4ヶ月の   作:めもちょう

35 / 48
三十五話

 何が起こった。

 

 不服ながら守られながら移動して、俺達は丸顔達と合流したはずだ。丁度女のヴィランと交戦していた二人と。俺自身は全方位囲まれ、デク曰く、オールマイトだって怖くないメンバーらしかった。それが、急に強い寒気を感じたと思ったら、ちいせぇ空間に閉じ込められた。

 

「彼なら」

 

 ここはどこだ。

 

「俺のマジックで、貰っちゃったよ」

 

 これはヴィランの“個性”か?

 

「こいつぁヒーロー側(そちら)にいるべき人材じゃあねえ。もっと輝ける舞台へ俺たちが連れてくよ」

「っ返せ!!」

 

 おいデク。俺を守るんじゃなかったのか。

 

「返せ? 妙な話だぜ。爆豪くんは誰のものでもねぇ。彼は彼自身のものだぞ!! エゴイストめ!!」

「返せよ!!」

 

 デクに助けられるのは死んでも嫌だが、モノに封じ込めたテメェがエゴイストを語ってんじゃねーよ!!

 

「どけ!」

 

 半分野郎が氷結を飛ばしてくる。

 

「我々はただ、凝り固まってしまった価値観に対し、『それだけじゃないよ』と道を示したいだけだ。今の子らは価値観に道を選ばされている」

 

 木を伝って向かってきた氷結を、ジャンプで避けた。……カラス頭が下に居ない。こいつ、俺だけじゃなく、カラス頭まで……!?

 

「わざわざ話しかけてくるたぁ……舐めてんな」

「元々エンターテイナーでね。悪い癖さ。常闇くんはアドリブで貰っちゃったよ」

 

 コロコロすんな気色悪ィ。テメェもモノ扱いじゃねえか。

 

「ムーンフィッシュ……『歯刃(はじん)』の男な。あれも死刑判決控訴棄却されるような生粋の殺人鬼だ。それをああも一方的に蹂躙する暴力性。()()()()と判断した!」

 

 奴の手に握りこまれて、もう外の様子は見えない。いくら爆破してやってもまるで傷がつかねぇ。どうなってんだ!!

 

「この野郎!! 貰うなよ!」

「悪いね。俺ァ逃げ足と欺くことだけが取り柄でよ! ヒーロー候補生何かと戦ってたまるか」

 

 こいつ、俺らをどこにしまいやがった。暗くてよく分からねぇ。爆破で照らしても、よく分からん。

 

開闢(かいびゃく)行動隊! 目標回収達成だ! 短い間だったがこれにて幕引き!! 予定通りこの通信後5分以内に“回収地点”へ向かえ!」

 

 ヴィランは木の上を走って、“回収地点”とやらに向かっているらしかった。

 ……逆に考えろ。こいつらについていった先にヘアバンが居るはずだ。バレないとされていた合宿先が割れ、襲撃を受けるまで近づいてきていたことに気づかなかった時点で、あいつが拐われたことにすら気付かせない方法だって、奴らは出来るだろう。そう仮定したとき、他にヒーロー側で誰が気付ける? 気づけたとして、場所が分かるか?

 今、ヒーロー側で一番あいつに近いのは、俺だ。カラス頭には悪いが、ヘアバン救出に巻き込まれてもらうぞ。

 

 そう考えていた時、俺を持っていたヴィランの体が地に落ちたらしい。デクの野郎達が捕まえたってことか。……余計なことを、とは、どうしても言えねぇ。

 暗闇に閉ざされた視界。何が起こっているのかよく分からない。

 

「いってて……飛んで迫ってくるとは! 発想がトんでる」

「爆豪は?」

「もちろん」

 

 声が、俺を捕まえた奴のは響くようにでかく、他の声は厚いフィルターがかかっているように聞こえづらい。

 

「ホホウ! あの短時間でよく! さすが6本腕!! まさぐり上手め!」

 

 6本腕……腕多めが、何かしたのか。

 

「ああ……アレはどうやら走り出すほど嬉しかったみたいなんで、プレゼントしよう。悪い癖だよ。マジックの基本でね。物を見せびらかす時ってのは……」

 

 突然、視界が明るくなる。

 

見せたくないもの(トリック)がある時だぜ?」

 

 は? こいつ、俺たちを口の中にしまってたのかよ! ばっちいなクソが!!

 

「氷結攻撃の際にダミーを()()し、右ポケットに入れておいた。右手に持ってたもんが右ポケットに入ってんのを発見したら、そりゃー嬉しくて走り出すさ」

 

 オイこら! また口ん中に入れんじゃねえ!!

 

「そんじゃーお後がよろしいようで……」

 

 よくねェよっ!!!

 

 強い光が、いやあれはレーザーか、ヴィランのマスクを壊した。その衝撃でヴィランの口の大きく開き、俺達が吐き出された。三人が俺達に向かって走り寄ってきたのが分かる。カラス頭を腕多めが、俺を半分野郎が、回収しようとして、別の手に捕まった。

 

「哀しいなぁ。轟焦凍」

 

 この声は、俺をこんな形にした奴とは違うヴィランか?

 

「確認だ。“解除”しろ」

「っだよ、今のレーザー……俺のショウが台無しだ!」

 

 奴が指パッチンすると、俺たちは元に戻った。

 

「問題なし」

 

 気持ち悪い笑い方するヴィランに首を掴まれているのは、俺だ。

 

「かっちゃん!!」

 

 必死な顔したデクが俺を呼ぶ。寒気が俺をワープから追い出そうとする。手を伸ばした方が良いのは、分かっている。

 

 デクに助けられるのが嫌だとか、そういう話じゃねえ。

 

 俺は最初から、ヴィランに連れて行かれる為にわざわざ施設から出てきたんだ。

 

「来んな、デク」

 

 悪いな。

 

 

 

 

 

 気絶させられた。その時に見た夢で、ヘアバンは泣いていた。

 

「言うんじゃ、なかった」

 

 聞き取れないほど、嗚咽混じりで言われた発言。確かに俺に馬鹿正直に逃げて欲しかったなら、狙われていることだけ伝えて、自分がとっ捕まってることを言わない方が良かった。だが、それで俺は止まっただろうか。

 

「テメェがどうしてその情報を持ってるのかを考えた時、俺は同じ行動を取っただろーよ。何も伝えなくても、肝試しに参加して、結局同じだ。テメェの忠告はそこまで意味はなかったんだよ」

「……そこまで?」

 

 そこに気が付くか。

 

「俺には拐われた理由がある。お前を、助ける為だ」

 

 ヘアバンはさらに顔を歪ませた。

 

「ごめんね、ごめんね。君の、覚悟を……」

「言うな」

 

 夢の中であろうと、言ってしまえば現実のものになってしまいそうだった。悪い予感はしてるんだ。

 この予感は外れていてほしい。だから、言うな。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。