かの悪党はヒーローへ   作:bbbb.

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六十二話

 

 無数のコンクリートの棘が一斉に垣根を襲う。対する垣根は全長二十メートルはあろうかという六枚の巨大な翼を広げ、翼の羽根を槍に変換し一斉に放った。

 

 ズガンッッッッッ!!!!

 

空中で垣根と治崎の攻撃が爆音と共に激突する。衝突の余波で発生した土煙が地下一帯に漂う中、今度は垣根が先に動いた。

 

 轟!!!

 

轟音をなびかせながら烈風を放ち、土煙を払うと一気に視界が開けた。治崎は烈風から身を守るように腕をかざしながら頭上の垣根を見上げる。すると太陽の光を背に浴び、煌びやかに輝いて見えた純白の翼が突如より一層輝き出した。

 

 ゴバッッ!!!

 

凄まじい光が翼から放たれる。眩しそうに額に手をかざす治崎だったがすぐに異変に気付く。

 

 「!?」

 

ジリジリと体が焼ける痛みを感じる治崎。垣根の翼が放つ光によって治崎の体が焼かれているのだ。異常が起きているのは治崎の体だけではない。治崎の体と融合している巨体も垣根の謎の光によって焼かれていた。垣根によって攻撃されていること理解した治崎は光の攻撃から逃れるべく目一杯跳躍した。

 

 ズダンッッッ!

 

地鳴りを響かせながら地上に着地する治崎。すると、

 

 「何だよつれねぇな。せっかくこんがり焼いてやろうと思ったのによ」

 

リューキュウ達が崩落させた穴から地上へゆっくりと浮上し再び治崎と相対する垣根。垣根の軽口に対し、治崎は怒気を含んだ目つきで垣根を睨み付けていた。

 

 「こざかしい真似を……叩き潰してやる!」

 

治崎は叫びながら巨大な腕を振り上げ、垣根目掛けて振り落とすも、垣根は空中に逃れることで直撃を回避した。

 

 ゴォォォォン!!

 

標的を失った治崎の拳は地面のコンクリートに直撃し、巨大なヒビを入れる。

 

 「ちょこまかと……!」

 

治崎が忌々しそうに宙を見上げると、垣根は既に次の行動に移っていた。突如、垣根の真下の地面に白い塊が五つほど出現すると一瞬にして人の形を形成していき、気がつくと治崎の目の前には垣根帝督そっくりの人型のナニカが五体も出現していた。一瞬の出来事に思わず目を丸くする治崎。すると空から垣根の声が聞こえる。

 

 「じゃ、行くぞ」

 

その声と共に五体の未元体が一斉に右手を治崎の方へかざす。そして、

 

 ドンッッッッッ!!!

 

轟音が炸裂し、未元体達の腕が巨大な翼へと変じる。その翼を構成する無数の羽根が全て鋭い槍へと変じ、爆発的な射出が繰り出された。一瞬にして視界のほとんどが無数の白によって覆い尽くされた治崎は即座にコンクリートの棘を生成して繰り出すも、あっという間に無数の白い槍によってのみ込まれてしまう。

 

 「ぐおおおおおおおお!!!」

 

未元体の放った槍が治崎の巨体を襲う。五体の未元体から射出された槍の総数は治崎の巨体をものみ込んでしまうほどで、巨体のあらゆる箇所を串刺しにしながら後方へと押し流していく。なんとか槍の波から逃れようとする治崎だったが全く身動きが出来ない。このままでは後方にある家屋に激突すると思われたその時、槍の波の向きが突如上向きになり治崎の巨体を宙へと押し上げていった。

 

 「おーおー高ぇ高ぇ。このまま大気圏突破ってのもアリだな」

 

無数の槍の大群によってどんどん空へと押し上げられていく治崎の姿を呑気に眺める垣根。一方の治崎は槍の波から何とか抜け出そうと空中で必死にもがいていた。

 

 「おおおおおおおおお!!!」

 

雄叫びと共に個性を発動させ、自身の巨体を分解する治崎。巨体が分解されることで槍によって固定化されていた状態を解いたのだ。そして体が自由になった一瞬で身をよじり、槍の波から逃れた。

 

 「あーらら。逃れたか」

 

治崎が槍の波から抜け出したのを視認する垣根。治崎は槍の波から逃れると再び個性を発動させ、赤黒い巨体を身に纏うと今度はさらに巨大な翼まで新たに生成した。

 

 「お前だけが空を飛べると思うなよガキがァ!!!」

 「ほぉ、おもしれぇ」

 

不敵に笑った垣根は翼をはためかせ、治崎との距離を詰める。垣根と治崎との距離が詰まり、治崎の巨大な拳と垣根の純白の翼が空中で激突した。

 

 ドパンッッッッッッ!!!!

