かの悪党はヒーローへ   作:bbbb.

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七十九話

 

 部屋の入り口のドアを吹き飛ばし、ミルコと垣根が勢いよく中に侵入する中、その余波で吹き飛んだドアの破片が一匹の小さな脳無に直撃した。その脳無は殻木が愛情を注ぎ込んで育ててきた脳無であり、彼にとってかけがえのない存在であった。そんな愛する脳無が見るも無惨な姿で潰される光景を、殻木はただ見つめることしか出来なかった。

 

 「あ…あぁ…」

 

殻木が声にならない悲鳴を上げる中、ミルコは怒声と共に勢いよく右足を振り抜き、宙に浮く扉を再度蹴りつけた。

 

 「オォォォォォラァァァァ!!」

 

 ズガァァァァァァン!!!!

 

轟音と共に、コンクリート製の扉が近くにあった大きなカプセルに激突した。カプセルは粉々に砕け散り、中に入っていた液体が漏れ出し異形体のナニカがドサッと手前に倒れ込む。

 

 「やっ…いやっ…」

 「……」

 「いやぁぁあああああああ!」

 

殻木の悲痛の叫びが部屋中に響き渡った。部屋を滅茶苦茶にされたこともそうだが何より、脳無が死んでしまったことが殻木の心に一番の精神的ダメージを与えていた。そんな殻木を見つめながらミルコは耳のインカムに手を当て、全体通信を行なった。

 

 「みんな!強そうな脳無とジジイいた」

 「殻木は本物か?複製か?」

 

ミルコからの通信にエンデヴァーが尋ねた。

 

 「知らね。蹴りゃ分かる」

 「殻木を捕らえろ」

 「その前に蹴る!」

 「と言いたいところだが…少し待ってろ」

 

エンデヴァーがそこで言葉を切ると、次の瞬間インカムの向こうで激しい戦闘音が聞こえ始めた。

 

 「あっちも中々愉快なことになってんな」

 

とここで、それまで黙って聞いていた垣根がおもむろに口を開くと、そのまま歩を進めミルコの横に並んだ。そして、殻木より少し離れた後方から真っ黒な瞳と共にこちらを見つめる女性をじっと睨み付ける。

 

 「まさかこんなにあっさり見つけられるとはねぇ。元気そうでなによりだ。また会えて嬉しいよ木原クン」

 「おっ、奇遇ですねー。私もあなたとこうして再び会うことが出来てとても嬉しいです。ちょっとサプライズではありましたが」

 「なに、待ちに待った感動の再会だ。テメェに少しでも喜んでもらうためにサプライズで会いに来たんだが…気に入ってくれたかな?」

 「えぇ。それはもう、とっても」

 

両者互いに微笑を浮かべながら再開の言葉を交わす。表面的には再会を喜ぶ温厚な会話だが、互いが発している感情は殺意以外の何物でもない。張り詰めるような緊張感が場を支配する中、ついに垣根が動き出そうとしたその時、

 

 ダッッッッ!!!

 

垣根の隣にいたミルコが力強く地を蹴り、殻木目掛けて飛び出した。

 

 「まずは本物か調べる!」

 「あああああ!本物じゃ!ワシ本物じゃ!」

 「蹴りゃ分かる!」

 「ああああああああ~!」

 

子供のように泣きじゃくり、迫り来るミルコを恐怖の眼差しで見つめる殻木。殻木は急いで白衣の内ポケットからリモコンのようなものを取り出し、なにか操作しようした。しかし、殻木がスイッチを押すよりも前にミルコは殻木の下へたどり着くと、間髪入れずその左足を殻木の持つリモコン目掛けて蹴り上げた。しかし、

 

 ドンッ!

 

 「…あぁ!?」

 

ミルコが蹴りを繰り出す直前、突如脇から新たな小さな脳無がミルコ目掛けて飛び出し、そのまま彼女に体当たりを喰らわせる。結果、空中のミルコはバランスを崩し、ブンッ!と唸りを上げて繰り出された左足はその軌道をずらされ殻木の左肩をかすめながら通過した。ミルコは顔だけ振り返り、自身の攻撃を邪魔した脳無を視界に捉える。

 

 「モカちゃ…」

 

突然の脳無の行動に殻木までもが驚きの表情を浮かべていた。さらに

 

 ゴバッッッ!

