4ヶ月の   作:めもちょう

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「エロ」言ってますが、エロくないと思います(作者基準)


二十五話

 オールマイトの手によって、リカバリー出張保健所に運び込まれた僕とかっちゃん。中に居たのはリカバリーガールと、あと一人。

 

「君……」

「C組の吐移。喧嘩の時ぶりだね。今日はリカバリーガールのお手伝い兼、俺の“個性”練習だよ」

「あんたの処置はこの吐移に任せてるからね」

「そういうことで、よろしく!」

「うん、お願いします」

 

 あの時より晴れやかな顔をしている彼の手によって、うつ伏せにされて腰を持ち上げるようにして寝かされた僕。この体勢にする意味ってある?

 

「これから始めるけど、一つ謝っとくよ。俺の“個性”はリカバリーガールと大差なく、『口を近づけて吸う』ことで発動する。謝ったから、もう文句言わないでね」

「わ、分かったよ」

 

 おばあさんにされたり、同級生の男の子にされたり……なんだかなぁ。

 

「態度に出てるよ!」

「すみませんっ!」

 

 気絶するかっちゃんを施術するのはリカバリーガール。どうして、僕を処置してくれるのが彼なんだろう。かっちゃんと仲が良いはずなのに……。後で聞こう。

 

「まずは頭から。影響があると怖いし、ここは念入りに吸い取るよ」

「はい」

 

 顔が向いている方とは反対から、頭部に気配を感じる。暖かい吐息を感じて、少しドキリとする。相手は男! 相手は男! してないけど勘違いするなよ!

 スウッ!

 勢いよく息を吸われた。同時に頭がスッキリしたような、少しだけあったズキズキした痛みもなくなった。もう一度吸われたけど、特に変化はない。

 

「フゥ……。次は背中と腰。ここからは、自己治癒能力に任せる為に少しダメージを残すからね」

「あ、はい……」

 

 本気を出せば完全回復も出来るのか。すごい“個性”だ。

 背中に彼の気配を、吐息を感じる。ん? 吸った後は吸った分だけ、吐き出しているのか。

 腰付近を吸われる。一気に楽になった。腕、手、足。施術されるたびに、彼の“個性”使用の吐息が繰り返される。

 未だ戦い続けるA組の皆の様子を映し出すディスプレイの光が、テントの布の仕切りに吐移くんの横顔の影を作り出していた。……別のこと考えよう。

 痛みが無くなっていくのに疲労感を感じ始めてきた。これはこの“個性”の反動か?

 

「なんだか、エロいね!」

「オールマイト!?」

「人が気にしてることを!!」

「あ、気にしてたんだ。ごめん」

 

 今まで静かにしていたのに、いきなりとんでもない発言をしたオールマイト。本当に、なんてこと言ってくれたんですか! しかもやってる本人、気にしてたし!

 

「いやぁ、もっと全体的に効果が出せるといいね! 例えば意識を全体にするとか。回数も減らせるし!」

「確かに……。ご教示ありがとうございます。他にありますか?」

「う~ん、セクシーさを下げる為に、吐くときは“ペッ!”ってしてもいいかもね。今の吐き方だと、アンニュイな横顔がセクシーに見えちゃう人もいるかもしれない!」

「なるほど……緑谷くん、他に痛むところは?」

「え? え~っと、肩と、ほっぺた、かな」

「わかった!」

 

 吐移くんは僕の右肩に顔を寄せると、さっきより勢いよく息を吸う。そしてペッ! と力強く吐き出した。

 

「……」

 

 ほっぺも同じようにした吐移くん。確かにこの方法なら、さっきまで感じていた恥ずかしさはない。でも……。

 

「オールマイト! 確かにこの方法なら、エロくないかもしれません!」

「うん! 私から見ても大丈夫だった!」

 

 お二人とも、親指立てて喜び合うのもいいんですが……。

 

「吐移くん……それ、少し、傷ついた……」

「なん……だ、と……!?」

 

 「傷を治すはずがっ!?」と、膝から崩れ落ちてしまった吐移くん。ごめんね。でも、これは女子がされたら、もっと傷つくと思うんだ……。

 