 

衝撃と轟音が大気を震わせる。空中を駆け回りながらお互い拳と翼を何度もぶつけ合っていく治崎と垣根。巨大な赤黒い化け物と巨大な白い翼を操る男が繰り広げる激しい舞はこの世のものとは思えない程人間離れした光景だった。

 

 「オラオラどうしたよ治崎くん。そんな紙細工みてぇな強度じゃ、俺の未元物質には届かねぇぞ?」

 「黙れガキィィィ!!!」

 

垣根に破壊された部位を再生させながら、治崎は吠える。両者の激しい打ち合い、最初は互角のように見えたが、徐々にその均衡は崩れていった。数々の打ち合いを経て治崎の巨腕へのダメージが目立つようになってきたのだ。理由は未元物質の強度の高さと再生スピードにある。未元物質の強度が治崎の巨腕のそれを上回り、かつ再生速度も垣根の方が格段に速いため、治崎の方ばかりにダメージが蓄積されていった。

 

 「おらよ!!!!」

 「くっっ……!?」

 

垣根の叫びと共に三枚の翼が繰り出される。射出された翼は治崎の巨腕の付け根に命中し、三本の腕が治崎の巨体から剥がれ落ちた。治崎は全身を分解し即座に再生させることでなんとか体勢を立て直したが、治崎が再生する間、垣根はなぜか追撃しなかった。治崎の再生が終わると垣根はニヤリと笑みを浮かべながら言葉を放つ。

 

 「再生するためには一度バラさなきゃいけないわけか。随分と融通の利かない個性だな」

 「…ッ!?黙れぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

治崎は激昂と共に垣根に襲いかかる。垣根に対して再び拳を振り下ろそうとしたその時、突如巨体の脇腹辺りに右方向から強い衝撃を受けた。

 

 「が、はッッッッッ!!??」

 

うめきながら左方向へ吹き飛ばされるも、すぐに体勢を立て直す治崎。治崎が視線を上げると、そこには白い翼を広げた未元体が宙に浮かんでいる姿が見えた。そしてその後ろには同じように翼を生やした四体の未元体の存在も確認できる。驚きの表情を浮かべている治崎を他所に垣根が話し始めた。

 

 「これが特訓の成果ってやつだ。未元体への未元物質の実装。完璧ってわけではねぇが、ここまで使えれば上出来だな」

 「な、なにを………言っている………!?」

 「知る必要はねぇよ。お前が知る事実はただ一つ。お前は今からコイツらのサンドバックになるってことだけだ」

 

垣根が言い終わるのとほぼ同時に五体の未元体が治崎へ向かって動き出し、一斉に襲いかかった。

 

 「たかが人形を並べた程度でこの俺に勝てると思うなァァァァ!!」

 

怒号と共に拳を振り抜く治崎。すると、

 

 ドパンッ!

 

治崎の振るった拳が鈍い音と共に一体の未元体に直撃し、未元体を後方まで吹っ飛ばす。しかし、吹き飛んだ未元体は何事もなかったかのようにすぐに体勢を立て直すと、またすぐに垣根に向かっていく。そして、五体の未元体は治崎を囲み、次々と攻撃を放っていった。治崎は必死に迎撃しているが、まるで視界が共有されているかのような寸分違わぬ連携をとってくるため、対処が追いつかない。また、治崎が未元体に攻撃を当てても、まるで効いていないかのようにすぐに攻撃の輪に戻ってくるため、再生する暇が無い。

 

 (なんだこの化け物共は…!?こちらの攻撃が全く効かない…!このままでは…!)

 

治崎は未元体の恐ろしさをようやく理解しつつ、その未元体達による総攻撃の連続で治崎の巨体は次々と削り取られていった

 

 「再生するためには分解という工程を踏まなければならない。それがお前の敗因だ」

 「が、はッッッッッッッッ…………!?」

 

垣根の冷徹な声と共に、未元体の巨大な翼が腹部と腕部に直撃し、息を吐く治崎。巨体のほとんどは崩れ去り、勝負はもう決まったかのように思えた。だが、

 

 「まだだ…ッ!!」

 

治崎は最後の力を振り絞り自身の肉体を再生させ、今までの蜘蛛のような巨体を全て両腕と両翼に集約させていく。治崎の腕は先ほどより何倍にも膨れ上がり、全てのパワーを両腕部に注いだのだ。治崎は巨腕を振るい、目の前の二体の未元体を吹っ飛ばすと、目の前に垣根本体への道が開けた。治崎は両翼をはためかせ一気に垣根本体へと向かって行く。治崎が向かってくるのを黙って見下ろしている垣根に対し、治崎は怒号を叩きつけた。

 

 「どいつもこいつも大局を見ようとしない!俺が崩すのはこの世界!その構造そのものだ!目の前の小さな正義だけの、感情論だけのヒーロー気取りが!俺の邪魔をするなぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

全身全霊で自身の野望を叫びながら治崎は再度体を分解させ、今度は全てを右腕部に集約させた。右腕部はさらに肥大化し、ビルでも握りつぶせるのではないかという程巨大なものとなる。治崎は頭上の垣根目掛けて目一杯右腕を振り抜いた。

 

 「死ねェェェェェェェェェェ!!!!」

 

治崎が絶叫と共に自身に迫ってくるのを垣根はただ黙って見下ろしていた。そして演算を開始し、自身の背にある巨大な翼を更に巨大化させる。二十メートル程だった翼は更に大きくなっていき、ついには三十メートルを超える程にまで伸びていった。垣根が右翼三枚をそろえて天高くかかげると、全長三十メートルの巨大な白い剣が空に聳え立つ。治崎の腕とは比べものにならない程大きな翼をかかげ、唖然としている治崎に冷徹な視線を向けながら垣根は静かに呟いた。

 

 「お前ごときじゃ世界は壊せねぇよ」

 

その一言と共に垣根は白い翼を振り下ろした。




取り敢えず出来た

緑谷ァ…()
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