 

と音を立て、脳無は口から泥のようなものを吐き出していく。それはまるで敵連合の幹部の一人、トゥワイスの個性によるものとそっくりだった。

 

 (コイツが二倍持ちか!)

 

ミルコは脳無の個性を即座に認識すると、脳無目掛けて素早く右足を放った。

 

 「オラッ!!」

 

怒声と共に放たれた右足は泥を貫通し、脳無の身体をしっかりと捉える。「キュンッ…」と小さな悲鳴を上げながら脳無は吹っ飛ばされ、怪しく光るモニター画面に激突した。そのまま地にずり落ちていく脳無をミルコが見つめていると、

 

 ピッポッパッ

 

突如ミルコの耳に小さな電子音が聞こえる。着地したミルコが殻木の方へ目を向けると、倒れながらも手に持つリモコンを操作している殻木の姿があった。

 

 (奇跡じゃ…!指示もなく個性を使用するなんて。守ってくれたんじゃな。ワシを守って…)

 

殻木は先ほど自分の身を守ってくれた脳無の行動に感激しながらもリモコンを操作していく。そして何度かコマンドを入力すると、「プー!」と甲高い音を鳴らしリモコンの画面が赤くなった。すると、

 

 ビリッ!ビリビリッッ!、

 

甲高い音を響かせながら、霊安室になるいくつものカプセルに電流が走っていく。そして、

 

 (モカちゃんの勇気無駄にはせんぞ!忌々しいヒーローどもを蹂躙せよ!ハイエンド!!)

 

 バシャッッッッッ!!

 

カプセルが次々と砕け散り、中の液体が外に勢いよく流れ出た。ミルコが目を見開きながら見つめていると

 

 ブンッッ!!

 

 「!?」

 

外へと出たハイエンドが一瞬でミルコとの距離を詰めその顔を掴むと、思いっきり壁へと投げつけた。

 

 ガシャンッッッ!!!

 

轟音が部屋中に響き渡る。あまりの衝撃に壁の一部が崩れ落ち、そこには大きな穴が空いていた。その光景を下からじっと見上げるハイエンド達。そして、

 

 「久…ぶり…」

 「ヒ…ロ…」

 「暴れらレル…ヒーロー…」

 「全部…コロして…暴れましょ」

 

殻木と木原が生み出した怪物、ハイエンドの群れが戦闘態勢に入った。

 

 「…そいつらがテメェと殻木で作ったハイエンドってやつか。随分と不細工なのが多いな」

 「不細工とは酷い言いようですね。実験による実験を重ねて作った自信作ですよー彼らは。とはいえ、まだ調整段階だったので実戦はもう少し後の予定だったのですが…」

 「…やっぱあの時俺を襲った脳無はテメェの仕業か」

 「フフッ…」

 

木原は微笑を浮かべるも木原の問いには答えず、代わりにまだ床に伏している殻木に語りかける。

 

 「こうなってしまっては仕方ありません。ドクター、ここは私たちに任せてあなたは奥へ。今はアレの覚醒が最優先です」

 「木原君…!分かった。すまんがここは頼む!」

 

そう言うと殻木は急いで立ち上がり、移動式の椅子に座るとそのまま部屋の奥へ消えてしまった。するとそれを見ていた垣根が崩れた壁を見上げ、今し方投げ飛ばされた人物に声をかける。

 

 「おー、生きてっかー?」

 「ったりめーだろーがァ…」

 

壁の中から身を乗り出しうめき声と共に垣根の問いに答えるミルコ。流石に幾分かダメージを喰らった様子だが、動けないほどの怪我ではなさそうだ。頭から血を流しながらミルコは眼下を睨み付けると、不敵な笑みを浮かべながら呟いた。

 

 「逃がすかよジジイ。いいぜ。ちょうど暖まってきたとこだ!」

 「なんだよ生きてたのか。にしても随分しんどそうだな。なんだったらそこでずっと休んでてもいいんだぜ」

 「ふざけろ。この程度でくたばれるんならヒーローなんてやってねぇ。言ったろ?ようやく暖まってきたって」

 

そう言い放つとミルコは自分の両耳をピクピクと動かし始めた。ミルコの耳はヒーロー名通り兎の耳のようになっており、その聴覚は常人の何倍にも相当する。ミルコはその常人ならざる聴覚で霊安室中のかすかな音まで拾い、殻木の所在を掴もうとした。。そして、

