かの悪党はヒーローへ   作:bbbb.

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ヒロイン…


八話

「うお~すっげえ…何だよこれ…」

 「ほぼ街じゃん…」

 「敷地内にこんなんがいくつもあんのか…」

 「雄英すっげえ…」

 

 受験生達はバスで演習場まで連れてこられ、入り口の前で待機していた。バスから降りて演習場を目の当たりにした受験生達はそのあまりのスケールの大きさに感嘆の声を上げる。垣根も他の生徒同様、入り口で待機していたが同時に周りの生徒に目を向けていた。

 

 (色んなヤツがいるもんだな)

 

受験生の中には顔が鳥みたいな人、頭にブドウみたいなモノがついてる人、髪の毛がトゲ状になってい人など個性的な人がたくさん見受けられた。どんな個性使うんだろうか、などと考えていると突然、

 

 「ハイ!スタァァトォォォォ!!!!」

 「「???」」

 

マイクから先ほどの男の声が聞こえる。だが受験生一同は何が起こったか全く分かっていない様子。すると、男が言葉を続ける。

 

 「どうしたあ!?実践じゃカ――――――――」

 

 轟!!!

 

マイクの男の話の途中に、突然激しい音を立てながら受験生達の間に強烈な風が吹き荒れる。あまりの激しさに皆思わず顔を覆ってしまった。風がやみ、目を開けると皆の視界には一人の受験生が白い翼を背に宿し、飛び去っていく姿が見えた。全員何が起こったか分からず、呆然としていたが、

 

 「…ウントなんざねえんだよ!!!走れ走れぇ!!賽は投げられてんぞ!?」

 

というマイクからの声で再び我に返った受験生達は、その言葉の意味を理解し一斉に走り始めた。

 

 

 

 

―――――――――――――――これより、実技試験開始。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 試験内容は市街地にいる仮想敵の撃破。そのため、開始から5分もすると演習場は受験生と仮想敵が入り乱れた状況になっていた。仮想敵は無限に沸いてくる訳では無く、数に制限がある。そのため早く市街地に入った者程、有利になる。C会場にて、誰よりも早く演習場に足を踏み入れた垣根は自身が操る六枚の翼で仮想敵を次々と屠っていた。垣根の翼はいわば攻守一体型の武器のようなモノである。防御に使えばほとんどの物理攻撃からその身を守る盾となり、攻撃に使えばあらゆるモノを粉砕する矛となる。垣根は上空から仮想敵を見つけてはその翼で叩き潰していた。仮想敵がいなくなると上空を移動し、別のスポットを探す。その作業を繰り返す。この試験では受験生の様々な資質が問われる。状況をいち早く把握する「情報力」。あらゆる局面に対応する「機動力」。どんな状況でも冷静でいられる「判断力」。そして純然たる「戦闘力」。これらをすべて持ち合わせていなければ高得点は望めない。その点から見れば垣根はこれらを全て満たしていると言えるだろう。常に戦場を俯瞰し、どこを狙えば効率よくポイントを稼げるかを分析し、実行に移す。垣根は誰よりもハイペースでポイント数を積み上げていく。

 

 ズガガッ!!

 

と鈍い音を立てながら、もう何体目になるか分からない仮想敵をその翼で貫く垣根。

 

 (これで何体目だ?覚えてねえな…まぁいいか)

 

ここで辺りを見回す垣根。さすがにもうあまり仮想敵は残ってなさそうだ。自分もそうだが、他の受験生達の頑張りもあってか大体の仮想敵は大体狩り尽くされてしまったようだ。あとは適当に時間潰してタイムアップまで待つか、などと考えていると、

 

 ズドドドドドドドドォォォォォォォォォ!!!!!

 

突然、強い地震が起こったのかと勘違いするような地鳴りが会場中に響き渡る。垣根を含む全ての受験生は一斉に強い地鳴りの発生源に目を向けると、そこには20メートルはあろうかと言うくらいとてつもないデカさの仮想敵が出現していた。これが説明会の時言っていた0Pの仮想敵というヤツだ。

 

 (ほー。あれが例のヤツか)

 

垣根が少し離れたところから巨大ロボを見つめていると、不意にその巨大敵が腕を振り上げ、その巨大な腕を目の前の道路に勢いよく叩きつけた。その瞬間、すさまじい土煙と衝撃が受験生達を襲う。多くの受験生が悲鳴を上げ、一斉にその場から逃げ出した。受験生達の頭の中に浮かんでいた言葉は一つだけ。

