「ヘロヘロ様。本日ノゴ指導、アリガトウゴザイマシタ。」
ここ数日、モモンガさんの提案通り守護者たちと模擬戦を行っていた。
守護者たちも楽しそうだし、俺も昔のカンをどんどん取り戻せていっているし、モモンガさんには頭が上がらないなぁ。
「俺も楽しかった。また頼むよ。」
「コチラコソ。次ノ機会ヲ心ヨリ御待チシテオリマス」
「お疲れ様でした、ヘロヘロ様。」
第6層の闘技場から出るときに、傍に控えていたソリュシャンがタオルを手渡してくれる。
スライムでも汗をかく感覚はあるのでタオルを受け取って汗を拭う。
いやぁ、現実世界ではこんな動く事はなかったから結構しんどいな。
体力的にはステータス的に問題ないんだけど精神的にね。
ただ、動けると身体を動かすのも楽しいな。
「ありがとう、ソリュシャン。これは、洗濯係メイド達に渡しておいてくれ。」
汗を拭ったタオルをソリュシャンに返すと、ソリュシャンは自分の身体の中にしまう。
最初は身体の中に沈んでいくのにビビッたけど、スライムだからと言われたらそりゃそうかと納得した。
ただ、俺は身体の中に入れる感覚が嫌で、やりたくはないけど……
「モモンガさん。
トレーニング後、モモンガさんの執務室に行くと使い方がわからなくなってた遠くを見るアイテムの使い方が判明したみたいだ。
100年も昔に流行ったスマートフォンっていう電子機器の使い方と同じだったらしい。
そんな手の所作で画面を動かすなんて……。
「ナザリックの付近に何かありました?」
「いえ、草原ばかりで何も。――――ん? 何か祭りのような……?」
南西に人里を見つけたと思ったら、なんだか騒がしいような感じがする。
「御二方、それは襲撃かと。」
悩む俺達にセバスが助言をしてくれる。
確かに騎士が村人を襲っている。
(何で気が付かなかったんだ?それに――――
血が美味そう
ハッ!?何考えてるんだ、俺は!?)
「ふむ、確かに村人が襲われているな。」
モモンガさんも人が襲われているのにテレビドラマを見ているかのような他人事の感想だった。
俺達は人じゃなくなってきているのか……?
「如何為さいますか?」
セバスがそう問う。
「「うむ……」」
俺達が悩んでいる所で、画面内に変化が――――
胸元あたりまで伸ばした栗毛の長い三つ編みと、妹らしき女の子が騎士に襲われていた。
姉らしき女の子が騎士に背中を切りつけられて倒れた。
(あぁ……日焼けした柔らかい肌も旨そうだな……
ハッ!! 何てことだ……
性的に食べたいという感情なら俺も男だし仕方ない。
だが、今のは人肉を喰いたい感覚だったぞ……。)
俺は人を見る感覚が以前と違う事を確信する。
(人じゃなくなってるのか……?)
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●モモンガ視点
(彼我に力量差が判明しない限り、むやみに動くのは危険だな……今回は観察して情報集めに専念すべきだろう。)
俺がそう思っていると、隣にあるはずの無い感覚を感じた。
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『誰かが困っていたら――――』
『たっちさん!?』
『誰かが困っていたら?』
たっちさんの顔が近くなり、言葉の先を求めているような感じる。
『助けるのは当たり前?』
『そう! モモンガさんなら覚えてくれていると思っていたよ!』
たっちさんはサムズアップして正義光臨のエフェクトを発光させる。
『ですが、相手の力量もわかりませんし……』
『正義は必ず勝つ!
というのは冗談で、モモンガさんも分かってるでしょう?
あいつらの技量の低さが演技じゃないって。』
それはわかっている。
自分の記憶にあるたっちさん達、物理アタッカーの技量。
美化していたかも知れないと思ったけどヘロヘロさんの模擬戦を見ていると記憶に間違いはないと分かる。
だが、モンスターのようにステータスだけは高い可能性も僅かながらある。
だけど――――
『そうですね。いつかはやらなければいけない。だったら早い方がイイですね。』
『あぁ!モモンガさんの正義、期待しているよ!』
『あ~ぁ、正義の押し売りは見苦しいですよ。たっちさん。』
反対側から懐かしい声がもう1つ。シルクハットを被った山羊頭の悪魔。
わからないはずが無い。
『ウルベルトさん!!』
『久しぶり、モモンガさん。あんな正義かぶれに騙されちゃいけませんよ。』
『正義かぶれとは失礼な。モモンガさんは心優しい人だ。俺は背中を押しただけだよ。』
『それを押し売りって言うんですよ。モモンガさんは悪のロールなんです、そんな事はしません。』
『じゃあ、ウルベルトさんはモモンガさんは如何行動すると?』
『決まってるじゃないですか。弱者に力を振りかざす愚かな強者を地獄に叩き落すんですよ。ですよね?モモンガさん。』
『やっぱりウルベルトさんも村人を助けるんじゃないですか。』
『何を言っているんですか?全く違いますよ。
「村人を助ける」と「愚かな強者を地獄に叩き落す」「を」しかあってないじゃないですか。』
二人が俺を挟んで言い争いをしている。
いつ振りだろうか、こんな感覚は……。
『わ、わかりました。あの騎士たちを地獄に叩き落して、村人を助けましょう。』
『まぁ、それならいいでしょう。』
『うむ。』
――――――――――――
「あの村を助けよう。この世界の兵士の力量を知る必要もあるし、何より情報が欲しい。
アルベドにフル装備でこちらに来るよう伝えろ。デミウルゴスたち守護者はナザリックの防衛、アウラは隠密を連れてこの村の周囲を警戒だ。セバスこれらを守護者に伝えろ。
私たちは先にこの村へ向かう。
勝手に決めちゃいましたが、いいですか?ヘロヘロさん。」
「あぁ、それでいいよ、モモンガさん。多分こいつらに劣る事はないと思う。」
よかった。ヘロヘロさんがそういうなら相手が強いという事は無さそうだ。
「では、いきましょうか。
モモンガ視点ではちょくちょくこういう脳内劇場が入る予定です。