かの悪党はヒーローへ   作:bbbb.

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八十六話

 

 「ハア…….ハア…….」

 

 全身に汗をかき、肩で息をしながら垣根は朦朧とする意識をかろうじて繋ぎ止める。能力の過剰使用によって垣根の体は限界に近い。だが、それでも垣根はまだ倒れるわけにはいかない。死柄木弔という究極の破壊者がまだ健在だからだ。彼を野放しにすればこの世界は瞬く間に滅びるだろう。それだけの力を死柄木弔は有してしまっている。垣根はその死柄木がいる上空へと意識を向ける。上空には死柄木と緑谷の姿。緑谷が黒鞭で死柄木の身体を拘束し身動きを封じると、緑谷は個性の超パワーで次々と攻撃を放っていく。身体の自由を奪われた死柄木は防御に徹する他なかったが、それでも緑谷の攻撃の威力を殺しきれず着実にダメージを蓄積させていった。

 

 ドンッッッッ!!!

 

 両者が空中で交錯し、大気が震える。緑谷の拳が身体に撃ち込まれ、死柄木は空中で吐血した。一方的な展開に一見、緑谷が優位に見える状況だが、内実そうでもない。緑谷の超パワーは身体を犠牲にして繰り出しているものであり、幾度にも渡る個性の行使によってその両腕は惨たらしく変色する程壊れてしまっていた。想像を絶する痛みが全身を駆け巡っているであろう緑谷だったが、怒りと使命感に身を支配されている彼は肉体の損傷に構うことなく、ただひたすらに死柄木へ攻撃を続けていく。そんな異様な光景を爆豪達は言葉もなく見上げており、垣根もまた同様に二人の攻防に意識を向けていた。

 

 (緑谷の野郎…空中浮遊まで覚えやがったのか…原理は何だ……?超パワーのエネルギーを浮遊に回す応用か……?いい加減、あいつの個性について…問い詰めてやらねぇ…とな……..)

 

この状況でも緑谷の個性の分析に走る辺りはさすがと言うべきか。しかし、その様子は誰が見ても限界に近いことが一目でわかるほどだ。そんな垣根の下に轟達が駆け寄って来た。

 

 「おい垣根!大丈夫か!?」

 「あァ…?ったりめ…ェ…だろ。こんなん……屁でもねぇ…よ…」

 

掠れた声で虚勢をはる垣根だが、それが嘘だと分からない人間はおそらくいまい。轟は垣根の身体を労りながら応急処置を施す。すると空から今日何度目かの轟音が聞こえ、轟は上空を見上げる。空では依然緑谷が文字通り命を賭して死柄木と戦っていた。加勢に行きたいが、死柄木を空中に留めながら戦うことは緑谷にしか出来ないため、轟含めこの場にいる他のヒーロー達はただ黙って見守る他ない。そのもどかしさに僅かな苛立ちを感じていると、

 

 「轟!処置は済んだな!」

 

突然、爆豪から声をかけられる轟。

 

 「あぁ、何を…」

 「うるせェ!俺に掴まれ!エンデヴァー!上昇する熱は俺が肩代わりする!轟はギリギリまでエンデヴァーを冷やし続けろ!」

 「……俺の最高火力をもって一撃で仕留めろという事か。まかせろ!」

 

爆豪がエンデヴァーを背負い、轟がエンデヴァーの背中に手を当て冷却の個性を発動させる。

 

 「先生達を頼みます!」

 「……あぁ、任せろ!」

 

 ボウッッッッッ!!

 

ロックロックの返事とほぼ同時に爆豪が個性を発動させ、エンデヴァーを背負いながら空へと昇っていく。轟も足下と左手から炎を噴射しながら爆豪に合わせて飛び立ち、冷の個性でエンデヴァーの身体を冷やし始めた。

 

 「黒鞭が伸びきったところを狙う!俺が出たら二人はすぐに離れろ!巻き込まれるぞ!」

 

爆豪達が上昇を続け、徐々に空中の二人へと距離を詰めていく。そして緑谷の攻撃が当たり死柄木を拘束していた黒鞭が伸びきった瞬間、

 

 「今だァ!」

 

掛け声と共に爆轟がエンデヴァーを思いっきり投げ飛ばす。勢いよく投げられたエンデヴァーは一直線に死柄木の下へ迫ると、死柄木が反応するより前に彼の背後にしがみついた。

 

 「エンデヴァー!」

 「離れろ!!」

 「テメェ!!!」

 

不意を突かれた死柄木はとっさに身体に力を入れて抵抗しようとするも時すでに遅し。エンデヴァーは眼前の敵を葬るための最大の技の発動へと移っていた。

 

