4ヶ月の   作:めもちょう

6 / 48
六話

「てめェ、最初からスパイ目的で……」

「ちょちょ、それはさすがに違うって! 襲撃に遭う前だっただろ、稽古お願いしたのは! だから、最初はほんと純粋に……」

「最初は、な」

 

 俺の疑惑に両手を横に振って否定するヘアバン。だが怪しい言葉を指摘してやれば、その動きは止まり、「へへ……」と、ヘタが故に引きつった笑顔を見せやがった。大体、襲撃は関係ねェ。それがあってもなくても、体育祭はあんだからな。奴は言葉を続けた。

 

「やっぱり甘くはないな、バクゴー君は。今日も稽古をつけてくれるかもって期待してたんだよ」

「るせぇよあまちゃんが。誰が敵に情報やるんだよ」

「敵……?」

「とぼけんじゃねえよ。本気で来るんだろ、お前も」

 

 ニヤァと口角を上げ、いっそうヴィラン顔に磨きを掛けたヘアバンは、「やっぱ分かっちゃったか」なんてほざきやがった。奴は体勢を直した。

 

「バクゴー君の言うとおり。俺も真剣に出場するよ。ヒーロー科編入への最大のチャンスだからね。例え、君を蹴落としてでも一位を取るよ、バクゴー君」

「ハンッ!」

 

 だからテメェはあまちゃんなんだよ。立てた親指を地面に向ける。

 

「蹴落とし()()()? 俺はてめェを完膚なきまでに蹴落し()、一位獲ったるわ!」

「……上昇志向の塊め!」

 

 一番を目指すなら上を見るべきなんだよ、雑魚が。中途半端な覚悟なら、捨てたほうがマシだ。

 

「テメェもそうだろが」

「フフッ、ありがとう」

 

 ヘアバンは一回息を吸って、胸を張った。

 

「言い直すよ。出場選手全員蹴落として、一位になってやるよ!!」

「ハンッ! 一位は俺だ、ヘアバン野郎!」

 

 言いたいことを言い終えたヘアバンは、不敵に笑って踵を返した。

 

「じゃ、俺、マイク先生のとこ行かなきゃ!」

「あ? ヒーローに稽古つけてもらうのかよ!」

「発声だけ ! これなら卑怯じゃないでしょ?」

 

 じゃあね! と言い捨てて行こうとする背中に、いくつも疑問の言葉をかけたかった。それをぐっと抑えて、俺はこれを選んだ。

 

「ヘアバン!」

「吐移だよ!」

「あの青髪で死んだ目のやつは、誰だ」

 

 ヘアバンの足が止まる。ポカンと口を開いていて、顔は非常に間抜けだった。

 

「さあ? あー、多分、クラスメイトだね。あんまり知らないよー」

 

 じゃ! と、ヘアバンは今度こそ立ち去った。

 畜生が。

 

「嘘をつくのが、大の得意かよ」

 

 昼休みのあれを見てなかったら、分からなかったかもしれねぇ。

 

 

 

 

 

 俺もヘアバンも、他の奴らも、それぞれ訓練をこの二週間続けていた。一位になる為に。一位以外に価値なんてない。

 

 あっという間に時は過ぎ、雄英体育祭本番当日。

 控え室で待機してれば、半分野郎がデクに宣戦布告しやがった。No.2ヒーローの息子がNo.1ヒーローのお気に入りらしいを目の敵にするのは分からなくもねェ。だが、それがなんだ。今の実力を考えれば、宣戦布告するべき相手は、クソデクじゃねえだろ。

 

「皆……他の科の人も、本気でトップを狙ってるんだ。僕だって……遅れを取るわけにはいかないんだ」

 

 実力はどうあれ、気合いは充分ってか。

 

「僕も本気で獲りに行く!」

 

 気に入らねぇ。

 

 

 

 『雄英体育祭!! ヒーローの卵たちが我こそはとシノギを削る、年に一度の大バトル!! どうせてめーらアレだろこいつらだろ!!? ヴィランの襲撃を受けたにも拘わらず、鋼の精神で乗り越えた奇跡の新星!!! ヒーロー科1年!!! A組だろぉぉ!!?』

 

 俺たちの登場に、観客席から歓声が上がる。

 

「めっちゃ持ち上げられてんな……なんか緊張すんな……! なァ爆豪」

「しねぇよ。ただただアガるわ」

『B組に続いて普通科C・D・E組……!! サポート科F・G・H組も来たぞー! そして 経営科……』

 

 計11クラスが呼ばれ、グラウンドの中央に集まる。この大勢の観客の中、同級生の中で一番になる。さっき言ったばかりだが、やっぱりアガるな。

 

「選手宣誓!!」

 

 主審である18禁ヒーロー“ミッドナイト”が台の上で鞭を打ち鳴らした。「18禁なのに高校にいてもいいものか」「いい」なんてざわめきを「静かにしなさい!!」と、また鞭を打ち鳴らして黙らせた。

 

「選手宣誓!! 1-A 爆豪勝己!!」

 

 入試一位通過の俺が宣誓するようにと、事前に言われていた。その時から決めていた文句を、ここで言ってやろう。

 

「せんせー」

 

 全員の視線が俺に集まる。息を呑む音まで聞こえてくる。そうだ。もっと俺に注目しろ。

 

「俺が一位になる」

「絶対やると思った!!」

 

 クソ髪の大声をきっかけに、俺に対するヘイト、ついでにA組に対するヘイトが一気に高まった。A組内からも「何故品位を貶めるようなことをするんだ!!」と批判の声が上がる。まあ、

 

「せめて跳ねの良い踏み台になってくれ」

 

 立てた親指を首に一文字に引けば、さらにその声は高まる。一部、「かっけぇけどダサいぞバクゴー君!! かっけぇけど!!」と、異色の批判が上がっていたが。正直いらねぇ。自分の限界を超える為には、自分を追い込むのが手っ取り早いからな。

 

 見てろ、この場の全員。半分野郎。そしてデク。俺は、このプレッシャーに打ち勝ち、必ず、一位をもぎ取ってやる。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。