体育祭が始まった。
第一種目は“障害物競争”。計11クラスでの総当たりレース。コースはこのスタジアムの外周4㎞。自由さが売り文句の雄英。コースさえ守れば何をしたっていいらしい。
「さあさあ位置につきまくりなさい……」
ゲートの信号、一つが青になる。緊張感が高まる。だからと言って視野を狭めるのはバカのすることだ。
もう一つ、青になる。ゲートの幅は、人数に対してとても狭い。わざとに決まっている。何故? 答えは一つ。
最後の一つが、青になる! 走れ!! 最初のふるいを生き残んだよ!!!
最初に仕掛けてきやがったのは半分野郎。奴の“個性”、半冷半燃の冷の部分で、後続を凍り付かせた。やっぱそうするよなぁ!
「甘いわ轟さん!」
「そう上手くいかせねぇよ半分野郎!!」
単純に跳んだ奴、棒高跳びの要領で越える奴、個性を使って乗り越える奴。かくいう俺も、爆風に乗って人込みの上を飛び越えた。俺はスロースターター。先頭は譲ってやるよ。今だけなぁ!!
最初のふるいを乗り越えた先にあったのは、入試ん時の仮想ヴィラン。聞こえてきた実況によれば、それは第一関門、“ロボ・インフェルノ”。
推薦入試組は初お目見えらしく、一度立ち止まっていた。
「今度はこれに、逃げずに立ち向かう、のか」
いつの間にかヘアバンが近くに来ていた。あの氷を直ぐに超えてきた。こいつも侮れねぇ奴ってことか!
皆がどう立ち向かうか思案する中、一番ノリの半分野郎が動いた。地面に手を付けたかと思えば、すさまじい冷気を纏わせ、奴を襲おうとしてくる仮想ヴィランに対してその冷気をぶち当てた。ヴィランは凍り付き、空いた足場の間を半分野郎は走り抜けていった。
俺たちは動かない。凍り付いたヴィランは不安定な態勢で、ほら、今倒れやがった。
『1-A 轟!! 攻略と妨害を一度に!! こいつぁシヴィー!!!』
実況が何か言っている。だが俺は一瞬乱れた集中を整える必要に駆られた。今まで隣にいたヘアバンが、「来た!!」とか言って、冷気と砂煙の中に飛び込んでいったからだ。なんで視界不明瞭な中、仮想ヴィランの群れに突っ込んでいったんだ。正気かあいつ。
「チッ!」
今は気にしてらんねぇ。俺も越えなきゃなんねぇんだからな。
実況はこの関門を二番目に乗り越えた人間を「吐移 正」だと告げた。何をしたのかは見当つかないが、爆破で跳んでデカブツを超えた先に見えたのは、砂煙と、足元を砕かれた何体かのデカブツだった。
『え、ちょ、C組吐移、頭から血ぃ出てる!!? あれ大丈夫!? 大丈夫なの!!?』
いや攻撃食らってんじゃねーかヘアバン!!
『オイオイ第一関門チョロイってよ!! んじゃ第二はどうさ!? 落ちればアウト!! それが嫌なら這いずりな!! ザ・フォーーーール!!!』
実況がこの関門の説明を始めた頃には、俺はそろそろ半分野郎に追いつくところだった。
『さあ先頭は難なくイチ抜けしてんぞ!!』
待ちやがれ!!
『あれっ、さっき二位通過のC組吐移、めっちゃ這いずってがんばってるー!!』
むしろ何でさっき二位で通過出来たんだ“個性・超回復”。
『先頭が一足抜けて下はダンゴ状態! 上位何名が通過するかは公表してねーから、安心せずに突き進め!!』
『そして早くも最終関門!! かくしてその実態は――……一面地雷原!!! 怒りのアフガンだ!! 地雷の位置はよく見りゃわかる仕様になってんぞ!! 目と脚酷使しろ!!』
『ちなみに地雷、威力は大したことねーが、音と見た目は派手だから失禁必至だぜ!!』
『人によるだろ』
荒地のようなステージ。ここのそこかしこに説明された地雷が仕込まれているらしいな。開拓者たる先頭は後続に道を作らないように地雷を避けなきゃなんねーし、一度でも踏んじまえば、集中力も気力も削がれちまう。普通なら不利なんだろうなぁ!!
「はっはあ!! 俺はー関係ねーー!!」
爆破を推進力に飛べる俺にはまるで関係ねぇ! 跳ねのいい踏み台ご苦労だったな、半分野郎!
「てめぇ宣戦布告する相手を間違えてんじゃねぇよ!!」
『ここで先頭が変わったー!! 喜べマスメディア!! お前ら好みの展開だぁぁ!!』
あえててめぇのすぐ横で、越えてやるよぉ!!!
『後続もスパートかけてきた!!!』
あ゛っ!? 右腕掴んでくんじゃねぇ!!
『引っ張り合いながらも……先頭二人がリードかあ!!!?』
くそ!! 腕を凍らされた!! 野郎、せっかく調子ついてきた腕を!! くそっ走るしかねぇ!! まだだ、まだ一位だ!!
突然、後方で大爆発が起こった。ここの地雷に、そんな威力はない。
『偶然か故意か――』
てめぇ一体、何をした。
『A組緑谷、爆風で猛追ー!!!?』