4ヶ月の   作:めもちょう

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四十一話

 目の窪んだ、あのガイコツが、オールマイト……? 金髪は萎びれて、ぴったりだったスーツはぶかぶかだ。これが、オールマイト? あの、オールマイト?

 

 でも、そうだ。あの目は。手の奴を追い詰めた時と同じ、青い、炎が宿る力強い目は、オールマイトだ。

 

 顔無し男の攻撃から、また目立った動きはない。心理戦だ。あの場に休息なんかあるわけない。

 

 惑わされんな、オールマイト

 膝を付くな、オールマイト

 救けてくれよ、オールマイト

 

 あんたは、平和の象徴なんだろ?

 

「──……て」

 

「そんな、……嫌だ……」

「オールマイト……!」

「あんたが勝てなきゃ、あんなの誰が勝てんだよ……」

「姿は変わっても、オールマイトはオールマイトでしょ!?」

「いつだって、何とかしてきてくれたじゃんか!」

「オールマイト! 頑張れ!」

 

 ここにいる奴らが、望みを失っていないのは、

 

「まっ、負けるなァ! オールマイト!!」

「頑張れえええ!!」

 

 あんたが立っているからなんだよ!!

 

「勝てや!! オールマイトォ!!」

 

 オールマイトの右腕がでかくなる。いつも見ている、俺の肩を抱いた、あの腕と同じもの。ああ、その笑顔。

『笑顔だってそうだ。人々の希望となり──……』

 あんたはやっぱり、ヒーロー(希望)だ。

 

 右腕だけがあの姿。なんて、歪で、オールマイトの底力を感じるものなのか。

 

 カメラワークが顔無し男に向いた。着けてたヘルメットは砕け、中身は、目も髪も耳もない、本当に顔無し男だった。

 そいつは何の予備動作もなく浮かび上がる。黒いモヤが、画面越しだからそう見えるのか、更にどす黒くなって、更に恨みがましくなって、顔無し男の首回りのパイプをもぎ取ろうと、手が忙しなく動いている。それなのに、やっぱり気にしてねぇ。

 

 顔なし男は更に高く浮かび上がる。そして今度は右腕を膨らませた。

 そんな奴に炎が迫った。大きいそれは、惜しくも奴に効かなかったが、膨らんだ右腕を無効化するぐらいのことはした。炎を送り出したのは、No.2ヒーローエンデヴァー。他のヒーローが駆けつけてくれた! そうだ、救けてくれ! 俺たちの心の支えを、あんたたちが支えてくれ! 

 

 駆けつけたヒーローは俺が最初捕まっていた場所に来ていたヒーロー達。

 エッジショットはワープ野郎と同じように気絶させようと、顔無し男のすぐそばまで近寄り、オールマイトに攻撃を向けさせない。

 シンリンカムイは顔無し男にやられたヒーロー達の回収を。ワイルド・ワイルド・プッシー・キャッツの虎はやられたヒーローの一人だが自力で立ち上がり、オールマイトの後ろにいた、瓦礫に挟まれた一般人を“個性”軟体で救出している。

 ヒーローたちがあんたを支えてくれる。力の無い者が、あんたを声の限り応援する。全員が、オールマイト、あんたの勝利を願っている!!

 

「オールマイトォ!!!」

 

 

 

 

 

 全てを吹き飛ばした。

 画面越しじゃよく分からないが、顔なし男が何かしたことだけは分かる。ヒーロー達が吹き飛ばされただけで、俺たちの声も吹き飛ばされる。しっかりとしがみついている黒いモヤの手でさえも、その動きを止めている。

 

「お、おい……」

「なんだよ、あれ……」

 

 顔無し男の右腕が変形し、膨れ上がり、何かが飛び出す。

 

「あれ、いくつ“個性”持ってんだ……」

 

 確かにそうだ。オールマイトが呼んでいた、あいつの名前はオール・フォー・ワン。

 みんなはひとりのために。

 

「!!!」

 

 あの“個性”まみれの身体。奴の“個性”は、“個性を奪う”ことか?

 

「……あ、ああ゛」

 

 ヘアバンが、吐移が、偽物だとしても、あいつがそこにいた。つまり、ヴィラン側はあいつを間違いなく認識しているってことだ。取られたかもしれない。ヘアバンの“個性”が。

 絶望でしかない。いくら攻撃を食らっても瞬時に回復する上に、その傷を黒いキューブで返すことが出来る。今まで見せていないのは、最後の最後に絶望させるためか?

 

 顔無し男がオールマイトに突撃する。オールマイトも振りかぶる。今までしていたように威力を相殺させるつもりだ。

 拳がぶつかる。衝撃波と砂煙が爆発的に広がる。力は拮抗しているのか!

 

「オールマイト!」

 

 ああ、左腕も! オールマイトは左腕にも力を入れた! 右腕を囮に、左腕で奴を殴る。だがあまり効果がなかった。倒れない顔無し男。奴は左腕を右腕と同じように巨大化させた。

 それは、オールマイトも同じだ!

 

「いけええええっ!!!」

 

 腰の入った一発は、奴の顔面をえぐいほどへこませた。

 

「UNITED STATESOF SMASH!!!」

 

 凄まじい風は、ヘリのバランスを崩させる。煙が晴れて、カメラに映し出されたのは、えぐいほど抉れたクレーター。

 その中央には、倒れた顔無し男。

 立っているのは、オールマイトだ。

 

 誰もが息を呑む。立っているオールマイトが酷く傷ついていて、勝ったと言えるか分からない。だが、そんな不安を払拭するから、オールマイトなんだ。

 

 オールマイトは左腕を掲げた。そして、そして……みんなが憧れ、みんなの心の支えの、あの姿になった。

 

「オールマイトォ!!」

 

 ああ、勝ったんだ。

 

『ヴィランは──……動かず!! 勝利!! オールマイト!! 勝利の!! スタンディングです!!!』

 

 白くなったモヤは、オールマイトの右肩に手を添えている。あんなボロボロで、ガイコツのような姿にもなって、血だらけで。それでも無理して、みんなに希望を与えてくれる。

 

 やっぱり、あんたはヒーローだ 。

 

 

 そして、この瞬間が、その姿である最後なんだな。

 

 ありがとう、オールマイト。

 

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