 「Plus Ultra!プロミネンスバーン!!!」

 

太陽のごとき輝きと共に灼熱業火の炎が死柄木の肉体を焼き尽くす。エンデヴァーに言われた通り、彼から距離をとっていた爆豪達でさえその熱気が伝わってくる。エンデヴァーが放った渾身の一撃は確かに絶大な威力を誇っていた。

 

 「ああああああああああああああああ!!!!」

 

流石の死柄木もあまりの威力に苦悶の絶叫を上げる。このまま死柄木を倒しうるかと誰もが思ったが、

 

 バシュッッ…

 

突如、エンデヴァーの炎が消失する。身を焼かれていたはずの死柄木の背中から三本の赤黒い線状のものが発現し、死柄木の背後から抱きつく形でいたエンデヴァーの身体を貫いたのだ。

 

 「「エンデヴァー!!!」」

 「なぜ……死なん……」

 

かろうじて声を絞り出すエンデヴァーだったが、今のダメージによって宙に浮く力もなくなり、そのまま地上へと落下していった。丸こげになった死柄木はエンデヴァーを気にも留めず、自身と正対している緑谷へと再び意識を向け、焼けた喉から不気味な音を発しながらゆっくりとその右手を向けた。

 

 ヒュンッッ!!

 

死柄木の右手の指先から再び三本の赤黒い線状の個性が発射される。咄嗟の攻撃に緑谷は完全に反応が遅れた。回避も防御も間に合わない。本能的にそう悟った緑谷は一瞬自身の死を予見する。しかし、

 

 ボボッッ!!!

 

聞き慣れた爆発音を緑谷の耳が捉えた直後、ドンッ!と横から何かに衝突され自身の身体が突き飛ばされた。

 

 「!」

 

その衝突によって奇跡的に死柄木の攻撃を回避した緑谷だったが、すぐさま視線を横にずらすとそこには、

 

 「……ッ!?」

 

緑谷の代わりに身を貫かれる爆豪勝己の姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ウオオオオオオオオオオオオオ!!!」

 

 凄まじい咆哮が戦場に轟く。ただの叫び声だというのに、規格外の体躯を持つ怪物は、その音圧だけで周囲に衝撃波を発生させる。戦場は今、まさに混沌と表現するにふさわしい程の様相となっている。爆豪が刺された後、激昂した緑谷が死柄木に向かっていき両者が激突した瞬間、謎の光が発生した。その発光はあまりにも眩しく、光の中にいる二人を直視することが困難なほどであったが、謎の発光は瞬く間に終わり死柄木と緑谷がそれぞれ地面へと落下していった。

 緑谷の方は轟がなんとか空中でキャッチし、負傷した爆豪・エンデヴァー・緑谷を地面に寝かせると、轟は援軍で駆けつけた波動と共に死柄木に対して追い討ちをかけた。度重なるダメージによってかなり衰弱した今の死柄木であればこの場で仕留められると判断した二人は死柄木に休む間も与えないほど攻撃を与えていった。このまま轟達によって押し切れるかと思われたが、ついに戦場にギガントマキアが到着した。これによって戦況はガラりと変わる。いくら死柄木が弱っているとはいえ、ギガントマキア、さらには同じくマキアの背に乗って現れた敵連合を同時に相手取ることは疲弊したヒーロー側にとってかなり厳しい。

 さらに、そのヒーロー側に追い討ちをかけるかのようにたった今、敵連合の一人である荼毘が衝撃の事実を口にした。荼毘の正体は轟燈矢。亡くなったとされていた轟家の長男であるとのこと。これはエンデヴァーとその息子、轟焦凍にとってかなりショッキングな事実だった。荼毘はこの瞬間をずっと待っていたと言う。自分の正体をエンデヴァー達に告白するだけでなく、全国ネットを乗っ取り全国民に発信しヒーロー社会の信頼そのものを崩しにかかったのだ。現No.1ヒーローの息子が敵連合として犯罪に手を染めているとなれば人々のヒーローに対する信頼は一気に崩壊する。さらに、No.2ヒーローであるホークスについてもその出自をバラし、郡訝での彼の行動を偏向的に伝えることで崩壊へのだめ押しを図った。

