通りだとして若頭にとっちゃその子は隠しておきたかった”核”なんだろ?それが何かしらのトラブルで外に出ちまってた。あまつさえガキんちょヒーローにまで見られちまった。素直に本拠地に置いとくか?俺なら置かない。攻め入るにしてもその子がいませんでした、じゃ話にならねぇぞ。どこにいるのか特定出来てんのか?」

 「確かに・・・どうなの?ナイトアイ」

 「問題はそこです。何をどこまで計画しているか不透明な以上、一度で確実に叩かねばならない。そこで八斎會と接点、名のある組織・グループ及び八斎會の持つ土地・・・可能な限り洗い出し、リストアップしました。皆さんには各自その箇所を探って頂き、拠点となり得るポイントを絞ってもらいたい」

 (・・・見たことねぇヒーローがこんなにも大勢いる理由はこれか)

 

垣根は会議室を見渡しながら心の中で納得する。ナイトアイはリストアップしたポイントと活動地区が被るヒーロー達を全国から集め、そのポイントを探らせようと考えたのだ。だがこれは明らかに時間が掛かりすぎる策である。当然、この非効率的作戦には抗議の声が主にファットから上がり、相澤からもナイトアイに対して質問が投げかけられる。

 

 「どういう性能かは存じませんが、サー・ナイトアイ。未来を予知できるなら俺達の行く末を見ればいいじゃないですか。このままでは少々合理性に欠ける」

 「よく言ったぞイレイザー!じゃあ早速私の未来を見てみろナイトアイ!子供の居場所が分かり次第、即蹴り飛ばしに行く!」

 

ミルコが立ち上がって意気揚々と言い放つも、

 

 「それは・・・出来ない」

 「?」

 

ナイトアイはその提案を却下した。皆の視線を集めながら、ナイトアイが説明する。

 

 「私の予知性能ですが、発動したら24時間のインターバルを要する。つまり、1日1時間1人しか見ることが出来ない。そしてフラッシュバックのように1コマ1コマが脳裏に映される。”発動してから1時間の間、他人の生涯を記録したフィルムを見られる”と考えて頂きたい。ただしそのフィルムは全編人物の近くからの視点。見えるのはあくまで個人の行動と僅かな周辺環境だ」

 「・・・いやそれだけでも十分すぎるほど色々分かるでしょ。出来ないとはどういう事なんですか?」

 「例えばその人物に近い将来、死、ただ無慈悲な死が待っているとしたらどうします?」

 「・・・・・・・・・は?」

 

垣根の口から思わず声が漏れる。何を言っているのか全く分からないという表情で垣根がナイトアイの方を見つめる中、ナイトアイは話を続けた。

 

 「私の個性は行動の成功率を最大まで引き上げた後に勝利のダメ押しとして使うものです。不確定要素の多い間は闇雲に見るべきじゃない」

 「はぁ!?死だって情報だろ!?そうならねぇ為の策を講じられるぜ!」

 「占いとは違う。回避できる確証はない」

 「ナイトアイ!よく分かんねぇな!いいぜ俺を見てみろよ!いくらでも回避してやるよ!」

 「・・・ダメだ!」

 

俯きながらも頑として未来を見ることを固辞するナイトアイ。ロックロックも思わず口をつぐみ、一瞬の静寂が会議室に訪れる。すると今度は垣根が立ち上がり、ナイトアイに言葉を投げかけた。

 

 「オイオイオイオイ冗談じゃねぇぞ。仲間の死を見るのが怖ぇからクソ手間暇掛かる作戦の方を採用しますってか?どう考えてもガキの命が掛かってるって時に取る行動じゃねぇよな?ナイトアイさんよ」

 「・・・・・・」

 「おい、何とか言えよナイトアイ。最短ルートでかつ高確率でガキの居場所の手がかりが分かりそうな手段がありながら、どうしてこんなクソ非効率な手段の方を選ばなきゃいけねぇのか、俺に納得できるように説明しろ。その義務がアンタにはあるだろ」

 「・・・先ほど説明したとおりだ。私の個性は勝利のダメ押しで使うのがベストだからだ」

 「っ!だからァ!それを説明しろって――――」

 「帝督!」

 

ナイトアイの態度に苛つきが募り、ヒートアップしかけていた垣根に対し、グラントリノが口を挟む。話を中断された事で更に苛立ちながらも垣根はグラントリノの方を見る。

 

 「・・・何だよジジイ。俺は今コイツと喋ってんだよ。邪魔すんじゃねぇ」

 「いいから座っとけ。おめぇの気持ちも分かるが、今は抑えろ」

 「あァ?」

 

垣根がグラントリノを睨み付け、グラントリノも垣根を見つめ返す。両者はしばらく睨み合っていたが、やがて垣根が大きく舌打ちしながらドサッと椅子に座る。それを見たリューキュウが小さくため息をつくと共に言葉を発した。

 

