4ヶ月の   作:めもちょう

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三十九話

「ここで終わりだ、死柄木弔!!」

 

 オールマイトの強すぎる覇気。ヴィランを捕らえる力強すぎる眼力。俺たちにとって頼もしすぎるそれは、ヘアバンの言う通り、ヴィランにとって絶望らしい。

 

「終わりだと……? ふざけるな……始まったばかりだ」

 

 震えた、手の奴の声。

 

「正義だの……平和だの……あやふやなもんでフタされたこの掃き溜めをぶっ壊す……その為にオールマイト(フタ)を取り除く」

 

 それは、恐れからくるものか、悔しさから来るものか。それとも。

 

「仲間も集まり始めた。ふざけるな……ここからなんだよ……黒ぎっ……」

 

 抗おうとする奮起からか。

 だが、手の奴が命令しようとしたワープ野郎は、エッジショットによって気絶させられた。俺が前に暴いた弱点を参考にしたらしい。

 ジジイが前に出る。

 

「さっき言ったろ。おとなしくしといた方が身のためだって。引石健磁(ひきいしけんじ)迫圧絋(さこあつひろ)伊口秀一(いぐちしゅういち)渡我被身子(とがひみこ)分倍河原仁(ぶばいがわらじん)。少ない情報と時間の中、お巡りさんが夜なべして素性を突き止めたそうだ。わかるかね? もう逃げ場はねぇってことよ。

 なァ死柄木。聞きてぇんだが、おまえさんのボスはどこにいる?」

「…………………………………………」

 

 嫌な沈黙だ。何を考えている。

 

「ふざけるな。こんな……こんなァ……」

 

 なんだ、この、腹の底が冷たくなるような感覚は……。

 

「こんな……あっけなく……」

 

 不安になる。オールマイトがいるのに。

 

「ふざけるな……失せろ……消えろ……」

 

 灰色のモヤの手が、俺を強く後ろへ押し出そうとする。

 

()は今どこにいる、死柄木!!」

「お前が!!」

 

 さっきとは比べ物にならないくらい、奴の気迫が、俺を押す。

 

「嫌いだ!!」

 

 奴の咆哮と共に、くせぇ黒い液体と共に、脳無が、何もない空間から出てきた! なんだこれ!! しかも2体だけじゃねぇ! どんどん出てきやがる!!

 

「シンリンカムイ、絶対に放すんじゃないぞ!!」

「お゛!!?」

 

 脳無が出てきた黒い液体が、俺の口の中からっ!? しかも止まらねぇ!!

 

「爆豪少年!! NO!」

「っだこれ、体が……飲まっれ……」

『アイツのとこはダメだァ!!!』

 

 ヘアバンの声が、聞こえた気がした。

 

 

 

 黒い液体に飲まれたのは、ほんの一瞬のことだった。口の中に残った汚ぇそれを吐き出す。

 

「ゲッホ!! くっせぇぇ……んっじゃこりゃあ!!」

 

 ヘアバンが言っていた「アイツのとこ」。これは転送系の“個性”で、俺はどこかに連れて来られたってことか……?

 

「悪いね爆豪くん」

「あ!!?」

 

 汚い水音が後ろから、そして俺の目の前の顔無し男の後ろから聞こえた。音の正体は、俺を転送させたのと同じ、黒い液体。俺の後ろからは(ヴィラン)連合の奴ら。顔無し男の後ろからは。

 

「ヘア、バン……」

「ゲホッ……ば、バクゴー君……!」

 

「また失敗したね弔。でも決してめげてはいけないよ。またやり直せばいい。こうして仲間も取り返した。この子()もね。君が「大切なコマ」だと考え、判断したからだ。いくらでもやり直せ。そのために(せんせい)がいるんだよ。

 全ては、君のためにある」

 

 この顔無し男が、手の奴の先生……この組織の、頭……!!

 あまりの不気味さに、血の気が引いていくのが分かった。

 

 

 

「……やはり、来てるな……」

 

 発言の矛先は、上空から来たオールマイトに向けられていた。重力で加速し、勢いが増したはずのオールマイトの拳は、受け止められてしまった。

 

「全て返してもらうぞ、オール・フォー・ワン!!」

「また僕を殺すか。オールマイト」

 

 灰色のモヤの手が、俺を揺さぶる。止まるなってことか?

 

「随分遅かったじゃないか」

 

 オールマイトの拳の衝撃は、地面にクレーターを作ることで受け止められた。その爆風に吹っ飛ばされる。あのパワーに負けるどころか、オールマイトを素手で弾きやがった!! こいつが、ヴィランのボス……!!

 ハッ! ヘアバンは!?

 あいつはあいつで、吹っ飛ばされて、奥で転がってる。声をあげようとして、灰色のモヤの手が俺の口を塞いだ。まあ、すぐに、オールマイトの突撃をカウンターした衝撃でまた吹っ飛ばされて、あいつを呼べなかったが。

 カウンターを食らったオールマイトは、いくつもビルをぶっ壊しながら吹き飛ばされていった!

 

「オールマイトォ!!!」

「心配しなくても、あの程度じゃ死なないよ。だからここは逃げろ弔。その子達を連れて」

「!」

 

 逃げよう。

 でもまずは、あいつを連れて……! 

 灰色のモヤの手は、ヘアバンを見るなと言わんばかりに、その方向を塞いでいる。お前はヘアバンの生き霊じゃないのか。なんだその行動は。

 

 顔無し男が右手の先から黒い爪を出し、伸びるそれをワープ野郎に突き刺した。何なんだ、あいつの“個性”は……!? 何で、気絶してるワープ野郎が、“個性”を発動出来んだよ!!

 

「さあ行け」

 

 こいつのせいか!?

 

 遠くから、何かが飛び出した衝撃音。それは一瞬後、顔無し男の近くに、派手な音と衝撃を与えながら現れた。オールマイトだ!

 

「逃がさん!!」

 

 オールマイトは顔無し男に殴りかかっていく。

 

「常に考えろ弔。君はまだまだ成長出来るんだ」

 

 オールマイトの拳を受け止める、顔無し男。またあの衝撃波が生まれる。

 

「行こう死柄木! あのパイプ仮面がオールマイトを食い止めてくれてる間に!」

 

 クソ仮面が、まだ気絶してる荼毘ってやつを“個性”で玉にする。

 

()()持ってよ」

 

 見逃しては、くれねェよなぁ!

 

「めんっ……ドクセー」

 

 ほぼほぼ全員が俺を狙ってくる。ヘアバンはどこだ。あいつだけでも逃げられたか。

 こいつらも緊急事態。さっきまでと違って、強引にでも俺を連れてく気だ。6対2……。とりあえず、このクソ仮面には触れられちゃいけねー!

 

「今行くぞ!」

「させないさ」

 

 助けに来たオールマイトは、顔無し男に邪魔される。オールマイトの救出は望めない上に、そもそも俺がいるからオールマイトが全力を出せねえ。早く、早くヘアバンを連れて逃げねぇと……!!

 

「バクゴー君! 右!」

「!」

 

 ヘアバンの声で左へ飛ぶ。確かにそこにはクソ仮面がいて、ヘアバンの声が無ければ危なかった。だが、もうこいつも信用出来ねぇ。灰色のモヤが真っ黒になって、ヘアバンの首を絞めていたからだ。こいつも敵ってことか、生き霊。

 

「7対1……かよッ!!」

 

 ヘアバンは笑った。

 

「……なんでバレたんだろ?」

「ハンッ!」

 

 ヘアバンは、そんなクソ汚ぇ笑い方しねえんだよ!! ニセモンがァ!!!

 

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