かの悪党はヒーローへ   作:bbbb.

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六十五話

 10月。秋の雄英高校ではあるイベントが行われようとしていた。ほとんどの学校で行われるであろうそのイベントは…

 

 「えー、文化祭があります」

 「「ガッポォオォイ!!!」」

 「文化祭!」

 「ガっポイの来ました!!」

 「何するか決めよ~!」

 

相澤による一大イベントの告知に舞い上がる生徒達。そんな中、珍しく切島が戸惑いの様子を見せた。

 

 「先生いいんですか!?この時世にお気楽じゃ!?」

 「切島!?変わっちまったなァ…」

 「でもそうだろ!?ヴィラン隆盛のこの時期に!」

 「確かにもっともな意見だ。しかし雄英もヒーロー科だけで回ってるわけじゃない。体育祭がヒーロー科の晴れ舞台だとしたら文化祭は他のサポート科・普通科・経営科の生徒たちが主役。注目度は体育祭の比にならんが彼らにとって楽しみな催しなんだ。そして現状 全寮制をはじめとしたヒーロー科主体の動きにストレスを感じてる者も少なからずいる」

 「そう考えると申し訳立たねぇな……」

 

言葉通り申し訳なさそうにしながら席に着く切島。さらに相澤が話しを続ける。

 

 「ああ。だからそう簡単に自粛とするわけにもいかないんだ。今年は例年と異なり ごく一部の関係者を除き学内だけでの文化祭になる。主役じゃないとは言ったが決まりとして1クラス1つ出し物をせにゃならん。今日はそれを決めてもらう……」

 ((寝た!))

 

説明を終えた相澤はいつものように寝袋にくるって寝てしまったので、委員長と副委員長である飯田と八百万が教卓にたった。

 

 「ここからはA組委員長 飯田天哉が進行を務めさせていただきます!スムーズにまとめられるよう頑張ります!ではまず出し物の候補を挙げていこう!希望のある者は挙手を!」

 「「はいはいはいはいはいはいはい!!!!」」

 「くぅ…………!?何という変わり身の早さだ!ええい 必ずまとめてやる………!ハイッ!上鳴君!」

 「メイド喫茶にしようぜ!イメージするとこんな感じ!もっと具体的にイメージするとこんな感じ!更に願望込みでイメージするとこんな感じ!というわけでメイド喫茶で!」

 「メイド…奉仕か!悪くない!」

 「ぬるいわ上鳴!」 

 「峰田君!」

 「おっぱ……」

 「重りあるかしら」ギチチッ

 「」チーン

 「お餅屋さん!」

 「なるほど!和風で来たか!」

 「腕相撲大会!」

 「熱いな!」

 「ビックリハウス!」

 「分からんが面白いんだろうな!きっと!」

 「クレープ屋!」

 「食べ歩きにもってこいだ!」

 「ダンス!」

 「華やかだな!」

 「ヒーロークイズ!」

 「緑谷君らしい!」

 「かえるのうたの合唱」

 「微笑ましい!」

 「ふれ合い動物園」

 「ふれ合い動物園!」

 「手打ちそば」

 「大好きだもんな!」

 「デスマッチ!」

 「まさかの殺し合い!?」

 「裏カジノ」

 「ギャンブル!?そして裏って何だ!?」

 「暗黒学徒の宴」

 「ほほーう!」

 「コントとか?」

 「なーる!さぁ他にはないか!?」

 「アジアンカフェ」

 「演舞発表会」

 「たこ焼き屋!」

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 「一通りみんなからの提案は出揃ったかな」

 

飯田と八百万は皆が出した意見を一通り黒板に表示した。

 

 「不適切、実現不可、よく分からないものは消去させていただきますわ」

 

そう言いながら手元のタブレットを八百万が操作すると、「暗黒学徒の宴」、「オッパ?」、「殺し合い(デスマッチ)」、「カジノ」が削除された。

 

