4ヶ月の   作:めもちょう

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十話

 昼休憩が終わった。これから始まるレクリエーションが終われば、総勢16名からなるトーナメント形式、一対一のガチバトルが始まる。

 

「それじゃあ組み合わせ決めのくじ引きをしちゃうわよ」

 

 説明はやはり主審のミッドナイト先生。

 

「組が決まったらレクリエーション挟んで開始になります! レクに関して進出者16人は参加するもしないも個人の判断に任せるわ。息抜きしたい人も、温存したい人もいるしね。んじゃ、一位チームから順に……」

「あの……! すみません。俺、辞退します」

 

 手を挙げてそう宣言したのは、ああ、俺が洗脳した一人か。

 

「尾白くん! なんで……!?」

「せっかくプロに見てもらえる場なのに!!」

 

 騒ぐA組の奴らに対し、尾白は「ボンヤリとしか覚えていないんだ」と、「多分、奴の“個性”で……」と告白した。緑髪の奴が犯人捜しをする目で俺を見る。吐移はその視線を細い体で遮ってくれた。

 

 尾白の告白は続き、「皆が力を出し合い争ってきた座に訳分かんないままそこに並ぶことはできない」と、A組の他の奴らに励まされても、プライドが邪魔するんだと言って、最終種目への参加を辞退した。もう一人の方も「()()()()()()者が上がるのは、この体育祭の趣旨と相反するのではないだろうか!」なんて、男らしく辞退の申し入れをしていた。

 

「かっこいいねぇ。さすがヒーロー科」

「お前も辞退するか?」

「まさか! 俺は訳分からなかった訳でも、何もしてないワケでもない。どうしてやめる必要があるんだよ」

「そうだよな」

 

 俺らがそんな話をしている間にも、二人の棄権は認められた。代わりに入ったのは俺たちからハチマキを奪った5位の拳藤チームからじゃなく、俺たちが最後にハチマキを貰った鉄哲チームから、鉄っぽい奴と茨頭の女子。「最後の方まで3位で頑張ってたから」ってさ。清々しいヒーロー精神だな。

 

「少しだけ、当たりたくないって思っちゃったなー」

「……そういえば、吐移って、誰なら相性いいの」

「身体固くなくて肉弾戦に持ち込める人」

「あまりいないぞ」

「うーん……」

 

 俺もお前も、勝ち進めれるのか? やっぱここは勝つよりも、どう目立つかに焦点を当てるべきなんじゃ……。

 

 

 

1 緑谷 VS 心操

2 轟  VS 瀬呂

3 塩崎 VS 上鳴

4 飯田 VS 発目

5 芦戸 VS 吐移

6 常闇 VS 八百万

7 鉄哲 VS 切島

8 麗日 VS 爆豪

 

 クジ引きによってトーナメントの組は決まった。俺の対戦相手は“緑谷出久”。さっき俺を見ていた奴か。ちょっかい出しにでも行くか。

 

「心操ってたしか……」

「あんただよな? 緑谷出久って」

「……よモッ」

「緑谷!!」

 

 ああ、失敗。

 

「奴に答えるな」

 

 これは、ネタが割れるな。

 

「尾白くんに守られちゃったね。どんまいシンソー君」

「吐移……」

「俺の相手は芦戸さん。五試合目だから、応援出来るね」

「いらないよ、応援なんて」

「あー、知らないなー? 応援って本当に力になるんだぞー!?」

「そ。なら、お願いするわ」

「任せろ!」

 

 吐移が気楽に、のんきに話しかけてくるもんだから、俺もすっかり肩の力が抜けちまった。

 

 

 レクリエーション中、俺たちはレクに参加する生徒たちを見てくつろいでいた。大玉転がしや借り物競争なんて、強制でもなきゃ参加したくない。隣の吐移はA組女子を見て、「俺もチアしたーい」なんて、考えるだけでゲボ吐くから止めて欲しいことを言いだした。いくらヴィラン色を抜いたら女顔だからって、体格は男だから止めて欲しい。

 

「笑えそうじゃん?」

 

 笑えない人間もいるから、少なくともこの会場では絶対に止めてくれ。

 そんなくだらない話をしながら、俺たちはゆっくり、戦う決意を抱いていった。

 

 

 

 

『ヘイガイズ アァユゥ レディ!? 色々やってきましたが!! 結局これだぜガチンコ勝負!!』

 

 セメントス先生の個性でスタジアムの中央にステージが作り出された。あー、この個性もカッコいいや。

 

『頼れるのは己のみ! ヒーローでなくともそんな場面ばっかりだ! わかるよな!!』

 

 さすがに緊張してきたな。

 

『心・技・体に知恵知識!! 総動員して駆け上がれ!!』

 

だからって、竦んじゃいけない。俺は勝つんだ。今までやってきたことと同じだ。どんな強力個性の人間だって、利用して蹴散らしてやる。

 

『一回戦!! 成績の割になんだその顔! ヒーロー科 緑谷出久!! (バーサス) ごめんまだ目立つ活躍なし! 普通科 心操人使!!』

 

 名前を呼ばれた俺はステージの中央に歩いていく。後ろからはクラスメイト達の応援が聞こえてくる。

 負けられない。絶対に見せ場を作ってやる。

 

『ルールは簡単! 相手を場外に落とすか行動不能にする。または「まいった」とか言わせても勝ちのガチンコだ!! ケガ上等!! こちとら我らがリカバリーガールが待機してっから!! 道徳・倫理は一旦捨ておけ!! だかまぁもちろん命に関わるようなのはクソだぜ!! アウト! ヒーローはヴィランを()()()()()()拳を振るうのだ!』

 

 勝負を始めようか。

 

「『まいった』……か。わかるかい、緑谷出久。これは心の強さを問われる戦い。強く思う“将来(ビジョン)”があるなら、なりふり構ってちゃダメなんだ……」

 

 俺はこの“個性”でも、なってやるんだ。

 

『そんじゃ早速始めよか!!』

()()()はプライドがどうとか言ってたけど」

『レディィィィィイ』

「チャンスをドブに捨てるなんてバカだと思わないか?」

「!!」

『START!!』

「何てこと言うんだ!!」

 

 かかったな。

 

「俺の勝ちだ」

 

 言っただろ。なりふり構っていられないんだよ。

 

『オイオイどうした、大事な初戦だ、盛り上げてくれよ!?』

 

 あんたには、俺の“個性”で負けてもらうよ。

 

『緑谷開始早々――完全停止!?』

 

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