かの悪党はヒーローへ   作:bbbb.

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雄英高校 入試~
七話


2月26日。雄英高校ヒーロー科入試当日。垣根はというと特に変わった様子も無く、いつもと同じようにグラントリノと共に朝食を食べていた。朝食はいつも垣根が作ることになっていた。初めは慣れない作業に悪戦苦闘し、なんで俺がこんなことしなきゃならねえんだ、などと悪態をついていたが今では慣れたものである。朝食を済ませ、身支度を整えた垣根は家を出る準備をする。玄関で靴を履いているとグラントリノがやってきた。

 

 「もう行くのか?」

 「ああ」

 「そうか。まぁ、その、なんだ、あんまり気負いすぎるなよ」

 「なんだそれ。励ましてんのか?気持ち悪ィ」

 「なんだとこのガキ」

 

いつもの様に軽口を言い合う二人。いつもの、見慣れた光景だ。

 

 「心配ねーよ。楽勝だ。俺を誰だと思ってやがる」

 「…誰も心配なんかしてないわい」

 「そうかい…んじゃま、行ってくるとするか」

 

そう言って垣根は玄関の扉に手をかける。すると、

 

 「帝督」

 

グラントリノは垣根を呼び止める。

 

 「あ?何だよ」

 「…気を付けてな」

 

そう一言言ってグラントリノは家の中へと戻っていく。フッと笑いながら垣根は家を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 "雄英高等学校入学試験会場"

 

 校門らしき場所にはそう書かれた立て看板が立てられていた。

 

 (ここか…)

 

時刻は8時30分。垣根は校門の前に立ちながら辺りを見る。恐らく自分と同じであろう雄英志望の受験生達が続々と校舎の中へ足を運んでいた。雄英のヒーロー科の入試倍率は約300倍。つまりこの中からほんの一握りしか合格出来ない。自分以外はすべて敵、少ない枠をかけて争う敵同士という訳だ。

 

 (フッ、分かりやすくていいじゃねえか)

 

垣根は心の中でそう思いながら校舎の中へと足を踏み入れた。校舎の中に入るとゲートのようなものが三つ並んでいた。まるで受験生の通り道を作るかのように。そこを抜けると前方に扉が三つ。そしてそれぞれの扉に数字の1~3が記してあった。左から順に1,2,3といった感じだ。恐らくどこから入っても問題ないのだろう。

 

 (何つーか、無駄に豪華だな)

 

垣根はそんなことを思いながら真ん中の扉、2と書いてある扉を開けて中に入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 "雄英高校ヒーロー科試験説明会場"

 

 垣根はそう書かれた立て看板を見つけ、会場に入っていく。中はとても広いホールのようだった。自分の受験番号の席を探し当てると、垣根は静かに席に着いた。先ほど筆記試験が終わり、次の実技試験の説明を受けるために彼はここにいる。実技試験の方に目が行きがちではあるが雄英の筆記試験もかなり難しい。なんせ倍率300倍の学校だ。簡単なはずがない。だが垣根帝督、学園都市という科学の結晶が作り上げた最高級の頭脳を持つこの男の前ではそんなものは意味を成さない。垣根は顔色一つ変えること無く、筆記試験を終えた。そして次は実技試験。内容について思案していると、一人の男が壇上に現れた。

 

 「受験生のリスナー!!今日は俺のライヴにようこそー!!エヴィバディセイヘイ!!!」

 

突然現れた男はいきなりそう叫びながら、両手を高らかに挙げた。会場が静まりかえる。

 

 「こいつはシヴィー!!なら受験生のリスナーに実技試験の概要をサクッとプレゼンするぜ!!!アーユーレディ!?」

 

さらに男は続けて声を張り上げるも、依然沈黙が保たれる会場。

 

 (なんだコイツ)

 

垣根はいきなり出てきたかと思えば急に叫び声を上げ続けている壇上の男に冷ややかな視線を向ける。しかし男は会場の反応などは気にもとめずに話を続けた。

 

 「入試要項通り!リスナーはこの後!10分間の、模擬市街地演習を行ってもらうぜ!!!」

 

そうして実技試験の説明が始まった。概要はこうだ。まず各自指定された会場に向かう。そして市街地を模した各会場に設置してある仮想敵を撃破しポイントを稼ぐ。ポイントは敵の攻略難易度によって異なり、1P,2P,3Pの敵に分けられている。撃破と言っても行動不能にすればOKらしい。成績は倒した敵のポイントの合計で決められるということだ。その際、他人への攻撃などアンチヒーローな行為は禁止。壇上の男がそこまで説明した所で、

 

 「質問よろしいでしょうか!!」

 

一人の少年が挙手をし、壇上の男に質問の許可を求めた。眼鏡をかけ、いかにも優等生といったような真面目そうな少年だった。

 

 「オーケェ!!」

 

その少年に対し、壇上の男は質問の許可を出す。

 

 「プリントには4種の敵が記載されております!誤載であれば日本最高峰である雄英において恥ずべき痴態!!我々受験者は基盤となるヒーローのご指導を求めてこの場に座しているのです!!」

 

激しく熱弁する眼鏡の少年。すると、話の途中でいきなり振り返り、

 

 「ついでにそこの縮れ毛の君!!先ほどからボソボソと、気が散る!!物見遊山のつもりなら即刻、ここから去りたまえ!!!」

 「すみません…」

 

指を指しながら別の少年に注意する。眼鏡の少年に公然と注意された縮れ毛の少年は恥ずかしそうに小さくなりながら謝った。

 

 (あー、いるよなあーゆー奴。正義感に満ちあふれてる奴だ。いかにもヒーロー志望って感じだな。あいつとは絶対同じクラスになりたくねえ。てか落ちろ)

 

垣根が心の中で呟くと、再び壇上の男が話し始めた。

 

 「オーケーオーケー!!そこの受験番号7111君、ナイスなお便りサンキューな!!4種目の敵は0P!そいつは言わばお邪魔虫!各会場に1体!所狭しと大暴れしているギミックよ!!倒せないことはないが、倒しても意味が無い!リスナーには上手く避けることをおすすめするぜ!!!」

 「ありがとうございます!!!失礼いたしました!!!」

 

眼鏡の少年は勢いよく謝るとそのまま席に着いた。

 

 (なるほど。要はギミックを避けながらスライムをプチプチ潰していけばいい訳か)

 「俺からは以上だ!!最後にリスナーへ我が校"校訓"をプレゼントしよう!かの英雄ナポレオン=ボナパルトは言った!『真の英雄とは人生の不幸を乗り越えてゆく者』と!!…"Plus Ultra"!!!それでは皆、良い受難を!」

 

壇上の男が勢いよく叫び、説明会は終わった。垣根は自分の受験票を見る。垣根の会場はC。それを確認すると垣根はホールを後にした。

 

 

 

 




いよいよ本編!!でも本編はいるとアニメで台詞とか状況とかいちいち確認しなきゃいけないので大変です・・・。漫画持ってれば・・・。

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