4ヶ月の   作:めもちょう

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四十五話

『ヒーロービルボードチャートJP! 事件解決数、社会貢献度、国民の支持率など諸々を集計し、毎年2回発表される現役ヒーロー番付!!』

 

 点けていたテレビから流れた映像では、ひょろひょろのオールマイトが会見で頭を下げていた。

 

『不動のNo.1がまさかの!! 日本のみならず、ヒーローの本場アメリカでも騒然! オールマイト本当の姿!! 体力の限界!! 事実上のヒーロー活動引退を表明!!』

 

 いつもなら明るい話題が多いこのニュース番組。それでも、先日の大事件のせいで不安要素ばかり取り上げている。

 ジーニアスは大ケガで長期の活動休止。プッシーキャッツの一人、ラグドールはあの拉致の後“個性”が使えなくなり、グループの活動を見合わせている。……盗られちまったんだな、“個性”。思わず舌打ちした。

 

『一夜にして多くのヒーロー達が大打撃を受けた“神野の悪夢”!! これからどうなる日本! そしてヒーローよ!! 以上今日のクイックニュースでした!』

 

 ニュースはあっさりと、天気の話題に切り替わった。

 

「勝己ー! そろそろ着替えときなー!」

「わーってら」

 

 寝っ転がっていたソファーから立ち上がる。今日は雄英の全寮制導入検討の説明の為の、家庭訪問がある。

 うちの答えは、もう出てる。

 

 

 

 

 

「先日資料でお知らせしました、全寮制導入検討の件なのですが……」

「あっはい、よろしくお願いします」

 

 相澤センセーの話を遮った上に、俺の頭を叩くババア。何すんだ!

 

「バッバア叩くんじゃねぇよブッ飛ばすぞコラ!!」

「うっさい!! 元はといえば、あんたが弱っちいからとっ捕まって、ご迷惑かけたんでしょ!!」

 

 何度も叩くんじゃねぇ!!

 

「二人とも……や、やめろよォ、先生方が……驚いてるだろォ……」

「うっせんだよクソ親父、てめぇは黙ってろ!!」

「うっせぇのは勝己でしょ! あんたも喋るならハキハキ喋りなさいよ!」

「んん~……」

 

 だから、叩くんじゃねえ!!

 

「あの、本当によろしいのでしょうか」

「ん!? 寮でしょ? むしろありがたいよ!」

 

 ついでみたいに叩くな。俺の頭を太鼓と何かと勘違いしてんじゃねーぞ!

 

「勝己はなまじ何でもできちゃうし、能力も恵まれちまってさ。他所様からチヤホヤされて、ここまで来ちまった。薄っぺらいとこばっか褒められて……。だから、あの会見での言葉が嬉しかったんだよね。『ああ、この学校は勝己を見てくれてる』って」

 

 ……帰ってきてから改めて見た、会見での相澤先生の言葉。

 

『誰よりも“トップヒーロー”を追い求め……もがいている。あれを見て“隙”と捉えたのなら、ヴィランは浅はかであると私は考えております』

 

 先生は俺をそう評価してたのかと驚いた。

 

「一時は不安でどうなるかと思ったけど、こうして五体満足で帰ってきてるワケだしさ。しばらくは風当たりは強いかもしれないけど、私は信頼して任せるよ。な」

「うん」

 

 今度は頭をわしゃっと掴んだと思ったら、押さえつけられた。覚えとけよ……。

 

「こんなどうしようもない奴だけど、みっちりしごいて、良いヒーローにしてやってください」

 

 俺も二人と同じように頭を下げた形になった。まあ、ここは別にいいか。

 

 

 

 次の家に行こうとする、細くなったオールマイトに声をかける。外に出るなって言われてたが、敷地内なら大丈夫だろ。

 

「オールマイト」

 

『次は、君だ』

 

 皆が感激した、オールマイトの言葉。あの中でただ一人、デクだけが泣いていた。

 

「デクは、あんたにとって何なんだよ」

 

 俺の質問に言葉を詰まらせたオールマイト。即答出来ねぇか。そうか。

 オールマイトは顔を伏せて答えた。

 

「……生徒だよ。君と同様に、前途あるヒーローの卵だ」

 

 あくまで、そう言うか。

 

「勝己コラ! あんた外出るなって警察に……!」

 

 呼ばれちまったし、戻るか。

 

「そっか。あんたが言いたくないなら、いいわ」

 

