4ヶ月の   作:めもちょう

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四十三話

「自分に“個性”を使って傷つく分には、法律は何も言ってこないだろ?」

 

 流石だ。流石だよ、テメェは。

 流石は、俺と出会う前は法律が心の拠り所だと言ってのけただけのことはある。虐めたやつらを少年院にぶち込んだことを言ってたと思っていたが、それだけじゃなかったとはなァ!!

 

「許してくれなんて、言わない。でも俺は、自分の行動に恥ずかしさはない。俺が自殺したから、オールマイトは勝てたんだ」

「ハッ! テメェの“個性”ごときでオールマイトがやられるかよ!」

「出来るね。拳の先や殴られる所にキューブを付けて、相手に破壊させれば、それで相手に傷をつけられる。おまけに自己回復つきだ! オールマイトだって目じゃないね!」

「っ……!!」

 

 勝てない。こいつの“個性”は、確かに強すぎる。

 

「相手はヴィランだぞ……いくら人を傷つけたくねぇからって、反撃もしねぇで……!」

「……今思えば、黒いキューブをあの顔無し野郎に、ワープの奴に投げとけば良かったとは思う。でも、自殺することは変わらなかった。だって、前には奪う奴、後ろにはワープの奴がいたんだよ? ……逃げられない。反撃して、捕まったら、容赦なく“個性”が奪われる。それならいっそ……あいつが死体から“個性”を奪えないことに賭ける方が、勝てると思った。そして事実、あいつは俺から“個性”を奪う素振りも見せず、ワープの奴に俺の体を捨てさせた」

「……」

「俺は、賭けに勝ったんだよ」

 

 お前には来なかったんだな。救けが。

 何も言わない俺に、ヘアバンは泣きそうな声で言ってきた。

 

「別に、後悔してないとか、そんなわけでもないんだよ。だからこうして、夢枕に立ってるわけだし」

 

 泣きそうな、じゃない。泣いていた。

 

「……ねえ、バクゴー君。頼みがあるんだけど」

「……あんだよ」

「名前、呼んでくんない?」

「名前……?」

「バクゴー君いっつも、ヘアバンって呼ぶじゃないか」

 

 冥土の土産にさ。

 

 なあ、ヘアバン。それは事実として受け止めなきゃならねえのか? これは夢なんだろ? 今までの言い合いも、全て夢。お前と話せた。そういう夢でいいじゃねえか。……そんな夢の中でなら、ああ、名前で呼んでやるよ。

 

「吐移」

「!」

「返事くらいしやがれ、吐移」

「はい」

「吐移、正」

「うん」

「覚えとけよ、吐移。この俺が、名前で呼んでやったことを」

「絶対、忘れない」

 

 ありがとう。そう言って、吐移は笑った。

 

「99点」

「涙分、(プラス)にしといてよ」

「ばーか。(マイナス)だわ」

「へへっ、そっか!」

 

 吐移はくるっと後ろを向いて、涙を手で拭った。

 

「バクゴー君。俺ね、君に初めて助けられた時から、夢を見てるみたいだったよ」

「夢じゃねえ。現実だわ」

「うん。それが、すごく嬉しい。友達ができた。下手な笑顔がここまで上手くなれた。強くなれた。お母さんと話が出来た。……現実なのが、信じられない」

 

 感謝の言葉なら、こっち向いて言えよ。

 

「バクゴー君。多めに数えて、4ヶ月。この4ヶ月の間、俺」

 

「幸せでした」

 

 俺の方を向いて放たれたその一言。本当に、そう思ってるんだな。

 

「100点」

「やった!」

 

 喜んでるこいつの笑顔が、透けている。

 

「最後まで俺の心を救けてくれたバクゴー君、やっぱり君はヒーローだ! 君は、みんなのヒーローになれるよ!」

 

 あっという間に体が透けていく。

 

「ありがとう、爆豪勝己くん。君のおかげで、バクゴー君のおかげで、俺は、幸せでした!」

 

 その言葉を、笑顔を残して、吐移は消えた。

 

「…………アホが」

 

 

 

 目が覚めた俺は、迎えに来た親父と共に、家に帰った。しばらく家から出ないようにと、警察に言われながら。

 

「本当に良かったよ。お前が家に帰ってこれて」

 

 吐移は、帰ってこなかった。つれて帰れなかった。

 

 長い長い帰路の末、帰ってきた家では、待ってた母さんが俺を抱きしめた。

 

「良かった……! あんたが帰って来て、無事で、良かった……!!」

 

 心配をかけて、申し訳なく思った。

 風呂に入ったり飯食ったり、色々済ませた後、家に送られていた荷物の中から携帯を取り出した。電源を入れると大量の通知が入っていた。A組は勿論、中学の時のやつらも。気になるのは、見覚えのない電話番号。同じ番号から3回、不在着信が入っていた。

 

〈ヴーーーーッ、ヴーーーーッ〉

 

 4回目の、 同じ番号からの連絡。出ていいのか分からず、とりあえず放置する。鳴り止んでから、溜まった通知を消化していく。心配の声が多数を占めるなか目を引いたのは、青髪(心操)のメール。心配の声と同時に、俺の連絡先を勝手に教えやがったらしい。相手は、いつか俺に喧嘩売ったあの女。あの女の電話番号を載せてるが、それはさっきスルーした番号と同じものだった。メールは続けてこう綴られていた。

 

『吐移のこと、何か聞いてないか? 連絡がつかない。先生に聞いても分からなかったが、あの様子は知っているようだった。何か知っていたら記見に教えてやってくれ。俺よりずっと心配してるから』

「…………」

 

 話を整理してから、かけてやろう。

 『こっちから連絡するから、待っとけ』。そう返信して、俺はルーズリーフを一枚取り出し、書き出していく。奴に話しながら取り乱したくはないからだ。

 夜。まとめて、心を落ち着けた俺は奴に連絡を入れた。2コール目で出たそいつは、焦った声で言った。

 

「ねえ! あんた知らない……!? あんたなら知ってるわよね……吐移くんがどこにいるのか!!」

 

 順を追って話さなきゃ、こいつはすぐヒステリーを起こしそうだ。

 




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