 

 「奥にいるなァ。ジジイ逃げずに留まってんなァ。カタカタカタカタやってんなァ!」

 

ニヤリと笑いながらミルコは殻木が消えていった奥の部屋を見つめる。すると、ミルコの様子を見ていたハイエンド達が驚いたように呟いた。

 

 「な、なぜ動ける…?」

 「動きを止めろ。俺ガ殺ル」

 「足で相殺したんだよ。衝撃を」 

 

 ダッッッッ!!1

 

ミルコが両足で力強く壁を蹴り、大きく跳躍するとハイエンド達から離れた場所に着地した。

 

 「バァアアアか!まずジジイだ!」

 

声を張り上げながら、不意を突かれたハイエンドを置き去りにしミルコは一気に奥の部屋へと駆けだした。

 

 「あーあ。行っちまったぜあいつ。いいのか?ありゃ手足捥いだって止まらねェぞ」

 

垣根が他人事のように言う。

 

 「手足を捥いでも止まらないのはハイエンド(こちら)も同じです。彼女には悪いですが、ドクターの下へ行かせるわけにはいきませんので。勿論、それはあなたも」

 「…奥の部屋に何がある?」

 「さぁ?企業秘密ですので」

 

木原は無機質な声でそういうと、ポケットからある物を取り出した。垣根が見ると、それは先ほど殻木が持っていたリモコンとそっくりなものだった。木原は取り出したリモコンにコマンドを入力していく。すると、

 

 バシャッッッッ!

 

またもいくつものカプセルが砕け、中から続々と脳無が出現する。その数は優に二十は超えている。垣根が黙って見つめていると木原がおもむろに口を開いた。

 

 「さて、これで今動かせる脳無は全てですかねー。ただし、さっきとは違って何体かは二ア・ハイエンドも混じっていますが、ま、これだけいれば足止めには充分でしょう」

 「…さっきのが動かせる全部じゃなかったのか」

 「あれはドクターの持分。実は私の方でもちょくちょく作ってましてねー。まぁドクターのと同様、まだテスト段階なものばかりなので出来れば使いたくなかったですが、そうも言ってられません」

 「そんな雑魚共で俺を止められるとでも?」

 「思ってませんよー。ただ、それなりに時間が稼げればいいのです。流石のアナタもすぐにこれだけのハイエンドを全て倒すのは簡単では思いますよー。私お手製のお気に入りちゃん達ですので」

 

Made In Kihara。木原一族によって作られたものの性能は垣根はよく知っている。学園都市随一のマッドサイエンティスト達が生み出すモノは、そのほとんどが最悪を振りまくモノであるということを。そんな木原によって生み出された脳無達をチラリと見ながら垣根は木原に問いかけた。

 

 「解せねぇな」

 「?何がです?」

 「さっきっから聞いてりゃ時間稼ぎだの足止めだの、テメェ本当に戦る気あんのか?」

 「……」

 

垣根の問いには答えず微笑を浮かべる木原。なにか隠している。そしてそれは間違いなく奥の部屋にあるナニカだ。垣根は直感的に感じたが、それを確かめる術は現状ひとつしかない。木原と脳無を全て蹴散らして奥の部屋に進むしか。

 

 「ま、どうでもいいか。そんなこと。テメェが何を企んでようが、俺がテメェをここで殺すことに変わりはねぇしな」

 

垣根はそこまで言うと、演算処理を開始する。ボッ!と垣根の周囲に白いモヤがいくつも出現し、それらはあっという間に形を変えていく。

 

 「…!」

 

木原が驚いた様子で目を見張る中、白いモヤは人型を形成し、ついに垣根帝督本人とそっくりのモノが何体も出現した。未元体。木原がまだ知らなかった、垣根帝督の新たな力である。

 

 「それは…」

 「どうした?そんな鳩が豆鉄砲くらったみたいな顔しやがって」

 「……」

 「俺だってこの世界来てずっと遊んでた訳じゃねぇんだ。そりゃ新技の一つや二つ出来る。そんな驚く事じゃねぇだろ」

 「……ただの人形、という感じではなさそうですね」

 「さぁ?どうだろうな」

 

垣根は不敵に笑いながらそう言うと、

 

 ファサッッッ!!

