ヘロヘロとモモンガと愉快な仲間たち   作:火焔+

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07. 王国戦士長ガゼフ・ストロノーフ

 

「なるほど、ここはリ・エスティーゼ王国の領内で、東にバハルス帝国、南にスレイン法国が。

 という事は先ほどの騎士はバハルス帝国のものではなく、スレイン法国の偽装である可能性もあると――――

 少し席を外しても?」

 

 モモンガさんはそういうと外へ出て行く。

 アルベドもモモンガさんについていき外へと。

 

 

「先ほどはすみません、命のやり取りをするとどうして気が昂ぶってしまって……」

 

「そうでしたか。

 私たちは外の世界を余り知りませんので、戦いの中に身を置く方々の苦労もあるのかもしれませんね。」

 

(なんとか誤魔化せたかな?

 自分が知らない概念を聞いたとき、そういうものかもしれないと思いがちになるものだし。)

 

「出来れば忘れて頂けると助かります。」

 

「はい。皆にもその様に伝えておきます。」

 

「ありがとうございます。」

 

 

 

『ヘロヘロさん。そのまま聞いてください。』

 

 モモンガさんからのメッセージだ。

 

『先ほど逃がした騎士達をアウラの管轄に置いた隠密2体に追跡させました。

 これでどちらからの刺客か分かるはずです。』

 

 流石モモンガさんだ。

 俺はまだ動揺しているのに鋭い一手だな。

 メッセージの後、モモンガさんは村長の家に戻ってきた。

 

 

 

「すみません。少し所用があって。」

 

「いえいえ、構いません。」

 

「それでは――――」

 

 この世界ではユグドラシル金貨は使われておらず、

 王国貨幣、帝国貨幣、法国貨幣があり、一白金貨=十金貨=百銀貨=千銅貨のレートで取引される。

 国家同士の貨幣価値は同じであり、王国金貨1枚=帝国金貨1枚=法国金貨1枚だそうだ。

 地図も3カ国の周辺の地図しか書かれていない。

 

「他の場所が書かれていないのは、未知の場所だからですか?」

 

 俺がそう聞くと村長は頷く。

 なるほどね。未知を既知とするためには自分達で動かないといけないわけだ。

 

 それと、南のほうにエ・ランテルという城塞都市があり、そこでなら冒険者という職業があり俺達ならば金を稼ぐのに苦労はしないだろうとのことだ。

 エ・ランテルは国王の直轄地で六大貴族の政争に巻き込まれることもないとの事だ。

 

 此処を助けたのは正解だったな。

 思った以上に情報を得ることができたし。

 

 

 

『ヘロヘロ様。西に先ほどとは異なる戦士の一団を発見しました。

 相手の力量は雑魚です。始末しますか?

 モモンガ様にもメッセージにて報告を行っております。』

 

 アウラからのメッセージを受け取るとモモンガさんと目があう。

 

「アルベド。」

 

 モモンガさんが首を横に振るとアルベドは意味を理解してメッセージの応答をするために外へ出て行く。

 始末せず隠密で様子を探るのだろう。

 そしてしばらくすると――――

 

 

 

「村長! 西から騎馬の一団が!!」

 

「そんな! あぁ……一体如何したら……」

 

「構いませんよ。乗りかかった船です。これくらいはアフターサービスとしましょう。」

 

 モモンガさんはもう一度戦うつもりらしい。

 俺はまた自分を失いそうで少し――――

 

「ヘロヘロさんは、先ほどの騎士の死体を東の外れにお願いします。

 先ほどと同じくらいでしたら、死の騎士(デス・ナイト)でも余裕ですし。」

 

「わかりました。モモンガさんもお気をつけて。

 アルベドはモモンガさんの援護に回ってくれ。」

 

「はい。ヘロヘロ様は如何為さいますか?」

 

 暗に一人で居る事は許可できないといっているのだ。

 まぁ、生き返る保障もないのだ心配も最もだろう。

 

「隠密をよこして貰うよ。」

 

「畏まりました。」

 

 アルベドとも模擬戦をしているから近接戦での心配はしていないだろう。

 盾になるシモベを必ず身の回りにおいて欲しいと念を押されているので、それもこれで問題ない。

 みすみす部下を失うマネをするつもりはないが。

 

 

 

 

「私は王国戦士長ガゼフ・ストロノーフ。この村に騎士らしき集団は来なかったか?」

 

 

 

 

「エンリさん。王国戦士長って強いの?」

 

 俺はガゼフという人物に応対しているモモンガさんとは距離を取り、隣に居たエンリに話しかける。

 

「エンリでいいですよ。ヘロヘロ様の方が年上みたいですから。

 王国戦士長様は簡単に言うと王様の直轄部隊の隊長と村長から聞いたことがあります。

 なんでも、王国の武術大会で優勝するくらい強いみたいですよ。」

 

「へぇ、じゃあ王国最強ってやつなんだ。」

 

「あ、そういわれてるのを聞いたことあります。

 でも、ヘロヘロ様のほうが強いと思いますよ。」

 

 

 

 視線をエンリからモモンガさん達に向けると、何故か死の騎士(デス・ナイト)と模擬戦をしているガゼフ・ストロノーフがいた。

 

「ん? 何か軌道を無理やり変える様な動きしなかった?」

 

「え? ごめんなさい……速過ぎて良くわからなかったです。」

 

(スキルかなんかかな? あんなのあったっけ?)

