かの悪党はヒーローへ   作:bbbb.

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五十九話

 

  衝撃の事実が発覚してから数日。サー・ナイトアイとチームアップしたプロヒーローたちが死穢八斎會若頭・治崎とエリちゃんの居場所を特定するまでの間 垣根達は待機となった。またインターンに関しては一切の口外を禁止された。授業を受けながら、日々悶々と過ごす緑谷達。垣根はこの数日間、暇さえあれば演習場に入り浸っていた。幸か不幸か、インターン活動が一時休止となったため、自分の時間がさらに確保できるようになった垣根。この時間を利用し、未元体を完成まで仕上げようと考えていた。垣根は授業時・飯時・入浴時・就寝時以外は基本的にずっと演習場で新技を煮詰めていた。

 そしてさらに二日後、時刻は午後8時30分。演習場閉場時間ギリギリにて、その刻は訪れる。肩で息をする垣根の目の前にはいくつもの白い『翼』。それを目にした垣根は満足げに笑みを浮かべたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日の深夜一時頃。突如垣根の携帯の画面が光りだす。眠りについていた垣根はその光によって目を覚まし、携帯の画面を開いた。どうやらメールが届いていたみたいで、垣根は新着メールを開くとその内容に目を通す。そのメールに記載されていた内容は本作戦の決行日についてである。決行日は今日の午前8時30分。6時30分にはナイトアイ事務所へ集合とのことだった。いよいよエリちゃん救出作戦が始まるのである。垣根はメールの全文に目を通し終えると、

 

 「……」

 

しばらくの間、無言で何もない空間をじっと見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「はぁ!?エリって子が本拠地にいる!?」

 「本拠地っちゅうことは・・・」

 「八斎會のトップ、組長の屋敷」

 

 午前6時30分。エリちゃん救出作戦に参加するプロヒーロー及び垣根達はナイトアイ事務所に集合していた。ナイトアイからエリの居場所を特定したとの報告があったのでどこにいるのか聞いたところ、なんとエリは敵の本拠地にいるのだという。敵の本拠地にはいないだろうという推測の下、これだけ大がかりな作戦を実行したのでこの事実には驚きを隠せないヒーロー達。特にロックロックなどはその不満をありありと見せていた。

 

 「ケッ!なんだよ、俺達の調査は無駄だったわけか」

 「いえ、新たな情報も得られました」

 「どうやって確信に・・・?」

 「八斎會の構成員が先日近くのデパートにて女児向けの玩具を購入していました」

 「・・・は?」

 「何じゃそら・・・」

 「そういう趣味の人かもしれへんやろ!世界は広いんやでナイトアイ!ちゅーか なんでお前も買うとんねん!」ビシッビシッ

 「いえ。そういう趣味を持つ人間ならば確実に言わないセリフを吐いていた」

 

そう言うとナイトアイはデパートで構成員とおぼしき男と接触したときの様子を語り始めた。男のセリフからこの人物が構成員であるということをほぼ確信したナイトアイは自身の個性を使い男の未来を見ると、その男が敵の本拠地に入っていき、さらにその中でエリちゃんと接触している光景が見えたのだという。この話を聞いたロックロックは思わずツッコミを入れた。

 

 「予知使うのかよ!?」

 「確信を得た時にダメ押しで使うと言ったはず」

 「とにかくこれで決まりっちゅうわけやな」

 「ヤツが家にいる時間帯は張り込みによりバッチリでございます」

 「警察との連携ですでに令状も出ています!あとは・・・」

 「踏み込むだけやな!」

 「セリフ取られた!」

 「緑谷君!やるぞ~!やるんだ!やるんだやるんだやるんだやるんだやるんだ!やるぞォォォォォォォ!!!」ブンブンブンブン

 

ここに来て目立った動きをしながら己を奮起させるミリオ。以前までの元気はつらつだったミリオに戻った感じがして、天喰達は勿論、緑谷達もどこか安心するような気持ちになる。そして制服姿だった雄英生達がコスチュームに着替え、再び会議室へ戻るとそれを確認したナイトアイが全員に声をかけた。

 

 「では、行きましょう」

 

いよいよ、エリちゃん救出作戦が始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時刻は午前8時。ヒーロー達は警察署前で警察官達と本作戦の最終打ち合わせのようなものを行なっていた。大勢のヒーローの前に立ち、今作戦における警察側の責任者とおぼしき男性が八斎會の敷地内構造について説明する

 

 「ナイトアイが八斎會構成員のその後を見た結果 八斎會組長宅には届け出のない入り組んだ地下施設が存在し、その中の一室に今回の目的である女児が匿われていることが確定した。さすがに地下全体を把握することはかなわなかったが、男の歩いた道はそのまま目的への最短ルートであり、八斎會の広い敷地を捜索するにあたって最も有益な情報となる。しかし目指すにしても個性を駆使されれば捜索は難航する。そこで分かる範囲でだが八斎會の登録個性をリストアップしておいた。頭に入れて置いてくれ」

 

男が話をしながら部下に合図すると、部下はヒーロー達に一枚の紙を配り始めた。そこには男の話したとおり、構成員達がどんな個性を持っているかについての一覧が記してあった。

 

 「こういうのパッと出せるっていいよな」

 「隠蔽の時間を与えぬためにも全構成員の確認・補足など可能な限り迅速に行いたい!」

 