 「無慈悲!」

 「あっ……」

 「端から聞くんじゃねぇ」

 「おい何でカジノもダメなんだよ?」

 「賭け事はちょっと……」

 「郷土史研究発表もなー。地味よねー」

 「確かに」

 「別にいいけど他が楽しそうだし」

 「総意には逆らうまい………」

 「勉強会はいつもやってるしなー」

 「お役に立てればと……つい……」

 「食いもん系は1つにまとめられるくね?」

 「そばとクレープはガチャガチャしねぇか?」

 「だからオリエント系にクレープは違うでしょ」

 「静かに!!!」

 「やっぱりビックリハウスだよー」

 「内容が分かんねぇって!」

 「静かに!!静かに!!!」

 「まとまりませんでしたわね……」

 「静かにぃぃぃぃぃ!!!」

 

収拾が付かなくなってきた教室にHR終了の鐘が響き渡る。鐘の音と共に寝袋から出てきた相澤が扉に向かいながら皆に向かって言葉を残す。

 

 「実に非合理的な会だったな。お前ら明日朝までに決めておけ。決まらなかった場合…公開座学にする!」

 ((公開座学!?))

 「ただの勉強じゃん」

 「冗談っしょ……」

 「ま、別にそれでもいいんじゃねぇの?俺は出ねぇけど」

 「良いわけねぇだろ!!あとなにちゃっかりサボろうとしてんだお前!みんな!今日中に出し物を決めようぜ!」

 「「おー!!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「「エリちゃん!」」

 

 病室の扉を開き、ベッドの上に座っているエリの姿を見た緑谷とミリオが声を上げる。緑谷とミリオははそのまま病室へと入った。

 

 「会いに来れなくてゴメンね」

 「フルーツの盛り合わせよかったら食べて!好きなフルーツある?俺当ててもいい?桃でしょ!ピーチっぽいもんね!」

 「リンゴ……」

 「だと思ったよね!じゃあリンゴ剥こう!アップルっぽくね!」

 

エリに果物の詰め合わせを渡すミリオ。事の発端は昨日の補習での出来事だ。緑谷、垣根、切島、麗日、蛙吹、常闇はインターンで欠席した分の補習授業を受けていた。最初は当然欠席するつもりでいた垣根であったが、切島と麗日に捕まり半ば強引に出席することとなった。その補習の最中に相澤が意外なことを口にした。

 

 「エリちゃんが緑谷ちゃんと垣根ちゃんに会いたがってる?」

 「あぁ。厳密には緑谷・垣根・通形の三人を気にしている。要望を口にしたのは入院生活始まって以来 初めてのことだそうだ」

 

そういう訳で今回の訪問が決まったのだ。緑谷とミリオが早速椅子に座ってエリと向き合っている中、垣根は依然ドア付近に立ったままその光景を眺めていた。すると壁にもたれかかり緑谷達を見ていた相澤が垣根に声をかける。

 

 「ほら、お前も行ってやれ」

 「……ああ」

 

短く返事をした垣根はようやく部屋に入ると、ミリオの左隣の椅子に腰掛けた。そしてエリは細々と話し始めた。

 

 「ずっとね…熱出てた時もね…考えてたの…。助けてくれた時のこと…。でもお名前が分からなかったの…ルミリオンさんしか分からなくて…知りたかったの…」

 

そう言いながら不安気に緑谷と垣根の方を見るエリ。それを聞いた緑谷は自分の名前をエリに教えた。

 

 「緑谷出久だよ。ヒーロー名はデク。えっと…デクの方が短くて覚えやすいかな?デクで。デクです!」

 「ヒーロー名?」

 「あだ名みたいなものだよ」

 「デクさん…」

 「うん!そう!」

 

エリが自分の名前を呼んでくれて嬉しそうに反応する緑谷。緑谷の名前を聞いたエリは、今度は遠慮がちに垣根の方を見る。

 

 「えっと……」

 「……垣根。垣根帝督だ。大体の奴らは垣根って呼ぶぜ」

 「カキネ…さん……」

 「ああ」

 

エリの言葉に垣根はしっかりと反応する。エリは三人の名前を確認するかのように今一度呟いた。

 

