4ヶ月の   作:めもちょう

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二十話

 HEY! プレゼント・マイクだぜぇ!! 雄英の放送室の一角を間借りしてお届けするぜ!

 今日もやってきたぜ「笑顔満点計画・体操編」!! クソダサネーミングは吐移のセンス! 実は結構好き!

 今日も一日実践編、ソウルメイトとおしゃべりしてきたかァ!?

 

「いっぱいしました!」

 

 OK! ベリィィグッド!! 今日もバイト行く前に、体操やっていくぜぇ!!

 

「FOOOO!!」

 

 さあ基礎体操! 大切だから基礎なんだぜ!

 その1! 『口角を上げる体操』!! 限界まで口角を上げて、元に戻すのを1分間繰り返す! 鏡を見てやっていけぇ!

 

「痛いってことは効いてるってことぉ!」

 

 まぁムリはすんな!

 その2! 『頬の筋肉で目を細める体操』! 口だけ笑ってても怖いだけ! 頬の筋肉を意識して持ち上げて目を細める! 元に戻すのを忘れずに、これも鏡を見ながら1分繰り返してけ! 

 

「これが結構難しい! ただ目を細めるわけじゃない!」

 

 そう! 意識は頬の筋肉にな!

 はいタイムアップ! 次は表情筋ウォーミングアップだ!

 

「はい!」

 

 その他のエクササイズが気になるリスナーは、あとがきにあるこのサイトを参考にしてくれ! 作者も参考にしてるぞ! んっ!? 作者って誰だっ!?

 

「マイク先生、ご指導ありがとうございました!」

「YHAY! 前よりも笑顔が良くなってるぜ! お前の頑張りだな!」

「先生のご指導のおかげです! 独学じゃ難しいですし、見てくれる人がいると捗ります!」

「ありがとな! だけど自分の努力を下に見るなよ! じゃ、今日はここまで!」

「ありがとうございました!」

 

 吐移との表情筋トレーニングは、4月の中頃から始まった。「高校生活は笑顔で過ごしたいんです。無意識でも笑っていられるよう、鍛えたいんです!」とアピールされて、思わず感動しちまった! 警戒人物として報告を受けた人柄と、良い方向で変わっていた。だから一二もなく引き受けた!

 ハッピーだから笑顔? ノンノンノン! 笑顔がハッピーを引き寄せるのさ!! 吐移にもそれを分かってもらいたい!

 まぁ、それはそれとして。今日は大事な話がある。

 

「吐移、引っ越し準備は進んでるか?」

「あ、はい。あの、いいんですか? 家賃、雄英持ちって。俺の“個性”で、ここまで優遇なんて……」

 

 吐移は最近、“個性”の新しい一面を発見した。職場体験初日で「他人の傷を自分に移せる」ことに気づき、その後、「毒抜きの要領で他人から傷を取り除くことが出来る」と、「自分に移さなくていい」ことに気づいた。俺もその“個性”を受けてみたが、足の小指の痛みは一瞬で消え去った! こりゃすごい!

 “個性”の発動条件的に、絵面が不味かったけどな! ほとんど足にキッスだ! 口触れてないけど! あと俺の足は臭くない!

 リスクがあるかどうかは調査中だが、とっても貴重な個性であることには違いない! ヴィランからの襲撃を受けた雄英に在籍する生徒。保護すべきだと、教師満場一致だった。

 

「仕方ないって思ってくれ! あれだ、奨学金!」

「豪華すぎる……」

「住む場所を選ぶ自由を奪ってごめんな!」

「不満なんてありません!」

 

 吐移の引っ越し先は、セキュリティ抜群のマンション。バイト先にも雄英にも近い好立地で、おまけにヒーロー御用達のマンションだ!

 

「……“個性”は、人生を左右しますね」

「そう言うなって!」

「スーパーにバイト行くのも送り迎え……訳が分かりません……!」

「不満ないんじゃないのかー?」

「堕落しそうでっ……!」

 

 そう思うってことは、自律してるってこと。立派だなァ!

 吐移を車に乗せて発進する。スーパーまでは車で5分だ。

 

「明日は爆豪と筋トレだったな! 仕上がってるか!」

「……はい」

「今の間は何だァ? 何かあったか!」

「……ええ。まぁ」

「相談なら乗るぜ? まだ時間はあるだろ?」

「……ありがとうございます」

 

 赤信号で止まる。ここを左折して少し進めば、目的地だ。

 

「……俺、バクゴー君のこと、何も知らなかったんです……」

「うん」

「……俺、例えば、俺に暴力を振るってきた奴らが“ヒーロー”になると言ったら……絶対に、許さないです。絶対に、絶対に……」

 

 笑顔を作っても憎しみが消えるワケじゃない。だが、憎しみがあったとしても、吐移は復讐したいとは言わない。出来すぎた生徒だ。……言わないだけかもしれないけどな。

 それと爆豪が何の関係が?

 

「……クラスメイトから聞いたんです。バクゴー君、緑谷くんのこと、虐めてたって……。それまで“個性”が発現しなかった緑谷くんを、それだけの理由で。……彼にはどうしようもない問題じゃないかっ!! どうにも出来ない問題をネタに虐めをすることが、俺は、許せない……!」

 

 青信号になり、左折する。目的地はすぐそこだ。

 

「だから……だから、俺……」

 

 バックミラー越しに見る吐移は、俯いていて、顔が見えない。

 

「バクゴー君と、仲良く出来る気が、もう、しないんです……!」

「なるほどなぁ」

 

 四角井スーパーさんに無理を言って確保した駐車場所に、車を停める。

 

「らしくないな!」

「っえ?」

「俺はてっきり、お前さんは“過去は過去のこと”として、気にしない性格だと思ってたんだかな!」

 

 吐移の方を向いて笑って言ってやる。吐移は困った顔をして、また目を伏せた。

 

「そんな、きっぱりした性格じゃないです。そうだったら、憎しみ、持ってないです」

「そりゃそうか! ごめん!」

「……もう、行きますね。聞いてくれて、送ってくれて、ありがとうございました」

「おっと待ちな!」

「はい?」

 

 他人の意見に振り回されるのは、やっぱり吐移らしくはないぜ!

 

「爆豪に直接聞けよ! その話、クラスメイトが話した情報と、爆豪の話、違いがあるかもよ!」

「……分かり、ました」

「ん! じゃ、バイト頑張って来い! 笑顔忘れんなよ!」

「……はい!」

 

 少し無理した笑顔を浮かべて、吐移はスーパーの裏口に入っていった。楽しくなくても笑顔でいりゃ、少しくらい、前向きになれるさ!

 こうやって、生徒の人間関係を悪くしないようにするのも、先生、いや、ヒーローのお仕事さ!

 




表情筋トレーニングの参考にさせてもらったサイト様です。他にもありますので、皆様に合ったトレーニング方法を探してみてください!
https://forzastyle.com/articles/-/56496
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