警察の入念な準備と迅速な対応を目の当たりにした切島達は思わず声を漏らす。

 

 「決まったら早いっすね!」

 「君…朝から元気だな…」

 「緊張してきた・・・」

 「探偵業のようなことから警察との協力、知らないことだらけ…」

 「ね!不思議だね!」

 「そうね。こういうのって学校じゃ深く教えてくれなくて新人時代苦労したよ」

 「分かる!」

 「プロはみんな落ち着いてんな。慣れか!」

 

こういう光景を見ていると、やはり現場でしか身につかないモノというのは確かに存在するなと強く実感する生徒達。一方で緑谷は別のことが気になっているようだった。

 

 「ねぇ、今朝からグラントリノの姿が見えないけど どうしたんだろう?」

 「あぁ、そういやいねぇなあのジジイ・・・つかオイ緑谷。お前ジジイとどういう関係なんだよ?」

 「えっ!?あ、いや、それはその・・・」

 「あの人は来られなくなったそうだ」

 「えっ!?」

 

唐突にナイトアイから声をかけられ、驚く緑谷。垣根も黙ってナイトアイを見つめる。

 

 「塚内が行ってる連合の件に大きな動きがあったみたいでな。だがまぁこちらも人手は十分。支障はない」

 「そっか・・・」

 「連合に動き・・・」

 「八斎會とヴィラン連合、一気に捕まったりしてな!」

 「それだ!」

 

グラントリノに聞きたいことがあったのにまたもや機会を逃してしまった垣根。また次の機会にするか、と心の中で呟くとミルコが垣根に近づいてきた。

 

 「おう垣根!なんか元気ねぇな。まさかビビってんじゃねぇだろうな!」

 「朝はみんなこんなもんだろ。アンタが元気すぎんだよ。それに誰がビビるかよ」

 「へッ!」

 「そっちこそこそ変なヘマやらかすんじゃねぇぞ。アンタの尻拭いはゴメンだぜ」

 「ハッ!相変わらずクソ生意気だなお前!」

 

垣根とミルコが話ていると、先ほどヒーロー達に説明していた警察の男が再び全員に向かって話し始めた。

 

 「ヒーロー!多少手荒になっても仕方ない。少しでも怪しい素振りや反抗の意思が見えたらすぐ対応を頼むよ!相手は仮にも今日まで生き延びた極道者。くれぐれも気を緩めずに各員の仕事を全うして欲しい。突入開始時刻は0830とする!総員出動!」

 

男のかけ声と共に全員が敵の本拠地まで移動する。作戦開始まであと30分。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時刻は午前8時30分。ヒーロー及び警察隊は八斎會の本拠地の屋敷の前にいた。警察は武装しながら待機し、ヒーロー達も張り詰めた様子で突入準備している。そんな中、警察の男が一番前に立ちもう一度突入手はずを皆に確認する。

 

 「令状読み上げたらダーッと行くんで。速やかによろしくお願いします!」

 「しつこいな。信用されてねぇのか?」

 「そういう意味やないやろ。意地悪やな」

 「フン!そもそもよ、ヤクザ者なんてコソコソ生きる日陰者だ。ヒーローや警察見て案外縮こまっちまったりしてな」

 

 ダンッッッッッ!!!

 

ロックロックの小言が言い終わるか言い終わないかのタイミングで突然、屋敷のドアが内側から殴り飛ばされ、中から巨大な男が姿を現した。ドア付近にいた警察官数名はその衝撃で吹っ飛ばされたが、相澤と緑谷がサポートに入る。唐突な敵の登場に驚くヒーロー達を、目の前の大男はゆっくり見渡しながら気怠げに言葉を放つ。

 

 「何なんですか?朝から大人数で」

 「おいおいおい待て待て!感づかれたのかよ!?」

 「いいからみんなで取り押さえろ!」

 「少し元気が入ったぞー。おおおおお!!!」

 「離れて!!」

 

大男が右手に力を入ながら拳を振りかぶる。いち早く危機を察知したリューキュウは自身の個性を発動させ、警察官達を守ろうとした。が、

 

 「おォォォォォォらァァァァァァァ!!!」

 「!?」

 

轟く叫び声と共にミルコが大男に飛びかかり、顔面目掛けて蹴りを放つ。大男はすかさず左腕で防御姿勢を取ろうとする。しかし、

 

 「なっ!速っ!?」

 「っっっらァァァァァァァァ!!!」

 

ミルコの右足は大男が防御姿勢を取る前に大男の顔面に到達し、力強い叫びと共に全力で蹴り飛ばした。二メートルは優に超えるであろう巨体がボールのように地面をバウンドし、数メートル程吹っ飛ばされる。地面に着地したミルコは笑みを浮かべながら大男に言い放った。

 

 「中々蹴りがいがあるなお前!決めた!お前は私が蹴り飛ばす!」

 「・・・ったく、いきなりかよ」

 

垣根はため息をつきながらミルコの方へ向かう。しばらく呆然としていたヒーローと警察だったが、そこへリューキュウの声が届く。

 

 「とりあえずここに人員を割くのは違うでしょ。彼はリューキュウ事務所とミルコが対処します。皆さんは今のうちに!」

 

竜化したリューキュウの言葉で我に返ったヒーローと警察達は屋敷の中へ突入を開始した。

 

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