クラス対抗戦第一試合は切島・上鳴・口田・蛙吹・峰田・心操チーム vs 塩崎・宍田・円場・鱗・庄田チーム。開始早々宍田・円場・庄田が先制攻撃を仕掛けた。宍田が個性『ビースト』を発動させ、切島や蛙吹に襲いかかる。その時、A組の窮地を救ったのが心操の新アイテム・『ペルソナコード』。幾多のプレートを変形共鳴させることで心操の声色を変えて直接外部に放出する。これにより、心操は自分の声質を自在に操ることが出来るのだ。ペルソナコードによって変えられた心操の声に反応した宍田は一瞬動きが静止する。急いで円場が宍田を洗脳から解くも、その一瞬で上鳴が反撃に転じた。また、蛙吹と切島も再起し戦線に戻ると両者入り乱れる乱戦となった。
(自身の声に反応させることによって発動する個性。タネが分かっちまえば対策は容易。その弱点を補うための変声機ってわけか。一対一なら初見以外じゃ効果はゼロに等しいが、こういう集団戦闘の場合なら使いどこ次第では良いカードになり得る。おまけに相手側からすれば常に心操の声かどうか判断する必要がある故、精神的疲弊も生まれる。意外と面倒くさそうだな。大丈夫かねあいつら)
垣根はモニターの映像を見ながら、自分のチームと対戦することになる心操の技について分析し、まるで他人事であるかのように緑谷達の方をチラリと見る。そして再びモニターに視線を戻す垣根。先の戦闘でA組は切島と口田が、B組は円場が牢に捕らわれると両陣営は一旦距離を取った。そして今度はA組がB組へ攻撃を仕掛けた。A組は上鳴を囮にし、心操のペルソナコードによって塩崎を洗脳、さらに宍田を持ち場から釣り出すとその隙を突いて蛙吹と峰田が鱗と庄田を仕留める。そして釣り出された宍田も心操の捕縛布に不意を突かれ、さらに蛙吹にとどめの一撃を喰らいダウンした。こうして第一戦はA組の勝利に終わった。
「やったぁ!!」
「うむ!見事だ!」
「蛙吹さんと上鳴君の機転で心操君が活きた!凄い!」
「洗脳…思ってた以上に厄介な個性だな」
試合を見ていた生徒達が心操の個性の厄介さについて再認識する。そして蛙吹達がB組チーム全員を牢に入れ終わると、
「ぐぬぬぬ…第一試合…A組プラス心操チームの勝利!」
苦々しそうなブラドの声が響いた。第一戦チームが全員戻ってくると、相澤・ブラドの下で各チーム反省会が行なわれた。それを見た他の生徒達も各チームごとに集まり、作戦を練り始めた。
「こっちも作戦練らなきゃ!僕たちが今できることアイデア挙げてこう!」
「おっけー!!」
緑谷が垣根達に呼びかけると、地面にノートを広げ作戦会議を始めた。各チーム色んな話し合いが行なわれている中、唐突にブラドの声が再度響き渡る。
「では第二試合準備を!」
第二試合は轟率いるAチームと鉄哲率いるBチームが対戦する。ブラドの声を聞いた両チームはそれぞれスタート地点に移動し、開始の合図を待つ。
「両チーム準備完了。それでは…第2試合スタート!」
第二試合開始のゴングが鳴る。先に仕掛けたのは轟チームで、轟が鉄哲達目掛けて広範囲の氷塊をぶつけた。これにより相手の動きを止めようとしたAチームだが、その策はBチームの骨抜によって阻止される。骨抜の個性は『柔化』。生物以外の触れたモノを柔らかくする個性だ。骨抜は個性を発動して氷塊を柔らかくすることで、轟の攻撃を無効化させる。さらに骨抜は運動場の足場も柔らかくさせることでAチームの機動力を削いでいった。
「即興だよな…!?読みが良いのか骨抜の奴。柔軟さは伊達じゃねぇ」
砂藤がモニターを見ながら感心そうに呟く。同じく垣根も試合をモニター越しから見つめていた。
「あいつも確か推薦だよな?」
「ええ。そのはずですわ」
「まぁまぁ使えそうな個性だな。特にこういう集団戦では活きる」
「でも垣根君は空飛べるしあんまり関係ないんじゃない?」
「まぁそうだな」