 

未元体の背中から一斉に純白の翼が展開される。それは垣根帝督が能力を全力で使うときに見せる六枚の翼と全く同じモノだった。言葉を発さずこちらを見据える木原に垣根は静かに呟いた。

 

 「テメェらが生み出した脳無と俺が生み出した未元体(こいつら)、どっちも人外の化け物同士。どっちが強ぇか見物だな」

 「……」

 「レクチャーの時間だぜ木原。本物の化け物ってのがどういうモノか、テメェに教えてやるよ」

 

垣根のその言葉を合図に未元体の軍団が一斉に脳無に襲いかかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ウウウウォォォォォ!!!」

 

ハイエンドの一体が唸り声を上げながら自身の頭部から骨を伸ばし、ミルコ目掛けて放つ。対するミルコも脳無の攻撃を察すると軽やかにジャンプし、その攻撃を躱す。そのまま跳躍を繰り返し奥の部屋へと迫るミルコだが、今度は前方から別の大きなハイエンドが一直線にこちらに向かってくるのを目で捉えた。

 

 「チッ!」

 

ミルコは舌打ちをしながら側にあったカプセルを足場にし上方へとジャンプすることでまたもや脳無を躱す。そして再びカプセルの側面に着地すると、今度はカプセルを足場に駆け抜けていく。すると、

 

 ビュンッッ!!

 

下から別の脳無が弾丸のようなスピードでミルコ目掛けて襲いかかった。間一髪で避けたミルコだったが、思わず床に着地させられる。すると、着地点にはさっき突撃してきた大きな脳無が待ち構えており、その長い鼻をミルコに放った。

 

 「ウラァ!!」

 

迫る鼻を蹴りで迎撃したミルコは一旦後ろへと距離を取る。するとそこへ、

 

 ビュンッッッッッ!!!

 

 「!?」

 

最初にミルコを襲ったハイエンドの伸びる骨が再びミルコを襲う。頭部骨の先は鋭利に尖っており、いくつもに枝分かれしながらミルコを穿ちに迫る。ミルコは咄嗟に避けるも、複数の長い骨によって手足を挟まれ身動きを封じられてしまった。

 

 「蹂躙せよト、ソソそういう指令ダ」

 「シ死ネ!」

 「ヒーロー!」

 

動けないミルコに対し、先ほどミルコを襲いに来た二体のハイエンドが前後から挟む形でミルコに迫る。

 

 「誰が!」

 

ミルコはなんとか足だけ拘束から抜け出すと、足をバッ!と前後に180度開脚させ二体のハイエンドに蹴りつけた。

 

 「「ウッ…!」」

 

ミルコの蹴りに怯んだハイエンド達。ミルコはその隙を逃さず、蹴りを放った体勢のままその場で身体を回転させた。

 

 「踵月輪(ルナリング)!」

 

 ブンッッッッ!!

 

回転による遠心力によって威力を増したミルコの両足が、風切り音と共にそれぞれハイエンドの頭部と顎部を削り取る。しかし、

 

 (浅ぇ!ずらされた!)

 

ミルコはズキッ!とした痛みを感じ、自身の太ももに視線を移すと、そこには鋭利なものによって付けられたであろう切り傷。踵月輪(ルナリング)を放つ直前、ハイエンドの鋭い頭部の骨がミルコの太ももを掠め、その痛みで踵月輪(ルナリング)がずらされてしまったのだ。

 

 「テンメェェェ!!」

 

ミルコは先ほどから遠距離攻撃を仕掛けてくるハイエンドに標的を定めると、伸びきった骨を足場に跳躍を繰り返し瞬く間に距離を詰める。

 

 ビュンッッッ!!

 

迫り来るミルコを撃ち落とすべく次々と頭部から骨の槍を放ってくるハイエンドだが、

 

 「邪魔ァ!!」

 

 バキッッッッ!!

 

ミルコはその悉くを蹴り砕いていき、あっという間に両者間の距離は0となった。そしてミルコがハイエンド本体を蹴り飛ばそうとしたその時、

 

 ガッッッッ!

 

目の前のハイエンドの身体が一瞬で形を変える。背中一帯に骨の鎧を纏い、その何本かは相手を迎撃するためなのか鋭く突き出ていた。これでは並の攻撃ではびくともしないだろう。さらに、

 

 グワッッッッ!! 