 その姿以上に、晒してはいけない秘密だってことが分かっただけ……。

 

「ありがとよ」

 

 あんたを終わらせて、本当にごめんなさい。

 

 

 

 

 

 部屋でぼーっとしてたら、親父に「手紙届いてたよ」と、部屋の外からノックの音と共にそう言われた。

 

「吐移って人からみたいだけど……」

「!!?」

 

 吐移!? ヘアバンから、手紙が!? 部屋から飛び出し、驚く親父から手紙をひったくる。薄い緑色にこじんまりと花模様があしらわれた封筒。差出人は、吐移、「明美」。正じゃ、ない。

 

「知ってる人からじゃ、なかったのかい……?」

「……知らねぇ」

 

 ただ、予想はつく。

 

 部屋に入って椅子に座る。丁寧に封を切って、中身を取り出す。全部で3枚。丁寧な字で書かれている。

 吐移明美という人物は、やっぱり、ヘアバンの母親だった。彼女は自己紹介と突然の手紙に謝罪の言葉を綴った後、こう続けている。

 

 

『うちの息子、正の手紙から、あなたがうちの息子と仲良くしてくださっていると伺っております。

 

 あなたのことや、ご友人の話を書くときの息子の字は跳ねていて、心から楽しいんだと感じずにはいられませんでした。あの子の幸せは、私の幸せでもあります。本当に、ありがとうございます。

 

 息子が出血多量で倒れていた際、助けてくださったそうですね。その後もうちの子に色々と世話を焼いてくれたと聞いております。親として礼を申し上げます。うちの息子と友人になってくださり、ありがとうございました。

 

 うちの息子、吐移正が行方不明であることはご存知でしょうか。学生である貴方に探していただきたいわけではありません。ただ、息子の手紙を読むに、貴方は行動力があると思います。ですが、どうかあの子を探さないでください。貴方もヴィランに狙われた一人。何かあれば、息子が悲しみます。

 

 息子も、ヴィランに連れ攫われたと知りました。世話を焼いてくれた貴方のことですから、心配であることはお察しします。ですが、どうか、息子のことはどうか、プロヒーローや警察に任せて、あなたはより良いヒーローになれるよう、がんばって頂きたく思います。

 

 最後になりますが、息子と仲良くしていただいて、ありがとうございました。

 あの子が見つかって、また学校に通いだしましたら、同じように仲良くしてあげてください。よろしくお願いします。あの子のヒーロー』

 

 

 

 手紙をたたむ。溜め息を吐いて、自分がいつのまにか息を止めていたことに気がついた。この人は、どこまで知っているんだろうか。知らなくて書いているのだろうか。

 

「もう、動けねーな」

 

 手がかりも力もなく、探す気力もなかったはずなのに、引き止められてショックを受けてる自分がいた。

 

 

 

 電話がかかってきた。相手は赤髪の女。この前言ってた“個性”で、警察に協力してきた話だった。

 

『ほとんど吹き飛んでて荒かったけど、だいたい読めたわ。……あんたの話、信じる。吐移くんは自分の“個性”で自爆してたし、ワープ個性で体を捨てられていた。……自分の“個性”を疑うわけじゃないけど、信じたくない光景だったわ』

「そうかよ……」

『ねえ、吐移くんのお母さんからの手紙、あんたにも来てる?』

「それが、なんだ」

『……止められたじゃない。あんた、どうすんの』

「どうするって、俺が何すんだ」

『……あんたなら、探すかと思ってたんだけど』

「死体をか。……そんな気持ちは、無いわけじゃねえ。だが、そいつの母親に止められたんだぞ。良いヒーローになる為の行動をしろと言われた。今までは良いヒーローじゃなかったってことだろ。……なら、あいつが盆に帰ってきた時に恥ずかしくねぇように、強くなるしかねぇだろ」

『……そっか』

 

 色々とブレてる自覚はある。だが、目標は、考えは、これから固めりゃいい。幸い、夏休み中だしな。

 分かっているのは、弱いままじゃいられねぇって事だ。

 

 弱いから失った。

 

「オールマイト……。吐移……」

 

 失ったものが、大きすぎる。

 

 もう、失いたくない。

 

 失いたくねぇから、強くなってやる。

 

 あいつの分まで、あいつの憧れた“ヒーロー”になってやる。

 

 




 以上をもちまして、最終回とさせていただきます。皆様、ご愛読頂き、誠にありがとうございました。
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