4ヶ月の   作:めもちょう

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三十四話

 人質か、“個性”を狙ったか。随分スピリチュアルな話になるが、ヘアバンは生霊飛ばしてまで俺に警告してきた。

 

 一人になるなと、俺はヴィランに狙われているからと、どうやって知った? そう、拐われて、そこで知ったんだ。まだ生きている、助けられるはずだ。

 なら、行くしかねえよなあ。

 

 

 

 施設からこっそり抜け出した俺は、燃える森ん中を走っていた。多くの生徒はあっちにいる。俺が施設にいたのはイレギュラーな行為だから、奴らは森を探しているはずだ。寒気が強くなる。……いや、これは。

 

「爆豪! お前何してる!!」

 

 戻れ! と大声で俺に命令すんのは、半分野郎。その隣には尻尾がいやがる。

 

「お前、体調不良で施設に戻ってたんじゃないの!?」

「うるせぇ。用が出来たんだよ」

「後にしろ。とりあえず、お前も一緒に戻るぞ」

「だから俺に指図すんじゃねえ」

「な、なぁ。なんか、煙たくないか? ただの煙とは違うような……」

「! 吸うな! 毒性があるかもしれねえ」

 

 やめろ、ヘアバン。お前がいくら止めようたって無駄だ。助けに行く。……寒気を与えんの止めろ。目の前のこいつらまで、俺の計画に巻き込んじまうから。

 

「! あそこ倒れてるのって、B組の!」

「吸っちまったか」

 

 尻尾がB組の奴を背負う。ガスに火事。それ以外にも、どこかで戦闘が起こっているはず。……この状況で、わざわざ拐われるのは、色々と信用なり失う可能性がある。

 中止だ。戻ろう。後で生き霊に聞きゃあ良い。ヘアバン。お前は、どこにいる。

 

「!?」

 

 人……!?

 黒い人影……。膝を付いて、拘束具が巻かれている、人影……。

 

「おい、お前らの前、誰だった……!?」

 

 人影はボソボソ何かを呟いている。「見とれていた」? 何に?

 

「常闇と……障子……!!」

「きれいな肉面、ああ、もう誘惑するなよ……」

 

 振り向いた奴の顔は、金具で無理やり開けられた口以外、見えていない。

 

「仕事しなきゃ」

 

 こんな奴から逃げるのに、

 

「交戦すんな、だぁ……!?」

 

 やらなきゃ、死ぬ。

 

『A組B組総員──戦闘を許可する!』

 

 ナイスタイミング!! 心置きなく殺れるな! ……逃げる為だ。分かってる。ヘアバン、寒気を送んな。

 ヴィランは下の歯を伸ばして自分を浮かせ、支えていた。歯を伸ばせることがコイツの“個性”か! いくつもある歯。その中のいくつかで俺たちを殺そうと迫ってくる。素早いそれを、半分野郎が氷壁で防ぐ。森ん中っつー条件じゃ、爆破が出来ねえ!

 

『ヴィランの狙いの一つ判明──!! 生徒の「かっちゃん」!! 「かっちゃん」はなるべく戦闘を避けて!! 単独では動かないこと!! わかった!? 「かっちゃん」!!』

 

 マンダレイの「テレパス」が頭の中で響く。ヴィランの攻撃はまた半分野郎の氷壁で塞がれる。

 

「耐えなきゃ……仕事を……しなきゃあああ、あああーーーーーーーー」

 

 ヴィランはまたブツブツ呟いている。

 

「不用意に突っ込むんじゃねえ」

「何で出てきちゃったかなぁ。お前、狙われてるってよ!」

「かっちゃかっちゃうるっせぇんだよ頭ん中でぇ……クソデクが何かしたな、オイ。狙われてんのは、知ってんだよ」

 

 確定した。あの夢で言っていたことは。真実だ。俺が狙われている。ヘアバンが捕まっている。助けに行かなきゃいけねェ。だから、戦えっつったり、戦うなっつったりよ~~ああ゛!?