 

突如、自身の左腕が誰かに捻られるような妙な力を感じるミルコ。その力は次第に強くなっていき、彼女の左腕は雑巾のように捻れていく。ミルコはすぐに別のハイエンドによる個性の力だと理解した。

 

 「チョコマカと…」

 

ミルコの考え通り、一体のハイエンドが右腕を突き出しゆっくりと右手を反時計回りに回していく。右手が回る度にミルコの左腕が捻れていき、完全にねじ切れてしまうと思われたその時、

 

 バキッッ!

 

鈍い音を鳴らしながらハイエンドの顔に白い拳がたたき込まれる。ハイエンドがうめき声と共に吹き飛ばされると、同時にミルコの左腕にかけていた力が消え去った。左腕が元に戻ったことを体感したミルコは再び目の前のハイエンドに意識を戻すと、その右足を勢いよく振り下ろした。

 

 「月堕蹴(ルナフォール)!」

 

 ズドォォォォンンンンッッ!!!

 

ミルコの右足は鎧ごとハイエンドの肉体を破壊し、その衝撃でコンクリートの床までもを崩壊させる。眼下のハイエンドをダウンさせたミルコは素早く跳躍し、今度は先ほど自分の左腕をねじ切ろうとしたハイエンドの頭上までたどり着くと、そのままハイエンドの顔を両足で挟みこんだ。そして、

 

 「咄嗟に遠距離攻撃出すヤツは、近距離弱ェと決まってる!」

 「死ヌゾ」

 「あぁ!死ぬときゃ死ぬんだよ!人間はァ!」

 

ピカッ!とハイエンドの両目が光り、二本のレーザーが頭上のミルコに対し放たれるも、ミルコは素早く身体を捻ることでレーザーを躱す。そしてミルコはその勢いを利用してハイエンドの頭部を後方へと捻り込んだ。そして、

 

 「月頭鋏(ルナティヘラ)!」

 

 ガシャンンッッッッッ!!

 

ハイエンドの頭部を捻り切り、派手な音と共に床へと叩きつけた。またしても床が粉砕される中、頭部を失ったハイエンドの胴体がゆっくりと後方へ倒れ込む。ミルコはゆっくりと立ち上がり振り返ると、ニヤリと笑いながら言った。

 

 「テメェ、余計なことしやがって」

 『心外だな。おかげで貴重な腕一本失わずに済んだんだ。感謝して欲しいもんだぜ』

 

ミルコに一体の未元体が言葉を返す。先ほどねじ切るハイエンドに一撃を喰らわせたのはこの未元体によるものだった。ミルコがふと未元体の背後に目線をやると、離れた場所で多くの脳無と未元体が戦っているのが見える。

 

 「あ?まだ動ける脳無いたのかよ」

 『あぁ。木原の野郎がまだ隠し持っててな。本当はもっと多くの『俺』がここへ来る予定だっんだが、思ったよりハイエンドの数が多くてな』

 「木原…あの車椅子女か」

 『あぁ』

ミルコの言葉に未元体は頷きながら答えると、先ほどからこちらをじっと見つめ警戒している脳無達に向き直った。するとミルコが再度未元体に尋ねる。

 

 「垣根本体の方はどこにいんだ?」

 『(オリジナル)は木原のとこだ。ま、コイツら含め木原の相手は俺達に任せてアンタは殻木を追えってことだ』

 「…そうしてぇのは山々だが、まずはアイツらをぶっ飛ばしてからじゃねぇとなァ」

 

そう言うとミルコは拳をコキコキッと鳴らしながら、未元体同様ハイエンド達と向き直った。

 

 「キ貴様…」

 「ヨヨよくも…」

 

仲間のハイエンドを殺され、三体のハイエンド達が恨み言を口にしながらミルコを睨めつける。しかしミルコはいつもの調子で笑みを浮かべながらハイエンド達に言った。

 

 「ドタマ潰しゃあ止まんならむしろそこらの敵よかよっぽど楽だ。こちとらいつ死んでも後悔ないよう毎日死ぬ気で息してる。ゾンビにヒーロー ミルコは殺れねぇぞ」

 「…ッ」

 『…後ろからもうじゃうじゃ来てやがる。あまり時間はかけてられねぇ。速攻で片付けるぞ』

 「あぁ!」

 

ミルコの力強い返事と共に二人は脳無向かって飛び出した。

 

 

 

 

 

 




始まったようで大して始まってない
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