ギル祭十箱終わりましたが、高難易度がクリアできません。
それでは、どうぞ。
どうも、兵藤一瀬です。
今私は未だに目覚めない、
一日経っても起きず、今日は授業だったのでそんなに疲れてもいないのを良いことに、彼の様子をこうして見に来ています。
夕食も食べ終わり、もしかしたら目覚めるかもしれないので、ついでにトレイに乗せて持って行ってます。
アザゼルさんや他の幹部の方々は基本的に忙しいので、私しか見れません。
ヴァーリ君も様子を見に来ていたのですが、1時間置きで鍛錬にしに行ってます。
そんな私は、いつ目覚めるのか分からない少年の顔を見続けていたとき、彼の瞼が動いた。
◇◇◇
………ここは……?
目が覚めると知らない天井だった。
「ハハッ、テンプレかよ」
「あ、起きたんですね。おはようございます。あ、夜だから、こんばんわです」
独り言のつもりだったので誰か返してくれるのを何も期待してなかったので、正直に驚いた。
声は女の子で、そっちの方を向くと、茶髪の短髪よりもちょっとだけ伸びた髪の、碧色の瞳を保った少女がこちらを見ていた。
え、誰?
俺が困惑してると、少女はポケットから携帯を取り出し、誰かに連絡する。
「もしもし、一瀬です。……はい。彼が起きました…………はい。それじゃ、また後で」
そう切ると、再びこちらを見て話し掛けてくる。
「初めまして、兵藤一瀬です。貴方のお名前は?」
俺より一つ下であろう少女はそう聞いてくるが、俺は今、それどころじゃ無かった。
兵藤…………
そんな馬鹿な、
神滅具所持者は
なら、俺と
「お前、転生者か?」
「………?てんせいしゃ………?悪魔へ転生したと言うことですか?でしたら、私は違いますよ。人間です」
「まじか………」
オリジナル……!?
一応、
と言うことは…………有り得ないはずの可能性を聞いてみる。
「お前は…………赤龍帝か…?」
「!!!!」
『ほう。どこでそれを知った?』
少女がかなり驚いた顔をすると、少女の左手からアニメや原作小説でしか見たことの無い、真っ赤な籠手が出て来て、そこから声が聞こえてくる。
間違いなくこいつが赤龍帝なのか………。
つか、よくよく見たら、
なら、どういう事だ……?
一誠が女の子になった世界なのか…?
だが、それだとおかしい。
こいつが何故こんな場所にいるんだ?
少なくともここが病院じゃ無いことは分かる。
見た目は病室にそっくりだが、周りには見たこと無い機械や器具が並べてあり、病室に似たどこかなのだろう。
だけど、だとしても、こいつがここにいる理由にはならない。
そして、次にまた質問しようとしたとき、後ろからガシッと首を捕まれた。
かなり……強い……後少ししたら首折れるぐらいに痛いぞ……。
下手に振り返れず開こうとした口を閉じると、後ろから声が聞こえる。
「いい加減に一瀬からの質問に答えたらどうだ?転生者君?」
聞いたことのある渋い声。
途端に首から手が離れたので急いで後ろを振り返ると、前髪だけが金髪でそれ以外は黒髪のダンディな男が前が開いているスーツを着て、そこには立っていた。
小説やアニメに出て来たあまりにも酷似していたため、心当たりは一人しかいなかった。
その名は…………
「アザ………ゼル……様…?」
「一応様付けはすんのか。まあ、はいよ、アザゼル様だ。それで、早速で悪いが……お前は何モンだ?」
堕天使の組織
いったい………いつからいた、とかはやめとこう。
仮にも一勢力のトップだ。
こんな事造作もないだろう。
しかし…………なぜ俺はここにいて、こんなにも敵意を剥き出し…………もしかしたら転生者のことを知ってるっぽいし、何かやられたのか?
あれ、待て………なんで俺はここにいるんだ?
