それではどうぞ!
というのも、アザゼルが明日の予定などを話そうとしたときに一瀬に限界が来たのか、事が切れたように寝てしまった。
アザゼルは仕方ないなとぼやきながらも自分のベッドに一瀬を置き、ベッドは一瀬とアザゼルが一緒に寝ても問題ない広さだが、アザゼルは彼女をゆっくり寝かせたく、自分は壁にもたれながら寝る事にした。
◇◇◇
あれ………ここは…?
初めまして、兵藤一瀬です。
目が覚めると知らない天井があり、上半身だけ起き上がらせて辺りを見回しますが、誰もいません。
確か………昨日は…………!!
そうだ……………お父さんとお母さんに捨てられたんだった。
それでいつも遊んでる山に入って、頂上付近で変な化け物に襲われてたころを、謎のおじさんが助けてくれたんだ。
名前は確か、アザゼル。
なんかの総督をやってるらしく、どこにも行く当てのない私を拾ってくれたんだ。
私は……………これならどうなるんだろう…。
人体実験とかさせられるのかな…?
せめて痛くないのが良いな。
私がそんな風に考えていると、不意に部屋のドアが開かれた。
入ってきたのは、アザゼルさんだった。
「よう、目が覚めたかお嬢ちゃん」
「はい。昨日はありがとうございます」
アザゼルにベッドの上からは失礼だと思い、下りて頭を下げる。
この人に付いて来なかったら、私は森の中で野宿かあのミノタウロスに食われてたかもしれないんだから。
私がそうしてアザゼルさんは笑って言う。
「気にすんなって。俺も気紛れだったからな」
「それでもです。どんな仕打ちにされようが文句は言いません」
「………ん?」
「人体実験でも人体解剖でも受け入れ………」
「待て待て待て!どうなったらそうなるんだ!?」
私が決意表明してるときにアザゼルさんからストップがかかる。
なにかおかしかっただろうか?
「何かおかしかったでしょう?」
「いや、普通におかしいだろ!俺も部下も人体実験も人体解剖もしないからな!?」
「しないのですか?」
「するわけないだろ!」
「じゃあ、なんで私を拾ったのですか?私にできることはそれぐらいしか…………痛っ」
唐突に頭に衝撃が走る。
これは拳骨……?
頭を抑えながらアザゼルさんを見ると、どこか怒っているように見えた。
すると、私を抱き締め、小さく呟く。
「お前はまだ子供なんだから、もっと自分を大切にしろ。俺たちはお前を捨てないし、死なせはしない。だから、俺たちを信用してくれ」
その言葉を聞いたとき、私は自然と涙が溢れた。
何故かは分からないが、涙は止まらなかった。
「さて、落ち着いたか?」
「ごめんなさい。取り乱しました」
アザゼルさんの説得のおかげでなんとか落ち着けた。
私はこんなことでもしなければ置いてもらえないんじゃ無いかと無意識的に思い、ああ発言したけど、アザゼルさんはそんな気は微塵もないらしい。
それで事態が落ち着いたのを確認してからアザゼルさんが口を開く。
「お前にはこれから勉強をしてもらう」
「勉強…?算数とか国語とか?」
「まあ、確かにそれもして貰うが、それよりも
「裏の世界………?」
その言葉に疑問を持ち、オウム返しになってしまった。
だけどアザゼルさんは頷き、口を開く。
「まず、信じられないだろうが、俺は人間じゃない」
「人間…………じゃない?」
私はその言葉が理解できなかった。
彼はどこからどう見ても人間にしか見えなく、昨日みた牛のようなものと同類とは思えなかったからだ。
そんな私の考えを読み取ったのか、彼は突如として背中から十二枚の黒い、烏のような翼が現れた。
そういえば、昨日堕天使とかって言ってたような気がする。
「俺達は堕天使といってな、元々天使だったんだがとある理由で堕ちた存在だ。他にも天使や悪魔とかもいるぞ?」
「キリスト教………?」
堕天使に天使、悪魔と来たらそれしか当てはまらなかった。
いや、そもそも三大宗教しか知らなく、その中でもキリスト教の天使の存在は有名だった。
特に、レオナルド・ダ・ヴィンチが描いた『受胎告知』で出て来たガブリエルは有名だ。
私がそう呟くと、アザゼルさんは肯定した。
「まあ、そうだな。その聖典である聖書には俺の名前もあるんだぜ」
「え?じゃあガブリエルとかも知ってるんですか…?」
「おうよ。四大天使の一人で、天界の纏め役の1人だ。そして四大天使の唯一の紅一点だな。アイツ以外全員男だし」
あ、堕天使だから元仲間みたいかんじで知ってるのか。
なんて、思ってると次の言葉に耳を疑った。
「それに滅茶苦茶強いぞ。戦争の時に何度も殺し合ったが、決着は着かなかった」
「ほぇ?」
今なんて言ったの……?
