ヘロヘロとモモンガと愉快な仲間たち   作:火焔+

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03. ヘロヘロ式ブートキャンプ二日目

 

「おはようエンリ。調子はどうだ?」

 

 翌日、エンリを迎えにエモット宅を訪れた。

 モモンガさんはアルベドと共に村長宅へ向かい、ゴーレムと死の騎士《デス・ナイト》で復興を手伝いに行っている。

 

「おはようございます、ヘロヘロさん!すごいんですよ!何か凄い体が軽いんです!」

 

 やけにハイテンションなエンリが袖をまくって力こぶを作ろうとするが特に何も出来ない。

 張り切ってピョンピョンとジャンプしてるのがカワイイな。

 

「それだけ元気なら、今日もトレーニングして問題無さそうだな。」

 

「はいっ!今日もよろしくお願いします!

 ネム、お姉ちゃん頑張ってくるね!」

 

「うんっ!いってらっしゃい!」

 

「ユリ、ネムのことを頼む」

 

「はい、お任せ下さい。」

 

 ユリをネムに預けて今日もトブの大森林へ向かった。

 やまいこさんは教師だったはずだし、ユリも子どもが苦手ということはないだろう。

 

 

 

 

「エンリ、どのくらい強くなったか何か分かる感覚ある?」

 

 どのくらい強くなったか分かると、今日のトレーニングメニューを最適化できるし。

 

「多分Lv5ってのでしょうか? ほら、体が全然動くんですよ。」

 

 エンリは走り回ったりジャンプしたり楽しそうだ。

 エンリが跳ねている最中につむじ風が吹き――――

 

「きゃっ!」

 

 ロングスカートが大きく捲れ上がった。

 スカートに隠れ、余り日焼けのしていない膝裏が露になり、

 農作業で引き締まった太ももがさらけ出され、そして――――

 

 白だな。地味めのパンツが一秒にも見ない時間だが俺の目に焼き付けられた。

 

 この世界だとLv100にもなれば0.1秒を1秒くらいの時間感覚、つまり10倍の時間に感じることなど造作も無い。

 しっかりと数秒の間拝ませて貰った。

 

(最高だ――――)

 

 

「み、見ました?」

 

 慌ててスカートを抑えて、顔を真っ赤にしたエンリがこちらを見る。

 

「もうちょっと(で丸見え)だったんだけどね。残念だったよ。」

 

「もぉ~~!! えっちです!!」

 

「ははは、ゴメンゴメン。」

 

 

 

 だが、何故急に風が……?

 辺りを見回すと隠密であるフウマの二人が大きな扇でエンリに向かって扇いでいた。

 

(なんてことだ! 最高だ――――)

 

 後でフウマ達を滅茶苦茶褒めておこうと心に誓った。

 

 

 

「ところで何でLv5と分かったんだ?」

 

「なんとなくですけど、修行僧(モンク)を4回強化出来たからそうかなって。農民(ファーマー)も1つ強化してありましたし。」

 

 ユグドラシルと同様にクラスレベルを上げる事が出来るみたいだ。

 ただ、レベルの上昇はかなり緩やかだな。

 ワンパンだから大して経験値が入らないのか、ギルドPOPだからか、Lvアップキャンペーンが無いからか。

 要因を絞る事は出来ないが、それは余裕が出来たら考えればいいだろう。

 

 他にも戦士(ファイター)野伏(レンジャー)神官(クレリック)魔術師(ウィザード)などのクラスも取得できそうだったらしいが、修行僧《モンク》だけをレベルアップしてくれたようだ。

 

(ユグドラシルと同様にレベルを上げていけるなら特に問題はないかな?

 自動POPだと特殊クラスまで取れるほど強くはなれないだろうし、出来るだけ最短で上位のクラスに就ける様にレベリングしていこう)

 

 レベル5なら、相手は同レベルの骸骨兵士(スケルトン・ソルジャー)が丁度いいか。

 それと1つエンリに渡したいものがある。

 

「今日のトレーニング前に新しい装備を作ってきたから、着けて見てくれるか?」

 

 俺は無限の背負い袋(インフィニティ・ハヴァザック)から鍛冶長に頼んで作って貰った【上級】アイテムのミスリルガントレットを取り出した。

 エンリをイメージしてタンポポをモチーフにしたガントレットだ。花をモチーフとした武器なら女性にもウケが良いだろうと思ったからだ。

 このガントレットの名前は「hello, Enri」。俺の様なソフトウェアに生きる人間なら入門のアイテムはやっぱりコレだろうと思う。

 俺も最初の武器は「hello, Herohero」だったし。

 

「そ、そんな。私の名前を冠した武器を作ってくださるなんて……。

 それにこんな凄い。昨日貸して頂いた武器より強い力を感じます。

 私の為に、本当にありがとうございます!!」

 

 エンリは嬉しそうに大切そうにガントレットを装着する。

 良く似合ってるし、喜んで貰えて何よりだ。

 

 

 

「さて、今日もバシバシ行くぞ~! 今日は昨日より強いスケルトン500体だ!」

 

「はっ、はいっ!!」

 

 

 

 昨日よりかは動きが良くなっているが、まだまだ動きがぎこちないな。

 まぁプレイヤースキルというか技術は一朝一夕で身に付くものじゃないし、俺もまだまだという自覚はある。

 

(そうか、ここはガチで命をかける世界。戦闘技術もユグドラシルよりもかなり洗練されているかもしれないな。)

 

 村に来た戦士長ガゼフ・ストロノーフも、身体能力はからっきしだが技術は俺よりも上だと感じた。

 誰かに師事して戦闘訓練をつめば俺もモモンガさんもナザリックの面々も、まだまだ強くなれる。

 

 エンリも自動POPで出来るパワーレベリングが完了したら戦闘訓練を詰んだ方がいいのか?