 

「クッソどうでもいィんだよ!!」

 

 刃のような歯に爆破を喰らわせようとする。変化に気づいて退けば、そのタイミングでその刃から刃が生えた。半分野郎が奴に氷結で攻撃するが、奴は木に歯を突き立てて、自分の体を押し出すようにして避けた。

 

「地形と“個性”の使い方がうめぇ」

「見るからザコのヒョロガリのくせに、んのヤロウ……!」

 

 相当、場数踏んでやがる。

 

「肉、見せて」

 

 キメェ。

 

「ここで爆破使って燃え移りでもすりゃ、火に囲まれて全員死ぬぞ。分かってんな」

「喋んな。わーっとるわ」

「ガス溜まりで退けない。先に行くには、こいつを倒すしか……」

 

 歯を縦横無尽に伸ばす“個性”。伸ばす距離も、速さも、鋭さも、量も半端ない。半分野郎の氷結で奴の攻撃を防ぐことしか出来ていない。ムカつくなぁ!!

 

「近づけねぇ!! クソ、最大火力でぶっ飛ばすしか……」

「だめだ!」

「木ィ燃えてもソッコー氷で覆え!!!」

「爆発はこっちの視界も塞がれる! 仕留め切れなかったらどうなる!? 手数も距離も、向こうに分があんだぞ!」

 

 歯の数だけ攻撃手段がある。畜生、半分野郎の方が正しい! クソが!

 

 どうすりゃいい!!

 

 

 

「いた! 光が見える、交戦中だ!」

 

 傍から、破壊音と共に声が聞こえる。そちらを見れば腕多めが何か背に抱えながら、木を大量に薙ぎ倒す何かに追いかけられていた!

 

「轟! 頼む──」

「肉」

 

 ヴィランの攻撃が腕多めに向かう。

 

「光を!!!」

 

 黒い影が、見たことねえほど巨大なバケモンの影が、半分野郎の氷結をぶっ壊しながら、ヴィランを地面に巨大な手で押し潰した。

 

「なっ……どうして、かっちゃんが!?」

 

 なんでテメェはボロボロなんだよ、デク。

 

「障子、緑谷……と」

「あれ、常闇か!?」

「早く“光”を!!! 常闇が暴走した!!!」

 

 見りゃ分かる。あんな巨大で凶暴なもんは見たことねぇが。だから。

 

「見境なしか。っし、炎を……」

「待てアホ」

 

 ヴィランが歯を伸ばして起き上がる。

 

「その子達の断面を見るのは僕だぁあ!!! 横取りするなぁあああああ!!!」

 

 黒影を仕留めようと歯を伸ばしたヴィランは、巨大な手に掴まれ、返り討ちに遭っていた。

 

強請(ねだ)ルナ、三下!!」

 

 この凶暴な“個性”、どこまで強いのか。

「見てぇ」

 

 ヴィランを掴んだその手は、叩きつけるように木々を薙ぎ倒しながら振り回される。最後はヴィランを木に叩きつけた。あのダメージ。暫くは動けるわけねーわな。

 

「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛暴レタリンゾォア゛ア゛ア゛ア゛!!!」

 

 ここまでか。俺が爆破で、半分野郎が炎で、黒い影を弱らせる。急に小さくなった影を内に収めたカラス頭。疲れてんのか、膝を付いた。光で弱る影。あの巨大な影と戦うことが、俺には出来ねえのか。

 

「テメェと俺の相性が残念だぜ……」

「……? すまん助かった」

 

 にしてもだ。

 

「俺らが防戦一方だった相手を、一瞬で……」

「暴走だとはいえ、すごいパワーだったな」

「常闇大丈夫か、よく言う通りにしてくれた」

「障子……悪かった……緑谷も……。俺の心が未熟だった」

 

 肝試しでコンビを組んでいた腕多めの複製の腕が、あのヴィランにトバされた結果、ああなったらしい。複製は複製。本体がやられたわけじゃねーから、腕多めへの影響は大きくはないらしい。

 話は勝手に進み、いつのまにか、俺を護衛して施設に戻ることになった。

 

「何だこいつら!!!!」

「おまえ中央を歩け」

「出てきた爆豪が悪い」

「俺を守るんじゃねぇクソ共!!!」

「行くぞ!!」

 

 シカトすんなテメェら!!!!

 

 

 

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