「貴方方の質問には答えます。ですが、一つだけ良いですか?」
「なんだ?」
「俺はどうして、ここにいるんですか?どうも記憶があやふやで…………」
俺がそう言うと、空気が変わった。
もしかして、何かヤバかったのだろうか。
すると、アザゼルが話し出す。
「…………結果だけ言わせて貰う。お前は悪魔に家族を殺されて暴走した。そこを俺が止めてここに連れてきたんだ。」
…………思い出した。
確か、俺が獅子王の戦斧に目覚めたあの日、周りが森だらけなのを良いことに少し遠くで斧の扱いをある程度慣れようとしていたんだ。
中に封じられていたネメアの獅子からも助言を頂いたりして、ある程度扱えるようになってから家に帰ったんだ。
だが…………そこで待っていたのは悲劇だった。
俺には母と父、そして妹がいた。
妹はまだ最近歩けるようになったばかりで、俺も可愛がっていたのに……………全員が肉塊になっていた。
最初はそれがなんなのか理解できなかった。
いや、しようとしなかった。
認めたくなかったからだ。
そんな俺の気持ちなどつゆ知らずに、俺が恐怖で震えてると勘違いした、あの悪魔はほざいた。
「貴様もこうなりたくなかったら、俺の眷属になるが良い」
最初はこいつ何言ってんだ?って思った。
けど、その言葉の意味を徐々に、徐々に理解していき、何かが切れた。
そこから………意識が、消えたんだ。
俺はそれをアザゼルに教えると、頭を撫でられ、謝られた。
「すまなかった」
「え?」
「お前がこんな目に遭うことになったのも俺らの神がそんなものを創ったせいだ。今は亡き神に代わって俺が謝罪する」
「な、なんで……ですか?貴方は何も悪く無いじゃないですか」
「確かに全部創ったのは神だ。だが、そうじゃない。間接的にもお前がそれを実に宿すことになったのは………俺が先代の獅子王の戦斧所有者を殺したからだ」
「!!?」
は!?
原作だとそんなこと書かれてなかったぞ!?
……どういう事だ?
「先代は元々、人外に喧嘩を売るが殺しはしない戦闘狂だったんだが、どういう訳か、いつの日からかあいつは悪魔に洗脳されていてな。堕天使や天使を集中的に襲うことが多くなった。友でもあった俺はそれが許せなく、そいつを殺した。あいつが死んだ年とお前が産まれたであろう年から考えると、合点もいく。すまなかった」
原作では描かれなかった先代所持者との関係。
なるほど、アザゼルが殺してたのか。
だけど…………
「貴方は悪くありませんよ。貴方は正しきことをした。俺が憎むのは俺の家族を殺した悪魔達です。少なくとも、貴方や堕天使たちを恨みはしません。それでこの話はお終いです」
「だが………」
「良いんです。今度はそちらの番です。これはお礼みたいな物です。返しきれるかは分かりませんが………」
「そうか…………。ならそうするか。だが、一つだけ言わせて貰う。困ったことがあれば俺に言え。それが最大限の譲歩だ」
「…………本当に優しい人だ。では、分かりました。それで手を打ちましょう。それで、何が聞きたいんです?」
「なら、さっきドライグも聞いていたが、お前は何者だ?」
うん……。
たぶんバレてるだろうし、ここは素直に答えよう。
「俺は転生者という、こことは違う世界から来たものです」
「違う世界というと…………こことは全くの別世界か」
「端的に言うとそうです。けど、そんなに変わらないんです。ほとんどはここと似ていますが、一つだけ違います。この世界が俺たちの世界だと小説だということです」
「ほう…………」
「疑ってるのは分かります。ですので、聞きたいことがあれば、可能な限り答えます。可能というのは決して隠してるわけではありません。知らないこともあるからです」
「なるほどな…………。んじゃあ、まずは………この世界のあらすじを聞こうか?」
あらすじか………。
一先ずは軽くは信じてくれたんだろうけど、一勢力のトップに話していいのか?
いや、たぶんそういうの好きそうだし、問題ないか。
俺が軽く説明すると………肩を震わせて笑っていた。
いやまあ…………そりゃあ誰だってあのあらすじは衝撃だよ。
あそこまで欲望に正直な主人公は中々いないからね。
ふと、気になって後ろを見ると、兵藤一瀬という女の子は後ろから現れた銀髪の美少年に耳を塞がれていた。
少女は不思議そうに此方を見てるのに対して、後ろの少年は、メンチ切ってた。
ごめんね、俺も話したくて話してるんじゃ無いんだよ。
「なるほどな………。本来なら兵藤一誠が主人公をなのか」
「はい……。そのはずなんですけど……」
「ん?」
「そこの………兵藤一瀬は、
「そいつは、駒王町で捨てられてた所を俺が拾った」
「………マジで?」
「マジで」
あれ?