 「とりあえずやりましょう”困ってる子がいる”これが最も重要よ」

 「娘の居場所の特定・保護。可能な限り確度を高め、早期解決を目指します。ご協力よろしくお願いします」

 

ナイトアイがそう言って締めると、会議は終了した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 会議が終わり、雄英生徒達は休憩室にある机を囲んで椅子に座っていた。そこで緑谷とミリオがエリちゃんとの間に何があったのかについて皆に話した。話し終えた緑谷とミリオはずっと俯き、後悔に打ちひしがれていた。

 

 「あの時、強引にでも保護しておけば今頃エリちゃんは・・・」

 「そうか・・・そんな事が・・・くっ、悔しいな・・・!」

 (デク君・・・)

 (こんなに落ち込んでいるミリオは初めてだ・・・)

 (エリちゃん・・・)

 「通夜でもしてんのか?」

 

エレベーターが開き、緑谷達へ声をかけながらこちらに向かってくる相澤。生徒達は相澤の方を見つめる。

 

 「ケロ、先生!」

 「学外ではイレイザーヘッドで通せ・・・いやしかし、今日は君たちのインターン中止を提言するつもりだったんだがなぁ」

 「えっ!?今更何で!?」

 

驚きながら質問する麗日達に相澤が答える。

 

 「敵連合が関わってくる可能性があると聞かされたろ。話は変わってくる」

 「っ!」

 「・・・ただなぁ緑谷、お前はまだ俺の信頼を取り戻せていないんだよ」

 「!?」

 「残念なことに、ここで止めたらお前はまた飛び出してしまうと俺は確信してしまった」

 

相澤はそっと緑谷の前にしゃがみ込み、握りこぶしを緑谷の胸に当てながら穏やかに語りかける。

 

 「俺が見ておく。するなら正規の活躍をしよう、緑谷。分かったか?問題児」

 「っ・・・・!?」

 「・・・ミリオ、顔を上げてくれ」

 「ねぇ私知ってるの!ねぇ通形!後悔して落ち込んでも仕方ないんだよ!知ってた?」

 「・・・あぁ!」

 

天喰と波動の励ましにミリオの目にも再び力が入る。そして、

 

 「気休めを言う。掴み損ねたその手はエリちゃんにとって必ずしも絶望だったとは限らない。前向いていこう」

 「はい!」

 「相澤先生・・・!!」

 「ここではイレイザーだ」

 「俺!イレイザーヘッドに一生ついてきます!!!」

 「一生はやめてくれ」

 

相澤の言葉で心を入れ替え、前を向いていく決心をした生徒達。緑谷達が気を奮い立たせている中、相澤は垣根にも声をかける。

 

 「とまぁ、コイツらはやる気満々みたいだ。こんなこと、教師の俺が言うべきではないことは分かっているが、お前がいてくれると助かる」

 

それは、垣根の正体を知った相澤だからこそ言えるセリフ。秘密を打ち明け、打ち明けてもらった者同士の信頼関係故のものだった。

 

 「・・・別に降りるなんて言ってねぇだろ。乗りかかった船だ。言われねぇでもやってやるよ」

 

相澤の言葉にぶっきらぼうに答える垣根。

 

 「・・・そうか」

 「垣根ェ・・・お前って奴は・・・なんだかんだ良い奴だなほんとによォ・・・」

 「ていとくん・・・!!」

 「・・・うぜぇ」

 

大げさな反応をする切島と麗日に若干イラッとする垣根だったが、相澤が再び全員に向き直り話しを始める。

 

 「とは言ってもだ。プロと同等かそれ以上の実力を持つビッグ3や垣根はともかく、お前達の役割は薄いと思う」

 「「「・・・・・・」」」

 「蛙吹・麗日・切島、お前達は自分の意思でここにいるわけでもない。どうしたい?」

 

相澤が麗日・切島・蛙吹に問いかけると、

 

 「先っ・・・イレイザーヘッド!あんな話聞かされてもう止めときましょ、とはいきません!」

 「イレイザーがダメと言わないのならお力添えさせて欲しいわ」

 

作戦参加の意を伝える麗日達。すると天喰もそれを後押しした。

 

 「会議に参加させてる以上、ヒーロー達は一年生の実力を認めていると思う。現に俺なんかよりも一年の方がよっぽど輝かしい」

 「天喰君隙あらばだねぇ」

 「俺らの力が少しでもその子のためになんならやるぜ!イレイザーヘッド!」

 「分かってるならいい。今回はあくまでエリちゃんという子の保護が目的。それ以上は踏み込まない。警察やナイトアイの見解では連合と死穢八斎會は良好な協力関係になく、今回のガサ入れでヤツらも同じ場にいる可能性は低いとみている。だが万が一見当違いで連合にまで目的が及ぶ場合はそこまでだ!」

 「「「了解です!!!」」」

 

相澤による目的の確認を済ませる生徒達。あとは決行日を待つのみだ。

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