 体はすっかり──いや、ダメージを抱えているけれど、治った。気絶したままのかっちゃんは、オールマイトに抱えられて校舎内のベッドに寝かせられるらしい。かっちゃんはリカバリーガールの処置だったから、消耗が激しいみたい。確かにそうだ。だとすると、吐移くんの個性はリスクが少ない。素早さで言ったらリカバリーガールに軍配は上がるけれど、その後の消耗を考えると吐移くんの方が負担が少ない。一体どんな仕組みで──

 

「緑谷くん、口に出てる」

「ご、ごめん」

「考察よりも、皆の戦い見ようよ。こんな機会、めったにないんだろう?」

 

 そうだった。少しわがままを言って、ここで残って皆を見ることになったんだった。リカバリーガールは呆れていたけれど。もう半分趣味なんです。

 

 

 

 拘束されても黒影によりカフスをかけることに成功した蛙吹・常闇チーム。

 虫へ命令を出し、プレゼント・マイク先生を討った耳郎・口田チーム。

 穴だらけのステージを何とか逃げた飯田・尾白チーム。

 索敵対決を勝ち取った障子・葉隠チーム。

 偶然かもしれないけど、13号先生にカフスを付けることに成功した麗日・青山チーム。

 そして、“モテたい”をいう気持ちで勝利をもぎ取った峰田・瀬呂チーム。

 

 計8チーム、16人が条件を達成した。そしてここで。

 

「タイムアップ!! 期末試験、これにて終了だよ!!」

「バクゴー君以外の、俺の友達……あの……」

「せ、瀬呂くんはクリアしたじゃない!」

「あのチーム、戦ったのは峰田くんが9割じゃん……合格なの?」

「……」

 

 確かに……。

 

 

 試験終了後、出張保健所に来たのは、耳郎さん、飯田くん、尾白くん、峰田くんと、条件未達成の四人。

 

「へぇ、あんた“個性”進化したんだ? 私にやってみてよ」

 

 最初に来た耳郎さんが、血が出ている自分の耳を指差して言った。

 

「耳郎さん!? いいの? リカバリーガールより直接的に顔を近づけちゃうんだよ? 俺男だよ? 気持ち悪くない?」

「それが条件なら、しゃーなしっしょ。ほら、耳痛いんだから、頼むよ」

「う、うん」

 

 女子にはまだ色々抵抗あるみたいで、吐移くんは戸惑いながら“個性”を発動する。僕と一緒で女子に耐性が無いんだ、なんか親近感。

 

「ん~、少し、違和感……」

「リカバリーガールに言われて、手加減の練習してて。手加減は出来たし、今で完璧に治す?」

「頼むよ! あんたの目的も分かるけど、痛いのは嫌だからさ」

「了解」

 

 え、すごいな。一回でもう、女子にも慣れたのか……。

 その後は、芦戸さんは完璧に治して、残りの男子は少し傷が残る程度まで傷を吸収した吐移くん。観察してて分かったのは、彼の“個性”の適応範囲は狭いこと、傷の深さによって吸う空気の量が違うこと。だから手加減が出来るんだろうな。

 ちなみに峰田くんは、「野郎に唇近づけられるのなんて、ごめんだね!!!」と彼を拒否。リカバリーガールによって処置を受けていた。

 

「どっちに転んでも、か……!」

 

 峰田くんは泣いていた。

 

 最後の一人を処置し終えた後、僕はさっきから気になっていたことを彼に聞くことにした。

 

「ねえ、吐移くん」

「何?」

「さっきはどうして、僕の方を処置したの? 君、かっちゃんと仲いいだろう? それなら……」

「ああ……。まぁ、理由は二つ。俺の“個性”は消耗が少ないこと。そして、君の方が重症だった。この二つだよ」

「そっかぁ」

 

 エロさを気にしてたし、なんか照れてたとかじゃないんだなぁ。

 

「エロ……!? 緑谷、今お前、エロについて考えてなかったか!!」

「か、考えて無いよ! やめてよ峰田くん!」

「いーやっ! オイラのアンテナは誤魔化されないぞ!」

「峰田くん、あのタイミングでエロいこと考えてたら、間違いなく俺のことなんだけど、それでも聞くの?」

「いらねぇええ!!!」

「じゃあ、この話おしまい!」

 




 ちゃん、ちゃん!
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