何が起こった。
不服ながら守られながら移動して、俺達は丸顔達と合流したはずだ。丁度女のヴィランと交戦していた二人と。俺自身は全方位囲まれ、デク曰く、オールマイトだって怖くないメンバーらしかった。それが、急に強い寒気を感じたと思ったら、ちいせぇ空間に閉じ込められた。
「彼なら」
ここはどこだ。
「俺のマジックで、貰っちゃったよ」
これはヴィランの“個性”か?
「こいつぁ
「っ返せ!!」
おいデク。俺を守るんじゃなかったのか。
「返せ? 妙な話だぜ。爆豪くんは誰のものでもねぇ。彼は彼自身のものだぞ!! エゴイストめ!!」
「返せよ!!」
デクに助けられるのは死んでも嫌だが、モノに封じ込めたテメェがエゴイストを語ってんじゃねーよ!!
「どけ!」
半分野郎が氷結を飛ばしてくる。
「我々はただ、凝り固まってしまった価値観に対し、『それだけじゃないよ』と道を示したいだけだ。今の子らは価値観に道を選ばされている」
木を伝って向かってきた氷結を、ジャンプで避けた。……カラス頭が下に居ない。こいつ、俺だけじゃなく、カラス頭まで……!?
「わざわざ話しかけてくるたぁ……舐めてんな」
「元々エンターテイナーでね。悪い癖さ。常闇くんはアドリブで貰っちゃったよ」
コロコロすんな気色悪ィ。テメェもモノ扱いじゃねえか。
「ムーンフィッシュ……『歯刃(はじん)』の男な。あれも死刑判決控訴棄却されるような生粋の殺人鬼だ。それをああも一方的に蹂躙する暴力性。
奴の手に握りこまれて、もう外の様子は見えない。いくら爆破してやってもまるで傷がつかねぇ。どうなってんだ!!
「この野郎!! 貰うなよ!」
「悪いね。俺ァ逃げ足と欺くことだけが取り柄でよ! ヒーロー候補生何かと戦ってたまるか」
こいつ、俺らをどこにしまいやがった。暗くてよく分からねぇ。爆破で照らしても、よく分からん。
「
ヴィランは木の上を走って、“回収地点”とやらに向かっているらしかった。
……逆に考えろ。こいつらについていった先にヘアバンが居るはずだ。バレないとされていた合宿先が割れ、襲撃を受けるまで近づいてきていたことに気づかなかった時点で、あいつが拐われたことにすら気付かせない方法だって、奴らは出来るだろう。そう仮定したとき、他にヒーロー側で誰が気付ける? 気づけたとして、場所が分かるか?
今、ヒーロー側で一番あいつに近いのは、俺だ。カラス頭には悪いが、ヘアバン救出に巻き込まれてもらうぞ。
そう考えていた時、俺を持っていたヴィランの体が地に落ちたらしい。デクの野郎達が捕まえたってことか。……余計なことを、とは、どうしても言えねぇ。
暗闇に閉ざされた視界。何が起こっているのかよく分からない。
「いってて……飛んで迫ってくるとは! 発想がトんでる」
「爆豪は?」
「もちろん」
声が、俺を捕まえた奴のは響くようにでかく、他の声は厚いフィルターがかかっているように聞こえづらい。
「ホホウ! あの短時間でよく! さすが6本腕!! まさぐり上手め!」
6本腕……腕多めが、何かしたのか。
「ああ……アレはどうやら走り出すほど嬉しかったみたいなんで、プレゼントしよう。悪い癖だよ。マジックの基本でね。物を見せびらかす時ってのは……」
突然、視界が明るくなる。
「
は? こいつ、俺たちを口の中にしまってたのかよ! ばっちいなクソが!!
「氷結攻撃の際にダミーを
オイこら! また口ん中に入れんじゃねえ!!
「そんじゃーお後がよろしいようで……」
よくねェよっ!!!
強い光が、いやあれはレーザーか、ヴィランのマスクを壊した。その衝撃でヴィランの口の大きく開き、俺達が吐き出された。三人が俺達に向かって走り寄ってきたのが分かる。カラス頭を腕多めが、俺を半分野郎が、回収しようとして、別の手に捕まった。
「哀しいなぁ。轟焦凍」
この声は、俺をこんな形にした奴とは違うヴィランか?
「確認だ。“解除”しろ」
「っだよ、今のレーザー……俺のショウが台無しだ!」
奴が指パッチンすると、俺たちは元に戻った。
「問題なし」
気持ち悪い笑い方するヴィランに首を掴まれているのは、俺だ。
「かっちゃん!!」
必死な顔したデクが俺を呼ぶ。寒気が俺をワープから追い出そうとする。手を伸ばした方が良いのは、分かっている。
デクに助けられるのが嫌だとか、そういう話じゃねえ。
俺は最初から、ヴィランに連れて行かれる為にわざわざ施設から出てきたんだ。
「来んな、デク」
悪いな。
気絶させられた。その時に見た夢で、ヘアバンは泣いていた。
「言うんじゃ、なかった」
聞き取れないほど、嗚咽混じりで言われた発言。確かに俺に馬鹿正直に逃げて欲しかったなら、狙われていることだけ伝えて、自分がとっ捕まってることを言わない方が良かった。だが、それで俺は止まっただろうか。
「テメェがどうしてその情報を持ってるのかを考えた時、俺は同じ行動を取っただろーよ。何も伝えなくても、肝試しに参加して、結局同じだ。テメェの忠告はそこまで意味はなかったんだよ」
「……そこまで?」
そこに気が付くか。
「俺には拐われた理由がある。お前を、助ける為だ」
ヘアバンはさらに顔を歪ませた。
「ごめんね、ごめんね。君の、覚悟を……」
「言うな」
夢の中であろうと、言ってしまえば現実のものになってしまいそうだった。悪い予感はしてるんだ。
この予感は外れていてほしい。だから、言うな。