 呆然とするエンデヴァーや焦凍を前に、荼毘は心底楽しそうに笑い、軽やかに踊る。そして、絶望に浸る我が父を自身の青白い炎で燃やし尽かさんとエンデヴァーに迫る荼毘。しかし、もはや戦意を完全に喪失してしまったエンデヴァーに荼毘の攻撃を防ぐ手立てはない。そう思われたその時、空から、死んだと思われていたNo.3ヒーロー、ベストジーニストが到着し、ギガントマキアおよび敵連合の身柄を個性によって拘束した。破壊の化身とも呼べるギガントマキアを一時的とはいえ、拘束できる力は流石はNo.3ヒーローといったところだろう。しかし、その拘束も長くは続かない。郡訝山荘でのヒーロー達との戦闘やここまで休まず走ってきた故の疲労からか、最初はベストジーニストの個性によって縛りつけられていたが、スピナーによって抱えられた死柄木がボソッと何か一言呟いた瞬間、ギガントマキアの全身に力が籠る。

 

 「力が増した…!?」

 

大咆哮と共にマキアを拘束していた強化ファイバー線がブチリと音を立てて次々と引き千切られていく。さらに、

 

 「……」

 

後方より、数体のニア・ハイエンドがこちらに向かってきている。それらは全て拘束繊維を操っているベストジーニスト目掛けて進んできていた。振り返らずともニア・ハイエンドの接近を感知するベストジーニストだったが、意識をそちらに割くことは出来ない。少しでも集中力を欠けば目の前の巨人に一瞬で拘束を解かれると分かっているからだ。だからこそ、自身に危機が迫っている事を察しているにも関わらずベストジーニストはその全神経を個性使用に注いでいた。しかし、そんなベストジーニストの努力も虚しく、次々に拘束が解かれていく。そしてついに、ベストジーニストの下までニア・ハイエンドがたどり着き攻撃を仕掛けようとしたその時、

 

 「パワーーーーー!!!」

 

快活な掛け声と共に地中からすり抜けるようにして現れた青年が飛来したニア・ハイエンドを殴り飛ばしていく。

 

 「ルミリオン!?」

 

緑谷が驚きながら今現れた人物の名を呼んだ。ルミリオンこと通形ミリオは死穢八斎会との戦いで個性が一時的に消失していた。そのため、ヒーロー活動はしばらく休止していたはずだがなぜだか個性を使用して今この場にいる。

 

 「なんでここに…?」

 「山荘から連絡が入ってね。透過の移動法ですっ飛んで来た!ナイトアイ事務所が担当した敵アジト、わりかしここに近くてね」

 

手短に説明しながら透過で地面の中へと潜るミリオ。そして一呼吸おいた後、再び地中から飛び上がり自身を見つめるニア・ハイエンドと相対した。ニア・ハイエンド達からの攻撃を透過で交わすと、

 

 「だ、誰かーーー!へーールプ!!」

 

ミリオが高らかに叫んだ。今さっき颯爽とベストジーニストを助けた男とは思えないような声をあげたミリオだったが、その直後、

 

 ボボボボッッッッ!!!

 

一際大きな爆発音が連続して鳴り響いたかと思うと、ベストジーニストを狙っていたニア・ハイエンドが眩い爆炎に包まれる。爆豪はすぐさま爆破で切り返すと、今度はミリオに迫っていたニア・ハイエンドに爆破を叩き込んだ。

 

 さらに、

 

 「爆豪君!?ちょっと目を話した隙に…動いちゃ駄目だ。死ぬぞ!」

 「出力…100%!」

 

波動と飯田もまた、ミリオ達の加勢に入る。かつて自分の事務所を訪れて来た少年・爆豪に対し、ベストジーニストは振り返ることなく短く問いを投げた。

 

 「…外は見えたか?バクゴー!」

 「それは仮だ!アンタに聞かせようと思ってたァ……今日からオレは!」

 

 「大・爆・殺・神ダイナマイトだァ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「チッ…くそがっ……」

 

 垣根帝督は悪態を吐きながらゆっくりと立ち上がる。さっきまで付き添っていたマニュアルやロックロックの姿はなく、ここには垣根しかいない。二人は怪我人を病院まで連れて行くために戦線を離脱したからだ。その際、垣根も二人に連れて行かれそうになったが、テコでも動こうとしない垣根を見て諦めたのか、無理はしないようにとしつこく忠告した後相澤達を連れてここを離れた。あれから少し休めたが、依然身体の状態は悪くとても戦えるような状態ではない。しかし、それでも垣根は頭が割れるような痛みを堪えながら演算を開始する。

 

 「……っ!?」

 

口元から血がこぼれ落ちる。脳へのさらなる高負荷によって身体が悲鳴を上げるが、垣根はあえてそれを無視する。常人ではとても理解できないような演算をこなし、背にいつもの翼を展開させた。そして、

 

 ビュンッッッ!!!

