4ヶ月の   作:めもちょう

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 君と夢の中で今生の別れを告げた後、俺は自分の体を見つけたんだ。場所は病院のベッドの上。目が覚めて教えてもらった。ワープの奴、黒霧が捨てたのは海の上……のつもりで、実はアメリカ軍の巡視船の上だったんだ。

 

 床より5m上から落とされて、ショックで俺は息を吹き返した。自殺したつもりだったけど、実は仮死状態だったんだ。で、息が出来るって事は、無意識に俺の個性は発動される。瞬く間に傷を回復した俺だけど、血が足りない、仮死状態のダメージがあるとか色々で、巡視船の上ではついに目を覚まさなかった。この、目を覚まさなかった期間が、バクゴー君の夢枕に立っていた、生き霊になっていた期間だね。

 

 不法入国にはなるけど、怪我人だからか病院に入れてもらえたのは運が良かった。さらに、俺がそのままアメリカに亡命したことになったってことも。正確には、証人保護プログラム、でね。

 ほら、俺って君と同じで、ヴィランに狙われてたでしょ? 君のような自衛の手段も無い。俺が意識をそっちに飛ばしている間に全てが終わってた。後は、俺自身のサインを待つだけ。

 

 ──どうして俺の身元が分かったか?

 たまたまいたんだよ。雄英体育祭を見てた病院関係者が。日本政府、警察、雄英に確認して、俺が吐移正だと確証を得たんだ。

 あ、そうだ。証人保護プログラムってね、別人になる制度なんだよ。だから今の俺は、アメリカに帰化した、ロシア系日本人。アメリカ国籍のショーン・ブラウンだ。ショーンとか、ブラウンとかって呼んでくれよ。

 

 ──え? 別人なのになんで正体を──って? それより気になるところあったと思うけど……まあいいや。

 君って頭も察しもいいじゃない? あの“個性事故”の時みたいに勝手に盛大に暴かれるより、こっちから言って秘密に協力してもらう方が賢いと思った。まあ、帰国早々、まさかカフェで出会うなんて思ってもいなかったけどね。運が良かったよ。正体は後、シンソー君と記見さんに、母さんには元から伝えてあるから──ショックで生きることを辞めないで欲しかったから──この3人にだけ、今は打ち明けるつもりだよ。

 

 ──何で日本に帰ってきたって? そうだなぁ、もう少し説明させて?

 アメリカ人になった俺は、あっちのヒーロー科の学校に通い始めた。俺の個性を見た軍人さん、今の俺の親父なんだけど、が推薦してくれてね。少し周りより年齢上になるけど、1年から学ばせてもらって、色々乗り越えて、ヒーラー系ヒーローになったってわけ。

 で、今日のニュース見てる? リカバリーガールの引退。あれの後任に、俺が立候補したんだ。だから帰ってきたんだ。ショーン・ブラウン。アコライトヒーロー・ブレスヒーラーとしてね!

 

 

「ダッサ」

「名が体を表してるだろ!」

「ダッサ」

「2回も! くっそ~~!!」

 

 ブラウンは頭を掻いて、悔しがる。ダサいだろ。

 別人になる為にか、あの頃から肉体改造が行われたんだろう。髪型もツーブロックになって、ダセェヘアバンドも取って、サングラス着けて……。あの頃の面影はほとんど無い。

 

「まあ、いいや! センス無いのは元々だし!」

 

 だが、ひとたびそのいかついサングラスを取り、笑顔を浮かべれば、すぐに吐移だと分かる。

 

「今の笑顔、何点?」

「……ウゼェ」

「はあ!?」

「成人男性が何いってんだゴラァ」

「あー、確かに。ごめんごめん。じゃあ気を取り直して……バクゴー君、これからよろしく!」

「……ああ」

 

 握手を交わす。今改めて触ると、昔握られたときと比べ、何倍も肉厚になって、逞しくなっていた。

 

 

 

 吐移……ブラウンと別れ、帰路につく。家について、携帯の連絡先に追加された、「ショーン・ブラウン」の名前を見て、自然と涙が出た。今頃実感し始めたんだ。

 

 俺は、失って、いなかった。

 

 

 

 

 

 

「はあ!? テメェ、知ってたのか!?」

「俺も初耳だ」

「俺もだよ、記見さん」

「当たり前のこと聞かないでよ。私の“個性”、忘れた?」

 

 ブラウンとのエンカウントから数日後、俺の家に心操、記見、そしてブラウンが集まっていた。

 最初にブラウンを吐移だと紹介された時。心操は信じられないって顔してたが、一番驚きそうな記見はまったくそんな表情を作るどころか、分かっていた顔して「おかえりなさい」なんて平然と言うもんだから、つい問い詰めた。記見は呆れ顔で答える。

 

「私の“個性”は生物以外の物質の記憶を見ること。当然、吐移くん……ブラウン君のお母様の手紙の記憶も見たわ。書きながら言っていた。“生きている、正は生きているから、だから……”。聞いた時はビックリしたわよ。その少し前に、ガレキから吐……ブラウン君が自殺した記憶を見たんだから」

「なんで、それを、俺に言わなかった!!」

「そうだ」

「だってあんたたち、『止められたから探さない』って言ったじゃない!」

 

 言葉が詰まる。そうだ、確かにあの時、『良いヒーローになる為の行動をしてくれ』と書かれたから、そうしたんだ。あの時の返事を変えていたら……!

 

「それがダメなわけじゃないわ。むしろ、お母様の意思を尊重した、良い選択だと思ってる。現に二人は立派にヒーローしてるしね」

「探すって返事をしてたとしても、記見さんには黙ってて欲しかったね。俺の為に、自分の人生を不意にして欲しくないし」

「もちろん、言うつもりは無かったよ」

 

 厳守するべき秘密だって分かってたからねと、記見はブラウンを見て返した。本当にそうか? 言い方からして怪しい。

 

 アラームが鳴る。もう三時だ。そろそろ仕事に戻らないといけなくなっちまった。

 

「悪いが……」

「分かってる。顔合わせは終わったんだ、解散しよう」

「物足りないけど、仕方ないね」

「7年分がこんなんで埋まるわけないもん。また、会いましょう」

「うん。それじゃあ、改めて挨拶しましょうかね!」

 

 ブラウンがサングラスを着けて立ち上がる。俺たちに向かって胸を張ると、常識の範囲内で、高らかに言った。

 

「アメリカで生まれ変わりました、アコライトヒーロー・ブレスヒーラーこと、ショーン・ブラウンを、末永く、よろしくな!」

 

 サングラスをかけていたとしても変わらないまぶしい笑顔。お前は、声も、笑顔も手にいれたな。

 

 何がお前の幸せかは分からねぇが、今度は、「4ヶ月の間、幸せでした」なんて言わせねぇ。テメェが“末永く”つったんだ。覚悟しとけよ!

 




 これにて、本作は完結致します!
 ここまで読んでくださった方々、本当にありがとうございました!!
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