「ここで終わりだ、死柄木弔!!」
オールマイトの強すぎる覇気。ヴィランを捕らえる力強すぎる眼力。俺たちにとって頼もしすぎるそれは、ヘアバンの言う通り、ヴィランにとって絶望らしい。
「終わりだと……? ふざけるな……始まったばかりだ」
震えた、手の奴の声。
「正義だの……平和だの……あやふやなもんでフタされたこの掃き溜めをぶっ壊す……その為に
それは、恐れからくるものか、悔しさから来るものか。それとも。
「仲間も集まり始めた。ふざけるな……ここからなんだよ……黒ぎっ……」
抗おうとする奮起からか。
だが、手の奴が命令しようとしたワープ野郎は、エッジショットによって気絶させられた。俺が前に暴いた弱点を参考にしたらしい。
ジジイが前に出る。
「さっき言ったろ。おとなしくしといた方が身のためだって。
なァ死柄木。聞きてぇんだが、おまえさんのボスはどこにいる?」
「…………………………………………」
嫌な沈黙だ。何を考えている。
「ふざけるな。こんな……こんなァ……」
なんだ、この、腹の底が冷たくなるような感覚は……。
「こんな……あっけなく……」
不安になる。オールマイトがいるのに。
「ふざけるな……失せろ……消えろ……」
灰色のモヤの手が、俺を強く後ろへ押し出そうとする。
「
「お前が!!」
さっきとは比べ物にならないくらい、奴の気迫が、俺を押す。
「嫌いだ!!」
奴の咆哮と共に、くせぇ黒い液体と共に、脳無が、何もない空間から出てきた! なんだこれ!! しかも2体だけじゃねぇ! どんどん出てきやがる!!
「シンリンカムイ、絶対に放すんじゃないぞ!!」
「お゛!!?」
脳無が出てきた黒い液体が、俺の口の中からっ!? しかも止まらねぇ!!
「爆豪少年!! NO!」
「っだこれ、体が……飲まっれ……」
『アイツのとこはダメだァ!!!』
ヘアバンの声が、聞こえた気がした。
黒い液体に飲まれたのは、ほんの一瞬のことだった。口の中に残った汚ぇそれを吐き出す。
「ゲッホ!! くっせぇぇ……んっじゃこりゃあ!!」
ヘアバンが言っていた「アイツのとこ」。これは転送系の“個性”で、俺はどこかに連れて来られたってことか……?
「悪いね爆豪くん」
「あ!!?」
汚い水音が後ろから、そして俺の目の前の顔無し男の後ろから聞こえた。音の正体は、俺を転送させたのと同じ、黒い液体。俺の後ろからは
「ヘア、バン……」
「ゲホッ……ば、バクゴー君……!」
「また失敗したね弔。でも決してめげてはいけないよ。またやり直せばいい。こうして仲間も取り返した。この子
全ては、君のためにある」
この顔無し男が、手の奴の先生……この組織の、頭……!!
あまりの不気味さに、血の気が引いていくのが分かった。
「……やはり、来てるな……」
発言の矛先は、上空から来たオールマイトに向けられていた。重力で加速し、勢いが増したはずのオールマイトの拳は、受け止められてしまった。
「全て返してもらうぞ、オール・フォー・ワン!!」
「また僕を殺すか。オールマイト」
灰色のモヤの手が、俺を揺さぶる。止まるなってことか?
「随分遅かったじゃないか」
オールマイトの拳の衝撃は、地面にクレーターを作ることで受け止められた。その爆風に吹っ飛ばされる。あのパワーに負けるどころか、オールマイトを素手で弾きやがった!! こいつが、ヴィランのボス……!!
ハッ! ヘアバンは!?
あいつはあいつで、吹っ飛ばされて、奥で転がってる。声をあげようとして、灰色のモヤの手が俺の口を塞いだ。まあ、すぐに、オールマイトの突撃をカウンターした衝撃でまた吹っ飛ばされて、あいつを呼べなかったが。
カウンターを食らったオールマイトは、いくつもビルをぶっ壊しながら吹き飛ばされていった!
「オールマイトォ!!!」
「心配しなくても、あの程度じゃ死なないよ。だからここは逃げろ弔。その子達を連れて」
「!」
逃げよう。
でもまずは、あいつを連れて……!
灰色のモヤの手は、ヘアバンを見るなと言わんばかりに、その方向を塞いでいる。お前はヘアバンの生き霊じゃないのか。なんだその行動は。
顔無し男が右手の先から黒い爪を出し、伸びるそれをワープ野郎に突き刺した。何なんだ、あいつの“個性”は……!? 何で、気絶してるワープ野郎が、“個性”を発動出来んだよ!!
「さあ行け」
こいつのせいか!?
遠くから、何かが飛び出した衝撃音。それは一瞬後、顔無し男の近くに、派手な音と衝撃を与えながら現れた。オールマイトだ!
「逃がさん!!」
オールマイトは顔無し男に殴りかかっていく。
「常に考えろ弔。君はまだまだ成長出来るんだ」
オールマイトの拳を受け止める、顔無し男。またあの衝撃波が生まれる。
「行こう死柄木! あのパイプ仮面がオールマイトを食い止めてくれてる間に!」
クソ仮面が、まだ気絶してる荼毘ってやつを“個性”で玉にする。
「
見逃しては、くれねェよなぁ!
「めんっ……ドクセー」
ほぼほぼ全員が俺を狙ってくる。ヘアバンはどこだ。あいつだけでも逃げられたか。
こいつらも緊急事態。さっきまでと違って、強引にでも俺を連れてく気だ。6対2……。とりあえず、このクソ仮面には触れられちゃいけねー!
「今行くぞ!」
「させないさ」
助けに来たオールマイトは、顔無し男に邪魔される。オールマイトの救出は望めない上に、そもそも俺がいるからオールマイトが全力を出せねえ。早く、早くヘアバンを連れて逃げねぇと……!!
「バクゴー君! 右!」
「!」
ヘアバンの声で左へ飛ぶ。確かにそこにはクソ仮面がいて、ヘアバンの声が無ければ危なかった。だが、もうこいつも信用出来ねぇ。灰色のモヤが真っ黒になって、ヘアバンの首を絞めていたからだ。こいつも敵ってことか、生き霊。
「7対1……かよッ!!」
ヘアバンは笑った。
「……なんでバレたんだろ?」
「ハンッ!」
ヘアバンは、そんなクソ汚ぇ笑い方しねえんだよ!! ニセモンがァ!!!