 

美しい銀翼を力一杯はためかせ、混沌と化した戦場へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ブチッ!

 

 巨体を縛り付けていた強化ファイバーが千切れる音がする。そして、

 

 「ウオオオオオオオオオァァァァァァァ!!!」

 

野太い雄叫びを上げながらギガントマキアがついにベストジーニストの拘束を完全に引きちぎった。全身の筋肉が一回り肥大し、指先から巨大なかぎ爪を伸ばしながらギガントマキアは力強く立ち上がる。

 

 「「「!!!」」」

 

戦場の全ての視線がギガントマキアに集まる。今まではなんとかこの巨人が抑えられていたからこそ互角に戦えていたが、その前提が崩されてしまえば戦況は一気に敵側に傾く。今この場でギガントマキアに暴れられれば、死柄木達を捕まえるという目的は不可能になるだろう。誰もがそう確信する程にギガントマキアの力は圧倒的だった。全てのヒーローがギガントマキアを抑えるために臨戦体制をとる中、緑谷は赤く光る炎の塊がマキアの顔面目掛けて上昇していことに気づく。そして、

 

 「うおおおおおおおおああああああ!!!」

 

 ドンッッッッ!!!

 

エンデヴァーの渾身の力を乗せた突進がギガントマキアの顔に勢いよく激突した。不意の攻撃に一瞬姿勢を崩されるギガントマキアだったが、すぐに体勢を立て直すと眼下のエンデヴァーに照準を定め、その右手を大きく振りかぶった。

 

 「親父ィ!!!」

 

轟の叫び声が上がるも、ギガントマキアが動きを止めることはない。巨大な五つのかぎ爪がエンデヴァー目掛けて振り下ろされた。だが、

 

 ドガッッッッッッ!!!

 

衝撃が大気を走る。振り下ろされたかぎ爪はエンデヴァーの身体を引き裂く直前、弾丸のようなスピードで飛来してきた垣根と真正面から激突した。

 

 「垣根くん!?」

 「あいつ…!」

 「……っ」

 

皆が垣根の出現に驚く中、垣根は振るった白翼に一層力を込めていく。そして、

 

 ガッッッッッ!!!

 

互角のパワーがその場で弾け飛び、反動として垣根とマキア両者の身体を後方へと吹き飛ばした。派手な音を立てながら地面に叩きつけられた垣根は、そのまま地面を数メートルバウンドして倒れ込んだ。

 

 「くっ…そ……!」

 

土煙が立ち込める中、垣根はなんとか立ちあがろうとするも、その身体はすでに限界を迎えていた。頭痛はピークに達し、沸騰するかのごとく頭に熱が籠っている。演算をするたびに身体の節々から悲鳴が上がり、猛烈な吐き気や寒気が彼の体を襲う。ほんの一瞬でも気を緩めれば今にも意識を失ってしまいそうだが、尋常ならざる精神力でどうにか意識を保っている。さらに、演算が不安定になっているせいか、垣根の象徴とも言える六枚の翼がところどころ綻びを見せていた。これでは到底本来のパワーなど出せはしない。

 

 (あんな木偶の坊一体にこのザマとは……我ながら情けねぇぜ…だが、それでもやるしかねぇ……この状況であのデカブツに動かれたら全てが瓦解する)

 

一瞬フラッとしながらもようやく立ち上がった垣根は、前方のマキアへと目を向ける。マキアの方も体勢を立て直し、垣根を見据えている状態だ。もうまもなく、先ほどのように全てを破壊せんとこちらに突っ込んでくるだろう。そこまで思案し垣根も戦闘のための演算を開始しようとした瞬間、

 

 「!」

 

突如、垣根の視界に異形の化け物、ニア・ハイエンドが眼前に出現する。完全に垣根の不意をついたその動きに垣根は完全に反応が遅れ、気づいた時には丸太のように太い腕が垣根に振り下ろされようとしていた。しかし、

 

 ガンッッッ!!!

 ボォォォン!!!!

