4ヶ月の   作:めもちょう

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四十四話

「……ごめんなさい。順番を間違えたわ。無事で良かった、爆豪。私に言われても嬉しくないだろうけど。おかえりなさい」

「……おう」

 

 驚いた。ただ失礼な奴かと思ってたが、そうでもないんだな。

 電話越しのあいつは気を取り直す為に深呼吸をした。

 

「それで悪いんだけど、吐移くんの居場所を知っていたら教えて欲しいの。他のA組の人から聞いた。あんたが吐移くんを助ける為にわざと捕まったんじゃないかって」

「はあっ!!? 誰がそんなこと言いやがった!!」

 

 切島か? デクか? 委員長か? 残りの二人か!?

 あの五人なら、吐移が、偽物でもあの場にいたことを知っている。この中だと、切島か?

 

「上鳴くんが、えっとたしか、尾白くんがそう言ってたって」

「尾白?」

 

 尻尾がそんなことを? なぜ?

 

「あんた合宿中、吐移君に連絡出来ないか聞いたり、その後も不自然な行動をとってたらしいじゃない。それで、あんたがなんかの方法で吐移くんの危機を知って、それを助ける為にわざと攫われたんじゃないかって……本当なの?」

「尻尾の野郎……」

 

 あん時の会話、盗み聞きしてやがったのか!

 

「ねえ」

「……ああ、わざとだ。ヘアバンが夢の中に出てきて、自分は(ヴィラン)連合に捕まった、次は俺だって言ってきた。奴は警告のつもりだったんだろうが、その前に俺を自分のヒーローだと言ってきた。そんなやつを助けに行きたいと思って、何が悪い」

「……悪いとは言わないけど、夢っていう不確かすぎる情報でそんな行動力を起こせるのはびっくりね。そして、吐移くんが助けを望んでいたのか、そこも気になったわ」

「……望んじゃいなかった」

「そっか……。ねえ、それで、居たの? 吐移くんは」

「ニセモンが居た」

「それじゃあ、ヴィランは吐移くんを認識してるってことか」

 

 話が早い。こいつなら、あの事を聞いてもいいかもしれねぇ。

 

「お前、オールマイトとヴィランの中継、見てたか」

「え? あ、勿論。日本中で見てない人って少数派じゃない? それで?」

「ヴィランの首元に黒いモヤと、その中から生える手を見なかったか」

「なにそれこっわ。見てないわよ」

 

 何それと不思議そうに聞いてくる赤髪の女。だが、これで確信した。あれは、普通、見えないものだ。

 

「あれは、ヘアバンの生き霊だ」

「生き霊? 何言って……」

「見えなかった奴に何言っても分かんねえだろうが、一応言っとく。モヤは憑く相手によって、黒ければヴィラン、白なら味方と、俺に知らせてくれた。だからあの場にいたヘアバンを偽物だと判断し、置いていくことが出来た」

「……夢の中の話を真に受ける奴だから、そういうのも見えちゃうのね」

「電話切るぞ」

「一番肝心な話してないじゃん!」

「てめェの言う不思議体験が、重要な手がかりだったんだぞ」

「……そうなんだ」

「信じてねぇだろ」

「まだね。……でも、記憶を見れば、信じられないこともない」

「記憶ゥ……? それがてめェの“個性”か」

「そうよ。あ、人の記憶を見るわけじゃないから安心して。私は、生体以外の質量を持った物質から記憶を見ることが出来るの」

「記憶……そんな器官もねーのにか」

「物にだって匂いが染み付くことあるでしょ? それと一緒よ。それに、人の記憶なんてすぐ変わっちゃうしね」

「そういうもんか」

「そういうもんよ。だから、現場に行ければ、あんたの言葉を信じられるわ」

「そうかよ」

「それで一番聞きたいこと。吐移くんは、どこにいるの」

 

 どこ、か。

 

「夢の話になるが、いいか」

「この際構わない。生き霊が出てくるくらいなんだし」

「……夢の中であいつは、“分からない、探してる”って言ってやがった」

「え? 自分のことなのに?」

「精神と肉体が切り離された後、その体をワープの奴に、どこかに捨てられたってよ」

「は? 切り離された?」

 

 あ、言ってなかったな。

 

「それって、そういう“個性”持ちがいるってこと?」

「いや、違う。あいつは、──自殺したんだ」

 

 ガンッゴガンッ

 でかい音が鳴った。一言言っておけば良かったか。相手はおそらく、電話を落としたんだろうから。

 

「ちょっと! 聞いてないわよそんな話!! それ、それっ、吐移くんが、自分で言ってたの!?」

「ああ。“個性を奪う個性”なんだ、あのヴィランは。奴は“自分の個性が奪われたらオールマイトは勝てなかった。それ以前にヴィランになりたくなかった。自分に“個性”を使って傷つく分には法律は何も言ってこない”とかほざいてやがった」

「……本当でしょうね」

「知りたきゃご自慢の“個性”を使って調べてこい」

 

 啜り泣いてんのが聞こえた。電話越しのあいつは、泣いているようだった。

 

「これ以上は……ちょっと、情報が多すぎて……また、連絡するわ」

「ああ」

「……神野区の警察署に協力しに行ってくるわ。何か知ってそうなマイク先生連れて」

「ああ」

「何か分かったら……いや、あんたは全部知ってそうね」

「そうだな」

「じゃあ……ありがとう」

 

 電話を切る。感情的には信じられないが、証拠次第では、か……。こいつには話して正解だったな。

 

 それから見る夢に、吐移は出てこなかった。

 

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