4ヶ月の   作:めもちょう

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十九話

「吐移くん! 消防はどうだった?」

「有意義だったよ! 実際の事故現場に出くわしたときはあまり動けなかったけど、これが現場の空気なんだなって、肌で感じたよ」

「現場に!」

「たまたまね。記見さんは? シンソー君と同じで警察だったんだよね?」

「警察だけど、市が違うから……。私は、現場はやっぱりヴィラン受け渡しだったよ。捜査はやっぱり参加させてもらえなかったかな」

「そっかー」

 

 各々が希望の職種に職場体験に行ってきた一週間後。話題はやはり、職場体験の話。

 

「シンソー君は?」

「俺も同じ感じだったかな。警察はやっぱり“個性”を使わせてもらえないからな。“個性”が腐る」

「やっぱりシンソー君はヒーローが似合うよ、アングラ系のさ。記見さんもそうだと思うんだけど、目指さない?」

「警察の仕事は犯罪者を捕まえるだけにあらず! 地道な捜査や犯罪抑止、市民から相談を受ける事も、警察の立派なお仕事なんだよ!」

「記見さんカッコいい!」

「……とはいえ、心操じゃないけど、“個性”使えたら最高なのに」

「絶対役に立つのにね」

 

 ここで予鈴が鳴った。先生が入ってきたから、俺たちも席に着く。今日も、いつも通りが始まる。

 

 

 

 ……昼休み。俺たちはいつものように大食堂へ来ていた。

 

「じゃ! 俺バクゴー君のとこ行ってくるね!」

 

 そしていつも通り吐移はA組が固まってるところ、まあ、爆豪の所に行ってしまった。

 

「ねぇ心操。なんで吐移くん、爆豪なんかに懐いてんの?」

「なんかって……」

「心操だって、そう思うでしょ?」

 

 決めつけてきたこの女はクラスメイトの「記見 瞳」。俺達とは違い、警察官を目指す生徒だ。

 

「なんか、とは思わないな。爆豪は吐移の命の恩人らしいから」

「ただ救急車呼んだだけでしょう? それでどうしてあんなに感謝出来るのよ。恩を感じるなら医師とかにしときなさいよ」

「感謝先を決めるのはあいつの自由だろ。そもそも何で爆豪をそんなに嫌ってんだよ」

「だって、吐移くんが一番笑ってるの、アイツの前だもん」

「……」

 

 なんだこいつ。吐移が笑顔になるのが嫌なのか? 怖。

 俺がチキンカレー、記見がチーズカレーを買う。遠くの吐移は相変わらず弁当だ。

 

「会ってる時間的に教室にいるときが一番笑ってるだろ」

「授業中は笑ってないでしょーが! お昼以外の休み時間をトータルして40分! 昼休みより短いんだよ!? 加えて放課後はプレゼント・マイク先生か、あいつのところに行って特訓でしょ? あー爆豪の奴め! 憎たらし!」

「……お前見た目いいのに趣味悪いな」

「はあっ!? 吐移くん好きになって、何が悪いわけっ!?」

「あ、悪い」

 

 勘違いだった。シンプルに爆豪に嫉妬だった。

 

「吐移くんの下っっっっ手くそな笑顔に惹かれて、壮絶で理不尽な過去があって……。でもそれに屈せず、憧れの為に笑顔と大声を特訓をする姿……。健気で可愛くて、応援したくなるじゃん!」

「あっそ。食えば?」

「心操だってそうでしょ!? クラスで一番仲良いの、あんたじゃん」

「まあね」

「あんたも嫌い!」

 

 いーっと変顔を晒す記見。だけど否定は絶対にしない。俺だって自分でそう思うし。

 

「まぁあんたはいいんだけどさ。あんたと話してる時の吐移くんも好きだし」

「なら、爆豪のことも認めてやれば?」

「嫌だ! だって爆豪、いかにも“いじめっ子”って顔してる」

「……確かに、ね」

 

 顔だけじゃない。A組全体にもそうだが、緑谷に対しては一段どころか五段くらい増しでキレている。何があったか知らないが、緑谷のビビり方を見て、爆豪は緑谷を虐めていたんじゃないかと仮説が立てられちまう。

 

「そうでしょ? 吐移くん、そんなに頭が悪いわけでも、見る目が無い訳でもないはずでしょ? 小中学校のいじめっ子達がいないであろう高校を選んできたって言ってたし、私達を友人に選ぶくらいだし」

「吐移を“アイドル”って呼んだのは誰だ?」

「私だけど?」

「あいつクラス全員と友達だから。選んだとかないから」

「全員選ばれたの!」

「……まぁ、いい奴らばかりなのは認めるけどな」

 

 それと、吐移に見る目があるかどうかは関係ない。

 

「悔しくないの? 吐移くんのあの笑顔、ほとんど爆豪が改善させたのよ?」

「良かったじゃん」

「私は悔しい! 爆豪がいなきゃ私が笑顔を取り戻させてあげれたのに! 成長過程を全部、爆豪に持ってかれた!」

 

 記見にそれが出来たとは限らないのに。爆豪が居たからこそ、だったかもしれないのに。よくそんな断言が出来るな。

 

「今からでも引き剥がせないものか……」

「まだ言うか」

「フフッ……出来ないことはないわ」

「あっそ」

 

 もうカレーを食べ切ってしまおう。でも気になって記見を見れば、彼女はどこかを見ていた。視線の先には、緑谷が。

 

「人の信頼なんて、情報が確かな言葉があれば、簡単に揺らぐものよ。……覚悟しなさい爆豪。私の吐移くん、返してもらうわ」

「……」

 

 他人を貶めても、お前の評価は上がらないよ。そんなお前を吐移が好きになるとは思えない。

 

「そんなことより、お前期末テスト大丈夫か?」

「は?」

「恋愛にかまけるの勝手だけどさ。補習になれば、夏休み学校に拘束されるぞ」

「……」

「ま、頑張れよ中間クラス最下位!」

「うっさい! 赤点無かったわよ!!」

 

 ちなみに俺は五位。吐移は一位だ。

 

「ハッ! 吐移くんに勉強を教えてもらえばいいのよ! 私の部屋で、休憩と称して……きゃー!」

「……キモ」

「あ゛っ!?」

 

 その後記見は吐移に「ごめん。俺教えるのど下手なんだ。教えられない」とフラれていた。

 

「案外、攻略難易度高いんだな、吐移って」

「うるさい!!」

 

 

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