 

 逃げなければ。

 

今の一撃だけで多くの受験生は感じてしまった。頭よりも先に身体が感じ取ってしまったのだ。勝てるわけがない、と。それに仮にこの仮想敵を倒したとしても、得られるポイントは0。勝てる勝てない以前に意味が無い。逃げることは恥などでは無くむしろ合理的だと言えよう。誰もが逃げるという選択肢をとった。しかし皆が我先に逃げようと必死になれば、混乱状態になるのもまた必須。そんな中、

 

 「痛っ!!」

 

オレンジ髪でサイドテールの女子生が道路に投げ出された。逃げ惑う人の群れの中で誰かとぶつかり、転んでしまったのだ。

 

 「いったいなぁ…」

 

転んだ女子生徒が起き上がろうとしたとき、自分の背後から、

 

 ゴロゴロゴロ

 

と、車輪の回る音が聞こえてきた。恐る恐る後ろを振り返ると、そこには自分を見下ろす巨大敵が大きくそびえ立っていた。

 

 ブォッ!!

 

風を巻き起こしながら、巨大敵はゆっくりと右腕を振り上げる。逃げなければ、今すぐに。そう思うと女子生徒はすぐさま立ち上がり逃げようとした。しかし、どういう訳か足が全く動かない。恐怖に身がすくんで身体が動かないのだ。

 

 (嘘!?ヤバッ…)

 

恐怖の表情を浮かべる女子生徒目掛けて、巨大敵は振り上げた右腕を大気を切り裂くように豪快に振り下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 死んだ。と拳藤一佳は思った。巨大敵の前に放り出され、自分めがけて振るわれた攻撃を為す術もなく受け入れることしか出来なかった彼女は、思わず閉じてしまった目をゆっくりと開いた。

 

 (生き…てる…?)

 

まず自分が死んでいないことを確認した彼女は次に目の前の光景に目を向ける。彼女の目の前には茶色がかったスーツのようなズボンと、背中から出ている白いナニカ、そして金髪の頭部が見て取れた。そして徐々に今の状況を理解し始める。この目の前の人が自分のことを守ってくれたのだと。背中から出ている白いモノで巨大敵の拳をしっかりと受け止めていた。

 

 「あ…あの!!!」

 

思わず声をかけてしまった拳藤。その言葉に反応したのか目の前の男が振り向き、

 

 「邪魔だ。とっとと失せろ。」

 

と一言言い放つ。

 

 「えっ…?」

 

拳藤は困惑気味に聞き返したが、もう目の前の男は既に目の前の巨大ロボと向き合っていて、拳藤に反応してくれる様子はない。数秒考えた後、拳藤は素早くその場を離れることを選択した。そしてその気配を察知する垣根。

 

 「行ったか…」

 

そう呟くや否や、垣根は、

 

 バサッッッッ!!!

 

と、ガードするために閉じていた六枚の翼を勢いよく広げる。すると巨大敵の右腕が高く上がり、その衝撃で巨大敵はバランスを崩した。そして垣根は六枚の翼で飛翔の準備を整える。

 

 「さぁて…スクラップの時間だぜェ!!」

 

六枚の翼を一斉に羽ばたかせ、天高く飛翔する垣根。一気に巨大敵の頭上まで飛ぶと空中で静止し、六枚の翼を広げる。翼はグングン大きくなっていき、遂には20メートル程にまで成長すると、垣根はそれら六枚の翼を巨大敵に向けて放つ。

 

 轟ッッッ!!!

 

轟音を唸らせながら、一つ一つが巨大敵程のサイズになる翼が六方向から一斉に巨大敵を貫いた。機体に大ダメージを負った巨大敵はあちこちがショートし最後には、

 

 ボォォォォォォォォン!!!

 

大爆発を起こし、巨大敵は完全に破壊されてしまった。その光景に他の受験生達が呆然と眺める中、

 

 「試験終了ーーー!!!!!」

 

マイクの男の聞き覚えのある声が会場に響き渡った。

 

 

こうして雄英高校ヒーロー科の入試は幕を閉じた。

 




戦闘シーンて難しいな・・・
禁書15巻を買って読んだのですが、ていとくんの翼ってめちゃくちゃ大っきいんですね・・・・。

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