4ヶ月の   作:めもちょう

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三十話

 俺の“本音暴露事件”から色々あった。

 

 シンソー君と一緒にイレイザーヘッド……相澤先生から、あの布の捕縛武器を使った戦い方を教えてもらうことになったり、俺個人としては医療系の勉強を始めることになったり、相澤先生が林間合宿から帰る前に、リカバリーガールと各地の病院を回ることになったり。夏休みは予定でいっぱいだ。バイトもしたいから、ほんと大変になるだろうなあ。

 

「贅沢な悩み、か」

「ん?」

「……いや、恵まれてるなぁって」

「そうなるよう、お前が努力した結果だろ」

「まあ、ね」

 

 運もそうだし、良い環境に行けるよう、勉強を頑張った、俺の勝利だ。

 通知表を貰って、帰る支度をする。

 

「じゃあね、シンソー君! 皆! 夏休み明け!」

「じゃあな、吐移」

「バイバーイ!」

「またなー!」

 

 C組の皆に挨拶を済ませて、A組の教室に向かう。当然、挨拶しに!

 

「バクゴー君、切島くん、上鳴くん、瀬呂くんも、A組の人たち、皆、合宿頑張ってね!」

「おう!」

「わざわざそれを言いに?」

「あったり前じゃん! 頑張ってくる人には、激励を送らなきゃ!」

「そっか! なら、お前も頑張れよ! リカバリーガールと回ってくるんだろ?」

「相変わらずよく知ってるね上鳴君。うん、行ってきます! バクゴー君も激励ちょうだい!」

「……」

 

 バクゴー君は教室の中まで入ってきてそう要求する俺に呆れているのか、ジト目で俺を見ている。それでも俺は求める。友達からの応援は全て嬉しいけど、バクゴー君から貰えると、俺、すっごく頑張れると思うんだよね。

 

 俺の人生観を変えてくれた人がさ、こんな近くにいて、友達になってくれて、喧嘩したり、バクゴー君が怖いと思ったこともあったけど、それでも大好きって思える友達が出来たことって、すごく、幸せだと思うんだよね。

 だから、「死ぬ気で治してきやがれ」って言われて、頭ポンポンされたのが、めちゃめちゃ嬉しかった!

 

「だらしねェ顔」

「へへ……。これでバクゴー君が俺より身長高かったら、見栄え良かったのにね!」

「うるせぇ!!」

 

 ポンポンされていた頭を平手で叩かれた。やっぱりバクゴー君を弄るのは楽しいな!

 

「じゃあ、またね!」

 

 A組の人たちにも、C組の皆にも手を振って、別れを告げる。皆、この夏休みで進化してくれるに違いない。俺も、負けてらんない!!

 

「頑張るぞ!」

 

 

 

 夏休み初日、夜。バイトを終えた俺は、 送ってくれたマイク先生に礼を告げて、家に帰ってきた。

 明日から、リカバリーガール先生と遠征だ。

 

「あ、机の上、片付けなきゃ」

 

 リビングを通り過ぎ、いつも荷物を置いている寝室のドアを開ける。

 

 置けなかった。

 

「お邪魔していますよ、吐移正」

「……誰だ」

 

 俺のプライベートルームに無断で、それも土足で侵入していたのは、バーの人の格好をした、黒いモヤ。常闇くんの黒影みたいなやつか? そう考えて寝室の電灯をつけた。……意味は無いらしい。

 

「私は黒霧。吐移 正。あなたを、私たちの“先生”がお呼びです」

「……あっそう」

 

 この野郎、いつかバクゴー君たちが相手したっていうヴィランに、特徴が似ている。ってことは、こいつはワープの奴か!

 

「あんたの先生は、別に俺の先生じゃない。他人に呼び出されても困るな」

 

 ここは雄英が準備したマンション。不審者が侵入すりゃ、何かしら通知がいっている筈だ。いっていなかったら? 俺が直接信号を送らなきゃならねぇ! そいつは俺の手のひらに埋め込まれてある!!

 

「あなたは選ばれた。私と共に来ていただきますよ」

「断る。不法侵入者についてくバカがあるかよ!」

 

 俺は逃げ出す。バクゴー君から聞いた話では、こいつらは電波の妨害をして通信をジャックしていた。この家の通知が行かない恐れがあるが、逆に常に監視されている俺とこの家に連絡が取れないのであれば、まだ駐車場にいるであろうマイク先生が異変に気づいてくれるはず! 俺に出来ることは、散らかった机の上を叩き落として、床も散らかすこと。緊急事態感を出すんだ。

 

「逃げても無駄ですよ」

 

 逃げた先に黒い渦。廊下に展開されたそいつのせいで、後にも先にも行けなくなった。絶望だ。

 

 ゆっくりと奴が、俺の元へやってくる。どうか気づいて、先生。助けて! 俺はヴィランになりたくない!!

 手のひらに埋め込まれた緊急通信機は、結局電波ジャックで届かないだろう。嫌だ、嫌だ!

 

「大人しくすれば悪いようにはしません。あなたの“個性”は、脳無にやるにはもったいない」

 

 知らない。テメェらヴィランの都合なんて、知らねぇ。

 

「君には是非、我々の仲間になっていただきたい」

「なるかよ、クソが!」

 

 笑え、笑え。ピンチの時こそ、笑え、俺。笑って、自分を奮い立たせろ。

 このマンション紹介された時から覚悟をしていたことだろう、この“個性”のせいで、俺がヴィランに拐われることは。だからセキュリティ万全のマンションで、何があってもすぐ分かるように、助かる確率を上げたんだろうが!

 

「俺は、ヴィランになんかならねえよ!!」

 

 黒いモヤが俺を覆った。

 

 Plus Ultra!

 このピンチ、越えて行こうぜ、俺!

 

 

 

 ワープ先は、思っていたより気色悪かった。

 

「人が、ホルマリン漬け……!?」

 

 いや、あれは人形(ひとがた)なだけで、バケモンだ!!

 

「ようこそ、吐移 正」

「!!」

 

 化け物に気を取られて気づかなかった。俺の横にいたのは、スーツを着た、顔のない男。首の辺りがガチガチに管で固められている。何より、こいつからは、思わず拳を構えてしまうほどの威圧感が。

 戦わなくちゃ、死ぬ。

 

「そんなに構えなくてもいいじゃないか。これから君は弔の仲間になる。その前に見せたいものがあるから、ここに呼んだんだ」

 

 見せたいもの?

 思っていたよりフランクな物言いをする男は、さっきまで俺が気を取られていたバケモンを指さした。

 

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