 

 

 

 この最中にも、騎士を喰らって生み出した治癒の粘体(ヒーリング・スライム)4体が村の外れで村人の治癒を行っている。

 このまま何もしないと死にそうな人たちもいたし、何より今は血や死体を見たくない。

 亡くなった人は救えないが、情報の対価としての足しにはなっただろうか。

 

(ペストーニャが真なる蘇生(トゥルー・リザレクション)を使えたはずだが、流石にただの村人を救うのは難しいだろう。

 万が一灰になったら、逆に恨まれそうだし。)

 

 

 

 そう思っている内に模擬戦はガゼフの勝利で幕を閉じた。

 まぁ、死の騎士(デス・ナイト)は鉄の棒みたいな雑な鉄の剣で戦ってたし仕方ないだろう。

 モモンガさんの事だから相手に華を持たせたのかも。

 

 

 

「うむ! いい経験をさせてもらった!

 これ程のアンデッドを使役なさるとは、さぞかし高名なネクロマンサー殿なのだろう。

 名をお聞かせ願えないだろうか?」

 

「私は、モモンガ・アインズ・ウール・ゴウンと申します、王国戦士長殿。」

 

「ハハハッ! 私の事はガゼフで構いませんよ、ゴウン殿!」

 

「そういうわけにも行きませんよ、ストロノーフ殿。」

 

「だが、ゴウン殿の名は聞いた覚えがないな……」

 

「それは仕方ありません。

 私たちはずっとアゼルリシア山脈で研究に勤しんでいましたので、外界と関わりを持ったことは余り無く。」

 

「なるほど、手ごわいモンスターが住むアゼルリシア山脈で暮らしておられたのですか。

 道理でお強いわけだ。

 そこで死霊術の研究を?」

 

「はい。まぁ、死霊術だけではありませんが。」

 

 

 なんだか竹を割ったような性格の人だ。

 どうやらこの村を襲った騎士たちを追っていたようだし、雰囲気的にたっち・みーさんに近いのかな?

 

 

『ヘロヘロ様、アウラです。例の騎士たちがマジックキャスターらしき集団と接触し、南の方へと移動して行きました。

 奴らの言動から黒幕はスレイン法国に間違いないようです。

 

 そして、陽光聖典というマジックキャスターの部隊が御方々の元へ向っています。

 狙いはガゼフ・ストロノーフという名前のヤツです。

 人類が最強とか行ってましたので、多分、人間だと思います。

 

 強さは先ほどの戦士団が米粒とするならば、こいつらは玄米くらいの差です。』

 

 

 流石はアウラだ。もう黒幕を突き止めるとは。

 しかも相手の次の手まで。

 

 モモンガさんは俺のほうをチラッと見て頷く。

 

(あの状態じゃ、アウラとは連絡取れないよな。)

 

 

 

「エンリさん、すみませんがトイレはどちらに?」

 

「トイレですか? 家畜小屋か、家の裏手であればどこでもいいですよ。」

 

(え!? 外!? 昔の人は外でしてたって聞いた事あったけど……マジか。

 という事はエンリも……?)

 

 いかん、いかん。外で用を足すエンリを想像してしまった。

 

「そ、そうか。ありがとう」

 

衛生粘体(サニタリースライム)がいる様な都市でしたら、公衆トイレもあるんですけどね。」

 

 

(そんな種類のスライムいたっけな? アップデートで追加されたか、フレーバーテキストの存在かな?

 ナザリックにもいたような気がするな。あいつら、そんな名前だったかな?)

 

 自分と同じ種族だから変な感じするけど、そういう系のスライムを手に入れたら

 村にトイレを作ってもいいかもしれないな。

 野外は衛生的にも良くないし。

 

(ま、それは後々考える事にして)

 

 俺は家の裏手に回りメッセージの魔法を発動する

 

 

「アウラ、ヘロヘロだ。

 モモンガさんは手が離せないから俺が指示するよ。」

 

『はい!よろしくお願いします!』

 

 相変わらず元気な子だ。

 

「まず、騎士たちの追跡は引き続き頼む。

 陽光聖典という奴らについては様子見だ。

 先の戦士団の隊長がガゼフだったから、彼らをぶつけて戦いの様子を確認しようと思う。

 

 ガゼフというやつはこの国で最強の戦士らしいからな。

 それに、死の騎士(デス・ナイト)との模擬戦中に見せた不可解なスキルらしきものにも興味がある」

 

『畏まりました。では、その様に手配いたします。』

 

 

 

「戦士長! 周囲をマジックキャスターらしき者達に囲まれております。」

 

 

 

 




インドも宗教上の理由から農村部だと野外式らしいですね。

人間種のガゼフがネクロマンサーに使役されたアンデッドを毛嫌いしないのは、リグリットという十三英雄を知っているからということにして置いて下さい

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