4ヶ月の   作:めもちょう

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四十二話

 続けて報道される映像には、後から駆けつけたヒーロー達による、崩壊した建物からの一般人の救出活動が映し出されている。

 

『オールマイトの交戦中もヒーローによる救助活動が続けられておりましたが、死傷者はかなりの数になると予想されます……!! 元凶となったヴィランは今……あっ今!! 移動牢(メイデン)に入れられようとしています! オールマイト等による厳戒態勢の中、今……!』

 

 戦いが終わり、モニターの前にいた人々は動き出した。俺たちもその中の一つだ。警察が帰宅難民や避難民の為の案内を繰り返し伝えている。

 

「身動きが取れんな……轟くん、八百万くんらと合流したいが……」

「とりあえず動こうぜ。爆豪のこと、ヒーローたちに報告しなきゃいけねーだろ」

「さわんな」

 

『次は』

 

 オールマイトの声が聞こえて、モニターに目を向ければ、ガイコツ姿のオールマイトがこちらに向かって指差していた。

 

『君だ』

 

 溢れ出る力に、体が震えた。

 短く発信されたメッセージ。それにモブ共は喜び、感激の声をあげている。

 まだ見ぬ犯罪者への警鐘、平和の象徴の折れない姿。

 

 そのメッセージを受けて、なんで、デク。てめェは泣いてんだ。これは感極まってとかじゃねぇ。明らかに、悲しんで泣いている。

 

 

 

 一夜明け、半分野郎とポニーテールの奴と合流した後、俺は警察に保護された。

 

 一晩中考えていた。いろんなことを。結局、答えはまとまりゃしなかった。警察では捕まった時のことを順に説明を求められた。ヘアバンを助ける為、というのは伏せて、(ヴィラン)連合に勧誘を受けたこと、オールマイトたちヒーローが助けに来てくれたが、顔無し男の“個性”の一つで転送されて、あの場に居たこと、そしてクラスメートたちによって救出されたこと。

 ぽつりぽつりと、自分の頭の中を整理しながら話す。話せば話すほど、オールマイトのあの姿を思い出すたび、死にたくなる。

 オールマイトがあの姿になるまで追い詰めたのは、誰か。

 力も無いのに、確かな情報も無かったのに、ヘアバンを助けに行こうという安易な考えでヴィランに捕まった俺だ。俺のせいだ。

 

 俺に事情聴取していた警官に尋ねる。ヘアバンの捜索届が出ていないかを。目の前の警官は不思議そうにしながら、調べてみるし、行方不明なら出しておくと言ってくれた。手続き大丈夫か気になったが、そう言ってくれるなら大丈夫だろ。

 親が迎えに来るまで、別の部屋に通された。交通状況は良くない。いつになるだろうな。

 

「ヘアバン……」

 

 お前は今どこにいる。

 なぁ、生きてるか?

 

 

 

「バカだよ、バクゴー君は。バカゴー君め」

 

 言葉が出なかった。目の前にヘアバンが居たからだ。ヘアバンは不機嫌なのを隠そうともせず、俺に溜め息をついている。なんだっていい。ああ、ああ!

 

「例のごとく、()()に立っているわけだけれど」

 

 ──あ゛あ゛っ!! 現実じゃねえのかよ!!

 

「……そんなに、俺のことを助けようとしてくれた、その気持ちはありがたかった。でも、それを君がする必要はなかったんだよ、バカゴー君」

「……夢にまでわざわざ出てきたんだぞ。お前が警告すると同時に、俺以外に自分の危機的状況が伝えられていないと考えても、いいだろうが」

「残念! 俺の生身にはね、GPSやらなんやらが取り付けられてるの。手のひらにね!」

「電波ジャックするような組織だぞ。そんな情報も遮られてるに決まってんだろ」

「パソコン繋がってたじゃん!」

「それが捕まった時点で分かってりゃな!」

 

 内容はアレだが、言い合いが出来るのが楽しかった。正直になろう。本当に楽しいんだ。

 生身だとか、夢枕だとか、おおよそ普通じゃ出てこないワードが出てくるのが気になるが。……気になっていて、反面、聞きたくないことを、俺はこれから聞かなくちゃならない。それが、憂鬱だった。

 

「バカゴー君、何か聞きたいって顔してる。……まぁ大体予想はついてるけど」

「……なら、さっさと済ます」

 

 口が渇く。唇が震える。夢の中の出来事なのに。

 

「お前は今、どこにいる」

 

 ヘアバンは困ったように笑って、答えた。

 

「分かんない。俺も探してる」

 

 てめェ、何を言ってやがる。俺は動けなかった。ヘアバンは続けて言う。

 

「だから、来てほしくなかったんだよ。俺にも分からないから。……なんのこっちゃって話だよね。でも、本当なんだよ。ワープの奴に俺の体、どこかに捨てられちゃったから。テキトーにめっちゃ遠いとこに捨てたらしくてさ、どこかってヒントもくれなかったし」

「体を、捨てられた……?」

 

 まるで、精神と肉体が切り離されているかのような物言い。やっぱり、こいつは……。

 

「ああ。俺、自殺したから」

「はあっ!?」

 

 よりにもよって自殺してやがっただと!?

 ヘアバンは今まで見たことないほど、冷たい表情を浮かべた。

 

「驚くなよ。俺を連合に勧誘してきたのは、あの“個性”を奪う奴だ。俺の復讐相手を脳無に変えたって、復讐をさらに共に進めようって言われた。バカだろ? 何の為に俺が回りくどい方法を取ろうとしたのか、まるで分かってない」

「……んで、なんで自殺した!!」

「驚くなって言ったろ。俺の“個性”狙いだったんだぞ。目の前には、その“個性”を奪える奴がいたんだぞ。取られるわけにはいかない。奪われれば……あの時、オールマイトは勝てなかった。……俺はね、バクゴー君。ヴィランと関わりたくなんか、ないんだよ。最初の頃、言ったの、覚えてる?」

「……ああ」

 

 ヴィランになりたくないから。確かにこいつは、そう言っていた。

 

「この“個性”で人を傷つけたくない。ヴィランに使われるのなんて、もってのほかだ。じゃあ、逃げられない場合、どうしたらいい?」

 

 逃げる為に、自殺したってのか。

 

「自分に“個性”を使って傷つく分には、法律は何も言ってこないだろ?」

 

 

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