かの悪党はヒーローへ   作:bbbb.

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インターン編ラスト


六十三話

 白い翼をはためかせ、静かに地に降り立つ垣根。リューキュウ達が地面に開けた大穴の近くに着地した垣根は前方に視線を向けるとそこには粉々に砕かれた赤黒い塊と白目を剥いて気絶している治崎の姿があった。垣根が無言で治崎のことを眺めていると、突然大穴の中からミルコが勢いよく飛び出し垣根の目の前に着地する。ミルコの背にはミリオと相澤の二人が担がれていた。

 

 「よう垣根!生きてたか!」

 

相変わらず元気な様子で垣根に話しかけるミルコ。垣根は「ああ」と返事をしつつ、ミルコに問いかけた。

 

 「そういやアンタ何してたんだよ?」

 「ん?あぁ!玄野ぶっ飛ばしてた!」

 「玄野……?あぁ、治崎の側近ってやつか」

 「そうだ。イレイザーが玄野の野郎にやられてたから助けてやってた。情けない奴め!」

 

担いでいる相澤の方をチラリと見ながらガハハッッ!!と笑うミルコ。垣根はミルコが担いでいるもう一人の男、通形ミリオの方を見ながらさらに尋ねる。

 

 「で、そっちの方は大丈夫なのか?」

 「とりあえず応急処置はした。傷は浅くないが命に別状はない」

 「そうか。他の組員共はあらかた片付いたのか?」

 「ああ。ようやく治崎をぶっ飛ばせると思ったらお前が全部もって行きやがって……!ずるいぞお前!」

 「ガキか……けど、なんだかんだしっかりヒーローやってるじゃねぇか。ちょっと見直したぜ」

 「ったりめーだろ。私をなんだと思ってやがる!」

 

垣根とミルコが話していると、大穴から麗日・蛙吹、そしてエリを背負った緑谷が姿を現した。麗日は傷を負ったナイトアイを抱えている。ナイトアイは腹部にもの凄く太いコンクリートの棘が刺さっていて、かなり重傷そうに見えた。

 

 「なぁ」

 「ん?何だ」

 「ナイトアイのあの傷……」

 「…………」

 「……そうか」

 

ミルコが押し黙ったのを見て察する垣根。そして今度はエリについて尋ねた。

 

 「で、あのガキは無事なのか?」

 「ああ。緑谷がちゃんと保護…………」

 

 ピカッッッッ!!!

 

ミルコが言い終わらないうちに突如垣根達の側で眩い光が光り出す。何事かとその方向を見ると、その発光源が緑谷だということが判明。いや。正確には緑谷の背負っているエリの頭部からだった。どうやら力が制御できずに暴走しているらしい。ワンフォーオールを起動させていた緑谷だったが、あまりのエリの個性の強さに思わず膝をついた。

 

 (くっっっっっっっ!!??エリちゃんの個性が……勢いを増してるッッッッ!?ぐッッッ!!)

 

緑谷が膝をついた瞬間、先ほどまで地に伏していた治崎の体が動いた。朦朧とする意識の中、治崎は叫び声を上げながら崩壊寸前の巨大右腕を緑谷の元へ放った。腕が緑谷の身体に覆い被さり、押しつぶしてしまったかに見えた直後、腕の内部から光が漏れ出す。その光はエリが今発している光で、治崎の巨大腕をも飲み込み、あっという間に腕を消失させてしまった。エリの光が治崎の体までたどり着くと活瓶の体が飛び出した。エリの個性の力で治崎と活瓶が合体する前の状態まで強制的に戻されたのだ。そして治崎の体も宙に放り出されたが、麗日がしっかりと拘束技を決め込み取り押さえた。

 

 「おいおい、このままじゃ緑谷が猿になっちまうぜ。どうにかして止めねぇとな」

 

そういいながら垣根は相澤の方をチラリと見ると、僅かに相澤の手がピクリと動いたのを捉えた。

 

 「ミルコ」

 「あ?」

 

こちらを向いたミルコに相澤のことを顎で指す。すると意図を理解したミルコは相澤の頭を掴み、顔をエリの方へ向けた。相澤がまぶたを開き、エリの方へ視線を向ける。

 

 (すまん。緑谷)

 

相澤の個性が発動し、エリの発光が消滅する。個性が止んだエリは力尽きるようにして緑谷の背中に倒れた。

 

 「お、おわった……」

 「……のか?」

 「…………」

 

相澤のおかげで何とか場を収めることが出来た。エリの個性の暴走の危険性がもうないことが分かると、リューキュウや警察を中心に負傷者の搬送や組員の確保が進められていった。こうして死穢八斎会との決戦はようやく終幕となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 死穢八斎會の構成員 活瓶力也の活力を奪う個性で半数以上のヒーロー・警官がダウンする中、動ける者は地元ヒーローらと合流。被害の確認に当たっていた。垣根もその内の一人でねじれと同様に空中から被害状況を確認するなど仕事を任され、全部終わる頃にはすっかり日が暮れてしまっていた。後処理の仕事が終わると垣根は病院に向かわされた。垣根は治崎や活瓶と戦闘を交えたため、怪我がないか病院で検査する必要があるのだという。垣根としては自分が怪我などしていないとはっきり分かるし、何より早く寮に帰りたかったので行くのを断ろうとしたのだが、ねじれがしつこく病院へ行くよう言ってきたため、仕方なく病院へ向かうことにしたのだ。一通り検査を終え、どこにも異常は無いと医師から言われると垣根は診察室を出た。診察室を出ると待合室で相澤がいることに気付く垣根。相澤も垣根が出てきたことに気付き、声をかけた。

