「お前……全力では無いな?」
「……なに?」
二回戦第二試合は、俺、常闇踏影と、C組の吐移正の戦いだ。全方位中距離防御、攻撃ができる個性と、瞬時に回復が出来るだけの個性。どちらが勝つかは客観的に見ても明らかだ。
今もまさに、俺が一方的に攻撃している。だが、吐移もここまで勝ち上がってきた人間。何か秘策があっておかしくない。揺さぶりをかけてみるか。
「予選。お前は第一関門を二位で通過したな。爆豪に続いてロボの上を飛んで超えたが、その時、上空から足を崩されていたロボを何体か見かけた。あれは、お前がやったんだろう?」
「……知りませんけど?」
「とぼけるか」
「知らないもんは知らないし、悲しいことに、これが俺の全力だっての!」
吐移は俺に向かってきた。一回戦の時のように、組んで暴力を振るうつもりか。黒影で牽制する。
「!」
「躱すか」
吐移は黒影を軽くいなして、俺の元へ飛び込んできた。
「くっ!」
「ライトが欲しいよ、まったく!」
「何っ!?」
飛び込んできた勢いそのままに、吐移は下からアッパーを顎に食らわせてきた。ひるんだ俺の肩を掴むと、それを支えに腹に膝を入れてきた。
「ぐうっ!」
「影なら光をぶち込めばいいのに! 持ってない!!」
肩を左手で掴んだ吐移は更に俺に拳を入れようとした。が、流石に俺もそれは避けさせてもらう。ついでに黒影で足元を掬わせてもらう。
「のぉっ!?」
「俺の弱点に気づいたようだが、残念だったな」
弱点を暴かれたときは焦ったが、対応策が無いことは黙っているべきだったな。
「いぃぃぃやぁああっ!」
黒影に足を持たせて、場外へと放り出す。
「全力を出さない者が立てるほど、この大会は甘くない」
「吐移くん、場外! 常闇くん、三回戦進出!!」
順当だな。
互いの健闘をたたえて、俺たちは握手する。
「全力を出すって、君言ったけどさ」
その際、吐移は苦しそうな声で、語りかけてきた。
「君はそれが別に、全力だった訳じゃないでしょ」
「何を言っている? 単なる卑下は受け付けない」
「そうじゃないよ。確かに俺が弱すぎたかもしんないけど、そうじゃなくって……。君の“個性”、黒影(ダークシャドウ)って呼んでたから、きっと影でしょう? なら、影が大きければ大きいほど、力も増すんじゃない? だから日が高い今は、ベストじゃないんじゃないか……って」
「よく見ているな」
指摘の通りだ。ただ、夜は力が増す代わりに獰猛になり、制御が難しい。後、影ではなく闇である、という点でも違うな。その個性の話と全力の話。だから何だという話ではあるが。
「勘違いしているのか」
「勘違い?」
「全力というのは、ベストコンディションで出す力のことを言うんじゃない。今、出せる力を全て繰り出すことを言うんだ。……お前は出していないだろう?」
言ってやれば、奴はじとっと、俺を睨みつけてきた。明らかに機嫌を損ねている。
「あれが全力だって言っただろ。仮にあったとして、俺はそれを見つけていないだけ。……三回戦、進出おめでとう。これからは応援を“全力”でするよ。頑張ってね」
最後はぎこちない笑顔で、吐移は激励を贈ってくれた。どちらともなく手を離して、俺達はそのまま退場した。次は切島と爆豪、その勝者との戦いか。
……弱点を見抜かれると、なかなか動揺するものだな。次戦に備えて、精神統一するか。
読みが甘かった! 爆豪の疲弊を狙うつもりが、こいつ、戦えば戦うほど機敏になっていく。そういう“個性”だったか!
爆発とともに現れる光に、黒影は弱っていく。
奴の動きを止めようと、腕を掴むように黒影に命令するものの、それを弱爆破で避ける爆豪。後ろに回った奴は、強い光を伴う爆破を繰り出した。
「
『煙幕ばっかだな……!! どうだどうだ!!?』
吐移から聞いたか、爆豪。
「知っていたのか……」
「数撃って暴いたんだバァカ。まァ……相性が悪かったな、同情するぜ」
マウントを取られ、奴の右手は常に小さな爆発が起こされている。その爆発から起こる光によって黒影はすっかり小さくなり、べそまでかいている。
「詰みだ」
吐移にああまで言ったのに、情けない。
「…………まいった」
「常闇くん降参! 爆豪くんの勝利!!」
『よって決勝は、轟 対 爆豪に決定だぁ!!!』