骨抜の個性により氷結から逃れたBチームは一気に轟達に襲いかかる。上手い感じに一対一の状況が作り出され、各所で戦闘が開始した。この試合は先の試合とは違い、かなり激しいものとなった。特に骨抜の機転及びサポート力と飯田のスピードが要所で光り、どちらのチームも譲らず結果は1-1の引き分けという形で終わった。気絶者を保健室に運び終えるとブラドは次の試合を行なうチームに準備するよう伝えた。両チーム準備し終えたのを視認すると再び開始の合図を叫んだ。
「第三セットスタートだ!!」
爆豪率いるAチームと取陰率いるBチームの試合が始まった。この試合のキーマンはやはり爆豪だ。良い意味でも悪い意味でも我が強すぎる爆豪。Bチームはそんな爆豪の強すぎるエゴの隙を突き、チームワークをかき乱す作戦に出た。そしてその作戦通り、早速爆豪が一人前に出てきたところを取陰が翻弄し、その隙に耳郎達に攻撃を仕掛ける。だがここで意外な光景を目にすることになる。
「あっれぇ?僕の目が変なのかなァ?彼、今耳郎さんを庇ったように見えたなァ」
「庇ってたな!足蹴で!」
「物間!大丈夫だ!あいつは意外とそういう奴だ!」
「キャラを変えたっていうのか!!!!!」
物間が忌々しそうな顔をして叫びを上げる。だが驚くのも無理はない。同じ時間を過ごしてきたA組生徒ですら、あんなに身を挺して仲間を庇う爆豪は初めて見る。垣根も意外そうな顔でモニターを見ていた。
「へぇ。なんか変わったかあいつ」
「あの爆豪さんが…!」
「なんか凄いね今日の爆豪君!」
「……!」
垣根達が話している中、緑谷は黙ってモニターを見つめていた。攻撃が失敗したBチームは一旦距離を取るもその後をすぐに追っていく爆豪達。またもや爆豪が一人飛び出してきたところを待ち伏せていた泡瀬が狙い、動きを封じることに成功する。しかしすぐさま砂藤が爆豪を解き放つと爆豪はすぐさま泡瀬を追走。そして泡瀬が臨戦態勢を取った瞬間に耳郎・瀬呂にスイッチしさらに先を進んでいく。その先に待っていた凡戸・柳は爆豪に攻撃を迎撃するも、エンジンのかかってきた爆豪を捉えることは出来ず爆撃を喰らってしまう。そこへすかさず麗日・砂藤が飛び出し、二人の身柄を抑えた。爆豪チームは見事な連携で一瞬で三人を拘束してしまったのだ。
「協調性皆無の暴君だっただろ…!?丸くなったどころじゃないぞ!」
物間が信じられないといった表情で呟く。今までの独りよがりな行動ではなく、仲間を信頼した上での振る舞い。そしてそれに応えるチームメイト。今までの試合の中で一番完璧な試合運びだった。爆豪は鎌切を瞬殺した後、分裂した取陰の本体を突き止めるとこれまた一瞬でかたをつけた。そしてBチームが全員牢に入れられるのを確認するとブラドの声が響き渡った。
「わずか五分足らず…!!思わぬチームワークでA組5-0の勝利だ!!!」
今日最短で試合に勝った爆豪達。反省会でも特に相澤からの指摘もなく、むしろ褒められていた。
「かっちゃん!おめーやりゃ出来るのなァ!耳郎完全ヒロインだったわ!」
「ウチヒーローだし」
「不良が子猫拾った感じだよなー」
上鳴達が爆豪に駆け寄りながら賞賛の声を浴びせる。そして緑谷も爆豪の下へ駆け寄り何か喋りかけにいった。いつも通り爆豪が緑谷に怒鳴り散らしていたが、緑谷の顔には以前のような怯えはなく、正面から爆豪を向き合っていた。
(なんかあいつら変わったか…?)
後ろで二人を見てふとそう感じた垣根。しばらくすると爆豪チームがこちらへ歩いてきて爆豪と垣根の目が合った。
「よう。調子良さそうじゃねぇか」
「…ッ!」
「おぉ垣根!見たか俺達のチームワーク!凄かったろ?」
「あぁ。やれば出来るじゃねぇかよ爆豪君。出来れば俺と組んだ期末試験の時にもその冷静さを発揮してほしかったがな」
「っるっせーよ!俺はまだまだこんなモンじゃねぇ!今のうちに余裕ぶっこいてろ。いずれテメェもぶっ倒す!!」
ギロリと垣根を睨めつけながらそう言い放つと爆豪は歩き去って行った。ニヤリと笑いながら爆豪の背中を見送っていると、八百万から声がかかる。
「垣根さん。そろそろ時間ですわ」
「ああ。今行く」
八百万に返事を返すと、垣根も踵を返し緑谷達の下へ歩いて行った。いよいよ最後の試合が始める。
次試合です