「戦争してたんですか……?」
「そういや、言ってなかったな。大昔、俺ら堕天使と悪魔と天使は戦争をしていたんだよ。今思うと若気の至りだが………そのせいでどの陣営も数が減ってしまってな。今は休戦状態のようなものだ」
あれ…?
思ってたのと違う。
堕天使と悪魔って同じ陣営じゃないんだ。
私がそう疑問に思ってると、アザゼルが私に告げる。
「そんな感じで、お前には明日から知らないであろう、こちら側の世界について学んでもらうつもりだ。それと兼任して戦闘ができるように仕込んでやる」
「は、はい!ありがとうございます!」
「気にすんな。後、どちらも教えるのはコカビエルという幹部の1人だ。あ、そうだ」
「?」
アザゼルさんは何か思いついたのか、私に言う。
「幹部共にお前を紹介しようかと考えたが、その内会うだろうし、問題ないだろ。だが、1人だけお前に会わせたい奴がいるんだ」
「??私にーーー人外のーーー知り合いはいませんよ?」
「違う違う。どちらかと言えばこれから宿敵になり得るかもしれない奴だ」
「宿敵?」
宿敵って、ライバルみたいなものだよね?
知り合いがいない此処で恨みを買った覚えは全くないんだけど………。
「取り敢えず、今から行くぞ」
「は、はい!」
取り敢えず、私は深く考えずに付いていった。
私にはまだ理解できないと思ったから。
そうして付いていくこと十分。
アザゼルさんが一つの部屋の扉を開け、そこには広い空間が広がっていた。
学校の体育館より広いが、トレーニング用の器具やサンドバッグなどが至る所に置いてあった。
そこでは沢山の人がトレーニングをしていたが、一人だけ異彩を放つ者がいた。
それは銀髪の少年でかなりの美形だった。
その少年は上体起こしをしながらダンベルを上げ下げしていた。
恐らく私と同じくらいだろうに、凄いなぁ。
他の人も変なものを見るような目で見てるもん。
それには同意するけど、何があそこまで彼を駆り立てるのだろうか………。
アザゼルさんは彼を探していたのか、見つけるなり声を掛けた。
「おーい!ヴァーリ、お前に合わせたい奴がいんだ」
「ん?アザゼルか。会わせたいというのはそこの少女か?」
ヴァーリと呼ばれた少年は反応し、私を見ながらこちらへやって来た。
うん、近くで見てもイケメンだと思う。
そんなくだらない事を考えてると、ヴァーリの表情が突然どんどんと驚愕に変わっていき、アザゼルさんに叫ぶ。
「どういうことだ!アザゼル!」
「やっぱり気付いたか。まあ、これから仲間となるやつだ。今のうちに挨拶しとこうと思ってな」
『これは面白いことが起こったな』
アザゼルがヴァーリを宥めてると、ヴァーリの背中から別の声が聞こえた。
次の瞬間、ヴァーリの背中から機械のような翼が生えた。
何それ?
「なんだ、まだ目覚めてないのか。それで本当はどういうつもりだ」
「いや、お前らと出会ったら
『貴様、本当に総督なのか?』
などと話してる。
あの~、その翼について教えて欲しいんですけど……。
そう言おうとしたとき、体中に激痛が走る。
その痛みに耐えきれず、私は断末魔を上げる。
「う、うぅ、う……アアアあ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!」
「おい、アザゼル!!」
「どういう事だ!?今までこんな事は無かったぞ!」
『アザゼル、ヴァーリ。落ち着け。恐らくこれは目覚める前兆だ。後1分もしない内に治まる』
「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!」
「とは言っても、精神が侵されるぞ!」
「大丈夫なのか?アルビオン」
『間違いなく大丈夫だ。………そろそろ奴が目覚めるぞ』
「ハァ………ハァ……ハァ…。アレ?生きてる……?」
よかった………生きてるみたいだ。
死にかけた……みたいだね…。
「大丈夫か!?」
「死なないとアルビオンが言っていただろう?なら、心配するな。……………だが、何故ここで?」
『それは俺のせいだな。彼女の精神が未熟なのと、魔力は今のヴァーリより少し下ほど持ってるために俺が現れたことによって無理矢理覚醒させられたのだろう。少女よ、すまない』
『貴様が謝ることでは無いだろう』
そこに新たな声が響く。
声がした方に視線向けると………………私の左腕に見覚えのない赤い鎧みたいなのが嵌められていた。
何ですかこれ。
そう疑問に思ってるとアザゼルさんが説明してくれる。
「そいつの名は
如何でしたか?
二話目になると、無意識的に調子に乗って文章が大丈夫か分からなくなります。
小説書く才能が欲しいです。
それでは、また次回。