俺達が玉座の間に付くと、アルベドたち階層守護者、セバスたちプレアデス、そしてパンドラズ・アクターが既に控えていた。
(まだ20分前なのに……)
「みんな集まっているようだな。
では、少し早いが始めるとしようか。」
モモンガさんがそういって玉座に座る。
俺はモモンガさんの左に立つ。
隣に上位物理創造で玉座を作るか提案してくれたけど、絶対ダサいとおもって丁重にお断りした。
ワールドアイテムの玉座の隣に設置されると、王妃みたいでなんかやだ。
玉座の間は玉座の周囲が他より2段高くなっている。俺達はそこに位置し、
アルベドは一段下に控え、他の者達が更に一段低いところで片膝をつく。
「今日はお前たちに大事なことを話さねばならない。
何か意見があれば忌憚無く言ってほしい」
「わたくし達の意見など。至高の御方々のお役に立てるかは分かりませんが、全身全霊を尽くす所存です。」
アルベドが恭しく頭を下げる。
他の者達も同じ様に頭を下げた。
(本当に大丈夫だろうか……)
温度差を感じてしまうが、今更後には引けない。
「そんなに難しい事じゃない。見たままを受け入れて欲しい。
それじゃモモンガさん、やりますか。」
俺達は異形種から人間の姿にその姿を変えていく。
アルベドたちは驚いた顔をしているが、嫌悪感のようなものは感じられない。
(よかった。怯える必要はなかったんだ。)
変身を終えるとアルベドが口を開く。
「先ほどの変身と申し上げていいものか分かりませんが、
魔法やスキルの類では無いと感じましたが……」
「そうだな。私達の真の姿といっても差し支えないだろう。」
「おぉ!流石は至高の御方々。種族の差など至高なる御身には些細なことなのですね!
このデミウルゴス、目から鱗が落ちる想いです。」
デミウルゴスが歓喜したように瞳を輝かせる。
(人を陥れるのを好む悪魔のデミウルゴスに好評ならば他の守護者も。)
アウラ達も単純に凄いみたいな感じで受け入れてくれた。
パンドラズ・アクターの言う通り信じてみてよかった。
「俺達だけじゃなくて、他のアインズ・ウール・ゴウンのメンバーも同じ様に人の姿を持っているんだ。
だけどその姿はこの世界じゃなくて、別の世界での姿なんだ。」
「以前オッシャラレテイタ『ブラックキギョウ』ナル強敵ガ居ル世界デショウカ?」
「そうだ。だが少し前に起きた異常の所為で、その世界との接続が絶たれた。
俺達は超位魔法を使って身体だけこちらに呼ぶ事は出来たが。」
「すごいです。至高の方々は次元の壁すら越えられるのですね。」
「ですがマーレ、それは次元の壁を越えなければ至高の御方々のお助けをする事が出来ない。そうとも取れます。
モモンガ様、ヘロヘロ様ですら繋げなくなってしまったのに、私達で何が出来るか……」
デミウルゴスは次元の先に居るウルベルトさんを思っているのだろう……。
本当に現実世界に戻れるかはわからない。
だけどもう無理だから諦めろとはとても言えない。
それは、モモンガさんにも当て嵌まってしまうのだから……。
「いつ繋がりが戻るか、戻せるか分からない。
だから、まずはこの世界で安定した生活ができる様にすべきだと私達は考えている。
幸いこの世界の住人はさほど強くはない。
ただ、強者も紛れている可能性は高い。例えば神人など俺達プレイヤーの血を引く者達や竜王がそれに当てはまる。」
モモンガさんの言葉に守護者たちは頷く。
陽光聖典から聞くことのできた情報は少ないが、重要な事も聞けた。
スレイン法国は600年前に6人のユグドラシルプレイヤーが興した国で、その6人を神と崇める国。
6人の血を濃く引く子孫は神人と呼ばれ、プレイヤーに匹敵するほど強いと言われている。
また、100年毎にユグドラシルプレイヤーがこの世界に現れるらしい。
プレイヤーたちはこの世界にとって善であったり、悪であったりする。
前者は六大神、後者は八欲王とこの世界では呼ばれている。
八欲王はこの世界を敵にまわして、最終的に竜王達に殲滅されたそうだ。
戦いを挑んだこの世界の者達も全て命を落としているため、どうやって滅したかは分からないらしい。
「つまり、強者を探し出し殲滅する事でナザリックの威光を世界に知らしめるのですね?」
「いや、それは違うぞアルベド。
私達は武力を極力用いずこの世界と関わろうと思う。」
「それは何故でしょうか?