 

飯田の蹴りと爆豪の爆炎がニア・ハイエンドを襲い、悲鳴をあげながら吹っ飛んでいく。垣根は微かに目を見開きながら自分を助けた二人を見つめた。

 

 「大丈夫かい垣根君!?かなり辛そうだが…」

 「ハッ、んなボロい身体引きずって出てきやがって……本気で死にてェのかテメェ…!」

 

飯田はともかく、言葉は荒いが爆豪も爆豪なりに垣根の身を案じての言葉なのだろうか。二人の言葉に垣根は思わず苦笑する。

 

 「うるせぇのがゾロゾロと……それに爆豪、腹に風穴開いて死にかけのテメェには言われたくねぇよ」

 「…ケッ!返す言葉もねェなクソがっ!」

 

爆豪も爆豪でとても動いていいような身体ではないのだが、それでも無理を押してここに立つ精神性ははやはり彼の底力によるものだろう。犬猿の仲と呼ぶに相応しい二人だが、こういう所は似たもの同士である。垣根は小さく息を吐き、自身の呼吸を整えると、

 

 「おいテメェら。雑魚共の相手は任せたぞ」

 

自分を庇うようにして立つ二人に短く伝えた。

 

 「あァ?」

 「垣根くん、君は何を言って……」

 

二人の返事を聞く前に、垣根は駆け出した。それと同時にギガントマキアも今日一番の咆哮を轟かせ垣根目掛けて突進していく。マキアの動きだしを視認すると、垣根も再演算と共に六枚の翼を展開させようとした。しかし、

 

 「ゴハッッ!!!」

 

垣根の口から血が吐き出される。一瞬、意識が飛びかけ思わず地に膝をついた垣根。

 

 「垣根君!?」

 「垣根ェ!」

 

飯田と爆豪が垣根の様子を見て声を上げるが、その時にはすでにギガントマキアが垣根の目の前に迫っていた。

 

 (やべェ!)

 

ギガントマキアは垣根をその射程に捉えており、既に攻撃体勢に入っている。今から飯田や爆豪が助けに向かったとしても確実に間に合わないタイミングであることを爆豪は本能的に悟る。個性を発動出来ていない垣根にギガントマキアが振るうかぎ爪を防ぐ手段はない。膝をつく垣根に対し、爆豪達の目の前で巨大なかぎ爪が勢いよく振り下ろされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 頭が割れた。

 

垣根はそう信じて疑わなかった。脳への高負荷によって絶え間ない痛みが頭部を駆け巡っていたが、ついにその痛みが極限へと達したのだ。文字通り、頭が真っ二つになる程の衝撃が走り垣根からあらゆる思考を奪い去る。かろうじて意識を失わなかったのはもはや奇跡といってもいいだろう。全ての行動が停止した垣根に対し、ギガントマキアの右手が振り下ろされた。

 

だがその時、異変が起きる。

 

 ゴパッッッッッッッッ!!!

 

突如、とてつもなく眩い光が戦場を支配する。あまりに突然の出来事に場にいる全員が動きを止め、その光の源へ視線を向けた。

 

 「な、なんだあれは!?」

 「どうなってやがる……」

 「あれは…垣根…くん…?」

 

緑谷の言葉通り、発光の源は垣根だった。片膝を地につけた姿は変わっていないが、その彼の背中からは眩い光を発しながら顕現している二対六枚の巨大な翼があった。一見いつも彼が発現させている翼と同じに見えるが、一枚一枚の羽が内に秘めるエネルギーや纏っているオーラの質が以前までのそれとは桁違いであることは誰の目からも明らかであった。

 

 「なんだ……アレは……」

 

誰が呟いた言葉だっただろうか。しかし、誰もがその神秘的で異様な光景を、ただ言葉もなく見つめるしかなかった。ギガントマキアでさえ、思わず攻撃を静止し眼下の垣根をじっと見下ろしていた。すると、今まで下を向いていた垣根の顔が僅かに上がり、眼前のギガントマキアを見上げる。両者の視線が交錯した瞬間、

 

 「ウオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」

 

突然、轟くような唸り声をあげるマキア。だが、それは今までのような単なる雄叫びではなく僅かに違う感情が入り混じった声音。ギガントマキアの超生物的な直感が感じ取った本能的な怯え。目の前で顕現する『力』は、いとも簡単に自身を破壊せしめる力であると。

 

 ブゥンッッ!!!

 

再び右手を掲げ、垣根に振おうとしたその時、

 

 「ウッ……力が……急に……」

 

ドシンッッ!という轟音と共にギガントマキアが地面に崩れ落ちた。山荘で切島が投げ込んだ麻酔薬がようやく効いてきたのだ。敵側としてはかなり痛く、ヒーロー側としてはここで勢いをつける絶好の機会となる。ベストジーニストはこれでより敵連合や脳無の拘束に力を注ぐことができ、他の面々も脳無の相手に集中できる。そう思った矢先、

 

 「……っ」

 

 バタリッ!

 

垣根帝督の意識がついに途切れる。背に出現した翼は幻のように消え去り、マキア同様力無く地面に倒れ込んでしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次でこの章終わりそう。
先の展開?もちろん考えてないぜ!
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