 

 「おぅ。どうだった?」

 「別に。至って健康だとよ。アンタは大丈夫なのかよ?」

 「10針縫った」

 「おー、それは中々。他のヤツらは?」

 「切島は全身打撲に裂傷が酷いが命に別状はない。天喰も顔面の骨にヒビが入ったものの痕に残るようなものではないとのこと。ファットガムは骨折が何ヶ所か。元気そうだったけどな。ロックロックも幸い内臓を避ける形で刃が刺さっていた。大事には至らない傷だ。緑谷や麗日、波動、蛙吹は大きな怪我はないそうだ」

 「そうか」

 

生徒やプロの安否を相澤から聞いた垣根は短く返事をする。そしてさらに垣根は相澤に尋ねる。

 

 「……あのガキは?」

 「まだ熱も引かず眠ったまま。今は隔離されてる」

 「…………」

 「なに、命に別状はない。熱もじきに下がるだろうとのこと。だから今はとにかく安静にしてあげることが大事らしい」

 「……そうか」

 

エリの状態を聞いてまたしても短い返事を返す垣根。しばらく間を置いた垣根だったが、やがて四度目の質問を相澤にした。

 

 「それで?ナイトアイと通形ミリオは?」

 「…………」

 「むしろ、それを伝えに来たんだろ?」

 「……あぁ」

 

相澤は重苦しそうに口を開き、二人について話し始めた。ミリオは治崎との戦闘中に撃ち込まれた弾によって個性が使えなくなってしまったらしい。エリが個性を操れるようになれば、ミリオの個性が復活する日も訪れるかもしれないが、エリが今そんな状態にない以上、いつになるか分からない。そしてサー・ナイトアイに関しては、先ほど息を引き取ったという。彼の死に目には緑谷やオールマイト、ミリオが立ち会ったらしい。垣根は相澤の話を最後まで黙って聞いていた。

 

 「以上だ。まぁ色々あったが、とにかく今日は休め。明日は事情聴取やらなんやらで忙しくなるだろうからな」

 「あぁ」

 「それと今夜は入院していけよ」

 「は?何でだよ。どこも悪くねぇって言っただろ」

 「念のためだ。これは生徒達全員にそうさせてる。文句はナシだ」

 「……へいへい分かりましたよ」

 

垣根はため息をつきながら返事をすると通路へと歩き出した。すると後ろから相澤の声が掛かる。

 

 「垣根」

 「何だよ?」

 

面倒くさそうに振り向く垣根に相澤が一言伝える。

 

 「治崎を倒せたのはお前のおかげだ。助かった」

 「………………」

 

相澤の言葉を聞いた垣根は再び前に向き直り、通路を歩き出した、ヒラリヒラリと手を振りながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日。制服に着替え、帰る準備をする垣根達。ほとんどの生徒はリカバリーガールの頑張りもあってか、今日退院できるようになっていた。唯一ミリオだけがまだ様子見で入院らしい。帰る準備が出来た垣根が病院を出ると、出口付近には緑谷と切島が一緒にいた。

 

 「おっ、垣根。体は大丈夫か?」

 「俺は何ともねぇよ。それよりお前の方が大丈夫なのかよ」

 「おう!なんとかな。緑谷も無事らしい」

 「そうか。良かったな」

 

垣根と切島が話していると、彼らの元に一人の警官が歩み寄ってきた。

 

 「緑谷出久君、切島鋭児郎君、垣根帝督君。退院早々申し訳ありませんが死穢八斎會事件の聴取のため署までご同行願います」

 「はい」

 「分かりました」

 

敬礼と共に事情聴取を求められる垣根達。緑谷と切島が返事をし、警官の元へ歩み寄っていく。垣根もその二人の後に続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 警察での聴取や手続きが立て続けで結局、垣根達が寮へ帰ってこられたのは夜だった。パトカーに送ってもらい、寮前に到着する三人。数日しか離れていないのに何だか久しぶりに帰ってくる気がして何だか変な感じだった。三人が寮へ歩き出したとき、後ろから麗日の声が聞こえた。

 

 「デク君!ていと君!切島君!」

 「麗日!梅雨ちゃん!」

 「麗日さんたちも今戻ってきたの?」

 「うん!」

 「リューキュウの事務所で色々と手続きがあったの」

 「こっちもだよ」

 「なんだか久しぶりに帰ってきた感じがするね」

 「えぇ」

 「……行くぞ」

 「おう!」

 

垣根達は歩き出し、寮の扉に手をかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ようやくインターン編終わりです
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