 それとも、先ずは自分の力で生活できる様になる方がいいのか。これはエンリが選ぶべき道だろうな。

 

 俺はエンリの戦闘訓練を見つつ、自分達の可能性やエンリの将来を思案していた。

 

 

 

「つ、つかれたぁ~~」

 

 無事500体の骸骨兵士(スケルトン・ソルジャー)を倒し終えたエンリは昨日と同じ様に大の字で倒れる。

 

「お疲れ、しばらく休んでから村に戻ろうか。」

 

 昨日と同じ様に胸をガン見しつつ、水分補給してから

 休憩の間少し雑談をした。

 村の話とか、作物とか何で金銭を得てるとか。

 家族の話は触れないように。

 

 

 

「ふ~ん、納税はお金、小麦、大麦、ライ麦、燕麦、豆類で保存がしやすいものなのか。」

 

(物納なんてあるのか。江戸時代では何万石とかあったから昔はそういうものなのかもしれないな。)

 

 確かに金貨、銀貨、銅貨とか金本位制度だと貴金属が圧倒的に足りないのかもしれない。

 地球では紙幣本位制度だからお金による納税で事が足りたし、俺らみたいな職業は物納できないし。

 

 他に育てている農作物はワイン用の葡萄で野菜、果物は家庭用といった所らしい。

 カルネ村は比較的温暖なので小麦、大麦をメインに栽培しているそうだ。

 ただ、小麦、大麦は殆ど税金で持っていかれるから、食用にライ麦、燕麦も栽培していると。

 

 尚、リ・エスティーゼ王国の北部や高地の寒冷地だと、ライ麦、燕麦がメインらしい。

 

「街に卸してお金に換えている物は何かあるのか?」

 

「そうですね、トブの大森林の入り口に近いところで薬草採取したり、狩猟で獣の毛皮とかでしょうか?

 お肉は村のご馳走になりますし。」

 

 薬草採取や毛皮も収集しているなら、ついでに俺達の採取した薬草や魔物の毛皮も売れるかもしれないな。

 流石デミウルゴスだ。ここまで読んでいたのかもしれないな。

 

 

「そいや、税ってどれくらいなんだ?」

 

 ふとどのくらいか聞くと、エンリから衝撃の税金の割合を聞くことになった。

 

 

 まさかの5割。

 

 

 税は平時5割、戦時7割らしい。

 

(マジかよ……俺のいた所だって税金は諸々含めて4割なのに……)

 

 カルネ村は王直轄領である為まだいい方で、酷いところだと平時でも6~7割だそうだ。

 しかも領民は自由に村を移動できないため、逃げることすら難しい。

 

(カルネ村だけでも何とかしてやりたいな。)

 

 俺は正義のヒーローじゃない。全部を救うなんて無理な事くらいわかる。

 だけど、手に届く範囲くらい救いたい。

 

 

 

 

 

 色々話した後、俺達はカルネ村に戻ってきた。

 

「ただいまネム。いい子にしてた?」

 

「おかえり! お姉ちゃん!

 いい子にしてたよ! ユリ先生ね! 足し算と引き算教えてくれたの!!」

 

「えっ! すみません、ユリさん。勉強を教えて下さるなんて……。」

 

 どうやらユリはやまいこさんの影響を受けたのか、ネムの先生になっていたようだ。

 

「いえいえ、こういうことは好きですので構いませんよ。

 ヘロヘロ様、勝手にしてしまいましたが宜しかったでしょうか?」

 

「ああ、全然構わないよ。ユリがやりたかったのならドンドンやってくれ。」

 

 この世界も俺達の地球同様に義務教育は無く、小さいうちから働かねばならないらしい。

 いずれ余裕が出来たら学校を作ってみてもいいかもしれないな。

 きっとユリも喜んでくれるだろう。

 

「さ、ユリ。俺達はモモンガさんと合流しよう。

 エンリはしっかり休んで明日に備えてくれよ。」

 

「はい。何から何まで申し訳ありません。」

 

「そこは、『ありがとう』っていうんだぞ?」

 

 ちょっとキザかなと思ったけど、言ってみたかったから仕方ない。

 

「はいっ!ありがとうございます。いってらっしゃいヘロヘロさん!」

 

 エンリは満面の笑顔で俺を送り出してくれた。

 いい事をするのも悪くないな。

 

 

 

 

 

「楽しかったか?ユリ。」

 

「はい。妹達とはまた違った楽しさがありました。

 不思議ですね。自然と先生というものが出来ていたように感じます」

 

「やまいこさんも相手に教える立場の存在だったから、そういう感覚がユリにも宿っているのかもしれないな。」

 

「そうだったのですか。私の中にもやまいこ様が……」

 

 ユリは自分の胸に手を宛てて瞳を閉じる。

 ネムの先生をしていたときの気持ちを思い出しているのだろう。

 

「やまいこ様のことを教えてくださり、ありがとうございます、ヘロヘロ様。」

 

「どういたしまして。数多くの事を覚えているわけじゃないけど。

 何か思い出したらまた教えるよ。」

 

 

 

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