4ヶ月の   作:めもちょう

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 最終回と言いましたが、完結とは言ってませんよ!(謎理論)


吐移くんがお好き、又は嫌いではない方は、ぜひご覧下さい。

 吐移の死体は発見されたか?

 ──いいえ。

 

 吐移の死体を捨てた場所は、明らかにされているか?

 ──いいえ。

 

 吐移の死体を捨てた先に、人気が無いと明記されていたか?

 ──いいえ。

 

 吐移が死んだという証拠はあるか?

 ──いいえ。

 

 では、吐移は生きている可能性があるか?

 ──はい。

 

 

 ここから先は、吐移が生きていたほうがいいという方だけ、読み進めるのがよいでしょう。

 これから始まるのは、ショーン・ブラウンの物語。

 心配はありません。後日談のようなものですから。

 

 

 

 

 

「ねぇ、あの人もしかして、爆心地じゃない?」

「え、うそ、本当だ……。メガネつけてる、かっこいい……」

「サインもらう?」

「やめとこ? オフっぽいし」

「そっか……そうだね」

 

 いや、来るなら来いや。サインくらい時間かかんねェから。

 俺を発見した女二人は、もう俺を見るのを止めていた。気にしねぇようにしよう。

 

 文庫本のページをめくり、コーヒーを一口含む。香ばしい香りと、苦味と酸味の奥にある甘さを堪能する。鼻から抜けていく香り含めて、美味い。

 オフの今日は、カフェで本を読んで過ごすことにしていた。事件も何もない、平和な一日であってほしい。メンドくせェから。

 

 吐移が死んで──正式には行方不明になって──もう7年になる。

 あれからも濃い日々を過ごした。ヒーローにもなった。サイドキックから独立し、事務所を持つプロヒーローになって1年になる。充実していると言っていいだろう。ただ、少しだけ物足りなさを感じてしまう。それが何なのかは分かっている。全く、未練がましい。

 

「えー、リカバリーガール、引退するんだー」

「そうなの? まあ、おばあちゃんだしね。雄英の後任、誰だろうね?」

「治癒系の“個性”ってチョー珍しいかんね」

 

 さっき俺を発見した、女二人の会話。うるさいわけじゃないが、店内が割と静かで近いから聞こえた。おかげで集中力はもう切れちまった。

 

「でも、前、雄英に居なかった? 生徒で」

「誰よ?」

「うーん、名前は……。体育祭で溶かされて、ソッコー治ってた子が居たんだよなぁ。なんかダサい小豆色のヘアバンドをつけてた子!」

「で、その子は今?」

「分かんない」

「じゃあ、違うんじゃない?」

 

 吐移が行方不明になっていることはニュースにならなかった。証拠が何もないからだ。赤髪──今は警察官になった記見の証言は握りつぶされている。まあそれ以外に明確な証拠は一個も無いからな。死亡扱いにもされていないのは、ただの時間の問題でしかないのか。

 

「ここ、席空いてますか?」

 

 意識を他に飛ばしていて、かけられた言葉が自分に向けられたものであると気づくのに遅れた。顔を上げて確認する。俺に声をかけてきたのは男。それも筋骨隆々の、サングラスをかけた、いかつい男だ。奴はその体に対してギャップありまくりの、チャーミングな笑顔を俺に向けていた。

 少ないが、席は他にも空いている。俺はまだ返事をしていない。なのに男はカフェオレを持って、勝手に俺の対面に座る。

 

「君を見た瞬間、身体に電流が走った。アメリカから帰ってきてすぐ、こんなことがあるなんて。運命的だよ」

「オイ……」

「その冷たい目も懐かしいね。最初からやり直してる感じがしちゃうよ」

「あ゛あ゛?」

 

 こいつは俺を知っている? こんな気色悪い奴と知り合いになった覚えはない。周りも、というかさっきの女二人がざわめきだした。止めろ。

 

「テメェ……」

「本当に懐かしい……。確か、高校1年の春。弁当を持って、初めて君の前に座って一緒にお昼を食べた時が、こんな感じだったよね」

「はぁ……?」

 

 高1の春、俺の前に座って、弁当を持って……?

 まさか!!?

 

 目の前の男はサングラスを下にズラし、目を晒した。少し下手なウインク。それよりも気になったのは、見覚えのありすぎる切れ長の目。随分と、イタズラ好きになったもんだ。

 

「久しぶり、バクゴー君」

「どうやって生き延びてやがった、ヘアバン」

 

 握手を交わす。思わず笑みがこぼれる。

 体が変に熱を持って、ブルリと震えた。

 

 

 

 ヘアバンドっつーアイデンティティを捨てた吐移が帰ってきた。

 生きて、帰ってきた。

 

 場所は変わってカラオケ店。個室で話がしたかったからだ。変な機械がないか確認した後、ゆっくり席に着いた。

 

「で、てめェは本物か偽物か?」

「疑うなら二人きりになるなよ……!」

「お、本物か」

「認定あっま!!」

 

 呆れるヘアバンは──もう着けてねェし、吐移でいいか──は、カフェで買っていたカフェオレを飲む。このカラオケ店は持ち込みOKだ。

 

「すぐ信頼してくれるのは嬉しいんだけどな……。それなら、もっとビックリしたり、感動してくれたりしてくんない?」

「現実味が無い」

「なるほどね。分かるけど、死んだと思っていた人間が成長して目の前に現れたんだから、もう少し驚いて欲しかったな」

「御託はいい。何で生きていたのか、説明しやがれ」

「タイム イズ マネー! 分かったよ」

 

 なんかノリが古すぎて、化石な気がする。

 吐移はカップを置いて、ついでにサングラスも外して座り直した。

 

「俺の体が、テキトーに捨てられたところから話そうか」

 

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