もう原作崩壊してないか?
というか、さっきから少女の耳を押さえてる男の子…………あれ、ヴァーリだよね?
うん、してたわ(確信)。
堕天使陣営に赤龍帝と白龍皇がいるってどうなってんだ………マジで…。
あ、俺獅子王じゃん……。
やだー………。
俺がこれからの未来に頭を悩ましていると、アザゼルさんが色々と聞いてくる。
「お前から見たら、主人公はやっぱり一瀬なのか」
「そうですね。けど、ここが神の子を見張る者の時点で
「まだ原作は始まってないんだろうけど……………何巻ぐらいあるんだ?」
「…本編は全二十五巻まであって、そこから続く感じで『真ハイスクールD×D』という名前で三巻だけ出てます。番外編で『ハイスクールD×D DX』で五巻だけで、漫画やゲームも出てるんですけど詳しくは知らないです。アニメは四期まで続いていて、小説の十巻までになります」
「へぇ………じゃあーーーー」
「おいアザゼル。転生者とはなんだ?」
突然、ヴァーリから遮られた。
あ、ヴァーリには話してなかったのか。
けど、アザゼルには焦りの表情はなかった。
寧ろ、好機ができたような顔をしていた。
そして、話し出す。
「そういや、話してなかったな。転生者というのは、俺らが見つけ出した………異世界の存在だ。どうもグレードレッドにもその存在を認識させずにこの世界にやってくるらしい。だが、魂だけだから赤ん坊から人生を始めなきゃダメになるがな」
「…………もしかして、私から家族を奪ったのも……!」
「よく気づいたな。正解だ。一誠は間違いなく転生者だ」
「まじか、一誠が転生者か……。しかもオリジナルを追い出すかよ……」
今の話の流れから察したよ。
一瀬は転生者から家族を奪われたのか……。
いや、他にもあるんだろうけど………アザゼルが敵意を剥き出しにしていたのはそのせいか。
そりゃ、誰だってそれっぽい奴は疑うよな。
だが、俺は怒っていた。
「そいつは間違いなくクソ野郎ですね。どうせ、前世モテなかったから、二次元の世界で楽してモテようとするとか、原作愛読者からしたら最低極まりないですね」
「お前は違うのか?」
「心外ですね。俺はモテようと思ったことはありませんよ。そもそも、原作だと俺死んでるんですからね?それでどういうわけか独立具現化した獅子王がサイラオーグ・バアルに拾われるんです」
「俺が拾ってなかったらそっちに行ってたのか………。危なかったな。って、おい今なんつった!?」
「ゴフッ!」
突如として肩を捕まれたと思ったら揺さぶられた。
吐く吐く!!
「獅子王の戦斧は独立具現型じゃないはずだ!封印されてる奴が自らの意志で行動できるようになったのか!?なら、その切っ掛けは…………」
『違うぞ、堕天使の総督殿』
突如として聞こえた新たな声。
それはベッドの横にいつの間にかかけられてあった黄金の斧から聞こえてきた。
それは何度も聞いたことがあり、ある意味師匠とも言える存在だ。
「獅子王か」
『そうだ。我は最初からどちらにでもなれたのだ。ただ、我がこの情報をひたすらに隠していただけだ。ただでさえ、極めれば地を割るとも言われた斧が具現化したらどうなるかは分かるだろう?』
「確かにな。警戒が強い神話をお前を壊そうとしてくるかもな。だが、お前なら対処できるんじゃないか?」
『我を買い被りすぎだ。我はそこまで賢くない。その証拠に歴代所有者達は碌な死に方をしなかった。それガ、ほんの少しでも道が変われば救いようがあったというのに………』
獅子王…………。
お前…そこまで………。
獅子王は俺が原作知識を話した一人目の相手だ。
だが、彼はそれを素直に受け止め、更に気分が良さそうなオーラを出していたのは、そのせいだったのか……。
俺がその運命を変えてくれるかもしれないとお前はそう思っていたのか…………。
「獅子王…………………よしじゃあ、獅子王の願いでも叶えないとな。だが、その前には一つやる事があるが、その前にお前は飯食って今日は寝とけ」
「………えっと、ありがたいんですけど…………何をするつもりですか?」
俺が不安げながらそう聞くと、アザゼルはニッと笑い、一瀬のほうを指差しながら言う。
「一瀬との模擬戦だ」