4ヶ月の   作:めもちょう

37 / 48
三十七話

「早速だが……ヒーロー志望の爆豪勝己くん。俺の仲間にならないか?」

「寝言は寝て死ね」

 

 バーのような場所でヴィランたちに囲まれ、観察されている俺は、椅子に拘束具でくくりつけられていた。

 

「まあ、そんな怖い顔するなよ。まずは話を聞いてくれ」

 

 ヴィランどもに囲まれていること、ふざけた勧誘を受けていることも気にくわねぇが、俺が一番気を取られているのは、このヴィラン連合のボスっぽい、手ぇいっぱいつけたヒョロガリに、黒い大きなモヤが集まっていることだ。

 前に見た時はそんなの無かった。ショッピングモールでデクが一人で遭遇したって時も、そんな報告はなかった。……首を絞める手、力が入っていないか? 黒いモヤから出てきているように見えるが、だからってそれはワープゲートのようにも見えない。恨みがましいその手は、一体何だ。

 

 近くに置かれたテレビから、雄英高校の謝罪会見の一部が放送される。

 

「俺たちのこと、君のことだ。見ようじゃないか」

 

 こいつの声が気に入らねェ。

 

『この度──我々の不備からヒーロー科1年生27名に被害が及んでしまったこと、ヒーロー育成の場でありながら、敵意への防衛を怠り、社会に不安を与えた事、謹んでお詫び申し上げます。誠に申し訳ありませんでした』

 

 発言はメディア嫌いの相澤先生。彼らが席につくと、テレビ局からの質問が始まる。

 

『NHAです。雄英高校は今年に入って4回、生徒がヴィランと接触していますが、今回生徒に被害が出るまで、各ご家庭にはどのような説明をされていたのか、又、具体的にどのような対策を行ってきたのかお聞かせください』

 

 体育祭開催の件から雄英の基本姿勢は把握しているはず。質問者はまたそれを言わせようとする。まるで悪者扱いだ。

 答えるのは校長だ。

 

『周辺地域の警備強化。校内の防犯システム再検討。“強い姿勢”で生徒の安全を保証する……と説明しておりました』

 

 テレビの中の記者達の空気が嘲笑を含むものになる。記者たちでこれだ。このニュースを見ている人間が雄英に反感を覚えるのは分かりきっている。

 

「不思議なもんだよなぁ……なぜ奴ら(ヒーロー)が責められてる!?」

 

 この空気を作ったのはてめェのくせに。演説するかのように、両腕を広げる手の野郎。

 

「奴等は少ーし対応がズレてただけだ。守るのが仕事だから? 誰にだってミスの一つや二つある! 『お前らは完璧でいろ』って!? 現代ヒーローってのは堅っ苦しいなァ爆豪くんよ!」

 

 手の野郎の首の手が、さらにそこを締め付けていた。

 トカゲ頭が口を開く。

 

「守るという行為に対価が発生した時点で、ヒーローはヒーローでなくなった。これがステインのご教示!!」

「人の命を金や自己顕示に変換する異様。それをルールでキチキチと守る社会。敗北者を励ますどころか、責め立てる国民。俺たちの戦いは『問い』。ヒーローとは、正義とは何か。この社会が本当に正しいのか、一人一人に考えてもらう。俺たちは勝つつもりだ」

 

 手の奴が笑った気がした。

 

「君も、勝つのは好きだろ」

 

 どうしてこいつは苦しくないんだ。首の手は食い込んでいるのに。

 

荼毘(だび)、拘束外せ」

「は?」

 

 どういうつもりだ。隣の荼毘と呼ばれたこいつもそう思ったらしい。

 

「暴れるぞこいつ」

「いいんだよ、対等に扱わなきゃな、スカウトだもの。それに、この状況で暴れて勝てるかどうか、わからないような男じゃないだろう? 雄英生」

 

 言葉巧みに俺を囲い込むために。信用、脅迫の為に、か。

 

「トゥワイス外せ」

「はぁ俺!? 嫌だし!」

 

 トゥワイスと呼ばれた男は嫌がったかと思えば、俺の拘束を外し始めた。どっちだお前。

 拘束を外す後ろで、俺を玉にして捕まえたマジシャンかぶりが言う。

 

「強引な手段だったのは謝るよ……けどな。我々は悪事と呼ばれる行為に勤しむただの暴徒じゃねえのは分かってくれ。君を拐ったのはたまたまじゃねえ。ここにいる者、事情は違えど、人に、ルールに、ヒーローに縛られ……苦しんだ。君ならそれを──」

 

 拘束が外れた。やることは一つ。

 不用意に近づいてきた手の奴の顔面に爆破を食らわせる!! 奴の顔の手が吹っ飛ぶ。

 

「黙って聞いてりゃダラッダラよォ……! バカは要約できねえから話が長ぇ! 要は『嫌がらせしてぇから仲間になってください』だろ!?

 

 無駄だよ」

 

 思い出すのは、小さい頃から憧れた、あの姿。

 

「俺は()()()()()()が勝つ姿に憧れた。誰が何を言ってこようが、そこァ()()曲がらねぇ」

 

 黒いモヤは手の奴から離れ、白よりの灰色のモヤになって、俺の側に寄ってきた。そいつは少しの寒気と、多大な暖かさを俺にもたらした。

 お前なのか、ヘアバン。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。