 「ルミリオンさん…デクさん…カキネさん…あと…メガネをしてたあの人…」

 「「………」」

 「みんな私のせいでひどい怪我を…」

 

相澤によるとナイトアイが死んだことはエリには伝えてないらしい。何でも自分のせいにして抱え込んでしまうタイプらしいので、ナイトアイのことを知ったらより一層自分のことを責めてしまうかもしれないからだそうだ。現に今、自分のせいでたくさんの人が傷ついたことに心を痛めている姿を見れば、その人物像は間違っていないと言えるだろう。

 

 「私のせいで苦しい思いさせて…ごめんなさい…私の…私のせいでルミリオンさんは力をなくして…」

 

瞳に涙をため、自身を責め続けるエリ。そんなエリの頭に優しく手を置いたミリオは諭すように話し始めた。

 

 「エリちゃん、苦しい思いしたなんて思ってる人はいない。みんなこう思ってる。”エリちゃんが無事でよかった”って。存在しない人に謝っても仕方ない。気楽に行こう。みんな君の笑顔が見たくて戦ったんだよ」

 

ミリオは優しく語りかけた後、エリの頭から手をどかす。すると突然エリが自分の顔を歪ませ始めた。

 

 「うっ…くぅ…」

 「「ん?」」

 

口角を上げたり、頬を引っ張ったりして何かをしようとしているが、いまいち意図を図りかねる三人。するとエリは再び普通の状態に戻り、またしても俯きながら小さな声で呟いた。

 

 「ごめんなさい…笑顔ってどうやればいいのか…」

 (エリちゃん……治崎の影がまだ…)

 (トラウマってのはそう簡単に消えるもんじゃねぇ。傷跡は依然深いままだな)

 (この子はまだ全然救われてやしない!楽しいことを、笑うってことを知らないまま…何かエリちゃんが笑えるようなこと…ん?待てよ。お医者さんの話では個性を発動するための角が縮んでいる。暴走の可能性は低い。他と違って外部から接触される可能性も低い!)

 

何か思いついたのか、緑谷は急に立ち上がると相澤の下へ寄った。

 

 「相澤先生!エリちゃん1日だけでも外出できないですか!?」

 「無理ではないはずだが。というかこの子の引き取り先を今…」

 「じゃあエリちゃんも来れませんか!?」

 「!なるほど……」

 「ハッ、そういうことか」

 

相澤と垣根が同時に緑谷の言わんとしていることを理解する。

 

 「文化祭、エリちゃんも来れませんか!?」

 「あぁ!」

 「文化祭?」

 「エリちゃん!これは名案だよ!文化祭っていうのはね 俺たちの通う学校で行われるお祭りさ!学校中の人が学校中の人に楽しんでもらえるよう 出し物をしたり食べ物を出したり!あ、リンゴ!リンゴ飴とか出るかも!」

 「リンゴ飴?」

 「リンゴをあろうことか更に甘くしちゃったスイーツさ!」

 「さらに……」

 

ミリオの話を聞き、頬を赤らめるエリ。味を想像したからか、口元から少しよだれが垂れていた。

 

 「分かった。校長に掛け合ってみよう」

 

緑谷の提案を聞いた相澤は早速スマホで校長に連絡をとった。緑谷は嬉しそうにエリと向き合う。

 

 「エリちゃん!どうかな!?」

 「私…考えてたの…。助けてくれた時の…助けてくれた人のこと…ルミリオンさんたちのこともっと知りたいなって考えてたの」

 「嫌ってほど教えるよ!校長先生にいい返事がもらえるよう俺たちも働きかけよう」

 「はい!」

 「俺休学中だからエリちゃんと付きっ切りデートできるよね」

 「デート?」

 「蜜月な男女の行楽さ!」

 「みつげつなだんじょのこうらく…?」

 「何を言ってんだアンタは」

 

こうしてエリが文化祭に来ることが決まった。

 

 




文化祭、垣根君のパートはどこだろうねぇ!
ダンスはやらなそう()
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