4ヶ月の   作:めもちょう

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十四話

「ひ、ひえ~~~~……」

「女子に容赦ないのは良いとして……まだまだ余裕そうなのが恐ろしいな」

「流石、選手宣誓で大口叩いただけのことはあるね」

 

 先ほどの爆豪の試合を振り返って慄いている間に、少し前に保留になっていた試合の決着が着いた。暑苦しい者同士の腕相撲。制したのは、A組の切島だった。

 

「次は轟くんと緑谷くんか。どっち応援する?」

「さあ?」

「さあって」

 

 俺負けたし。関係ないな。

 

 

 

『そろそろ始めようかぁ!』

「来るぞ、トップ同士の戦い!」

 

 A組の轟と緑谷の戦い。それは冷気と衝撃波を絶えず観客席に提供してくる戦いだった。すごいな緑谷、氷結を壊すあのパワーを何度も……。だが、指が壊れていないか? 変色してやがる。隣りの吐移はまだ青ざめている。勝ち進めたら当たるかもしれないし、シュミレーションでもしているんだろう。その結果が、この青ざめなんだが。

 

「近寄れないのは、もう、どうしたら……」

「常闇って奴も、なかなか近寄れないぞ」

「彼の間合いは中距離。その中に入ればなんとかなるけど、そうさせてくれるか……。影を消すには光を! だけど太陽光しかない!!」

「……あれ、影なんだ」

「ダークシャドウって言ってたし。でも俺ライトなんて持ってない!」

 

 暴力しかない……! って言ってワッと泣き出した吐移。二回戦進出者の中で戦えそうなの、あの飯田ってやつだけだと思うぞ。

 試合は進み、緑谷の左腕も変色してしまった。

 

「……もう、終わりか」

 

 勝ち負けはどうでもいい。せめて。

 

「みっともない負け方すんなって、言っただろ……」

『圧倒的に攻め続けた轟!! トドメの氷結を――』

 

 轟の氷結は、壊れた指で起こされた爆風と衝撃波で壊された。

 

「何か、喋ってるね」

「……轟のやつ、震えてないか?」

「寒いんじゃない? いくら“個性”だからって、緑谷くんの指が壊れてるみたいに、轟くんにだって体に限界あるでしょ」

「……」

 

「皆、本気でやってる。勝って……目標に近付く為に……っ一番になる為に! ()()の力で勝つ!? まだ僕は君に傷一つ傷つけられちゃいないぞ! 全力でかかって来い!!」

 

 緑谷の叫びは、俺にも刺さった。

 

「かっこいいな」

 

 ついには轟に一発入れやがった。

 

「……ヒーローだね」

「?」

 

 緑谷はもう一度、衝撃波で氷を飛ばす。

 

「期待に応えたいんだ!」

 

 緑谷は走り出す。

 

「笑って応えられるような……かっこいい人(ヒーロー)に……なりたいんだ!!」

 

 体が冷えて動きが鈍い轟は、緑谷の頭突きを腹に食らう。

 

「だから全力で! やってんだ皆!」

 

「相手が何かの理由で弱体化してくれてるのに、それを乗り越えさせようと言葉をかけている。只敵を捕まえる職業ヒーローなんて、目じゃない」

 

「だから……僕が勝つ!!」

 

「煽って、煽って……。相手の力を引き出そうとする」

 

「君を超えてっ!!」

 

「只勝つことを目標にしてちゃ、そんなこと、出来やしない」

 

「君の! 力じゃないか!!」

 

 会場に炎が立ち上がった。

 

『これはーー……!?』

「ヒーローにしか、出来やしない」

 

「焦凍ォォオオ!!!」

 

 No.2ヒーロー、エンデヴァーが突然、彼の名を呼んだ。あ、親子なのか。

 

「やっと己を受け入れたか!! そうだ!! いいぞ!! ここからがお前の始まり!! 俺の血を持って俺を超えて行き……俺の野望をお前が果たせ!!」

「……」

 

 轟は返事しない。

 

「……」

「……」

 

 会場が静まり返った。

 

『エンデヴァーさん、急に“激励”……か? 親バカなのね』

 

 言ってること、親としてやばい気がしたんだが……。あれを全力スルーの轟、多分父親大嫌いだな。

 右も左も力を解放した轟が、ついに動き出す。

 

「霜は溶けた! 早いぞ!」

 

 緑谷も足に力を込めている。主審やセメントス先生が動き出す。これ、危ないってことか!?

 

 氷結をジャンプで正面から突っ込む緑谷。壊れたはずの右腕が光を放つ。緑谷が力を放つと同時に、轟も左の炎で迎撃する。爆豪以上の爆風、爆音が観客席を襲った。何が、起こった……!?

 

『何今の……お前のクラス何なの……』

『散々冷やされた空気が瞬間的に熱され、膨張したんだ』

『それでこの爆風て、どんだけ高熱だよ! ったく、なんも見えねー。オイこれ試合はどうなって……』

 

 煙が晴れて見えたのは、緑谷。

 会場の壁に体を打ち付け、崩れ落ちた緑谷の姿だ。

 

「緑谷くん……場外」

 

 歓声が上がる。

 

「轟くん――……三回戦進出!!」

 

 

 

「すごかったね、この試合」

「……ああ」

「俺、緑谷くんのファンになりそ! あんなに焚きつけて……すごいよなぁ。あんなの、その人の“心”を救いたいと思わなきゃ、出来ないことだ。ふたりはクラスメイトだし、何かしらあって、事情を知ってたんだろうねー」

「そうなんだろうな」

 

 ステージは大崩壊。しばらく補修タイムに入るらしい。

 

「俺みたいに瞬時に自己回復できれば、もっといいのに」

「……なんか、ゲームの中ボスみたいだな」

「なにそれ、俺が噛ませ犬って言いたいのそれ!」

「そう」

「ひどい!」

 

 少し時間が空いたとは言え、もうすぐ吐移も試合のはずだ。

 

「吐移。リラックスもいいが、そろそろ集中してこい。勝ち目が限りなく0に近くても、一発くらい入れてこい」

「なんで負けること前提かなぁー? 勝ちを狙うのが男の子だぜ!」

 

 ならさっさと控え室行けよと言うと、じゃあそうするか、と言って、吐移は立ち上がる。

 

「吐移」

「何?」

「全力でやって来い」

「……うん!」

 

 ……なんでだ?なんで一瞬、ぎくりとしたんだ? 

 自然になってきた笑顔を浮かべて、吐移は席を離れた。C組の奴らも声をかけ、激励を送る。受ける吐移は、ずっと笑顔で応えていた。

 

 ……分からない。分からないよ、吐移。お前が、分からない。

 

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