ナザリックの力を持ってすれば不可能とは思いません。」
「確かに不可能ではないかもしれない。
だがな、私やヘロヘロさんがそれを望まないのだ。」
そういうとアルベドもデミウルゴスも押し黙ってしまう。
俺達が決めたなら異を挟むことなどできない。そんな感じだ。
「モモンガ様、至高の御方々が望まれない理由をお聞きしてもいいでしょうか?」
そんな時、パンドラズ・アクターが静寂を破ってくれた。
「パンドラズ・アクター。例えモモンガ様が御創りになられた存在とは言え、至高の御方に異を唱える事は許されないわ。」
「いいんだアルベド。
私は先ほど忌憚無く言ってくれといったのだ。
パンドラズ・アクターはそれに従っているだけだ。」
「はっ。出過ぎた真似をし、申し訳御座いませんでした。」
「構わない、頭を上げてくれアルベド。お前も忌憚無く言っただけだ、間違ってはいない。」
深々と頭を下げるアルベドにモモンガさんは頭を上げるように言う。
「理由はな……弱者を虐げる。そんな存在では居たくない。それだけだ。」
俺達が居た世界では強者は弱者を虐げる者達だった。
俺達が強者となるこの世界。俺達はあいつらと同じには成りたくなかった。
だから、俺達は弱者を虐げない。そんな存在でありたい。
俺達の心の内をみんなに話す。
分かって貰えるまで説得を続けるつもりだ。
「なるほど、それで至高の御方々は巨悪である『ブラックキギョウ』と戦われていたのですね。
確かに御方々が弱者を虐げるような光景を見た覚えはありません。ウルベルト様も……」
デミウルゴスがそう言い考え込むように目を伏せる。
悪であれとして作られた自身に悩んでいるのかもしれない。
ウルベルトさんも自身を悪と定義したが、人を陥れて楽しむような悪ではなかった。
どちらかというとダークヒーローの様な悪を討つ悪。そんな感じだった。
「ただ、弱者だとしても我々に立ち向かう者達に容赦をするつもりはないぞ?」
「モモンガ様。至高の御方々の威光に触れ、平伏す者達は弱者であろうと救済し、
愚かにも至高の御方々に歯向かう者は何者であれ叩き潰しちゃっていい、ということでしょうか?」
「そうだな。概ねそういう感じでいいと思うぞ、アウラ。
デミウルゴス、お前の好きな拷問は余りさせてはやれないかもしれない。
すまない。先に謝らせてくれ。」
「滅相も御座いません!
御方のお役に立つことこそ私達の最上の喜び。私の趣味など比較する価値も御座いません。」
「そうか、ではデミウルゴスが暇を持て余さないようにしなくてはな。」
「おぉ!趣味に高じる暇が無い程に勅命を頂けるのですね!
このデミウルゴス、今ほど至上の幸福に包まれたことは御座いません!」
他の面々がデミウルゴスを羨ましそうに見る。
「い、いや。ちゃんと休息は与えるぞ?
どうにも王国の貴族は腐ったものが多いらしいからな。そいつらは如何だ?」
「褒美の事まで考えて頂けているなんて!
至高の御方の為に働けるだけでも、これ程に無い褒美であるにもかかわらず……。
モモンガ様、ヘロヘロ様の御期待に応えられる様、全身全霊を持って事に当たらせて頂く事をここに誓わせて頂きます。」
デミウルゴスは歓喜の余り男泣きをしてしまった……。
「ボ、ボクも誓います!」
「アタシだって!」
「わらわも誓うでありんす!」
「ワタシモ御身ノ御力トナル事ヲココニ誓イマス」
「我々シモベ一同、至高の御方々のお力となれる様、全身全霊の限りを尽くす事をここに誓います。」
マーレ、アウラ、シャルティア、コキュートスが次々とデミウルゴスに同調し、最後にアルベドが〆た。
こんな予定じゃなかったのに、大変なことになってしまった。
俺はモモンガさんをちらりと見ると、滝のような汗が流れていた。
「そ、そうか。大変かと思うが、頑張って……貰うからな?」
「「「「「ハッ!」」」」」
予定とは大きく異なる気がするけど、
人の姿は受け入れてもらえたし、弱者を救う方針も受け入れてもらえた。
(あ、後はもう少し肩肘張らずに応対してくれるといいけど……。
そこまでは望みすぎかな? 少しずつ努力していこう……。)
「それでだな、直近の方針だが。
カルネ村の住人がレベルアップできるか試してみようと思う。
これは面識のある私達がやるべきだろう。
次にナザリックを中心に周辺の調査を行って欲しい。
範囲が広いが、デミウルゴス、コキュートス、協力して事にあたってほしい。
調査の為に外に出すモンスターはレベル30未満、自動POPのモンスターまでにして欲しい。
強いモンスターだと、この世界の強者達に要らぬ警戒を与えることになる。
いくらかは討伐される前提で考えてくれ。
次にトブの大森林の調査はアウラ、マーレ、セバスに任せる。
マーレにはナザリックの隠蔽作業も任せているから、アウラとセバスが主軸となってくれ。
こちらの部隊にはレベルの制限を設けない。
トブの大森林は人類未踏の地らしいからな。強者が潜んでいる可能性もある、お前たちの安全が第一だ。
他の存在と遭遇したときは友好的に接してくれると助かる。
いきなり殴りかかって来るようなヤツは始末して構わない。
また、トブの大森林内にダミーナザリックを建造する。
適切そうな場所をいくつか見繕ってほしい。
次にシャルティア、お前にはナザリックの守護を命じる。
ここは決して落とされてはならん。総合力の一番高いシャルティアが適任だろう。
最後にアルベド。お前はパンドラズ・アクターと共にナザリックの運営、
そして各チームから上がってくる情報の精査と取りまとめを頼む。
プレアデス達は、状況に応じて各チームに派遣する予定だ。
皆、協力して事にあたってほしい。
以上だ、何か意見はあるか?」
「協力して事に当たるということは、各自のシモベを他のチームに派遣しても良いと言う事でしょうか?」
「その通りだデミウルゴス。他にはあるか?」
「いえ、十分すぎる説明を頂きましたので問題御座いません。」
「わかった。分からないことがあったら連絡してくれ。
それでは解散とする。」
(説明はモモンガさんに全部任せてしまった。
お、俺も一緒に考えたよ!?
こういうのはギルマスがやった方がしっくり来るでしょ!?)